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3.保健室からの先輩


 落ち着けよ? なんて言われたのは母以外では、あまね先輩だけだったりする。どれだけぶつかってるんだって話になるけれど、初めてぶつかってしまったあの日からは特に何も起きてない。


「……香音かのんあんた、わざとぶつかってるんじゃないでしょ?」

「なわけないじゃん! や、だってさ~人が避ける方に来るのが悪いのであって、わたし悪くないよね? クミだってその辺の人となることあるよね? 避けたらそこに来られていつまでも通れない現象……」

「そりゃあ、あるけどさ。香音みたく衝突はしないし、しつこくないぞ」

「しつこくないし! 進みたいだけであって悪気はないよ」

「気を付けなよ? 狙ってるわけでもないのに、周先輩にぶつかって気を惹こうとしてるってウワサになりつつあるんだし」

「それはひどいね……」

「ヒドイのはお前だ!」


 なんて非友達思いな奴め。わざとなわけがないってのに。朝からこんな話してるとそれだけで気が滅入る。そうなると、やはりというか気が逸れやすいというべきか、バレーの体育で突き指ですよ?


「保健室行ってこーい! もちろん、ゆっくりね」

「突き指だけど、慌てたって仕方ないしそりゃそうでしょ。んじゃ、行ってきます~」


 全く、どいつもこいつもわたしを慌て者と認めてるし、失礼な連中め! そうは言っても、さっさと保健室に行って絆創膏をもらいたいわけです。それだけのことなのにそこそこ距離があるから、そのせいで早歩きをしてしまってるわけであって、慌ててなんかいないわけです。


 そうして誰ともぶつからずに保健室にたどり着いたら、中から誰かが出てきた。


「あっ!」


 思わず声を張り上げてしまったけれど、先輩は淡々とした反応だった。まぁそうだよね、知り合いでもないし。ぶつかっただけの関係ですよ。


「ん? あぁ、1年の……保健室に来る用事だった?」

「絆創膏を」

「突き指か。ちょっと、そこで大人しく待っててくれる?」

「あ、はい」


 待つだけなら大人しいもんですよ。その場で落ち着けないとかそれは素直にやばいでしょ。


「……ん、じっとして」

「え、あ……ど、どうもです」


 言葉要らずで、先輩がわたしの指に絆創膏を貼ってくれた。これは意外過ぎる。やっぱり優しい人かも。


「学年も校舎も違うのに、よく会うね? 名前は?」

「えと、京野香音きょうのかのんです」

「香音か。俺、2年の……って知ってるか。立蔵周たちくらあまね。まぁ覚えなくてもいいけど、誰かに何か言われたら、あまね先輩のせいって言っとけばいいよ。それじゃ、俺は行くよ。走るなよ? 後輩」

「走りません!」


 なるほど。モテるかもしれない。優しいってところがいいよね。それにしてもよく会う。狙ってないのにね。

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