動機
シャイターンとの戦いは拮抗していた。
以前の俺とは違い、魔剣の使い方をわきまえている。
魔力のブーストも段違いだ。
その分、リスクはあるが出し惜しみなどしていられない。
この魔剣は強さを強引に引き出せるが命を削る。
・・・そんなことは了承済みだ。
ゼパルの戦いの時にそんな葛藤は捨てている。
「ほう・・・初めてあった時よりも強くなっているな。何より、躊躇いがない」
「そうか」
魔王は「燃えよ」と直後に炎の塊を繰り出した。
「わっ!マナシールド!」
スラ子は咄嗟に魔力の障壁を作る。
炎は障壁に阻まれ、飛び散った。
「助かった。スラ子」
シャイターンが魔術の放った隙にコバヤシは斬りかかる。
「ふん!」
難なくシャイターンはそれを受け止め、
「・・・!」
つばぜり合いになる。
咄嗟にコバヤシは後ろに飛びのいた。
マトモに剣術で戦えば膂力だけで負ける可能性もある。
とはいえ、あまり時間をかけてはいられない。
(焦るな・・・!)
「溶かし尽くせ、痛みを与えよ・・・!ディザーゥヴ!」
コバヤシはシャイターンに硫酸の塊を放つ。
しかしそれは難なく魔力の壁で防がれてしまった。
しかしコバヤシの目的は時間稼ぎ。
マリーンを信じ、その時まで攻撃を続けるしかない。
「まったく、勇者パーティの面目が丸つぶれだね」
ブローは皮肉交じりに呟く。
先ほどからこちらはデビルアーマーに苦戦させられていた。
コバヤシの戦いは何かを狙っているようだった。
・・・一撃必殺。
隙を見つけ、一撃で倒すしか方法がないのかもしれない。
頼りないが、今は彼に任せるしかない。
どのくらいシャイターンと剣を打ち合っているのか、魔力を温存できない今そういう事は考えないようにしていた。
「貴様はコバヤシとか言ったな。何故、勇者でもないお前が命をかける?」
シャイターンは不意に質問を投げかけた。
・・・。
_____それは。
「この世界にはどこだって、動機があり、結果がある」
「だから、その質問の答えがまだわからないけれど、俺はそのために戦う」
シャイターンは馬事にするわけでもない、意外と真面目に答える。
「_____昔の話だ。俺は人間と結婚した。だが、人間が天使より上の階級になるのを気に入らないと俺の女を殺した」
「もしそれが貴様の言う結果ならば、俺は決して許さない」
昔話は終わりだ。とシャイターンは独り言のように剣を向ける。
「来い・・・!魔剣使い・・・!ケリをつけてやろう。この俺が・・・!」
その瞬間。
致命的な隙を「彼」に見せることになる。