死者の主
「こいつがここのダンジョンの主か」
サーウェス率いるダンジョン攻略の大規模パーティは、リッチーと呼ばれる死霊召喚を得意とする魔物と相対していた。
「ギギ・・・ギ・・・」
リッチーはギシギシと骨を鳴らしこちらをみる。
かつては生きていたのだろうが、いまや外観を残しているのはその王族に見える貴族服くらいだ。
座っている玉座にはワンドが2本、刺さっている。・・・何か意味があるように見えた。
「術式展開、行きます!」
サーニャ含めた教会から派遣された白魔術師達が冒険者の武器にホーリーをエンチャントする。
「皆、いくぞ!」
「うおおおお!」
「行きます!」
サーウェスが先導し、駆ける。
死者の群れも聖属性のエンチャントされた武器ではひとたまりもない。
「ギギ・・・」
・・・!不意を突き、弓を持った死者がサーニャに矢を放つ。
「そこですな!」
竜族の冒険者は矢を切り落とす。
「ありがとうございます!」
「まだお礼は早いですぞ」
「はい!」
「皆さん、集合詠唱をしましょう。前衛の攻める道を作るんです!」
サーニャは他の白魔術師に言うと、頷く。
集合詠唱とは一人では発動できない白魔術の大術式を発動する方法である。
皆で一斉に術式を展開し大規模の魔術を詠唱する。
「サーニャ達を援護しろ!スケルトンを近寄らせるな!」
サーウェスが冒険者に指示すると、壁のようにサーニャ達、白魔術師を守る。
「魔のものよ、神の裁きにて滅せよ」
「罪を滅ぼす光、連なる救いを与えたまえ」
合唱のように白魔術師達が詠唱を続ける。
「行きます!・・・ジャッジメント・レイ!!」
・・・!
「ギギ・・・!」
リッチーを守るようにスケルトンが盾になり咄嗟に攻撃を防ぐ。
いまの攻撃でスケルトンの大半が消し飛んだようだ。
「いくぞ!」
チャンスだ・・・!とサーウェス率いる上級冒険者は一気かせいに出た。
「ギッ・・・!」
怯えはしていないが、多少はリッチーは驚いているようにみえる。
しかし、
「なっ・・・!?」
玉座に刺さったワンドが光り、再び同じ量のスケルトンが展開された。
やはり何かあのワンドにあるのか・・・?
「どうしますかな?・・・あのワンドに何か仕掛けがあるとは思うのですが」
「ガンナーは・・・向こうに分断されてたな。まいった」
サーウェスは剣を構えなおすと、冒険者に守りに徹するように指示した。
・・・ガンナーに合流出来れば多少はマシになるかもしれない。