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決戦、コルウェイの森 ――意趣返し――

魔族に蹂躙され、二人を守れず、身も心もボロボロにされるレナ。

そんな中、魔族が二人を傷つけるべく魔法を放って……。


今日から、一話辺りの文字数を増やす、もしくは一日につき複数投稿し、なるべく5000文字前後(なるべく越えるようにする)になるように調整したいと思います。


その影響で、投稿ペースが維持できなくなる可能性があります。

ですが、拙作を見ていただけるように努力していきますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

 おい、また来たのか?

 ああ、久しぶり。

 もう、時間を戻すような、エネルギーの余裕はねえぞ?

 どうにか、ならないかな?

 手はあるけどなぁ……もう少し、休んでおくつもりだったのに……。

 僕ばっかり働いているから……。


 これ、お前の体だし。

 宿代だと思ってさ……。

 別に俺が居たくて居る訳じゃないし……。

 それでも……。

 前回聞き飽きたし、もうそれは良いよ……!

 じゃあ、やってよ。

 

 ここに来たのまだ二回目なのに……随分厚かましいな。

 お願いだから……。

 ……しょうがねえなあ。

 ありがとう、悪いね。

 その代わり……もう勇者の使命からは逃れられねえぞ?

 覚悟はできているよ。だから……頼んだよ?

 

 ああ、待ってろ。すぐに終わる……。

 がんばれ――




 もう、切り替わったか……。

 アイツも、ここに慣れてきたな。

 あの子とも、なりゆきとはいえ交わしちまったからかな?


 向こうでは俺のことは覚えてなくても、〈俺〉の行動を自認することぐらいはできるようになってるってことか……。

 これからどんどんお前は勇者に近付いていくし、今まではあの子達を守るだけで良かったが、これから先はそうはいかなくなるぜ?


……まあ、お前の覚悟とやらを見る為にも、少しは働くとするかね……!


 ◆◇◆


 風の刃は当たったと同時にはじけて飛んだ。

 二人は脚が切れたものと思い、気を失ってしまったようだ。


 まあ、今は都合がいいか……。


「……ん? おかしいな。何かミスったか?」


 目の前に首を傾げた魔族が立っている。


「直接切るか」


 面倒臭そうに二人へと近付いて行く。

 魔力の刃を手にまとい、セラの脚に振り落とした。


 魔族は目的は果たしたと言わんばかりに、ニヤリと笑った。


「な、なんだ? これ……?」


 しかし、魔族の顔は驚愕に彩られる。

 魔族の刃は彼女達に、かすり傷一つ負わせることができていなかったからだ。


「無知なお前に教えてやるよ」


 俺は魔族のすぐ後ろで語りかけてやる。

 奴はどうやら俺の存在に気付いていなかったようで、大げさな動きで俺から離れていった。


「お前も魔族なら知ってんだろ? 【勇者の恩恵】だよ……!」


《能力共有》って言ってな……強さをある程度共有できる力があるんだよ。

 そして、覚醒した俺と力の共有をしている二人には、その程度の魔法は一切意味をなさないってことだ。


「な、お前……どうして立てる? それに、その姿は……男に戻ってねェか……?」


 俺の姿を認めた魔族が、驚愕の顔で見つめながら尋ねてくる。


「覚醒した俺はお前みたいな脆弱な魔族とは違う……。罠はないとか言いながら、微弱な能力阻害の魔法を重ね掛けとか……そんな姑息な真似しなくて良いんだよ」


 奴が使った魔法でとりわけ厄介だったのは、心の不安を煽る魔法だった。


 それだけでは役に立たないが、少しでも「負けるかも」と思った瞬間に心が折れる。

 あいつが最初からまともに戦えなかったのは、ソレの要因も大きい。

 まあ俺が負けることはあり得ないから、俺への影響はないがな。


「くそっ! ハッタリかましてんじゃねえ!」


 魔族は何度も全力で風の魔法を二人に放っているが、全くの無駄だ。


「ほ……本当に【勇者の恩恵】を受けてやがるってのか……!」


 自身では一切傷をつけることもできないという現実を、やっと理解できたようだ。


「ハァ……さっきそう言っただろ?」


 一回言った事も理解できやしないバカに辟易する。


「ふふふ……仕方ない……。お前を俺の敵と判断してやろうじゃねェか……!」


 バカが変なことを言いだした。


「せっかくだ……俺の名をおしえてやるよ。俺の名は……」

「いや、そう言うのいいわ。お前の名前なんて最初から興味ないし」


 バカの名乗りを無視して、さっさとやることにする。

 こいつにはアイツが素手でやられっぱなしだったから、俺も素手でやるか。

 俺が体を低くすると、奴も身構えるが、全く意味はない。

 軽く地面を蹴る。


「ぐあばお!」


 しまった強過ぎた。

 殴ってやるつもりが、奴の顔面に肩が入ってしまった。


 バカが数メートルもの距離を吹っ飛び、大樹にぶつかってようやく止まり、倒れ伏せる。


「……ぐ、お前……死んだぞ……!」


 バカがブルブルと体を震わせながら起き上がる。


 どういう意味だ?

 ひょっとして、今のでも実力差が理解できなかったっていうのか?


「実はおれは剣の方が本領を発揮できるんだよォ……! お前も覚えておけ、俺の名前を! 俺の名は……ぎゃぼ!」


 俺は名乗りを妨害し、顔面に拳を突き立てる。

 だからそういうの要らないんだよ。

 俺はこうなったら意地でもこいつの名前を聞かねえぞ。


 今気付いたが、さっき殴った影響か、バカの擬態が解け本来の姿に戻っているようだ。

 まあ、これと言って特徴のないオッサンだ。

 でも、女より殴りやすくて気は楽だな。


「は、話が違う……! 力を封じた勇者の監視だって言うから、楽なモンだと思ってたのによぉ……!!」

「そうか……まあ、楽なモンだろ? 後は死ぬだけだしな」


 俺が事実を伝えてやると、奴は顔をしかめ、ブツブツと何かを呟き出した。


「でも仕事を与えた奴は有能だな。俺の評価をきちんとしてるんだからな」


 あえて「お前と違って」とは言わなかった。

 人間は……っていうか魔族だけど、本当のことを言うと傷付くモンだしな。


 やっぱ俺って優しいわ。


 しかし、奴は俺を無視し、いまだに何事かをほざいてやがる。


「……なんで……何で何だよ……この状況は……何故か力が復活してやがるし……いや、聞いていたのよりも……! ま、まさか……いやそんなはずは……でもこの力は間違いなく……本当に覚醒勇者って言うんじゃねえだろうなァ!」

 

 やっと気付いたか……本当にバカにはイライラする。

 もう終わらせて良いか……。

 二人が目覚めると面倒だしな。

 俺はバカへと歩み寄る。


「ま、待て! 俺を殺したら違う奴がまた来るぞ。今度は俺より強い奴かも知んねぇぞ!」

「そんなにすぐには、お前が殺されたことはバレないだろ。それにまた倒すさ」


 俺かあいつかは分からねえけどな。

 奴が喋っている間も、俺はどんどんと近付いていく。


「ちょっと遊んだだけじゃねぇか!」

「そうか、遊び方を間違えたな……!」


 バカの死を予言するカウントダウンのように、一歩また一歩と俺は歩み寄って行く。


「ち、近寄るな! なんで……なんで力が……封印されてねえんだよ!」


 応える義理はないが、あいつも色々情報を聞かされたし、少しは教えてやるか。


「せっかくだし教えてやるよ……確かに力は今も封印の影響を受けている。だがな、それはアイツがその魔族の幹部とやらより弱いからだ。つまり……そいつより俺の力が勝れば封印は解ける……。道理だろ?」

「なんだよそれはァッ……!」


 奴はそれでも納得がいかないようで、未だに俺に抗議してくる。

 もう諦めろよ……。


「認めねえ……認めねェぞ……! こんなバカみてェな展開に付き合ってられるかァ! 俺はまだ死にたくねェ!」


 コウモリのような黒い翼を羽ばたかせ、バカが空へと逃げて行く。

 俺は掌に魔力を込め、それを純粋なエネルギーへと変換する。

 バカの逃げ去った方向に目を向けると、もう彼の姿はカラスよりも矮小になっていた。


 俺は脚に力を込め地面を蹴り上げる。

 地面には、俺を中心にしてそれなりの大きさの穴が開き、体はバカを追いかけて飛び上がった。


「く、クソ野郎が……! 俺をコケにしやがってェ……! 準備を整えてスグにぶち殺してやるからなァ……!」


 すっかり逃げ切ったと安心している魔族に、親しみを込めて声をかける。


「よぉ! 元気そうだな!」

「な、なんでお前……」


 奴の顔が驚愕に塗りつぶされる。


「覚醒勇者を甘く見たな……。俺と出会った……いや、アイツに手を出した時点でお前の未来は決まってたんだよ!」


 俺はエネルギーをまとった手をバカへと向ける。


「ゆ、許してくれ……頼む……! つ、償いはする……金か? 名誉か? 女か? お前が望むんだったら何でも……!」


 バカは必死に命乞いをする。

 俺はこの行動に気分が良くなり、一つだけこいつの為になることをしてやろうと考えた。


「ほお……! 魅力的な提案だな……。なら一つもらって良いか?」


 かざした手を解く。


「あ、ああなんでもくれてやる……! 何が欲しいんだ……?!」


 魔族の顔に安堵の色が浮かぶ。

 もちろん、バカが俺へ何かを与えてやるつもりなど毛頭もないことは、重々承知しているが、ここは騙されたフリをしておいてやろう。


「……俺の欲しいモノはな……」


 俺は言葉を区切り、一度大きく深呼吸した。

 そして、俺は一番欲しいモノを高らかに要求する。


「お前の命だ……! それ以外……何も要らねぇ!」


 再び手をかざす。

 それに伴い、奴の表情に恐怖が宿る。


 ハハ…良いねぇ、その顔!

 俺の掌の上で踊る姿はまるで道化師だぜ?

 お前がした事に比べたら、なんて事はねえが……絶望に突き落とされる気分っていうのを、少しは学んでくれたか……?


 次に活かせるってことは永遠に無えけどな……!


「死んで償いやがれぇぇぇぇぇ!!!」

「や……やめ……! ぎゃをああえああえうぇェェェェェェェ…………………… 」


 俺の発した純粋な力の奔流に、名も知らぬ魔族が完全に光へと溶けていく。

 奴の最後に残した悲鳴は、俺とアイツの心に与えられたストレスを、きれいさっぱり吹き飛ばしていった。


 最ッ高に良い気分だぜ……!


 そんじゃあ、アイツに体を返しますかね。

 女達との交流はまたの楽しみに取っておくとするか。


 その後、地上に降り立った俺の体は地に倒れ、僕の帰還を待つことになった。

次回はエピローグとなり、第一章の本編は終わりを迎えます。

その後は、本編と関係ない話を少し投稿し、準備期間を設けてから、第二章を進めていきたいと思います。


少数かもしれませんが、待っていて下さる方達の為になるべく早く投稿しますので、それまでお待ちいただけると嬉しく思います。

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