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勇者は聖女の夢を見る  作者: 茲
1章 王宮スローライフ
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1、女王様、はしゃぎすぎ

 完全にラノベです。

 僕が王様…いや、魔王を倒し、国民達は喜びの渦に巻き込まれた。

「ゆーしゃ!ゆーしゃ!我らが正しきゆーしゃ!女王様!女王様!我らが麗しき女王様!」

……何か、魔お…じゃない、女王様の方が本気で、僕の方がぞんざいな感じがする…。き、気のせいだよね!うん。気にしない!

 ふと、知らぬ間に女王様が僕の隣に立っていた。…女王様、綺麗だなあ。女王様は白いレースやフリル等をふんだんに使ったベージュ色のドレスに、真珠のネックレスやイヤリングを身に付け、頭の上には大きな紫色の宝石がはまったティアラを載せている。肩の少し下まで下がる紫色のロングヘアーはポニーテールにまとめられ、前髪の両脇を三つ編みにしてピンクの花の飾りがあるピンで留められていた。その白い肌は、お化粧をしっかりしたからなのか、まるで真珠のように光っていた。女王様は僕の肩に手を乗せ、民衆に向かって手を振る。瞬間、民衆がワッと湧いた。

「ずいぶんおだてられているな。調子に乗るんじゃないぞ?」

女王様がにやにやと笑いながら僕を見つめる。

「いや、調子に乗るも何も、王女様の方がおだてられているんじゃ無いですか?」

「うむ?そうか?」

女王様が王城に集まった民衆を見回す。民衆は僕のことには見向きもせず、揃って女王様の事を見つめていた。しかもさっきから、掛け声から「我らが正しき勇者」が抜けている。これはもう確定だ。僕、泣きそう。

「特にそのようには見えないが…?」

「あなたの目は節穴ですか…?」

「うん?何か言ったか?」

「いえ、何でも」

改めてと、再び女王様は白い手袋をはめた手で民衆に手を振る。尚、その顔に浮かんでいる微笑みは魔王(仮)時代の闇が感じられる暗黒微笑ではなく、まさしく王女様の微笑みだった。ロイヤルスマイルである。民衆羨ましき。…もうなんていうか、僕、忘れられてない?ねえ、泣いていいというか軽くフライングしちゃってるんだけど?

 って言うか、となると暗黒微笑の方が作ってた?えっ、もしかして女王様って演技派…?そう考えると、魔王城(仮)の時のコウモリも、演出のために…?恐ろしい。恐ろしいぞ女王様。

「ああ、そう言えばな」

えっ、?!ももも、もしかして思考バレてない?!

「お前を家臣にしようと思うのだが」

「へっ…?」

えっ、今、女王様、何言った?えっ…?しかし僕は、直後にその言葉の意味を理解する。

「ももももったいなき御言葉?!というかっ、えっと、なななんで僕なんかを…?」

「…」

女王様は急に僕を可哀想なものを見る目で見た。その目は気のせいか、お前は変なことを言うのだなという言葉を僕に放っていた。…えっ、何?僕、何か変なこと言った…?言ってない…よねぇ…?

 女王様は口を開いた。

「…お前は、本来なら倒すはずの『魔王』と呼ばれた者の話を聞き、それがウソかもしれないのに、『王様』と呼ばれた者を倒した。悪者の言葉で、正義が上司に刃を向けた」

「えっ、あっ、はい。…いっ、いやいやいや?!僕は、女王様は本当に『女王様』だと思います!て言うか、信じてます。だって、あの時、女王様が本当の魔王は王様だって言ったとき、ウソだなんて、とても思えない顔をしていました」

女王様は悪者なんかじゃない。あの時の女王様のどことなく寂しそうな顔は、悪者が人を騙すために演技をする時の、もやもやしたものと危険なところに連れられそうな雰囲気が一切無かった。

 僕がそう言うと、女王様は少し驚いた顔をすると、呟いた。

「…ありがとう。本当、私はお前のそういうところに感謝してるんだ」

「はっ…はい」

ん?マジどゆこと?

「お前は馬鹿だからな。私みたいに男みたいな口調でも、差別なく普通に接してくれる」

ちょ、馬鹿って酷い。

 …あれ、待って、女王様、今差別って言った?

「…もしかして、女王様、差別されてたんですか?」

 女王様が黙る。

 少しの沈黙の後、女王様が口を開いた。

「…まあ、な……。子供の頃、お母さんやお父さんにもっとちゃんと女性らしくしなさいってよく言われてたのに、聞かなかったからだろうな…」女王様はそう言って苦笑いする。

「いや、女王様は充分女性らしいですよ。…それに、女性らしくとか男性らしくとか僕よく分かりませんし」

苦笑いした女王様に、僕はそう言って笑う。…ちょっと頼りないやつだなって思われちゃいそうだな。

 ちらりと見てみると、女王様は微笑んでいた。まあ、とにかく笑っているならいいよね。

「…ありがとう」

女王様は少し俯きながら何か呟くと、顔を上げ、いたずらっ子のような笑みを浮かべると、

「ま、そういう訳で、お前には側近になってもらう」

…と言った。

「ううぇええええ?!」

いっ、いや、ええっ?なんで急n…ってあっ………。お、オボエテマシタヨ?

「…お前、会話の流れで大体分かって…そのようすだとなさそうだな」

女王様が哀れなものを見るような目で僕を見つめる。ああっ、そんな目で見ないでッ!?

「…サーセン」

「まあ、そうなってくると、お前呼びはちょっとやめた方が良さそうだな。…名前は、なんて言うんだ?」

うわああお。女王様に名前呼びぃ。

「えっと、カシです。カシ…、カシ・タチバナです」

「…カシか……」

女王様は目を閉じて暫く考えていたが、目を開けると、ロイヤルスマイルをその顔に浮かべた。

「…いい名前だな」

NOOOOOOOOOッ!!!?!ヤバイ、僕の精神が心配になってきた。

「私の名前はアルラ。アルラ・ニナク・ロイェータ。気軽にアルラ──はさすがに無理だとしても、せめてアルラ様と呼んでくれ」

あわわ、女王様のお名前までぇ?!

 と、僕が悶絶しまくっていると、女王様が──

「皆の者!!!よく聞け!!!今日は、祝いにパーティーを開く!!!平民達もこの広場を好きに使っていい。貴族達は舞踏会だ!!!」

……女王様、はしゃぎすぎてない?

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