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2. 玉遊び

 部屋の中で男女の声が絡み合う。

 少女の口からは苦しげな喘ぎ声がもれ、その度に器具がきしむ音が響く。

 

「今日はここまでだ。その苦しみがやがて気持ちよくなっていく。せいぜいはげむことだな」

 

「……はい、ありがとうございました」

 

 シアは床に仰向けになったまま、息も絶え絶えに声を絞り出す。

 露出した肌に汗の玉がうかび、滑らかな肌の上を伝い落ちていく。


「以前はすぐに息切れしていたが、最近ではオレの調子に合わせられるまでになったようだな。つぎはもっと激しくしてやろう」


 男は獰猛な笑みを浮かべながら、シアを置き去りに部屋をでていった。

 

 ようやく体を起こせるまで回復したシアは、ドアノブにしがみつくように扉を開けた。

 その先で男の前に立ちはだかり、男に抗議する姉の姿を見つけた。

 

「どうしてシアばっかりひどいことするの!」

 

「貴様には関係のないことだ。おまえにはおまえの仕事をいいつけたはずだ」

 

 まるで取り合おうとしない男に、リアは業をにやしたように地団駄を踏む。

 

「だったら、シアとあたしの仕事を交換すればいいじゃない。つぎはその……あたしが……あんたの相手してあげるわよ……」

 

 自分の言っている意味を理解しているのか、耳まで羞恥の色で染まっていた。

 

「おまえではだめだ。ようやく仕上がってきたのだからな。今、シアを休ませるわけにはいかない。それにどちらにするのか、それを決めるのは主人であるオレだ」

 

 男の言葉にだまりこむリア。今、この館の中で誰が最上位なのかを思い出し悔しさでうつむく。

 男がいなくなり一人残されたリアにシアが声をかけた。

 

「おねえちゃん、わたしだったら……大丈夫ですから……。ご主人様は厳しい方ですが、本当は優しい方ですよ。ケガをしないようにしっかり見てくれていますから」


「そんなの、長く苦しめるために決まっているじゃない……。だまされちゃだめよ」

 

 シアが苦しみのあまりそう思いこもうとしているのだと、リアは心の内に男への憎しみをためこんでいく。

 しかし、続く妹からの言葉でそんな感情は吹き飛んだ。

 

「一度やっているところを見れば、おねえちゃんにもわかるはずです」

 

「えっ!? み、見てほしい……だなんて……」 

 

 予想外の妹からの提案に姉の思考は混乱の渦に巻き込まれる。想像した肌色の光景が膨らみ、リアの頭の中を埋め尽くしていく。

 

「いろんな道具があって、使い方もようやく覚えたところです。しっていますか? 玉を使った方法とかもあるんですよ」

 

「た、玉ぁ!?」

 

 男が苦手で社交会でもまともに話すこともできなかった妹の口から出てきた言葉に、リアは石になる。

 

「最近は少し、えっと、気持ちいいかもなんて思うことがあります」

 

 顔を赤らめながら恥ずかしそうにつぶやく妹をみて、この子はもう変わってしまったのだと、リアの心は砂になって風にさらわれていった。


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