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玄関開けたら、異世界でした。  作者: 織原 深雪
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「それで、王都へは連絡したのよね?」


 ナサリーさんの問いかけに、ライナスさんは少し不服そうにしつつも答えた。


「あぁ、もちろん。長は母さんだし、きちんと報告しているよ」


 それを聞いて、ナサリーさんは少し安堵の表情を浮かべる。


「それを聞いて安心したわ。 蛇族は竜族に次ぐ番至上主義で、会ったばかりだと離したがらないだろうしと心配だったから」

 そんな種族なんですね! 知らなかったよ。

 だから、こんなにくっ付いて離れないのかな?


 私の疑問を顔から読んだであろうナサリーさんは、ゆっくりとこの世界のことを話して教えてくれた。


 サールーンは獣人の国で、王は代々竜族の一番強い者なのだという。

 今の王様はそろそろ引退するが、その王様の番も落ち人なのだという。

 種族の違う二人だが、いまでも大変仲睦まじいのだとか。

 種族が違っても、番は生涯唯一の相手なので結婚できるし、子もなせるものなのだとか。


 この国にも、落ち人同士で番って、繋がってきたごく少数の人族もいる。

 そんな相手が番であることも、普通らしい。

 極端な寿命の違いも、番として契りを交わせば長い方に寄せられるのだという。

 そして、獣人の方の血が濃いらしく大体獣人族の子として生まれるのだとか。

 種族が違う獣人同士だと、産まれるまでどちらか分からないこともあるという。


 ただ、だいたい幼少期は獣型で過ごし、少年期は半獣、大人になると人型になれるのだとか。


 リーリアちゃんも半獣になれるが、お客様が分からず驚いたら獣型になっていたと話してくれた。


 私からすると、不思議さが沢山な国だが、これがこの世界の、この国では当たり前なんだ。

 慣れていくしかないのである。



「さぁ、そろそろ帰ろうか? 挨拶も済んだしね」


 ずっと抱え込んでいたにも関わらず、早々と帰ろうというライナスさんに、私は少し抗議を込めた視線で見つめて言う。


「まだ、土竜族の都市に来たばかりです。もう少し、ここを見てから帰りたいです。自分一人では来れないので」


 私の言葉に、ライナスさんは一つため息をつくと仕方ないという顔をして言った。


「番のお願いは聞かないとね。でも、移動は一緒に、離れないこと。これが守れないなら無理」


 きっぱりと言い切るライナスさんの言葉に、つまり私は自分の脚で歩いて町を回れないことを悟った。

 歩きたい、歩かせてほしいのに……。


 私とライナスさんのやり取りを見ていたナサリーさんが、私を見て苦笑した。


「奈々実。あなたの世界だと抱き上げて移動なんてないのでしょう? でも、サールーンでは出会ったばかりの番のオスがメスを離さないのは普通なの。むしろ、良くここに連れてきてくれたと思うわ。本来なら自分のテリトリーで囲ってもおかしくないのよ」


 まさかの言葉に、私は二の句が継げない。


「だから、抱っこでの移動で町中を歩くのはかなりの譲歩なのよ。大変慣れないし、貴方の常識では非常識かもしれないけれど、ここでは大丈夫だから。受け入れてやってね」


 そんな説得の元、私は再びライナスさんの抱っこで町中を移動した。

 しかし、誰もそれを笑ったり突っ込んだり冷やかしたりしない。

 本当に、これが番ったばかりの獣人には当たり前なのだと、周囲の反応でさらに確信した。


「おめでとう、ライナスさん。番を大切にな!」


 などと声を掛けられ、温かく見守られているのだ。


 この状態は、おめでたいとでもいうように周りは嬉しそうだったりしているので、私もこの状態でもなんとか町を見て回ることが出来た。


 恥ずかしいとかは、早々に無くなった。

 気づけば数人は私みたいに抱っこで移動している男女のペアが居たからだ。


 これが普通となれば、なんとかなるものである。


 いや、ずっと恥ずかしいけれども、耐えていただけだからね!!

 

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