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ウェポンサモナーとスラ子の冒険  作者: どれいく
コバヤシと言う冒険者~1章
20/115

マリーンの実力

詠唱の言葉っていろいろありますが、最初に考えた人ってすごいよね!

暗く、陰気な雰囲気が漂う地下通路。3人は階段を下っていく。

「灯せ」

マリーンの杖の先に光が灯る。ここはまるでカタコンベ・・・地下墓地のようだった。

静まり返った通路がどこまでも続く。

「父上の工房には僕もあまり入ったことはありません。気を付けて下さい」

階段もここで終わりのようだ。魔術の刻印の刻まれた扉の前でキルトは「ユル」と発音する。

変化、という意味だ。術式が解除され、扉が開く。

「・・・いくよ。何が出てくるかわからない。コバヤシ君も気を付けて」







「ようこそ、マリーン殿。我が工房に来るのは初めてかね?」

この工房は巨大な空洞だった。机の上には沢山の危険なアーティファクトが並び、牢屋のような部屋の中には拷問に使われるような道具も転がっている。そして、

「グルルル・・・」

並んだ檻の中には珍しい魔獣が入っていた。血の匂いだ。まだ、新しい。

青い炎に照らされたそれは、尾は蛇で体は肉食獣・・・ライオンに近い姿をしていた。

ゆうに4メートルは越えている。

「キルトよ。せっかく育てたお前を殺すのは惜しい。いまこちらに来れば許してやろう」

「父上、もうやめましょう」

言葉に決意を感じた。当主に逆らうということはつまり、勘当される覚悟がある。ということだ。

「覚悟の上か。立派になったものだ」

カツン!杖を突きライスは一言。

「解呪せよ」

ライスが放った簡単な詠唱で場のサイレスが解除される。

マリーンもそうだが、この男も魔術のレベルが違う。

「・・・わしのお気に入りにお前たちを処分させるとしよう。コカドリーユ、ゆけ」

ライスの声で檻が開き、魔獣はゆっくりと立ち上がった。おそらく従属させられている。

こちらは全員魔術師、普通なら到底勝てる相手ではない。

コカドリーユ、別名はコカトリス。魔獣バジリスクから派生したと言われる種だ。

_____こんな化け物も従属の魔術は従わせられるのか。

「術式展開。爛れおちよ、ディザーゥヴ!」

杖を構え強酸性の塊を打ち出す。しかしその瞬間、魔獣は視界から外れた。

・・・避けられた!?

魔獣を視界に捉えた時にはこちらに走ってきていた。恐怖はあったが怯んでいる余裕はない。

避けなければ、死ぬ。

魔獣は爪を振り上げる。

「うおっ!」

紙一重で転がるように避けた時、さっきまで自分のいた地面が大きく抉られるのをみた。

せめて武器を召喚できれば・・・・!

「コバヤシ君、僕は近距離での戦いは不得意だ。キルト君も魔獣と戦ったことなんてないだろう」

「だから、これを」

マリーンが「現れよ」と短く詠唱すると、魔力がカタチになり、白銀の刀身が現れた。

剣を放り、コバヤシはキャッチする。

「僕とキルト君でサポートする。死なないようにね」

「コバヤシ、僕も出来る限り手伝うよ。・・・死なないでくれ」








_____とはいえ。

あの時、魔獣と戦ったときは冒険者のパーティだった。メンバーの誰かが隙を作り、そして強烈な一撃を喰らわす。

常套手段だが、いまはそもそもその隙を作るのが難しい。迂闊に相手の領域に踏み込めば一撃でやられるだろう。

「・・・キルトよ。なぜ父を裏切った」

「父上、僕は魔術師にしては情を持ちすぎたのかもしれません。非人道な実験、魔術協会への買収・・・僕は看過出来ません」

キルトは術式を展開する。

「術式展開。汝を縛る鎖、トゥリザーツ」

魔獣の四方から紫色の魔力で作られた鎖を具現化する。魔獣の半身を縛り上げ、

「うおおおっ!」

コバヤシは魔力で膂力を強化し、渾身の力でのど元を貫いた。

出血し、苦痛のあまり暴れまわる。

「ほっほ。存外やるではないか、しかしその程度ではこの魔獣は倒れぬよ」

魔獣は鎖を引きちぎり、コバヤシはすぐに距離を少し置く。

「おい、マリーン何かとっておきとかないのか」

「あるにはあるけど詠唱に時間がかかるんだよね。それでもよければ!」

あいかわらず緊張感がないやつだ。

しかし、マリーンのとっておきに掛けるしかないか。

「術式展開。・・・万物の力の根源、星の息吹」

マリーンの足元に魔法陣が展開される。

「マリーン殿には邪魔させぬよ。いかずちよ、放て」

雷鳴が響き、轟音とともにいかずちが発射される。

「______!」

詠唱が早い、間に合わない・・・!

「同時に魔術を展開できないとでも?マリーンを舐めないことだね!」

「展開せよ!」

杖をカツン!と突くとマリーンを中心に魔力の結界が展開され、いかずちを弾く。

相殺しきれなかったエネルギーが周りに飛び散った。

「うわっ・・・!」

魔力の飛び散った残滓に当たりそうになる。

すごい威力だ。

「コバヤシ!魔獣に集中しろ!」

マリーンを心配する余裕はない。詠唱の時間を稼がなければ。

魔獣はこちらを見据えている。傷をつけられたのだ。

今にも飛び掛からんと隙を伺い、ギラギラと怒りに燃えた目を向けてきている。

「光よ集約せよ、対象をせん滅せよ」

マリーンの周りに光が集まり、杖の先に光の塊が出来ていく。

「マリーン、貴様・・・!」

「汝を縛る鎖、トゥリザーツ」

キルトはさらに詠唱を続けるライスを不意を突き、縛りあげる。

ライスの命令でコバヤシからマリーンに標的を変えると魔獣は疾走する。

「させるか!」

魔力を腕に込め。

「グアアアアアア」

腕をしならせて思い切り白銀の刃を放る。目を抉り、深く突き刺さる。

魔獣は痛みに怯み、足を止めた。

「ジャッジメント・レイ」

杖の先に集まった光の束がビームのように放出される。圧倒的な威力で魔獣を捉え、吹き飛ばす。

声を上げる間もなく、魔獣は壁に打ち付けられる。

まるで何十本も杭で貫かれたような跡だ。

勢いは収まらず貫通した光の塊は壁を大きく削る。砂煙をあげ、勢いが収まったときには工房の一部を破壊していた。

「これは・・・弁償物かな?」

ライスはこちらを睨んで言った。

「ふざけるな・・・ふざけるな!わしの何が悪い!」

すべてはラートルフ家の為、その繁栄の為にすべてをかける。それの何が悪いのかと呟く。

それは魔術師としては間違いではない。

「父上、僕が悪いのです。ただ僕が父上の息子にふさわしくなかっただけなのです」

キルトはただ謝り続けていた。







「コバヤシ君!おかげで助かったよ!」

魔術協会に不正の証拠と一緒にライスを引き渡す。マリーンは一安心しているようだった。話によるとライスは爵位を時期当主であるキルトに引継ぐらしい。ライスは爵位を失い、魔術協会に幽閉される。

この魔術師の名門同士の権力争いもようやくひと段落、というところだろう。

「コバヤシ君、依頼の報酬はギルドでもらっておいてくれたまえ」

「杖が・・・悪かったな。せっかく貸してくれたのに」

杖はあの騒動でダメになってしまった。折れてしまったのだ。

「気にしないでくれたまえ。そんなことより、武器召喚は・・・まだ使えないのかい?」

「わからない。やってみよう・・ってそういえば」

「なにかな?」

さっきウェポンサモナー・・・武器召喚を行った時、マリーンの手元から離れていたことを思い出す。

普通は召喚者が魔力を通し、維持しないと霧散するのだ。さっきは投げてこちらに渡していたような。

「なぜ手元から召喚した武器を離したのに武器が残っていたんだ?」

「具現化の才能の違いってやつだね。なにしろ僕は天才だからね!」

______具現化の練度の違いでそんなことができるのか。

もしかしたら魔剣を具現化出来ないのもそれが原因かもしれない。

「ああ。コバヤシ君が武器召喚を行えないのもそれが原因かもしれないか。いまが具現化の練度を上げる良いチャンスかもしれないね・・・よし」






「魔術の学校に短期間編入しよう!・・・もちろんスラ子ちゃんも一緒で構わないよ!」










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