表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/61

ラトの慰め

今回は少し過激な描写がございます。(エロの方で)



「びっくりしたよ、全身びしょ濡れで尋ねてくるんだもんね」

「ごめん……」

「良いんだよ……何かあったんだろ?」

「うん……」


 どうやってここまで来たかについては語ることなどない。だって覚えていやしないのだから。

 それでも、僕は無意識のうちに自身の目的を果たす為、ラトを頼ってきたのだろう。


「まあ聞きはしないけどね……とりあえず服を着替えなよ、貸してやるからさ」


 ラトは鞄からタオルをとり出し、僕に渡してくる。


「私は水を貰ってくるから、服は脱いどきなよ」


 それだけを告げて、ラトは部屋から出ていく。


「……脱ごう……」


 僕は自身の服に手をかけ、ひと思いにめくり上げるが、体のラインが分かるほどに肌へと張り付く布のせいで、脱ぎづらくて仕方がない。


 今日はレアンの町でカータが選んでくれた、黒い布地の上下の下着をつけていた。

 これを見ると、先程のカータの顔が思い浮かび、目から雫がこぼれそうになる。


 ひと思いに全部脱ぎ捨て、見えないように服で隠す。

 自分でこの道を選んでおいて、まだ未練があるのか……。

 優柔不断な自分に、本当に嫌気が差す。


「お待たせ……って、なんか意外だね。レナには、もう少し恥じらいってモノがあると思っていたよ」


 僕の体を楽しそうに見つめ、ラトはそう告げた。

 まあ、確かに少し気恥ずかしいが……それ以上に今は、気落ちしているようだ。


「そう……かな……?」

「……相当重症だね」


 一つため息を吐き、ラトは呆れながらそう言った。

 持ってきた桶を床に置き、ラトは魔法を使う。

 どうやら火の魔法で、水をお湯に変えるようだ。


「……ラトは火の魔法が得意なの?」

「ん? ああ、この髪は一応火の魔術適性の天職相(コーリング)でね……それと、剣術も混じってるから、あたしの髪も目も、他の(そう)を持つ人間より色が濃いんだ。まあよく綺麗って言われるし、かなり気に入ってるよ」


 確かに綺麗だ……まるで、カータと同じくらい……。


「どうしたんだい……? 今にも泣きそうな顔してるよ?」

「……! ごめん……別に何でもないんだ」


 僕は髪が張り付いた顔を腕で拭い、力なく微笑む。


「……今のあんたはほっとけないね……ほら、後ろ向きなよ、あたしが背中拭いてやるからさ」

「……うん、ありがとう……」


 ためらいは一瞬だけ浮かび上がり、すぐ奥底へと沈んでしまった。

 おそらく、今は人とのふれあいを欲しているのだと思う。


「それにしても……きれいな肌してるね、惚れ惚れするくらいに……」


 ラトは、ついっと僕の背中を指で伝い、僕の体がそれに反応してびくんと跳ねる。


「んっ……! ラ、ラト……くすぐったいよ……」

「可愛らしい反応するじゃないか……」


 僕の肩に頭をのせ、ラトは僕の耳元で囁く。


「随分と……感度がいいんだね……? 誰かにでも仕込まれたのかい……?」

「ラ、ラト……んぅ……耳元は……だめぇ……!」


 ラトの少しハスキーな声が、僕の耳から入り、頭の中を侵略していくような錯覚を覚える。


「……もしかして……あのセラ嬢ちゃんと、よくこういうことをやってたのかい……?」

「……んっ……そんなこと――!」


 僕の言葉はそこで止まる。

 ゴーラから助け出した後の、あの甘美で淫靡な逢瀬を思い出したからだ。


「……やっぱり、気持ちいいコト……ヤッてたのかい……?」


 言葉と共に、再度僕の背中を指でなぞり、もう片方の手が、僕の前にある膨らみに触れる。


「ぅんうっ……っくぅ……!」


 体が自分のモノではないと感じるほど、激しく跳ね上がる。


「……ん? どうだい……? セラ嬢ちゃんのと比べて……さ……」


 耳元でささやく声は、更に僕の頭を満たし、その上彼女の舌が、僕の耳を直接侵食してくる。


『ちゅるっぴちゅっちゃちゅっ』

「んんっんうぅ、ラトぉ……んぁっんんぅぅんっ、やめぅっ……!」


 その水音が、僕の体の神経を全て耳へと集める。

 跳ね回りそうな体をラトが全身でガッチリと固定し、僕に逃げ場を与えてくれない。

 僕の体がおかしくなっていく……まるで、ラトに作りかえられていくかのように。


「ほら……レナ……答えてよ……?『ちゅっぴっちゃちゅぴちゅるっちゅぷ』セラ嬢ちゃんと、どっちがイイんだい……?」


 ラトの意地の悪い質問と、神経を直接舐められるかのような、彼女の舌使いが、僕を抗えない快楽の底へと(いざな)う。

 そして何より――


「今は……あの子(セラ)の名前……聞きたく、ないよぉ……!」


 僕の感情も――この快楽で――今は全てを忘れたいと訴えかけているのだ。


「……! レナ……あんたは天然なのかねぇ……? こういうときの相手の興奮のさせ方でも知ってるのかい……!」

「えっ? ……ん!?」


 僕の体が力強く押され、近くにあったベッドへあおむけに押し倒される。


「レナ……あんたが悪いんだからね? 可愛い声であたしの心を煽るような真似するんだからさ……」


 ラトは太股辺りにのしかかり、汗ばんでいるのか、その温かくも湿ったような感触を僕になすりつける。

 野生の獣のようなラトの眼光で、僕に少しだけ冷静さが舞い戻ってくる。


「あ、あの……! ラトにはガイさんが……! それに僕達、女同士だし……!」

「……ん? あ、ああガイは……別にいいのさ、どうせ付き合ってるわけじゃない……一夜だけの関係(ワンナイトラブ)ってやつだよ。それに……あたしはどっちもイケるクチなのさ……!」


 ラトの猛獣のような瞳と、口角のみを上げた獰猛な笑みに、僕の体は金縛りにあったように動かなくなる。

 ラトは片手のみで僕の手を拘束し、僕のお腹の辺りに顔を近づけ、舌でへその辺りをなぞる。


「んぅんっ!」

「面白いほどいい反応してくれるからさ……『ぴちゅぺちゅぅっ』んっ……これで興奮するなっていう方が無理だよ……?」


 ラトの舌が――お腹から胸へ、そして頂の周囲を念入りに這わせ、頂を征服し、首へと吸い付き、肩をあまがみし、脇に息を吹きかけ――まるで、ナメクジのように体中を這いまわり、僕の体を蹂躙していく。


 そして、舌が動き回るたびに僕の体は、震え、跳ね、潤み、声を出し、熱を持ち、力が抜け、溺れそうになり、墜ちそうになり、受け入れそうになり、深く浅く快感を覚えていく。


「どうだい……?『ぷぴちゅぷぴっちゅ』もうあたし以外を見ないでいいんだよ……?」

「ふぁ……はぁ……ふぅぁ……ふはぁ……」


 僕は激しい運動をした後のように、荒く熱っぽい息を吐き、眠気のあまり溶けてしまいそうになっているように、瞳はトロンとしている。

 ラトはそんな僕を見て体を起こし、僕の顎を掴み、固定させる。


「いいかい……もらうよ……?」


 僕は体を動かす気力も失い、ラトの顔が近づいてくるのをただ黙って見ていた。


「……っ!」


 唇まで、後、数ミリメートルというところでラトの動きが止まる。

 僕の目から流れる一筋の光……それが彼女を押しとどめたのだ。


「……うーん……流石に無理矢理は……あたしもイヤだねぇ」


 ラトは僕から体を離し、いつものような快活な笑みを僕へ向ける。


「……ごめん」

「はは……謝るんじゃないよ。むしろ謝るのはこっちだよ……悪かったね」

「ううん、僕がはっきり断らなかったのが悪いんだよ……」


 大体、女同士だとセラ達の為にならないと思ったのも、パーティから外れた要因の一つだったのに、ラトとそういう関係になったら本末転倒だよね……。


「それでさ……今日はラトに、一つお願いしたいことがあって来たんだ……」

「……え? なんだい、改まって……」


 ラトは僕の言葉に真剣さを感じたのか、居住まいを正し、真面目な顔つきになる。


「……その、ラト言ってたよね? ロビアン領主の家の鏡のこと……」

「あ、ああ……そういえば、森の中で話したかね。真実を映す鏡のことだよね?」

「うん……。それでさ……僕にその鏡を見ることってできるかな?」


 僕の言葉を聞いて、ラトは少し考え込む。


「……難しい話だね……。確か見るだけでも、金貨百枚は必要だって話だしね……」


 やっぱり、それだけ凄い効果があれば、利用しようっていう人間がいるよね……それをタダで開放は流石にしないか……。


「それにしても……レナ、どうしてそんなモノを見たがるのさ?」

「……それは……」


 言っていいのだろうか……。

 信じてくれるのだろうか……。

 そういった不安が、どうしても僕の口を堅くする。


「内容次第では……あたしが協力してもいいよ」

「えっ?」

「別に見る方法がないわけじゃないんだよ……。ただ、少し危ない橋を渡らなきゃいけないけどね……どうする?」


 僕の事情にラトを巻き込むのは忍びない。

 だけど、ここで諦めれば……僕がセラ達にあんなことをした意味すら失ってしまう。

 悩んでいる僕に気づいたのか、ラトは優しい声で僕に告げる。


「あたしのことなら、気にしなくていいさ……その代わり、きちんと事情を教えてくれれば……だけどね」


 そうか……結局は打ち明けるか、打ち明けないかってことか……。


「……わかったよ。信じてもらえるかは分からないけど、ラトに教えるよ。だから……お願いします。僕と一緒に危ない橋を……渡って下さい……!」


 僕はベッドに座ったまま深々と頭を下げる。


「……いいよ、そんなに改まらなくても。あたしはレナが、どっちの胸の方がイイのかも知ってるんだからさ?」

「そ、それは、忘れてよ!」


 ふふふ……と笑いながら、ラトは僕の隣に座る。


「それじゃあ、教えてもらおうかね……!」






「レナが本当は、男……ねえ」


 僕の顔をラトはマジマジと眺める。


「信じられない?」

「……いや、信じられるね。最初に会ったときに行ったと思うけど、レナの視線は男のそれだったからさ。今はそうでもないけど……」

「そっか……ラトは信じてくれるんだね……」


「ん? 当たり前だろ。本当のこと(しんじつ)っていうのは、最初から疑ってるやつには分からないモノさ」


 セラは信じてくれなかったからね……まあ、あのときは出会ってすぐだったからしょうがないけどさ……。


「それで……それ以外に隠していることってないよね?」

「……うん、僕が男ってこと以外は特に何も……」


 流石に勇者のことは伏せておこう。

 その内バレる可能性はあるが、わざわざ教えるようなことでもないだろう。


「……そうかい……」


 ラトは何故か一瞬悲しそうな顔をしたが、僕がそれに言及する前に、彼女はいつもの人懐っこい笑みをうかべる。


「よし……! それじゃあ、作戦を教えるとするかね……」


 気のせい、だったのかな……?

 気を取り直し、僕もラトの笑顔に応える。


「うん、どうやって鏡があるところまで行くの?」

「……実にシンプルな話さ。今あの鏡は山賊に狙われている……つまり、警備の人出が必要ってことさ」


「それって……僕達が警備として、あの鏡を守るってこと?」

「そうさ、確実に鏡に近付くことができる手だよ」

「……でもさ、それってそんなに危ないことかな?」


 鏡の警備は、確かに山賊と戦うことになる可能性はあるが、所詮人の集団。ドラゴンと戦えということでもないし、数さえ注意すれば問題なく対処できそうだ。


「危ない橋っていうのはね……領主側の問題さ」

「領主側?」

「ああ、領主が警備に抜擢する条件……それは、もし守るべき鏡が盗まれた場合、警備の者を奴隷に落とすっていう契約を強制的に交わさせるのさ」

「そんな不条理な……!」

「言いたいことは分かるさ……でもね、給料自体はかなり高額だし、わざわざ領主の館に、危険を冒してまで忍び込もうってやつはいないんだよ」


 なるほど、それは確かに危ない橋だ……。

 もし失敗すれば僕は奴隷に……なんか、セラみたいだ……。


「あんたがこの話を受ける気なら、あたしが話を通してくるよ。一応知り合いに伝手があるんだ」


……考えるまでもない。

 僕はセラ達を傷つけてまで、ここに来たんだ。

 ここで男に戻れなきゃ、全てが無駄になってしまう。


 最後のセラとカータの幻を思い浮かべ、僕の胸が軋む。

 今頃は……きっとリリアンが元気づけて、僕のことなんて忘れようとしてくれているはずだ……きっとこれで良かったんだよ……。


「……受けるよ、僕は必ず男に戻る……戻って見せる!」

「……そうかい、あたしはレナが男に戻っても、戻らなくてもレナの味方でいるよ……言ってくれれば、男に戻った後は、さっきの続きをしても良いよ?」


 僕の肩を抱き、ラトはいたずらっぽく笑う。


「な、何を言ってるの……!」


 そんな彼女の温かさに、僕はどぎまぎしてしまう。


「やっぱりレナはそうでなくちゃね。からかい甲斐がないと面白くないからさ」

「……僕で遊ばないでよ……!」


 でも僕は彼女のことをありがたく思っている。

 彼女のおかげで、色々と落ち込んでいた感情(モノ)を、少しだけ吐き出せたようだ。


「あたしはレナが私を裏切らなければ……絶対に味方でいるよ」

「ラト……うん、僕も味方だよ」


……僕はラトに心の中で感謝し、言葉に出すことはなかった。




 でも、このときに真実を口にしていれば……もしかしたら、この先の僕の運命は変わっていたのかもしれない……。

今回の投稿でストックが底をつきました。

これからの投稿は更に不定期になると思います。


活動報告でも書かせていただいたので、理由は詳しくは申しませんが、これからも応援いただければ幸いでございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ