第六十六話 ただいまとただいま
宣言通り二話連続投稿。これで今まで投稿の乱れがチャラになるとは思っていませんが少しでも評価してもらえると嬉しいです。
コボルトの国を潰してからもう一回あの森へと向かうオレ達。
モンスター達もつれていく。置いていく理由も送還する理由もないからな。
コボルトたちが整地拡張した土地を抜けて森へ足を踏み入れたオレ達の緊張は否応なしに高まっていく。そしてその緊張を裏切らない敵が次々と襲い掛かってくる。
森へと足を踏み入れてから体感で一時間、その間に四回魔物に襲撃された。内容は獣系統だったり、鬼系統だったり、爬虫類系統に鳥系統と実にバラエティに富んでいる。
「やっぱり危険な分、実入りも大きいのか?」
「そりゃ、なんたってここは世界でも有数の超危険区域ですもん。リスクが高いのは当り前よ。そしてそのリスクを冒すメリットも十分この森にはあるわ」
「そうですね。少なくともアタシたち一族にはこの危険区域である森は絶好の隠れ蓑になってるし、ニンゲンから逃げられたのは間違いなくこの森のおかげですもん」
襲ってきた魔物を返り討ちにしたオレ達。そしてその魔物を解体している間の会話。
実際にこの森にいる魔物の多くは食える。それも地球、日本で手に入る食材に近いのでオレは食べ物に関して不満を持ったことがほとんどない。唯一不満があるとすればこの世界にはラーメンがなく、寿司もないというところか。ラーメンはそこまででもないが寿司が大好物のオレにとっては一大事ではある。
まぁ、でも仮にも異世界に行くんだ。大好物が食べられないのはもちろん、ロクなものが食えるかどうかも怪しかったんだ。そしてそれを覚悟で来たんだから耐えられはするんだが、不満であることには変わらない。
さて、話が脱線したな。とにかくこの森では食料が豊富にあり、資源も豊かだという話だ。
森を進んで数時間。
ついに
「着いたな」
「・・・っ、うん」
リナの感極まったような表情を横目で盗み見てちょっとだけ頬を緩めるオレ。
そこにあったのはまだまだ手付かずの場所も多くある。でも確かに存在するカウリア一族の集落があった。
畑を耕すもの
貯水池を整備にするもの
木の実や香草を取るもの
狩りからかえってきて成果をみんなに見せるもの
何も考えずに無邪気に疲れ果てるまで遊び倒そうとする子供たち
うん。とても平和な光景だ。
この光景をリナはどんな気持ちで見てるんだろう?
もともとあったリナの故郷はもうない。ほかならぬ人間に滅ぼされたんだ。
戦火に焼かれ、滅びていく故郷。
そしてその故郷、いや戦場から同法を一人でも多く逃がそうと奮戦し、戦士たちと共に残ったたリナの実父。
そんな地獄のような光景をリナは間違いなく見てきた。
そんなリナにとってはこの平和な日常はどんなふうに映ってるんだろう?
「いやいやいや。まさかこんなに急にいらっしゃるなんて思ってもおりませなんだので、ロクなおもてなしもできませんがどうかゆっくりなさってくだされ」
あれから少しの間、村を眺めていると畑を耕していた一人に見つかり、長老の元へと案内された。そこでお茶をいただいている。
味は・・・うん。緑茶に近いが別の何かだな。まぁ、カウリア族が淹れてくれたし、カウ茶とでも呼んでおこう。
「別に気にする必要はありませんよ? たまたま近くを通りかかったので立ち寄っただけですから、こちらこそ何か手土産でもあればよかったんですが・・・」
いまさらながら嫁の実家に訪れたというのに何の手土産もないなんてちょっと非常識だったか? ホントにいまさらだが・・・
「いえいえ、そんなとんでもありませんぞ! あなた様はそんな素晴らしい土地を我々に無償で譲ってくださったではありませぬか。そんな方に手土産などいただいては我らの一族はものすごい恥知らずになってしまいますぞ! ついでにその敬語もやめてくだされッ!」
「そ、そうか・・・?」
オレの実年齢込みでも孫と祖父くらいの年齢差があるのにこの腰の低さはなんなんだ? まぁ、土地の提供者だからという理由はあるんだろうけど嫁の血縁者だぞ? 居心地悪いなぁ・・・
まぁ、敬語も使わなくなって久しいんだし、何か失礼をやらかさないうちに使わなくてよくなったのはいいことかもしれないが・・・
結局あれからオレは爺さんに勧められるがままに酒を飲み村の若者にあれやこれやと質問攻めにされた。質問の内容はリナの様子からオレとの仲の発展まで根掘り葉掘り聞かれた。
これが赤の他人であれば不快にも思ったかもしれないが相手はリナの知り合い。今現在のリナのことが心配なんだろうと思えばそこまで不快な気持ちにならない。
向こうも酒に酔っているのかやけになれなれしい。今も肩を組むどころか体重を預けてもたれかかっている。うん。もし出そうものなら顔面パンチだ。
一方リナはと言うと
「ねぇねぇ。あの後どぉなのよぉ~? もう子供出来そう?」
「アンタ、それは流石に早すぎるでしょ? まだまだ子供よりも愛がほしいわよねぇ~~?」
「あ、あはは・・・」
こちらも負けず、いやオレ以上にみんなにあれこれと聞かれるな。
同情するよ。
まぁ、オレの方も忙しいから助け船は出せそうにないな・・・。
そして自分も助け船を出してもらえると期待はできないな。うん。コレはもう仕方ない。
とりあえず悪酔いが始まりセクハラめいた質問までしてきたコイツは殴ろう。
その後。酒盛りが終わってオレ達は今日寝る場所へと案内されたが、当然のように一緒だった。しかも一つの布団に枕が二つ。何なんだろうね・・・?
え? 分かってんだろうって?
そうですが何か?
「あ、あ~・・・。リナ。ここはお前さんの実家だろ? 積もる話とかはいいのか?」
ヘタレと言うこと無かれ。
真面目な話、せっかくここまで来たんだから家族にいろいろ言いたい事とかもあるだろうし、聞きたいこともあるだろう。
そういう事ならいつでもできるんだし、ここは家族水入らずを優先させるべきではと言う気づかいのつもりだが
「いや? 別に離れていてそこまで時間が経ったわけでもないし、これと言って話したいこともないわよ? もう言うべきことは言ったしね」
それから、とリナは話を続ける。
「アタシ、今ちょっとだけ気に入らないことがあるんですけど?」
オレをジト目で見つめるリナ。
なぜだろう。
ステータス的にオレが負ける要素は全くないはずなのに背筋が凍るのは
さて、オレは一体どこでリナの反感を買った?
さっきの気づかいが余計だったか? 一体どこが?
「アンタがアタシや一族と自分を別に考えてるからよ」
「・・・は?」
どういうこと?
オレは相当間抜けな顔をしてるんだろう。リナのジト目の中に呆れの色が濃く出ている。
「アンタはもうアタシの家族でしょ!?」
両手でオレの頬を抑えリナはこういった。
オレはとっさのことで声が出なかった。思考も空回りを続けて――
――気づけば押し倒されていた。
「タイチ、アンタはアタシの家族よ。今からそれを教えてやるからッ!」
誰か教えてください。
涙目で耳まで真っ赤にしながら馬乗りになって迫ってくるこの生き物への対処法を
オレは現実逃避気味に考えながら苦笑いを浮かべた。
翌日。オレとリナが二人そろって天幕を出たところを見た連中はみんなニヤニヤしていた。いや、普通に出ただけならそこまでニヤニヤもされなかっただと思うけどリナがオレの腕に絡みついていればそりゃそうもなるか・・・
さて、結局あれからみんなに挨拶してから拠点の街へと戻ることにした。依頼完了の手続きと小鬼の塒と呼ばれていたあの洞窟のことが気になるから
それからついでにカウリア一族の村の近くにいた魔物を全て駆除する勢いで狩り続けた。中には村の戦士たちの技量では太刀打ち出来ない強さを持つヤツもいた。
今朝からなんだか肌がツヤツヤしているリナもそんなリナを見てニヤニヤしながらコッチを見てくる先生も積極的に参加してくる。オレのモンスター達も同じだ。コイツ等はここでカウリア達を守らせる。そのためにもここでもっともっと強くなってもらいたい。
体感で二時間ほどで村の周辺、半径百メートル規模の魔物掃討が終わった。食料になる者の多くと武具や生活品の素材となる者の半分をカウリア一族に渡し、ついでに見つけた鉱脈や岩塩の鉱床の場所も教えた。塩の在庫が心もとなくなってきたらしいので非常に喜ばれた。鉱脈については発見者の特権ということでいくつか気になる鉱石をもらってく。
キーパーたちはここに置いていく。キャリーを除いて全員だ。ついでに指示も与えておく。
「ここにいる一族を、オレの嫁の一族を守れ。ここに災いを持ってくる魔物は一切の例外もなく駆逐しろ。特にカウリア族のみんなより強い魔物は絶対に見逃すな。いいな?」
心強い返事が返ってくる。さすがオレのモンスターたちだ。
頼りになるモンスターたちを置いて、今度こそオレ達は森を出る。
森を出る最中でも魔物はお構いなしに襲ってくるが流石その日に掃討しておいたおかげでそこまでの数でもなかった。
ほんの数日前に通った道を通る。前回通った時と違うのはキャリーの存在か? あれからまだ数日だと言うのにキャリーも十分強くなっている。この調子で行けばいずれ次のモンスターを召喚するときも近いな。召喚するとしたら次はどんな奴を呼ぶべきかを考えてるうちにもう着いた。
キャリーに乗ったまま街へと入る。門を護る衛兵にキャリーのことについて説明を求められたがオレが何か言う前に先生が自分がテイムした魔物だと説明した。
説明を受けた衛兵は納得はしていないようだったがこれと言って否定する材料もないからかすんなりと通れた。
街の様子に変化はない。いや、しいて言えばこのキャリーに対する驚愕と畏怖の視線や反応があっちこっちから聞こえてくるんだが、それは仕方がない。だって、明らかにナニか生き物を轢き殺したと思えるような痕跡がある上に明らかに普通ではない生き物に轢かせている馬車だもの。話題にならないわけがない。注目されないわけがない。
冒険者ギルドに到着したときも同業者にキャリーの事を尋ねられ、衛兵の時と同じように先生がテイムした魔物だと説明した。ちなみに先生がキャリーのことをそう説明した理由は二つ。
一つはそもそも先生が生きていた時代と比べても魔法の技術体系に大きな変化が無いどころかむしろ後退している印象があるらしい。その当時の状況を見たことがないオレにはわからないが先生にとっては愕然として余りあるレベルであるらしい。
そんな現状の魔法においてオレのモンスター召喚魔法は理解の外である可能性が高い。そんな魔法の存在が知られればその魔法を得ようと様々な権力者や魔法研究形に付け狙われることになり、本業に入れなくなる。ので、モンスター召喚と比べれば下位の魔法であったテイムという体を取ったという理由。
二つ目はキャリーと言うモンスターの異常性を危惧してという物。仮にも賢者と呼ばれ、それにふさわしい知識を得てきた先生ですらキャリーの存在は説明ができないらしい。
「ゴーレムの一種であることは間違いないけれど、でも私の知ってる度のゴーレムにも当てはまらないのよね~」
以上が先生談である。
というわけでこの二つの理由をもって先生はキャリーの存在を世間に公表したくないらしい。
だったらなんでそのことをオレ達に教えてくれなかったんだと思ったんだが、先生が言う前にオレが人前にキャリーをさらしてしまったらしい。いや、言ってくれなきゃわからんて・・・
そもそも魔物に関する知識もソコまで普及していないのかテイムしたと言う事で一応の納得はしてくれた同業者たち。
依頼完了の報告を受付で済ませると、受付嬢がギルドマスターに報告したそうでギルドマスターから来いという伝言を伝えられたらしい。
「君ね? この報告間違ってるよ?」
来いと言われたから来たギルドマスターの部屋。
そこで投げかけられたひとことである。
「間違い? どこがです?」
ちゃんと見てきたとおりに報告してるはずだぞ?
「間違いですよ? だって第一階層から第九階層まではゴブリンのみ出現するとこの報告書にはありますが違いましたよ?」
「何だって?」
じゃあ何が出たんだ?
「ゴブリンライダーですよ」
「? ・・・あぁ」
アイツか。
最初にあの洞窟に行ったとき、帰るときに見たあのゴブリン。二度目の時は見かけたこともなかったからてっきり死んだかダンジョンを離れたかと思ったがまだいたんだ。
「え? でもゴブリンですよね? そこまで警戒します?」
進化してライダーになったのかもしれないがそれは悪手じゃね? ライダー種って獣系の魔物か動物に乗ることで真価を発揮できるが、裏を返せば自分以外の何物かに強さの中核を預けることになる。実際に動物に乗るライダーと獣系統の魔物に乗るライダーとではまず間違いなく魔物に乗るライダーの方が強い。ライダー種は騎乗してこそ真価を発揮するが、反面その乗っていたナニかが倒される、もしくは使えなくなると圧倒的ザコになる。
なにに騎乗しているかにもよるがそこまで警戒する必要があるか?
「まぁ、これはゴシップ情報の可能性が高いんですけどね」
「おい」
オレの心配とかいろいろ返せよ。
「ごめんごめん。ここからが本当の事さ」
なんだがなぁ、と釈然としない気持ちを抱えながらギルドマスターに来た報告を聞き続けるオレだった。
その翌日。オレはまたこの洞窟へと足を運んだ。
もともとこの洞窟の攻略はしなくてはと思っていたから今サラではある。だが、あの五十階層の鬼のことが少し、・・・いやかなり衝撃的すぎた。半分以上が自業自得であったとはいえまさかあんな化け物が現れるなんて誰が予想できただろうか。
まぁ、そんな気持ちを抱えながら十階層まで来たんだが依然と特に変化が無い。ギルドマスターに言われたゴブリンライダーのことが気になるがアレはあくまでゴシップ情報だったんだと自分に言い聞かせてさらに下層へ向かってたどり着いた二十五階層。
踏み込んだ途端
キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィイイイイイイイイイイイイイイイイイィンンンンン~~~~~・・・ッ!
「何だこの耳鳴りみたいな音」
「吐きそう・・・」
「これは、・・・警戒音?」
お互いに自分耳を反射的に抑える中微かに聞こえた仲間の声、リナは五感に優れた獣人であるがゆえにこの攻撃は人間よりも聞くだろうし、体調が悪くなっても不思議じゃねぇ。
先生は警戒音の可能性を考えてるようだが、そもそも難の警戒音なんだ? オレ達、というよりオレに対しての警戒か? 思い当たる節はあるが・・・
「上等だ・・・ッ」
もし何か来るなら来やがれ・・・ッ
警戒音はやがて止み、そして
ダンジョンに亀裂が入った。
何を言ってるか分からないと思うが今オレの目の前で起こった現象を文字にするとそう表さざるを得ない。
ダンジョンの壁、いや空間そのものに裂け目が現れ、ナニかが這い出そうとしているので
「『エンシェントインフェルノノヴァ』」
今の俺に使える最強の火属性魔術で先制攻撃を放った。
放たれた魔術は禍々しい黒炎になって裂け目から這い出そうとするナニかを呑み込んだ。
ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!!!!
呑み込まれた何かが悲鳴を上げるが情け容赦をかける義理もない。
「『アダマイトスピア』」
土属性魔術でアダマンタイトで出来た槍を精製し
「『サンダースピーダー』」
雷属性魔法を纏わせて
「合体魔法『レールキャノン』」
電磁加速した鉄色の槍が音をも置き去りにして何かを貫いた。
なにかは言葉も出ずに力が抜けたように見えるが油断は禁物。ここはさらなる追い打ちをかけるのが吉と見た。
「『アヴァロンデスブレイド』」
土属性魔術で火緋色の刃をいくつも精製し
「『神風の牙』」
大嵐をレオルドと変わらないくらいの大きさに凝縮させた風属性魔術に纏わせて
「合体魔術『風神の血風殺陣』」
放たれた魔術は圧縮に圧縮を重ねた大嵐が元に戻ろうとする力に大嵐が本来持つ破壊力に元に戻る際に発生したかまいたちに緋色の刃まで加わって、まさに刃の嵐と言うべき様相になりながら何かが縦横無尽に切り裂いた。
火属性魔術で焼かれ、二つの合体魔法や魔術に貫かれ斬られた何かがようやく裂け目から出てきた時にはもう死ぬ寸前に追い込まれていた。
「とりあえず、これで止めだな」
「これって戦いなのかしら?」
「仮にも今から生きるか死ぬかをかけた殺し合いをしようと言うのに呑気に隙を見せたコイツが悪いわよ」
膝をつき、血だらけになりながら今にも死にそうな様子の・・・鬼? 巨人? まぁ、とにかく、何かに止めを刺そうとするオレの様子を見てリナが首をかしげるが先生は考えるまでもないと一蹴した
最近。お気に入りの作品の投稿がありません。
ので、この機会に話数だけでもお気に入りに近づけるように次回も連続投稿頑張ります!




