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あなたはざまぁしたんじゃない。俺達にざまぁされたんだ

作者: 気候カナタ

さて。

突然だが俺こと結城 蓮は修羅場のど真ん中に立っていた。

修羅場も修羅場。

ど修羅場である。

いや、まぁ正確に言うとど真ん中ではなく女の方によっているわけなんだが・・・。


俺の右腕に自分の左腕を絡ませる黒髪ロングの女が目の前に立つ、ワイルド系イケメンに爆弾を落とした。


「わたしたち別れましょう」


その言葉を聞いた途端目の前の男が涙を流し始める。


「そんな!!なんで!!なんでなんだよ!!」


人気のない広場に男の悲痛な声が響く。

男は今にも崩れ落ちそうだ。

そんな彼に彼女はさらに追い打ちをかける。


「そんなの蓮くんのことを愛してるからに決まってるじゃない。ね!」


そういうと彼女は頬を少し赤く染めながら俺へと微笑みかける。

俺もそんな彼女に微笑み返す。

端から見れば仲の良い美男美女カップルに映るのだろうが実際はただの浮気相手である。

純粋のかけらもない。


「そんな顔だけみたいなやつのどこがいいんだよ!!」


「蓮くんを悪く言わないで!!蓮くんは優しいし、かっこいいし、運動神経もいいし頭だっていいの!!それに夜だって・・・・・」


「まさかヤったのか!?」


「そんなのあなたに関係ないでしょ!!」


夕暮れの光がふんわりと周りを照らす中、俺たちはこの場に似つかない生々しい会話をしていた。

ロマンチックムードもぶち壊しである。

周りを見てみろ。

まだこの広場に少しはいた人たちも俺たちを見るとドン引き顔でいなくなっていく。

ついでに俺に対する侮蔑のまなざしも追加で。

・・・・・解せぬ。


さてそろそろころあいか。

俺は隣の女に優しい声色で話す。


「舞ちゃん疲れたでしょ?ホテルに戻ってていいよ。彼とは俺が話を付けておくから」


「で、でも蓮くん・・・・」


「大丈夫。そんなに悲しい顔をしないで。舞ちゃんには笑ってる顔が似合ってる」


「蓮くん!!」


そんな彼女と俺は熱く口づけを交わす。

さすがに公衆の面前で濃厚なほうのキスはできない。

それはホテルに戻ってからだ。


「さぁ早く。俺もすぐに戻るから」


「うん!!蓮くん待ってるね!!愛してる!」


「俺もだよ」


その後彼女は俺に手を振りながら遠ざかって行った。

完全に姿が見えなくなってから俺は目のまえの親友に話しかける。


「はぁ。やっと終わった。ミッションコンプリート」


俺のその言葉を聞いたこの男は先ほどまでの涙が跡形もなく消えている。


「相変わらず蓮は女たらしだな・・・・」


「うるさいなぁ。俺の持って生まれたスペックを存分に行使して何が悪い」


「はぁ・・・・。それでこの後はどうするの?」


「ん?そんなのホテルに戻ってヤるだけだが?」


「そんなことわかってるわ!!この後だよ!!この状況の後!!」


俺の親友が怒りながら催促してくる。

なんだよ。

ちょっとボケてみただけなのに。

つれないやつ。


「いつも通り何回かヤって頃合いを見て捨てる」


「捨てるってお前なぁ」


「なんだよ。この作戦手伝ってやったじゃんか。そもそも俺がいないと成り立たなかったと思うんですけどぉ?」


「ぐっ!!その通りだな・・・。今回は俺からは何も言わない。でも気を付けろよ?お前いつ後ろから刺されてもおかしくないからな」


「ははは。そんなどこぞの誠みたいな結末は迎えないように気を付けるさ。さてそろそろ怪しまれるから戻るわ。それじゃまた後日」


「おう。ほんとに今回は感謝しかしてない。ありがとよ」


「気にすんな。親友のよしみだよ。じゃな」


俺はあの女が待つであろうホテルまで走った。





◇◇◇◇◇




俺は右腕の中で眠る黒髪の女の顔を覗いた。

ぷるっとした艶やかな唇から規則正しい寝息が漏れる。

さっきまでのあの激しさはいずこへ。


きっと彼女はさっきまでの行為を俺との愛の結晶とでも思っているんだろう。

実際そういう行為は愛し合う男女がすることであってその認識は間違っていない。


でも俺にとってはただの他人。

言っちゃ悪いがただの性欲処理のはけ口としか思えない。


彼女だけじゃない。

これまでも今と同じような状況を幾度となく造り上げてきた。

町で逆ナンされたらそのままお茶をしたりショッピングをしたりして、そのあとは流れでホテルに行く。

そして夜が明ける前に俺一人でチェックアウトする。

俺だってそのまま一緒に目を覚ましてお互いの顔を見て笑いあったりしたいとも思った。

でも俺を逆ナンしてきた女性の中に俺と本当の愛を育める人はいない。

俺の運命の人はいない。

どれだけ体の相性がよくても、どれだけ愛をささやいてもきっとそれは一夜限りの幻。

きっとこれからもずっと俺と本当の恋愛ができる人は見つからない。


俺は現実から目を背けるように瞳を閉じた。




◇◇◇◇◇




後日俺は小さいころからの親友、片桐 条からお礼を言いたいとのことでファミレスへと赴いたわけだが・・・・・。


「なんで彩音ちゃんまでいるわけ?」


俺は向かいに座る条とその横に座る茶髪ポニーテールの女子を見る。


「いやな、どうしてもついていくと聞かなかったんだ・・・」


「蓮さん迷惑でしたか・・・?」


「いや、大丈夫だようん」


そんな上目遣いで言われたら何も言えなくなってしまう。

他人から見ればわざとやっているように思われるかもしれないがきっと自然にやっているんだろう。

そういう女子だ。

この片桐 彩音は。


「とりあえずこの間はありがとう。助かったよ」


「うちのお兄ちゃんがまたもお世話になりました」


「いや、気にしなくていいよ。親友のためだしな。ただ条にはもう少し女を見る目を養ってもらわないと困るけどな」


「ほんとその通りです」


「お前らなぁ・・・・」


そもそもなんで俺がこの2人から感謝されているか。

事の発端は別れ話の日から一週間ほど遡る。






その日俺は一人暮らしをしているアパートでゲームをしていた。

もう少しでヒロインの1人を攻略する矢先のことだった。

いきなり玄関の開く音がしたと思ったら条が飛び込んできた。


「蓮ー!助けてくれぇ~!」


「なんだよ。どうした」


「・・・・・・・・・・」


「はぁ。どうせまた女関係だろ?お前女見る目ないからなぁ」


「違う!!舞ちゃんはいい子だった!!」


「過去形の時点で察しだわな。ほれ話してみろ」


それから条は泣きながら俺に話してくれた。

要約すると彼女に浮気されたということだった。


「はぁ。だからあの子はやめとけって言ったろ?ここらじゃビッチとして有名だからって」


「だって・・・・外見清楚ぽかったし・・・・」


「経験豊富な俺が教えておいてやる。ああいう清楚女子に限って性欲は強いんだ」


「そうなのか?」


「実際浮気されてんじゃねぇか。はぁ・・・。それで要件は?」


「別れるの手伝って。穏便に別れられるように」


「だろうと思った。いいよ。手伝ってやる。報酬はいつものな」


「運命の人になりそうな女子の紹介だろ?わかってる。それで今回はどういう作戦を?」


「そうだな。名付けて俺に依存大作戦」


我ながらネーミングセンスのかけらもない。


「して内容は?」


「そのまんま。とりあえずヤって俺に依存させる」


「意外と単純だな」


「ビッチ相手には有効的なんだなこれが」


「期間は?」


「・・・・・一週間だな。連絡したらいつでも飛んでこれるようにしとけよ?」


「了解」


それから俺は舞と三日程度で一気に距離を縮め俺に依存させていった。

方法は単純である。

甘い言葉を投げかけ、スキンシップを多くし、いつもそばにいるようにした。

夜はもちろんハッスルタイム。

そして条と別れるように持ち掛け、浮気相手とも交際を断ち切るようにお願いした。

浮気相手の連絡先などは俺の目のまえで削除してくれたし、条には話の機会を設けてくれた。


そして一番最初の別れ話の場面へと戻る。







「相変わらずスピーディーだよな。さすがというかなんというか」


「伊達にヤリ捨てしてるわけじゃないんだ。あ、別れたことは早めに広めてたほうがいいぞ。理由は性格が合わなかったとかの優しい感じので」


「理由はわかるがなんで早く?」


「俺が舞に別れたことを広めるように言っているからだ。俺に依存してる間に広めておいた方が後々面倒にならない。俺が捨てたってわかったら何しでかすかわからんからなあいつ」


「なるほどそういうことか.....ってすまん。電話」


条は呼び出し音が鳴る携帯を持って席を立った。

そしてその場に取り残される俺と彩音ちゃん。

なんか地味に気まずい・・・・・・・。


そんな空気だったが彩音ちゃんが意を決したかのように話しかけてくる。


「蓮さんって運命の女性を探してるんですか?」


「うん。恥ずかしながらね」


なんで俺がこんな子供じみた夢を大学生になっても掲げているのか。

それは俺の家庭環境にある。

俺がまだ小学1年生だったころ両親が離婚して俺は父親に引き取られた。

離婚の理由はいまだにはっきりとしていない。

でも当時俺が父親に尋ねたとき、返ってきた答えは

『私たちはお互いを愛せなくなってしまっただけさ』

だった。


このころからどうやったら結婚相手、もしくは恋人を永遠に愛せるのだろうと考えてきた。

それと同時にそんな相手が俺にもいるのだろうかと。


幸い俺は外見がかなり良かったらしく近づいてくる女は数えきれないほどだった。

ヤリ捨てする理由がまさにそれだ。

俺は数々の女性と関係を持ち、運命の相手を探している。

まだ見つかっていないのだが・・・・・。


俺は自分で自分が空しくなり窓から外の景色を眺めた。


そんな俺の耳に彩音ちゃんの声が入ってくる。


「あ、あの!」


「ん?どうかした?」


俺は彩音ちゃんへと目を向ける。

彼女は顔中を真っ赤に染めていた。

そして・・・・・・・


「そ、その・・・・。わたしじゃダメ、でしょうか・・・・」


「えと、何が?」








「・・・蓮さんの運命の相手、です・・・・・・」


「え?」





俺には今まで運命の相手と思える女性に会えなかった。

でももしかしたら、もしかすればこの子なら・・・・・・・。


ここからやっと俺の初めての本当の恋愛が始まるかもしれないのだった。











気晴らしに書いてみました。

反響あったら連載版書くかも?

よければ評価をお願いし申す。

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― 新着の感想 ―
[一言] 運命の女性を探すのにヤりまくるのはマイナスにしか成らんと思うけどな。 運命の女性がヤリマン・くそビッチならかまわんけども。
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