第八十九話 結果は…
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「で、…できた」
流石にきつかった。善は急げということで早速オレが火の準備をして鍛冶に取り掛かったがコントロールが難解過ぎた。
というのもオレが試した方法は単純に金属が加工できるレベルの火を起こすのではなく、金属そのものに熱を与えるというもの。言わば金属の内部に炎を凝縮させてしまおうという方法。
鍛冶師未亡人さんはこんな方法があるのかと驚いた様子だが試してみるとこれが大正解。
普通であれば一度は熱した金属を鍛えてる最中に火に入れ直し、再度熱してまた鍛えることを繰り返すものだがこの方法であればいちいち熱する必要もなく作業開始から完了までぶっ続けでできる。
結論として作業時間の短縮と魔法による加工によって魔力に対する適性の向上ができた。つまり、より強い武器を短時間で作れるようになったといえる。素晴らしいメリットだ。
だがしかし難解だ。金属の内部に炎を凝縮させてしまうということは火属性魔術を完璧にコントロールしなくてはいけない。ほんのちょっとでもコントロールがぶれようものなら金属から火属性魔術による炎が漏れ出し、鍛冶師未亡人はもちろん、下手すればオレまでその魔術によって燃やされることになりかねない。
魔術使用者と鍛冶作業員の身の危険と周囲への被害の懸念。これがこの方法によるデメリット。
正直言って割に合っていないように思えるが…
「それもこれも結果次第だな…」
『無銘の魔力剣』・・・特殊級装備品。高度な魔術による炎で鍛えられた魔力剣。銘がないせいで力が不安定でただ力を内包するだけの剣。しかし魔力は切っ先から柄頭まで漲っている。
「う、う~~~ん…?」
これは、なんと微妙な…。
「わ、私にこんな逸品が作れるなんて…!」
感動してるところ悪いんだけどコレ、そこまでいいものでもないと思うぞ? 鑑定結果によれば魔力はあっても威力は不安定みたいだし、何より魔術まで使って鍛えたのに出来上がったのが特殊級なのもいただけない。ぶっちゃけ割に合っていない。
「!」
その瞬間。オレの頭にとあるアイデアが舞い降りた。
「せっかくなんだし名前、いや銘でも刻んでみてはどうだ?」
落ち着け。冷静になれ。
別に敵でもない。むしろ自分の妻の身内相手にうそをつくという罪悪感にかき乱された心を抑え込んでポーカーフェイスを貫くオレ。
鑑定結果にもあったがどうやらこの剣は銘。つまり名前がないせいで力がいまいち安定していないんだ。だったら名前を与えることで初めてこの剣は完成するんじゃないか?
そんなオレの期待は…
『火剣・レンゴ』・・・秘宝級装備品。高度な魔術による炎で鍛えられた魔力剣。火属性の魔力に特化しており、火属性の魔力によってのみ強化される。火属性の魔力で強化されたときに振り抜かれることで燃える斬撃を飛ばすことができる。
見事に答えられた。
まぁ、ぶっちゃけそこまで優秀な装備でもない。
『聖剣 サラマンデル』・・・伝説級アイテム。かつて勇者が炎の聖霊と共に作り上げた聖剣。聖なる炎を刀身に宿し邪悪な存在を切り裂くことに特化している。装備者に聖気を付与し、アンデッドに対して圧倒的な耐性を与えることと装備者の傷を癒すができる。
『霊刀・不知火』・・・神話級装備品。天の使いともいわれる麒麟の角と炎龍の上位種の牙、さらにヒヒイロガネなどを素材に創られた刀。火属性魔法、魔術、魔導に対して非常に高い適正があり火属性魔法を行使する際に消費魔力を一割にし、魔術であれば二割に、魔導であれば半分にする。また、火属性魔法に適性がないものでも中級までであれば魔法を行使できるようにできる。さらに気力を消費することで刀身から炎の刃を出現させることができる。刃こぼれが装備者の魔力、気力を消費することで修復される。
コイツ等の下位互換もいいところだ。
だが忘れてはいけない。そもそも伝説級や神話級は人の手で作り上げることはほぼできないくらいの武具なんだ。しかも今回の制作者である鍛冶未亡人はきちんと修行を収めた鍛冶職人でもない。
たまたま旦那の仕事を見て工程や手順を憶えていただけの素人さんだ。
そんな素人が作った装備だと考えれば随分上等な結果が出たと思える。
そして…
「言っておくが量産には協力できないからな?」
これを忘れてはいけない。オレはこの集落に根を下ろすつもりはないんだから何かしらのアドバイスはできても装備の量産のような時間のかかることは無理だ。
「へ? むしろ一度だけでも協力してくれて感謝してますよ?」
最悪の場合は文句の一つも言われるかと思ってたがどうやら思い過ごしだったらしい。
さて、これはあくまで二番目。二番目に忘れてはいけないことだ。この次に言うことが一番重要で忘れてはいけないこと。
「あ~、それでだな? 図々しいのはわかってるんだが、この剣。もらってっていいか? この次に行く街がドワーフの街らしくてな。ついでにそこで鍛冶を学ぼうと思ってるんだ。あとついでにアンタのことも弟子にしてくれるドワーフがいないか聞いてみるつもりだ」
正確にはドワーフとエルフの街らしいが細かいことだからわざわざ言うほどのことでもない。
あとこの剣はあくまで鍛冶未亡人が作ったものだ。オレはただ火を貸しただけ。にもかかわらずこういったんだ。
『お前の剣をオレの弟子入りのための道具にさせてくれ』
うん。我ながら最低なことを言ってると思う。
鍛冶未亡人だって自分が鍛冶に立つまでにいろんな葛藤があったはずだ。
ある日突然故郷を追われ、夫を亡くし、もしかしたら二人の間に生まれた子供さえも亡くしてしまったかもしれない。
それでも自分と同じ境遇に置かれた一族のみんなのために否応なしに夫との思い出が脳裏に浮かぶであろう鍛冶場に立っている鍛冶未亡人はどんな気持ちだっただろう。
脳裏によぎる様々な思い出。今亡き最愛の夫とのもう二度と戻らない日々の思い出に苦しんできたんじゃないだろうか?
そんな思いをしても一族のみんなのため。その想いで戦場に向かう戦士たちの助けとなるべく今まで槌を振るい続けてきた鍛冶未亡人に対してなんて失礼なことをしてるんだろうね。オレは
もうこれは失礼なんて言葉では形容できないほどおこがましいことだと思える。うん。言うんじゃなかった。
だがしかし、必要なことでもある。
先生も武器の手入れは教えてはくれたが鍛冶関連は専門外らしく教えてもらえない。そのくせ、ダンジョンに潜れば潜るほど武具の素材になる鉱石などが大量に手に入るんだ。
もちろんこの世界に入る職人たちにばらまくつもりではある。だがそれにも不安はある。
グランツが装備していた武具。そして出会ったばかりのころのリナが装備していた武具から考えて今この世界にミスリルやそれ以上の鉱石を取り扱える職人はあまりにも少ないのでは? と思える。
別にそれならそれで問題はない。例え適当に使ってもミスリルもオリハルコンもアダマンタイトもヒヒイロカネもそれなりに性能のある武具になってくれるとは思う。
だがそれではあまりにもったいない。オレの愛用しているレオルドもスカーレットもダンジョンコアを破壊して変化した武器ではあるがその素材もオリハルコンやアダマンタイトやヒヒイロカネなどの鉱石たちだ。こんな高性能の武器が作れる鉱石なのに適当に扱おうなんてあまりにもったいない。
もしそんなことをするくらいならオレが鍛冶を学んで希少鉱石たちを有効活用した方がまだましな結果になる。
というわけでいろんな物語の鍛冶の達人として描かれることの多いドワーフに鍛冶を学びたい。もちろんただただ日本にある創作物たちによる知識を鵜呑みにしてるわけじゃなく、世界眼によってこの世界でもドワーフは鍛冶のスペシャリストの多い種族であることは確認済みだ。
さて、そんなドワーフに弟子入りするために鍛冶未亡人の剣を使いたい。というのも多くの創作物で登場するドワーフの多くは『頑固な職人』として描かれることが多く、物語の主人公たちはいろんな手段でドワーフを口説いていた。
そんな中でよく使われていた手がドワーフの大好物と描かれる酒(この世界のドワーフも酒好きなのは確認済み)を取引の材料にしたり自力で作った作品を提示することが多かった。
もちろん鍛冶未亡人の剣をオレの作品として提出するわけじゃない。さすがにそこまでクズじゃない。ではどう使うのかというと、オレがアピールしたいのはオレが提供した『火』だ。
鍛冶にとって火はとても重要な要素。これは鍛冶未亡人の反応で確認済みだ。
ドワーフ。それも鍛冶職人ならオレの火のことも見抜いてくれるはずだ。そこにさらに希少金属の塊を一つ見せる。そしてこの希少金属の塊を自分の手で加工したいと伝えるつもりだ。
鍛冶職人ならこの気持ち。わかってくれるはず
希少金属による強い武器の作成という目標とその目標を達成し得る可能性を提示することでドワーフ鍛冶職人の心を動かせればと思っている。
さて、ここまで長々と思考していたんだがどうやらレベルアップの恩恵で思考速度が上がっていたおかげでもののコンマ数秒で済んでいた。だがいよいよお返事が聞けるらしい。
「別にいいですよ?」
あっさり。
あっけからん。
こんな言葉がぴったりなくらい軽い印象で了承がもらえて毒気が抜かれるが、イカンイカン。ポーカーフェイスを意識して…
「…いいのか? これはアンタの手柄なんだぞ?」
「いえ? この剣はあくまでアナタの協力があったからこそできた剣ですもの。手柄というならそれは私たち二人にあるわ」
それにドワーフの鍛冶師を紹介してくれるんでしょ? どのみち私に損はないでしょ? と付け加えてあっさりと完成された剣をオレに渡す鍛冶未亡人。
うん。これはもう絶対に腕のいい鍛冶職人を紹介しないと罰が当たるな。
オレは誓う。
必ず納得できるほど鍛冶を習得し、腕のいい鍛冶職人を鍛冶未亡人に紹介する。
そう胸に誓い、オレは鍛冶未亡人に感謝した。
《ケイン》 種族:リビングアーマー 性別:無 職業:無職 年齢:二日
レベル:1 魔力:18 攻撃力:20 魔攻撃:15 防御力:30 魔防御:28 敏捷性:14 運:100
《装備》鉄の剣
《魔法》無し
《スキル》魔力操作 気力操作 剣術:初級
《称号》悔い改めし馬鹿 闇の眷属 大樹の加護を受けし者 堕ちた女騎士に拾われた者
《信頼度》100%
《フェン》 種族:スモールガーゴイル 性別:無 職業:無職 年齢:一日
レベル:1 魔力:18 攻撃力:25 魔攻撃:16 防御力:26 魔防御:24 敏捷性:18 運:5
《装備》鉄の剣 鉄の短槍
《魔法》無し
《スキル》魔力操作 気力操作 剣術:初級
《称号》大地の眷属 大樹の加護を受けし者 突然変異
《信頼度》100%
《シルバー》 種族:ベビーアニマル 性別:オス 職業:無職 年齢:一日
レベル:1 魔力:7 攻撃力:10 魔攻撃:3 防御力:6 魔防御:5 敏捷性:20 運:8
《装備》無し
《魔法》無し
《スキル》魔力操作 気力操作
《称号》大森林の眷属 大樹の加護を受けし者
《信頼度》100%
《アラシ》 種族:ベビーアニマル 性別:オス 職業:無職 年齢:一日
レベル:1 魔力:5 攻撃力:15 魔攻撃:2 防御力:10 魔防御:4 敏捷性:10 運:7
《装備》無し
《魔法》無し
《スキル》魔力操作 気力操作
《称号》大森林の眷属 大樹の加護を受けし者
《信頼度》100%
忘れてた。コイツ等。進化してたわ。
リビングメイルはサリーのようにダンジョンコアを壊せば人間だったころの名前がわかるんじゃないかと思ったんだがそんな都合よくダンジョンコアが落ちてるはずもないので適当に名前を付けることにした。
元リビングメイル改めケインはリビングアーマーに進化したらしいが、ぶっちゃけ見た目の変化はない。見た目を変化させる分もステータスアップに割り振ったのかステータスは順調に伸びているので今後に期待。
石でできたフィギュアと印象だったスモールレッサーガーゴイルは小さめの子供サイズのマネキンほどの大きさのスモールガーゴイルに進化していた。劣等種が取れただけで大きさがここまで変わるのも変な話だと思うが実際になってるんだからしょうがない。
ちなみにこいつはキーパーの副官になってほしいという期待も込めて名付けた。ぶっちゃけ今はキーパーが生み出すゴーレムの方が強い個体がいくつもあるがいずれは…
そして新しく召喚した動物二匹。コイツ等もちょっと意外だった。
ボロの時は一回の進化で種族がオオカミになっていたがコイツ等の場合は単に種族名から劣等種が取れただけで別に何の動物のモンスターになるのかもわからない。
シルバーもアラシも身体は大きくなってるし、それぞれ成長もしている。
「このモフモフの毛並みが何よりの証拠…ッ!」
いや、これは立派なモフモフだ。日本にいたころに堪能した柴犬の毛並みもモフモフで癒されるものだったが、こっちはこっちで魅力が…ッ!
なんて思いながらさらにモフモフ。フム。シルバーの毛並みはサラサラしてるな。そしてアラシの方はふわふわしたさわり心地。これは甲乙つけがたい。なんてどこぞの評論家のような感想を浮かばせながらオレは二匹の毛並みを堪能した。
初めての三連続投稿。やはりというべきかストックが思いのほか減ったのでいつも以上のペースで執筆しなければと気合が入ります。また次の投稿をどうかお楽しみに
なんて思ってらた投稿する順番を間違えてしまった。仕方ないから編集で直していますが我ながら何やってるんだとあきれます。
自分でもどうかと思うのでどうか見捨てないでください。




