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ウェポンサモナーとスラ子の冒険  作者: どれいく
コバヤシと言う冒険者~1章
26/115

邂逅、拉致

「おはよう」

眠い。とにかく眠い。

あくびをしながら挨拶をすると椅子にもたれかかるように座る。

「コバヤシおはよう」

「眠そうだな」

「ああ。夜遅くまで調べ物で眠れなかったんだ」

ここに通って2週間くらい。もう大分他の生徒にも慣れてきていた。

模擬戦にも勝ったのもあり、話しかけられることが増えたのも理由だ。

「とはいえ、実際にいると確定したわけではないんだよな」

サキュバス対策を調べるのにかなり時間がかかった。でももしサキュバスなんていなくて別の要因ならただの徒労だろう。

「コバヤシ、だいじょうぶ?」

スラ子が心配そうに覗き込んでくる。確かに寝不足でひどい顔をしているだろう。

「心配かけて悪いな」

精一杯元気に振る舞い、挨拶を返した。








「ここも痕跡なし、か」

時間は昼頃。空いた時間、痕跡を探して校舎を歩き回ってもう3日目。魔道具にはこれといった反応はなく、今日もただただ歩き回っただけだった。

スラ子は先生と合間があれば生徒と話をしているようだった。

最近連続で起こっていた衰弱事件はぱたりと起こらなくなった。ナリを潜めてるだけかもしれないが。

校舎の人通りが少ない事件現場はあらかた調べたが他にも見てないところがあるんだろうか。

「お。こんなところで会うなんてコバヤシ君もサボリ?」

後ろから声がして、振り向く。この声はキリエセンパイか。

「ぼんやり歩いてただけです。サボリなんてしませんよ」

「ふーん・・・ねえ。それって魔力の痕跡を探す魔道具よね?」

まずった。こんな時間、こんな場所でなんて言い訳すればいいのか。

・・・?

魔力の反応だ。話していて気づかなったが、ぐるぐると秒針のような針がまわっている。

たしか・・・先生の話を思い出す。

「・・・これは本来魔術の痕跡を探す魔道具ですが、強い魔力の塊を探すだけなら最適なはずです。サキュバスレベルの魔力の塊に対しては恐らく強く反応するはず」

(いままでこんな反応は見たことがない、それになんでこんな校舎の誰もこないような場所にキリエセンパイが・・・)

「質問に、答えてくれないの?」

眩暈がする。センパイの目を見ていると意識を集中できない。

動機も激しい。

・・・何かがおかしい。

「おやすみ。良い夢がみれるといいわね」

意識がぷっつりと途切れた。










「神は太古の戦争で勝利をおさめ・・・」

スラ子は退屈そうに、授業を聞きながらページをめくる。

この世界に存在する神々のお話。

この世界は太古に神々の戦争があった。混沌の勢力と、秩序の勢力の長い長い闘い。

混沌の勢力に属した彼らは敗北した後、悪魔と呼ばれいまもその血を残しているのが魔物なのだと。

(退屈なお話だなあ・・・)

原初の悪魔。魔王、と呼ばれる存在もいるらしいけどわたしそんな魔物見たことない。

ガララッ!

カリカリとペンを走らせる音と紙のすれる音だけが響く、静かな空間を破壊する音。

静寂を破ったのはエリス先生だった。

「すいません。授業中とは思いますがスラ子さんに用があります」

「えっ・・・?えっ?」

突然のことに驚いて声が出ない。よほど先生は焦っているんだろう、急いでわたしを廊下に連れ出す。

「失礼しました」

ガタン。

「スラ子さん」

エリス先生は自分を落ち着かせるように言った。

「コバヤシ君が行方不明になりました」

「嘘・・・!コバヤシがやられるわけないよ!」

朝だって挨拶して・・・普通に話してたのに!

思わず声を荒げてしまう。

落ち着くように、と言われてここが廊下だと気づかされる。

あんまり大きい声だと他の生徒にも聞こえてしまう。

「不安なのは分かります。わたしも心配です。直前までいた場所は分かりますから調べに行きましょう」








校舎のどこか、人の気配がしない。使われていない倉庫でコバヤシは目を覚ました。

手足が拘束されている訳でもなく自由には動けるようだ。

暗闇で辺りが見えない。適当な転がっていた棒を掴むと、「エンチャント、燃えよ」と詠唱する。

「ここは・・・」

ホコリが積もった床、用途も分からない骨とう品が乱雑に置かれている。

先の見えない暗闇から、声がした。

「あら。お目覚め?おっかしいなあ魔眼が効いてるはずなのに」

「誰だ!」

僅かな明かりを頼りに辺りを見回す。すると闇の中からその女は姿を現した。

「キリエ・・・センパイ・・!?」

気のせいだと思いたかった。でも偽物にしてはあんまりにも似すぎている・・・!

「わたしはサキュバス。それ以外何者でもないわ」

サキュバスはゆっくりとこちらに歩いてくる。この状態はまずい、逃げなければ。

暗闇の中を走る。僅かな光では方向は分からないが、がむしゃらに走ると扉が見えてきた。

ガチャガチャとドアノブを回すが鍵がかかっている。

「ほら、カギはこっちよ」

最悪だ。カギはあいつが持っている。こうなったら・・・!

肩から二の腕にかけて魔力を集中する。

「・・・!」

思い切り扉に体当たりした。扉を吹っ飛ばすと見慣れた廊下に飛び出す。

この学園の地図は依頼をされたあと、頭に叩き込んでいる。

ここは図書館の倉庫だったのか。確かにここなら人も少ない。

時間にして夕方、数時間は昏睡していたのか。

「ほら、逃げないの」

いつの間にか近づいていたのかサキュバスは後ろから俺を抱きしめるように捕まえる。

「うおおお・・・!」

サキュバスの能力は魅了だ。1秒でもはやく突き飛ばさないと心まで完全に自由を奪われる。

理性を失う前に思い切りサキュバスを振り払った。

「すごい精神力ね。ちょっと舐めてたかも」

こんなところで戦闘は出来ない。本棚が邪魔で視界が開けない。

_____せめて教室の廊下まで逃げて、迎え撃つ。

魔力を足に集中させ、駆ける。

「・・・なら。わたしも・・・!」

背後から迫る一撃。サキュバスはいとも簡単に俺に追いつくと、蹴り飛ばす。ガラスを突き破り、校舎の運動場に吹き飛ばされた。

咄嗟に腕を魔力で強化し、ガラス片が刺さらないように顔を守る。

「あ・・・ぐっ!」

幸い傷はない。間に合わなければガラス片で酷いケガをしていただろう。

「手荒なことはしたくないんだけど、君の精は凄く貴重だから無理やりにでも奪わせてもらうわ」

痛みで怯んでる余裕はない。武器を・・・!

コバヤシは立ち上がると、詠唱する。

声が聞こえる。

「我を召喚せよ。あの魔物に我以外の武器は通用しない」

この声、あの時話しかけられた魔剣か・・・!

そうしたいところだが、召喚する為の詠唱に時間がかかり過ぎる。

「すこし手荒だけど大人しくしてもらうだけ。殺しはしないわ」

せめてあと一人いれば。しかし物理的に縛ることはできるのか。

その瞬間。

「いかずちよ、吠えよ。サンダーブレイク!」

轟音とともにサキュバスに稲光が直進する。

サキュバスは軽い足取りで稲光を避ける。かすった個所には僅かに火傷がのこったようだが一瞬で火傷の跡は消えた。

「まったく。コバヤシはホントに世話がかかるな」

「助かった。でもなんでこんな時間に?」

「エリス先生から行方不明だって聞いてね。キリエも君を探しているはずだ」

「あいつは偽物ってことか・・!なら容赦はしない」

サキュバスはこちらの話を黙って聞いていたが、突然笑い出した。

「あなたたち人間が、私に勝てるとおもうの?」

バカにするようにひとしきり笑うと、サキュバスは魔法陣を展開する。

「現れなさい。私の下僕たち」

空中に展開された魔法陣から、土気色の人間のようなものがドチャッと音を立てて召喚される。

「たすけて・・・たすけて・・・」

グール・・・とは違う。ぼろぼろの武器を装備したそのよくわからない人型の異形はこちらに助けを求めながら歩いてくる。

サキュバスは魂を奪うと肉体も何もかも自分の物にしてしまう。こいつらはサキュバスと交わった末路か。

「いかずちよ、吠えよ!」

薙ぎ払うように稲光が人間モドキを攻撃する。

普通なら致命傷な程の威力だが、彼らはどんなに痛くとも動きたくなくとも無理やり動かされていた。

「これは酷く悪趣味だ」

コバヤシはショートソードを召喚するとエンチャントを付与する。

このままだとこの人間モドキにキルトが殺される。さっきから何度もいかずちを放っているが体を破壊するレベルに攻撃しないとやつらは止まらない。

「ふっ・・・!」

コバヤシは駆ける。奴らの首を落とし、あるいは足を切り落としながら前進する。

キルトは魔力はそれなりにあるはずだが、ここで使い切ってしまったら困る。

滑り込むようにキルトに迫る人間モドキの首を落とす。

それにしても数が多い。10人もの人間モドキが二人に迫っていた。

「キルト、いったん逃げよう。この数はやばい」

「はあ・・・どうやって僕は逃げるんだい?」

囲まれた。俺一人なら逃げられるがキルトはそんなに早く動けない。








「あなたはいらないわ。コバヤシ君を手に入れる前に殺してあげる」



















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