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玄関開けたら、異世界でした。  作者: 織原 深雪


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 そうして、蛇族領での暮らしにも慣れて、最近ではライナスさんのお家で料理やお菓子を作ることに目覚めた私は今日もキッチンでお菓子つくりの真っ最中。


 そんな、おいしくて甘い匂いが漂うライナスの家にケイリーさんが突撃してきた。


「奈々実! 今から王都に行くわよ」


 はつらつと元気そうに告げられて、奈々実と一緒に焼きあがるパウンドケーキを楽しみにしていたライナスは一気に不機嫌になる。


「なぜ、いまから王都へ?」


 ライナスは予測がついているであろうに、そんな言葉を口にするのでケイリーは盛大な溜息をこぼして言った。


「もちろん、竜王陛下への奈々実の謁見よ」


 落ち人は、必ず王都への報告義務があるのだと聞いていた。


 ケイリーさんは私をライナスさんが保護してすぐに伝えていたらしいが、竜王陛下は奥様が四人目のお子さんの出産を控えているとかで謁見がしばらく保留になっていたのだ。



 しかし、先日その出産も無事に済み、四人目のお子様は待望の女児でお姫様の誕生に王都は大変賑やかなのだという。


「まだ、姫様が生まれたばかりなのだからもう少し後でもいいんじゃない?」


 ライナスは大変気が進まなそうにいうが、そこに新たな人物が現れたのだ。


「おうおう、坊もすっかり大人になったはずだったよなぁ」


 にやりとした笑みを浮かべて現れたのは大きな体躯の美中年な男性だ。

 自分の親と同世代くらいの見た目の男性は二カッと笑うと言った。


「お、この子が番の落ち人か。俺は先代鳥族の長でハーバイトだ。王都までの輸送要員だよ」


 ワイルドな見た目の男性は鳥族の元族長さんだった。

 ケイリーさんが、彼は現在は族長を次世代に譲って羊族の番と羊族領で暮らしているのだという。


「エドアルドから要請が来たら、断れねぇからな。お嬢ちゃんをしっかり王都と蛇族領へ送迎してやってくれって」


 そんなわけで、私は焼きあがったパウンドケーキを手土産に竜族領であり王都である中央の島へと向かうことになったのだった。


 ハーバイトさんは、獣化したらかなり巨大な大鷲だった。

 しかも、めちゃめちゃ飛ぶのが早いので私はハーバイトさんがつかんでいる籠の中でおとなしくしていたのだった。


ジェットコースターなんて目じゃない、超高速の乗り物だった。


風もすごいし、その中でとぐろ巻いて守ってくれたライナスさんがいなかったら多分籠から落ちてたよね。


 番と離れるなんて、無理な蛇族のライナスさんはしっかりついてきてくれた。

 一人での謁見ではなさそうでほっとしている。


 そうして体感ではあっという間にハーバイトさんに連れられて竜族領である島へと到着したのだった。

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