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玄関開けたら、異世界でした。  作者: 織原 深雪


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「だから、いちおうお隣さんの族長には挨拶に行こうと思う。 行きたくないし、見せたくないけれど」


 すっごい、嫌ですって顔に出ているけれど。

 ライナスさんはお隣の土竜族さんに挨拶に行かせてくれるらしい。


「王都に知らせるより前に、この近さで話していないと文句が出そうだからね……」


 そうでしょうね、目の前ですもん。

 渋々ながらも、この崖下の森へと行けることになった私は少し楽しみになった。


「じゃあ、行こうか」


 そんな掛け声とともにナチュラルにライナスさんは私を抱っこした。

 見た目が細めだというのに、私を片腕に乗せてしまっている。

 幼児抱っこ状態なのだが、安定感抜群です。


「これで行くの?」


 私の問いかけに、ん?と小首を傾げて見てくるライナスさん。

 美形のその角度は、ヤバいです! 重罪です!


「だって、奈々実はここ歩けないでしょう?」


 そうね、私に任せたら落下する未来しかないね……。


「お願いします……」



 ライナスさんの抱っこでの断崖絶壁の移動はスリリングだったとだけ、言っておきます。

 きっと帰りは大丈夫だと、そう思いたい……。


 降り立った、崖の下の森は自然にあふれていてとても心地よい空気が流れている。


 ライナスさんは迷いなく森の中を進み、そして森が少し開けた場所に、入り口が見えた。


 そう、土竜族の住居はやっぱり地下に掘った穴だった。

 でも、なんか入り口もしっかり作られていてゲームのダンジョンみたいな感じ。

 この下にはもしかしたらすごい地下都市が広がっていたりして!

 ちょっと楽しみになった私に気づいたらしいライナスさんが、ニコニコと楽しそうにそのまま突き進んでいった。


 想像よりも、温かみのある土の壁に囲まれているがしっかりと地下には都市が形成されていた。

 人々も、人型で歩いており、私とライナスさんを見つけるとにこやかに声をかけてくれて。

 和やかな世界が広がっていた。

 しかも、土の中。

 地下都市なのに明るいのだ。


 どうなっているのか、見回してみても仕組みは分からないけれど。

 いい空間だなと感じつつ、周囲を見ていた私はライナスさんの移動が止まって目的地に着いたことに気づいた。


 目の前には、大きくてシンプルなお家があった。

 そのお家のドアの前にはライナスさんのお母さんであるケイリーさんと同じくらいの世代の穏やかな美人さんがいた。


「よく来たね。 さぁ、おいで」


 玄関を開けて招き入れてくれた美人さんに、ライナスさんは頷いて私たちはそのお家に入る。

 中は落ち着いたシンプルな木目の家具が置かれた温かみのあるお家だった。


「私は土竜族の長。ナサリーだよ。ケイリーとは同世代になるかな」


 穏やかに微笑むナサリーさんはそう教えてくれた。



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