真相を探って
二人の無事を確認し、幸せを噛みしめたレナは、一時の平和を過ごしていたが……。
昨日はあれから大変だった……。
風呂に入っていたら二人が乱入して来たり、服を洗濯しようとしたら、セラが「マントは洗わずに私が使うわ」と、頑なに洗濯を拒んだり、カータが「……セラにした事を、私にもしないと、不公平……」だとか、意味の分からない理屈を語りだしたり、最終的には布団で寝ていたら、いつも二人でベッドを使用している彼女達が、僕の布団に潜り込んできて、何故かベッドが放置されたりしていた。
セラのお姉様呼びも定着するし、本当に同じ人物かと思うくらい僕には素直だし……。
まあ、嫌な訳じゃない。
でも、セラの顔を見ていて、ふとしたときに「キスしたいな……」と思ってしまう、自身の心には辟易していた。
僕はこんなにも変態的な人間だったんだろうか……。
二人には相談できないしね、こんなこと……。
それに、そんなことよりも放置できない事態がある。
受付のお姉さん。
二人にゴーラから聞いた情報を話すと、ギルドに様子を見に行こうという結論に至った。
気乗りはしない。
だけど、セラが彼女に対してとてつもない怒りを抱いているようで……。
「あいつ、私に薬まで盛って……絶対償わせてやるんだから!」
そう言って、聞かないのだ。
僕としても、彼女のせいで純潔……とまでは行かないが、彼女の様々な〈初めて〉を失うことになってしまったのだ――許せるものではない。
〈俺〉が貰うはずだったのに……!
いや、違う……そんなことはあり得ない。
僕はあんなことがなければ、セラにああいうことをするつもりは全くなかった。
だって、今の僕は女なんだから……。
まあ、控えめに言って、僕の気持ちは「あいつコロそう」なので、今はとりあえず、彼女に会いにギルドへの道を三人で歩いている。
この道も、もう慣れたモノだ……。
僕の両腕が、左右の花に抱かれている状態じゃなかったらね……。
通り過ぎる人々の視線が痛い。
セラは周りを威嚇するように睨んでいるし、カータは周りを気にせず僕の腕にすり寄ってくるし……もし、僕が男だったら幸せなことなんだろうけどな……。
もちろん今でも幸せだが、周りの奇異な視線が気になるチキンな僕の心は、穏やかなモノではなかった。
「二人とも……もうちょっと、離れようか?」
少しでも付き離すような発言をすると、二人とも目を潤ませ、上目づかいで見つめてくるし……。
こうなると、僕は降参することしかできない。
「……何でもないです……」
そう言うと、彼女達は満足したように顔を綻ばせ、元の状態に戻る。
二人の姉になっても、立場は一番弱いんだね……。
僕が自分の立場を再認識している内にギルドへと辿り着いた。
ドアを潜ると、その場所から見えるいつもの受付には、知らないオバサンが座っている。
疑問に思いつつも、近付いて話を聞くことにする。
「あの、昨日まで受付をしていた、お姉さんは……?」
「ああ、あの人ね……! それが、今日仕事に来ないから、他の職員があの人の家に様子を見に行ったら、死んでいたらしいのよ、あの人!」
「えっ!」
あの人が死んだ?
「それに聞いた話じゃ、昨日今日死んだって訳じゃなくて、死んでから結構、日が立っていたとか!」
そんなはずない……。
昨日町に戻って、クエストの報酬を貰いに来たときにも確かにいたんだから。
「思えば、あの子、仕事人間だったからねぇ……死んでからもそれが理解できずに彷徨ってた……とかいう噂も立つし……。まあ、昨日、最後に会ったときも、様子が変だったしね。もし明日、レナって女が訪ねて来たら、これを渡せって……」
おばちゃんは手紙をヒラヒラと見せびらかしてくる。
「僕に、手紙……?」
「ああ、レナって、あんたのこと?」
「は、はい、そうです、渡してもらえますか?」
冒険者証を見せ、その手紙を受け取る。
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親愛なるレナさんへ
あなたがこの手紙を読んでいるということは、ゴーラさんは失敗したんですね。
もう少し面白くなると思っていたのに非常に残念です。
やっぱりあの時に、セラさんを無理にでも薬漬けにして純潔を奪っておけば良かったです。
理想の展開としては……ギリギリのところで間に合わなかったあなたの目の前で、男にもたらされる快楽に自ら腰を振るセラさんの姿を見せたかったのですが……欲張り過ぎはいけませんね。
反省しています。
貴女の顔が絶望に彩られるのを見たかったのに……。
仕方がないので、私自らが貴女を絶望に叩き落とすことにしました。
コルウェイの森の大樹まで来て下さい。
もちろん三人ご一緒に……思う存分戦いましょう。
もし貴女が二人を連れて来なかった場合、ゴーラ以外の、町にいる私の駒が二人を襲いに行きますよ。
まあ来たとしても、貴女が私に負けた場合、二人の穴と言う穴を凌辱させ、最終的に殺します。
貴女の目の前で行いますから、今の内に心の準備をお願いしますね。
ちなみに、何故私がこんなことをするかというと、理由は特にありません。まあ、退屈を紛らわす遊びですね。
私が貴女達に負けることはあり得ませんが、精々抗って下さい。
まあ、例えどんな選択を取ろうとも、貴女が絶望を味わうことに変わりはないですがね。
可愛いあなたの受付嬢より
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僕は手紙を握り潰し、破り捨てた。
「なんて書いてあったの? お姉様?」
こんなの、二人に見せたくない。二人が穢れてしまう。
「ああ……コルウェイの森で戦おうって」
要点だけを伝える。
僕の説明に多少納得していないようだったが、僕を見上げて二人は言った。
「勿論行くのよね? 私も付いて行くわよ。例え、駄目って言われても行くわ」
「……セラの、出る幕はない……。……お姉ちゃんと、私だけで、十分……」
二人は、やる気満々だ。
連れて行きたくはないが、手紙にも連れて来いと書いてあるし、目の届かない場所にいる方が不安になる。
僕は決心し、二人に声をかける。
「行こう……あいつをぶっ飛ばそう!」
僕達三人ならやれる……!
今の僕はそう信じることしかできないのだから。
またもや不穏な空気……レナ達は無事に帰ってくることができるのか?
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