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「えぇ、王都に連れて行くの? 報告だけで良くない? この領地から出したくないよ、僕は」
いつの間にやら、ガッツリ抱き着いているライナスさんは私がここから移動することを嫌がっている。
「まぁ、そこはどうなるかは報告の返事が来てからよね。それまでは、ここでゆっくり過ごしたらいいわ」
ケイリーさんの言葉に、頷いて私はライナスさんを見上げた。
「ライナスさん。まずは、ここの領地について教えてください。わたしの名前は奈々実です」
私がようやく名前を口にすると、ライナスさんは嬉しそうに微笑んで名前を呼んだ。
「奈々実。僕が案内するよ。 この領地は、そこそこ広いから」
そんな形で、私はまず蛇族の領地を見ることになったのだった。
どうやら、私たちがいたのは洞窟のような場所だったらしい。
そこから出てまず目にしたのは……。
「ここ、断崖絶壁というやつでは?……」
目の前に広がるのは大きな森だけれど、それはここからとっても下っておりないといけない場所でした。
蛇って土の中とかに穴掘ってるイメージだったんですけれど……。
崖にある穴を家にしているんですか、そうですか……。
私一人ではとても出かけられそうにない。
だって、こんな絶壁。
私が歩いたら滑って落ちる未来しか見えないんだもん!!
悲しいかな、運動神経は間違いなく平凡以下なんだよね。
何もないところでも転ぶ特技の持ち主と言えば、分かってもらえるだろうか?
私の残念な仕様っぷりが!!
「ライナスさん、みなさんはここをどうやって降りているんでしょうか?」
そんな私の疑問に、ライナスさんは答えを見せてくれた。
半人、半蛇という不思議スタイルを!
つまり、下半身が蛇なのだ。
二足歩行じゃないスタイルでここを移動するんですね、なるほど!
って、やっぱりそれじゃあ私一人ではお出かけ無理じゃない!!
蛇族向けの住居は、人間には優しくないスタイルでした……。
まぁ、そんな気はしていたよ。
「ここは危ないから、外に出るときは僕と一緒にね。それ以外はなるべく家にいることをお勧めするよ。眺めはいいけれど、風も強いから」
そんな説明のさなかも、強く吹き付けてくる風にやや煽られ気味の私。
安全のためか、ライナスさんの下半身にしっかり巻き込まれていますが、こんな場所だと逆にありがたみしかないね。
密着万歳!! 心持ちがやけくそだけれど、密着になれるほかない環境のようです。
「ちなみに下の森は土竜族の領地なんだ。僕らと彼らはこの領土で共存しているんだよ」
なるほど。
ここは蛇族だけでなく、土竜族と一緒に共存している領地なんだね。