カーリの記憶(番外編)
「お父さま!」
彼女は父親が大好きだった。いつも彼女は父親に甘えていた。
「カーリ。今日は忙しいんだ。すまないが」
いつも、お父様は忙しい。いつだって何か小難しいことを部下と話し合っている。
「むーーー!」
頬を膨らませると、決まって父親は頭を撫でると、言うのだ。
「すまない、大切な人がいてね。その人を蘇らせる為なんだ」
「そんなに・・・大切な人?」
「ああ。お前の母親だ」
彼女は嬉しそうにパーッと笑って父親に抱き着いた。
「会えるといいね!お母さんにも・・・私も会いたい!」
「そうだな。絶対に、会って見せる」
少し、父親の顔に感じる陰に、彼女は気づいていたがしかし、疑うことはなかった。
「今日もいないの?」
「申し訳ございません。カーリ様」
彼女は、メイド長のカレン。私の世話係。
「お父様・・・まだ忙しいのかな」
「ええ。人間に狙われていますから、この城に来ることはあまりありません」
人間・・・。お父様はいつも危険だと言っていた。1人1人は強くないが、特殊な魔術や数で押してくる危険な、種族だと。
でもこちらも人間より遥かに高い身体能力があり、そもそも戦いにならないはず。人間の兵士くらい紙切れみたいに弾けてしまうのに。
「私だって人間になんて負けないし、なんであんな弱い種族に警戒しなくてはいけないの?」
カレンは私を窘めるように言う。
「数も多く知恵もある、もっともこの地上で繁栄している生き物ですよ。どんなに私たちが強くとも、数で押されれば容易く負けてしまうでしょう」
城から出れないことに拗ねた私は思わず、悪口を言ってしまった。
「構ってくれないお父様も、いう事聞かないメイド達もいらない!」
「申し訳ございません」
カレンはただ、私に謝り続けた。
そんな時だった。慌ただしく扉を開け、伝達係から通達が来た。カレンに耳打ちすると、
「ゼパルが人間に・・・!?負けたですって!?」
カレンは珍しく顔色を変えた。伝達係に「このことは内密にしなさい」と伝える。
「カーリ様、今日は部屋を出ないように。それと・・・我々の同胞が人間に負けました。この城も危険かもしれません。今日は絶対に、おとなしくしてくださいね」
カレンが私に釘を刺すと、部屋を出ていく。
私はニヤッと笑うと、「人間が私たち魔族に・・・会ってみたいかも」術式を展開すると彼女は誰もいない部屋を飛び出した。
______場所はさっき耳打ちした国の近くかな、と遺跡に向けてムシュフシュを連れて出て行った。