ちりょーこーい
セラの解毒を促す為に、レナに課せられた使命とは……?
今僕は、心臓が痛い程ドキドキしていた。
自分の鼓動がうるさい。
「……それじゃあ、私は、部屋の外にいる……」
ちょっと待って! 置いて行かないで!
「ちょっと待って! 置いて行かないで!」
心と言葉が完全に一致した瞬間であった。
「……セラが言うことに、従えば良いだけ……。……お姉ちゃんなら、できる……」
サムズアップするカータ。
横を見ると、熱にうかされたように浅い呼吸を繰り返すセラがいる。
文字通り、肩が触れ合う距離だ。
「……セラ、言っておくけど……お姉ちゃんは、貸すだけだから……」
カータ……お姉ちゃんは、貸出禁止だよ……?
セラはカータの言葉に何の反応もしない。
聞こえているかどうかも分からない。
しかし、カータは満足したようで、静かに微笑んで、ドアの向こうへと消えていった。
ゆっくりとドアが閉まり、その音が妙に耳に残った。
静かだ。
僕の心臓の音と、セラの呼吸の音だけが、部屋の中に流れる唯一の音楽だった。
近頃気付いたことがある。
それは僕の心のことだ。
僕の体は女になった。
男の頃の記憶はあるし、男に戻りたいと思うこともあるが、どうやら僕の感性は女性寄りになっているらしい。
男の視線を気持ち悪く思うことも多くなったし、女性が何にでも可愛いと言う気持ちも理解できるようになってきた。
甘いものも、好きになったし、体重が気になるようにもなってしまった。
でもだ。
僕は男を好きにならない。
かといって「女性に恋をしている」という訳でもないと思う。
現に、セラに対する感情は、友情の延長線上にある愛情――友愛であろう。
そのはずなのに……どうして、こんなにドキドキするんだ?
僕は、同性を愛する性癖があったのか?
もし自分が男に戻ったら……いや、やっぱり男は無理だ、考えたくもない。
顔を横に向け、セラの可愛い顔を見る。
彼女は薬のせいで汗をかいている。
それなのに、彼女の体からは甘酸っぱい良い匂いがする。
汗にも媚薬の効果が現れているとでもいうのだろうか?
僕は少し体を起こし、よりセラの近くに身を寄せ、斜め上の角度から彼女を見下ろした。
少し鋭い目、整った鼻筋、小さい口、可愛らしい耳、透き通る白い肌、美しい金髪、そして……優しくも、素直でない性格。
全てが、僕の心をかき乱す。
「可愛い……」
僕は思わずつぶやいた。
我慢できずに、彼女の頬を指でつつく。
「レナ……?」
セラの目が開き僕を捉える。
「ご、ごめん!」
ようやく自分の行動に理性が働く。
なんてことをしているんだ……僕は!
「ほんもの……? ゆめ……? ……いえ、どっちでもいいわ……」
僕が後悔に塗れていると、後頭部を掴まれる感覚。
それを疑問に思うよりも速く、僕の唇はセラに奪われていた。
驚きと共に感じる煙草の臭い。
セラは煙草なんて吸わない……。
「ごめんね、はじめて、あげられなくて……」
口を離した彼女は、それだけ言うと、ひとすじの雫を流し、再び僕の口に栓をする。
僕の口内を彼女の舌が蹂躙してくる。
彼女の言葉を理解し〈俺〉は頭がおかしくなりそうになる。
殺しておけばよかった……!
これが嫉妬という感情であることを理解するより早く、〈俺〉は彼女の口内を侵略する。
彼女の顔に驚きが浮かぶが、すぐにとろけた表情へと変わった。
十秒だろうか? 一時間だろうか?
時間の感覚すら薄れる程の間、〈俺〉は彼女を激しく求めた。
「あ……ふ……ぅん……あ……レ……ナぁ……」
切なげな彼女の声に、自身を取り戻す。
慌てて口を離すと、粘液の橋がきらりと光った。
「ごめん、セラ……!」
セラは潤んだ瞳を僕に向け、切なげな荒い息を繰り返す。
「……あやまらなくて……いいよ……」
彼女は僕の首に手を回し、ギュッと抱きしめる。
その力強くも柔らかい感触に、全てを許されたような錯覚を覚える。
「ぼ、僕は、初めてだったから……」
気休めになるか分からないが、僕の中の真実を彼女に伝える。
「……うれしい……! レナ……すき……」
僕の耳元で囁かれる彼女の睦言は、僕の脳を本当に溶かしているのではないかと思う程、甘美で麻薬的であった。
不意に、セラは深呼吸をするように大きく息を吸い込んだ。
「レナのにおい……すごいよぉ……!」
そういえば、僕はあのとき森に入ってから体を拭いてすらいない。
恥ずかし過ぎる……。
「離れてセラ……! 僕臭うでしょ……!?」
離れようとする僕の首をガッチリと引きよせ、セラは抵抗する。
「やぁ! レナのにおい、すきなのぉ……!」
すきってにおいのことだったのか……。
って、どうして僕はがっかりしているんだ……!
僕は自分の中に生まれた理解できない感情に蓋をする。
それにしても、いつものセラはどこに行ったんだ……?
甘えん坊の彼女も可愛いけど……って、そういう問題じゃない!
いや、カータは、セラの言う通りにすれば良いって、言ってたし、仕方ないのか……?
そうだよ……! これは薬のせいなんだ!
交錯し錯綜する思考の中、僕は免罪符を手に入れた気分になって自分を納得させる。
一通りにおいを堪能して満足したのか、僕から離れるセラ。
安堵と名残惜しさの狭間で、漂う僕の目を彼女の濡れた瞳が上目づかいで見つめている。
「ねえ……レナぁ……さわって……?」
セラが次なる指令を下す。
「何を?」という問いかけの前に、セラの両手が僕の右手を、その場所へと導く。
「あんっ……やわらかい、でしょ……?」
布団をかけている為、目視はできない。
しかし、視覚でなく、触覚でそれが二つの丘であることが分かる。
これは……免罪符適用内だよね!?
セラが望んでいるんだし!
自分で自分に言い訳を用意する。
僕の右手は無意識に片方に狙いを定め、左手は吸い寄せられるように、もう片方の丘へと到着した。
今のセラはこれくらいしないと、満足しないはずだ!
「んっ……いじわるしないでぇ……」
まだ足りないの!?
「じかで……ね……?」
セラがもぞもぞと身動ぎする。
すると、先程まであった、ドレスのサラサラとした無機質な感触でなく、温かくてしっとりとした有機的な肌触りを感じる。
何より掌に感じる突起物に、僕の理性ははじけ飛んでしまいそうになっていた。
これはまだOK!? ねえ、OKなの!? 誰か教えてええぇ!!
出口のない自問自答を繰り返す。
しかし、理性で迷いつつも、本能には抗えない。
僕は彼女の突起に掌を押さえ付け、つぶれる感触を無意識に楽しんでいた。
セラはそんな僕の心情を見透かしたように、僕の耳に口を近づけ内緒話のように囁く。
「いいよ……。きになるんでしょ……? そこの……まんなか……」
再び免罪符を得た僕は、すぐさまその突起の付け根を、指で円を描くようになぞる。
「あんっ!」
ぴくんと体が跳ね、可愛くも艶めかしい声色で、彼女は喜びを表現する。
「つまんでみてぇ……」
媚びるような声に逆らえず、彼女の望むままの行動を取ってしまう。
「い……いいよぉ……。ねえ……そのまま、ちゅーしてぇ……!」
だらしなく口を開け、自身の唇を舐め回すように蠢く舌は、彼女とは別の意志を持った生き物のようであり、僕と言う獲物をおびき寄せようとする疑似餌のようであった。
僕はまたもや本能に逆らえず、吸い込まれるように彼女のソレを捕食しようと近付いて行く。
この後、セラという上位の捕食者に、飲み込まれるとも知らずに……。
「ん……ちゅ……あん……むぅ……はむ……あんむ……ん……ちゅ……」
僕が突起をつまんだり、丘の形を変えたり、舌の動きを激しくしたりすると、それに反応するように、彼女は舌の動きを変え、吐息を漏らし、僕の体に回した手に力を込めた。
ずっと、そうしていたいのに、セラが僕から口を離す。
残念そうな顔をした僕に、セラが蕩けた笑みを浮かべる。
「……ハア……ごめんね、でも……ハア……もう、がまん……ハア……できないのぉ……!」
息も絶え絶えになりながら、熱のこもった吐息を漏らし、丘の上にある僕の手を引き剥がして、布団の更に奥へと導く。
もう、僕の理性は持ちそうになかった。
ちなみにこれには続きがありましてね……。
これでも一応削ったんですよ!?
流石に確定で消されるようなことは、作者にはできませんでした……。(続きは犠牲になったのだ……!)
というより逆にこれくらいなら大丈夫なんでしょうかね?
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