0、とある勇者の物語
あるところに、大変荒れた国がありました。そこは、王様が非常に裕福な暮らしをして、国民が非常に苦しい暮らしをする国でした。重税が常に課せられ、王様が気に入らなければ、すぐさま処刑。そんなとき、とあるニートの所に手紙が届けられます。
「こちらは、王からの手紙です」
彼は、なぜ自分に届けられたか分かりませんでした。
手紙を開くと、そこには魔王討伐の命令が。どうやら、最近魔王が現れたらしいのです。王様の命令は絶対ですから、彼は大急ぎで勇者として行
くことにしました。
魔王が治める地域に着いた勇者は、彼が思っていたものとは違うそこにびっくりします。こぎれいとした町並みに、豊かな緑。町の人に魔王についてたずねると、「とてもいい人だ」「しっかりしている」といい印象の声ばかり。いったいどういうことだろう?なにが起きているんだろう?彼は混乱してしまいます。しかし、王様に言われたからには行くしかありません。
勇者は、魔王城に着きました。そこは、コウモリが飛びかう不吉な場所でした。ゆっくり奥へと進んでいくと、やがて大きないすに座った魔王が現れます。魔王は言いました。
「勇者よ、よく聞け。今の王様は、ほんとうは魔王だ」
「ええっ?!」
勇者は、王様のことを思いうかべました。あの王様なら、ありえます。そして、魔王は続けます。
「私は、お前に王様を倒してほしい」
勇者はそれを聞き、答えます。
「…分かりました。僕にできるのなら、やります」
「では、まずは鍛えなければな」
そこから、勇者の特訓が始まるのです。魔王は勇者に「なんでも切れる剣」を授け、勇者は体を鍛えていきます。勇者は寝るときも剣をそばにおき、魔王のもとで三日間ほど特訓をしました。
十分に力をつけると、勇者は王様のもとへ帰っていき、王様を倒しにいきます。
「何でも切れるのだったら、王様だって切れるはず!」
彼はそう言い、王様に立ち向かいます。しかし、彼は逆に王様に追われるはめになってしまいました。
そこで、勇者は森のなかに駆け込みます。王様が彼を追ってきました。かなり怒っているみたいです。ものすごい勢いで森に入っていきました。勇者はふと思いつき、走るのをやめました。そして、後ろにあった大きな木を切り倒しました!王様は木に押しつぶされてしまいます。
こうして、勇者は見事に魔王を倒したのでした。 おしまい
──絵本『ニナク国者物語』より