プロローグ
初めまして、つたない文章ではありますが、お楽しみいただけたら幸いです。
僕は勇者だ。
生まれた頃は何もない農村に生まれ、十を数える頃に、どこか遠くにあるという王都から来た人達によって、僕は勇者と認定されたのだ。
でも、僕は体が小さく、女の子のような顔をしていた為、同年代の子どもからはイジメられていたし、喧嘩だって弱かった。
だから、僕は違うと思った。
勇者なんかじゃない……僕は勇者なんかじゃない……!
だけど、その日から僕の待遇は一変した。
特に僕に興味を示してもいなかった村の大人も、子どものイジメに見て見ぬ振りをしていた彼らの親も、体が小さいからと、僕の食事を減らしていた自身の親も……何よりも僕を優先するようになった。
でも……それで僕の気分が晴れることはなかった。
「きっと世界を救って、私達をたすけてくれる」
そんな都合のいいことを誰かが言っていたのを聞いたとき、僕は思った。
他人という存在は助けなければならないのか?
僕が苦しいときは誰も救ってくれなどしなかったのに……!
そんな思いを抱えながらも、月日はそんな記憶を洗い流していく。
ただ……他人を救う意義は見出せないまま……僕の心に大きな楔を打ち込んだまま……。
だからこれは罰だったのだ!
鬱蒼と茂る森の中……僕は茫然と立ち尽くしていた。
白い服を着た首の取れた人形――。
僕はその正体に気づいていた。
何故、何故、何故!
僕は誓ったのに……!
やっと意味が……人を守る意味が分かったっていうのに!
答えは出ない、出るはずもない。
この惨劇を引き起こしたのは僕の……僕のせいだから……!
後悔しても、後悔しても……! もう何もかもが遅すぎる。
だから、僕は思い出す。
先程までの光景を……楽しかった思い出を……。
そして、僕は動き出す。
待ち人のいない約束の場所へと――
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