お酒の後は夢の跡
ラトと一緒にお酒を飲んだレナは、愚痴を聞いてもらい、ラトからアドバイスを受けて部屋へと戻る。
今回、若干怪しい描写があります。(直接的ではありませんが……)
今日のは少し短いです。
なので、明日も投稿します!(おそらく明後日も……)
部屋に戻ると、ご飯を食べにいく前には三つあったはずのベッドが、何故か一つのキングサイズのベッドになっている。
どうやら、僕が戻ってくるまでの間にくっつけたようだ。
「お姉様、待ってたわよ……」
「……うっふん……」
そこにはスケスケの、いわゆるネグリジェを着た二人の天使、もしくは小悪魔がいた。
何やってるの?
カータは胸に何らかの詰め物をしているようで、胸部が異様に膨れ上がっている。
あまりにも歪で不自然なそれは、もはや胸部装甲と言っても過言ではないのだろうか。
「二人とも、ちゃんと服を……」
「別に、良いじゃない女同士だもの」
「……うっふん……もう、胸なしとは、言わせない……」
二人の行動を諌めようと声をかけるが、聞く耳を持ってはいないようだ。
カータ……僕はありのままの君が良いんだよ……?
「……分かったよ、僕だけお酒飲んできたし、今日は二人に付き合うことにするよ」
「お姉様、今突き合うって言ったわよね?!」
それは意味が違う!
最近セラが暴走気味な件について、一度ゆっくり話し合うべきなのかな……。
心でため息を吐きながらも、僕はマントを外す。
「はいはい……そういう冗談は良いから……」
「もう……! 冗談じゃないのにぃ……」
嬉しそうに拗ねているセラを微笑ましく思いながらも、カータに視線を移す。
「……うっふん……」
「カータ、その詰め物は外しなさい」
「……分かった……」
意外にもすんなりと、カータは聞き分けてくれた。
「……やっぱり、重くて、動きにくい……。……大きな胸は、ただの脂肪の塊……。……つまり、セラ達は脂肪の塊、QED……」
「誰が脂肪の塊よ!」
二人はよく飽きもせずに喧嘩するなぁ……。
まあ、仲が良い証拠か……。
「セラ、静かにしないと一緒に寝ないよ。カータもそんなこと言っちゃいけません」
「……「ごめんなさい……」」
シュンとした二人に微笑みかけ、頭を撫でる。
セラは嬉しそうな、カータは気持ちよさそうな表情で僕の手を受け入れた。
「さあ、寝ようか」
僕が手を離すと、二人は名残惜しそうな表情で僕を見上げる。
その姿は飼い主に構って欲しそうな、犬や猫のようだった。
「ふふ……」
そんな二人を可愛く思い、僕が思わずクスリと笑うと、セラ達は揃って小首を傾げる。
「どうしたの、お姉様?」
「ふふふ……何でもないよ」
このままでは二人の可愛さに、頬が緩みっぱなしになりそうなので、僕は話を変えることにする。
「それで……僕はどこに寝ればいいの?」
「……「もちろん、私の隣」……」
はいはい、真ん中ね。
僕はベッドの上を這いつくばり、所定の位置へと辿り着き身を投げ出す。
その後で二人は僕の隣に寄り添う。セラが右、カータが左だ。
「おやすみ、お姉様……」
「……お姉ちゃん、おやすみ……」
二人は僕の手を握りながら目をつぶる。
「おやすみ、二人とも……」
僕は目をつぶり、二人の手を握り返した。
「こんな日々が……ずっと続きますように」と願いながら__
その日、僕は悪夢を見た。
体の周りを、ヌメヌメとした軟体生物に散々に這いまわられる夢だ。
気持ち悪いのに、妙に変なところを重点的に責め立てられ、くすぐったいような、せつないような不思議な気持ちにさせられた。
ハッとして目を覚ますと、既に空は白み始め、早朝と言える時間になっていた。
二人はまだ眠っており、下着をはだけさせ、あられもない格好になっている。
そんな二人を見て、昨日は我慢できていたのに、今日になって異常にある衝動が芽生える。
僕はそんなに欲求不満だったのかな?
そんな衝動を振りきるように頭を振る。
変な夢を見たせいか、全身がベタベタと寝汗まみれになっているし、二人が起きる前に体でも拭いておこう。
そうすれば、少しはさっぱりするかな。
桶を用意し、服を脱ぎ、魔法で一気にお湯を張る。
最近【勇者の恩恵】のおかげで、僕も実用的な魔法を使えるようになった。
もちろん、魔法はセラと《才能共有》しているから使えるのだが、元来セラは水魔術を少々苦手にしていた。
前まで彼女は水を沸かすことはできたが、お湯を直接つくり出すことはできなかったのだ。
だが今は、ついさっき僕がしたように、セラもできるようになっている。
それは何故か?
答えはカータが水属性の適性が高かったからだ。
【勇者の恩恵】の能力の一つ《才能共有》は、パーティ内の一人一人が持つ才能を、互いに共有できる能力だ。
その力を使えば、互いの足りないところを補い合いつつ、より強い力を使用できるようになる。
だが、今カータが魔法を使えるのかといえば、決してそうではない。
魔法は使用法を習って、練習さえすれば誰でも扱えるが、逆に、その使用方法を知らなければ使えないモノだ。
二人には【勇者の恩恵】のことは伝えていない。
つまりカータは、魔法が使えるようになっているということを知らないし、当然練習もしていないので使えるはずもない。
それに、セラは魔法の知識があるので、水魔法の才能を持て余すことはなかったが、カータは違う。
魔法は使用法が分かっていても、巧く使えなければ、魔力切れを起こしたり、暴発したりと最悪自滅することもある。
使い方の分からない道具が役に立たないのと同じことだ。
僕は勇者として、一通りのことは勉強してたから、なんとか使えるんだけど……。
どちらにしても【勇者の恩恵】のことを話せないと、どうしようもないからね。
ちなみに、セラはいきなり魔法が強力になったことについて「これは……愛の力ね!」と幸せそうに勘違いしてくれていた。
タオルをお湯に浸し、絞り上げ、鏡の前に移動し、体を確認しながら拭き始める。
ん? なんか虫さされみたいなのが、体の至る所にあるんだけど?
なにか悪い虫でもいたのかな?
多分、朝に見た悪夢はこの悪い虫のせいだな。
僕は小さな生物に憤りを感じながら、二人が起きる前までに終わらせようと、作業に没頭することにした。
レナは何に吸われたのでしょうか……?(ヒントは、カタカナで書くと二文字です)
面白いと思って下さった方は、御手数ですが__ブックマーク、評価、感想、レビューなどしていただけると、とっても幸せになります!(もちろん私が……)




