第七十六話 獅子神顕現
最近、気温の変化が激しくて体調に気を付けつつも夜更かしがやめられないうp主です。
懐に飛び込み赤ミノタウロスそのものを斬りたいオレと接近を許さずあくまで自分の距離で戦っていたい赤ミノタウロス。
赤ミノタウロスは自分距離でオレを叩き潰すため
オレはその攻撃を弾き飛ばし、懐に飛び込むために斧で撃ち合う。
右手に握りしめるレオルドと左手に握りしめるスカーレットが赤ミノタウロスの粉砕と滅殺の怪力戦斧とぶつかるたびに腹の底へと響く轟音が耳を撃つ。
赤ミノタウロスはココこそが自分の距離であるがゆえに意地でもオレを殺すために斧を振るい打ち据えてくる。
オレも最初は赤ミノタウロスの斧を弾き飛ばし、懐に飛び込んで自分の距離で戦うために同じく斧を振るい相手の斧に叩き付けてきたんだが、だんだん意地になってきた。
弾くだけ
防ぐだけの斧裁きではなんだが負けているような気がしてきて段々足が止まってきた。
レオルドの方も
『それでこそ我が主殿ですじゃッ! このレオルドも獅子の誇りに懸けまして牛なんぞに後れを取ったなどとなればそれはもはや生き恥以上の屈辱でございまするッ! 漢であればたとえ愚かな考えでありましても貫くべきものがありますじゃッ!』
鼻息荒く、語彙荒く言うライオンである。
だが言いたいことはわかる。オレも同じ武器を使い、しかも技術や経験において下にいる赤ミノタウロスとの打ち合いを避けるなんていやだ。
命を懸けた闘争の現場で何を言ってるんだとあきれる自分もいるんだが、そんな自分がいざ足を動かそうとすれば違うだろッ! そうじゃないだろッ!! と怒鳴りつける自分がいるんだ。うん。この自分は生き残りをかけた闘争の現場に身を置き続けてきたからこそ生き物の命の輝きとでもいうべき意地や誇りを見てきた戦士の自分だね。
なんて他人目線で分析しているが、とどのつまりオレは戦士としての自分を優先させて赤ミノタウロスと対峙している。
赤ミノタウロスが重い一撃を放ってくればオレが赤ミノタウロスの勢いすらも利用して数多くの連撃をお見舞いする。
オレが一撃の威力は軽いかもしれないが魔法や魔術を付与することで十分な威力を持つ斬撃を連撃で繰り出せば赤ミノタウロスが何の細工もない重く強い一撃を割り入れてくる。
こんな斬り合いが続く。九十九階層でもう双斧術の扱いに慣れたと思っていたが、いざ強いやつと斬り合っているといろいろ詰めの甘い点が見つかった。
修正。修正、と・・・
今のオレは斬り合いを始める前よりも強くなったはずだ。だが、オレが強くなった分だけ赤ミノタウロスも強くなっている。奴は今まで不足していた経験をこの斬り合いで得ているのかどんどん斧の振り方洗練されている。教科書通りのマンネリな振り方ではなく状況に応じた最適な振り方を叩き付けている。
始めたばかりのころは振る際に込められた力だけが厄介だったが今では振り方そのものにも脅威が芽生えつつある。
もともとある程度の技術を持っていたオレよりも半分素人の赤ミノタウロスの方がこれまでの戦いで得られたものが大きいんだ。
さすがまだまだ技術ではオレの方が上だが膂力では赤ミノタウロスの方が上。そのうえで赤ミノタウロスの奴が技術まで身に着けていればオレが不利になる。
一応オレも斧に魔法や魔術を付与することで威力の底上げはしてるんだが、このほんの数瞬の間に斧が乱れ舞う戦場で手早く付与できる魔法や魔術には限りがある。尋常じゃない魔力を持つオレでもさすがにこのレベルの相手に無駄打ちしてれば魔力が底を尽きる。
息苦しい攻防が続き、その中で見つけた改善点を随時修正しつつ強くなる。強くなることへの喜びと現状に対する苦しさが一緒くたに湧き上がってくるこの心境。
この世界に来たばかりのころ、あの森で戦っていた時のことを思い出して笑ってしまうが現状がいつまでもその笑みを許してくれない。
赤ミノタウロスが袈裟斬りを大きく振り下ろし、オレを両断しようとしてくる。今まではこの斬撃に魔法や魔術を付与した斧で迎撃していた。そう。
この戦いが始まってから馬鹿の一つ覚えのように繰り返し続けた対応だ。
オレは今まで通りに斧に斧を叩き付けるのではなく、赤ミノタウロスの斧が巻き起こす風の流れに身を任せて、飛び上がった。
突然の対応の変化に戸惑いを隠せない赤ミノタウロスの間抜けな表情を視界の端にとらえながら赤ミノタウロスの首にレオルドを叩き込んだ。
突然首に攻撃を叩き込まれて混乱しているのか、赤ミノタウロスの奴は斧を振るうんじゃなくて拳でこっちに殴りかかってきた。
オレは装備と魔法の力で体勢を調整しつつ赤ミノタウロスの拳に足を乗せ、ジャンプの要領で首から斧を引き抜いた。
さすがにたった一撃では頸動脈には達していないのか切り口から血が流れ出ていたが噴き出す勢いじゃなかった。
拳を撃ち出したその手で傷口を抑えながら再び斧で斬りかかってくる赤ミノタウロス。さすが、この戦いで斧そのものへの理解を深めたであろうことがその斬撃からも察することができた。
だがだとしても斧への総合的熟練度はオレの方が圧倒的に上。必要最低限だけ躱し、がら空きになった足に斬撃を叩き込んだ。
斬撃を加えられたふくらはぎは骨までは達していなくとも大きく切り裂かれ、傷口が回復しきるまでの間は赤ミノタウロスは両足でしっかり立つことができないであろうダメージを与えた。だがそのために懐に飛び込んだオレを串刺しにすべく、赤ミノタウロスが石突を繰り出してきた。
スカーレットで石突の軌道を逸らしつつ、その勢いを利用してレオルドでまた傷口をもっと広げるように抉る。刃先から伝わってくる感覚から骨が近いことを教えてくれる。できれば切断してしまいたいができたとしてもこの赤ミノタウロスの生命力であればすぐに繋ぎ直して走れるようになるのが目に見えているので
「『エクスプロージョン』ッ!」
あえて斬り飛ばさず骨を砕く程度にしておいた。赤ミノタウロスが悲鳴を上げて尻餅をついてのたうち回っている。
さすがというべきかこんな状況でもまだ斧を手放していない。むしろのたうち回る際に無茶苦茶に斧も振るっているので立っていた時よりも危険だった。
だが斧が振るわれる範囲はずっと狭くなった。軌道も読みやすい。うん。斬り込める。オレはそう判断して一気呵成に攻め立てた。
背中に肩にまだ無事だった足に、そして何よりも重点的にまだ斧を手放さない手、もしくは手首を切り刻んだ。鮮血が噴き出し、指も斬り飛ばされてる。このまま一気に決着が着くかという考えが頭をよぎったが・・・
「鬼珠解放・・・ッ!」
うん。知ってた。
九十九階層にいた黒ミノタウロスが使えていたコレを赤ミノタウロスが使えないなんてあるわけがない。いずれは使ってくるとは思っていたが、さて何が出てくるんだ・・・?
「礼を言うぞ? 侵入者よ」
「礼、だと・・・?」
突然何を言い出すんだ? コイツは
「そう。礼だ。貴様が余をここまで追いつめてくれたからこそ余は初めてこの力を開放できた。感謝するぞ。そして礼もせねばなるまい」
余、だと・・・?
確かコイツは一人称は「我」だったはずだ。なぜ変わる?
あとなんで感謝と礼が別なんだ? まず最初に礼を言うといってたのになぜ感謝に変わった?
いやな予感がする。ここは一気に首を切り落としてしまいたいがさすがにあの頑丈な首を一撃で斬り落とすのは難しいし、魔法や魔術を付与することで威力を上げようにもあの赤ミノタウロスの首を一撃で斬り落とすことが可能なレベルまでに付与するとその分どうしても時間がかかってしまう。
そして、・・・
「これが礼だ。存分に受け取るがよい」
『『『ブモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!!!』』』
現れたのは赤ミノタウロスに瓜二つのミノタウロスが三匹。そして赤ミノタウロス自身も・・・
「ふむ。これはいい塩梅だな。この髪は少々邪魔ではあるが別段苦労もすまい」
人間になってる。
うん。正確にはちょっと違うね。
体のサイズは若干縮んだ。だがそれでも九十九階層にいた黒ミノタウロスより若干小さい程度の大きさなんだが、何よりも注目すべき点は顔だ。
牛頭鬼。牛の頭を持つ鬼というだけあってこの種は何の例外もなく牛の頭を持っていたはずだ。少なくともオレが今まで出会ってきたミノタウロスの中には牛以外の頭を持つミノタウロスなんて見たことがない。
それにもかかわらず、目の前の赤ミノタウロスだった奴は人間の顔をしている。長い髪をストレートにおろして、勝気そうな印象の顔はアイドルだといわれても十分通用しそうなほどに整っている。
足の方は相変わらず蹄のようでやはりここからでも別に人間になったわけではなさそうだが、随分と人間に近くなった。
何より牛の要素があり、女というだけでどうしてもオレの頭にリナの顔がチラついてしょうがない。顔も体のサイズも全然違うというのになぜか今の赤ミノタウロスを見ているとリナの顔が浮かんでくる。
この戦いが終わったらアイツとデートしよう。なんてベッタベタな死亡フラグを心の中でつぶやきつつ意識を集中させる。
改めて赤ミノタウロスを観察すると体形も随分スマートになっている。今まではオスもメスも関係なくボディビルダー顔負けのマッチョだったのに今では鍛えられた筋肉が付きつつも女性らしい豊かな曲線を持っている。
その体を包むんでいるのは九十九階層の黒ミノタウロスとは対をなす白い鎧? だった。なんか日本の日曜、朝から放送される戦隊もののヒーロースーツのように全身タイツのようでありながら所々で金属のパーツが使われている。その金属パーツも白系統の色で統一されていてなかなかどうして美しい。
そんな彼女を守るように三匹のミノタウロスが各々の武器を構えている。うん。大ピンチだね。いや、これ普通に死ぬんじゃね?
赤ミノタウロスだけでも十分その危険があったのにさらにその赤ミノタウロスが強くなったっぽいのにさらに三匹分の戦力増加ってズルくない?
「だったらオレも増援を呼ぶしかねぇな・・・」
この手は使いたくなかったんだが、仕方ない・・・ッ!
「招来! ゴーレム! ドラゴン!」
魔法陣が煌めきそれぞれの魔法陣からキーパーとエンが出てきた。呼ばれた二体はオレと離れていた間もそれぞれ修羅場をくぐってきたことが与えたばかりの装備が傷だらけになっているところから推察できた。今すぐにでも世界眼で詳しく調べたいが、それはこの場を乗り越えた後にしよう。
さて、もちろんだがキーパー達にミノタウロス三匹をまとめて相手取らせようというわけじゃない。
「キーパー、エン。お前たちは一匹を抑え込め。残り二匹は・・・『解放』」
コイツに任せるさ。
右手に握りしめる戦斧から神々しい光が瞬き、そのシルエットを変えていく。
オレの身長よりも大振りな戦斧から徐々に徐々に生き物のシルエットへと変わり
やがては
金属でありながらまるで生き物のような躍動感を持つ、あるいは生き物でありながらまるで金属のような光沢をもったというべき身体を持った巨大な獅子が現れた。
「任せたぜ。相棒」
「心得ましたぞ。主殿」
自由に動ける身体を持ったレオルドが実に気安く引き受けてくれた。
そういえば今設定あったな。
なんて思ってくれればうれしいです。




