第六十一話 出発と新入り加入?
やっと投稿できます。仕事のことといい。パソコンを変えたことといい。今月は妙なことが続きます。
もう予想もできないことばかりでパニックを起こしてばかりです。
さて、あれから準備を終わらせた二人に合流し無事に出発した。
これから何が起こるかは分からない。
盗賊に襲われるかもしれないし、街道でゴブリンでも襲われるかもしれない。
でも必ずこの街にまた来よう。そうしてあの孤児院にいた子供たちに今度は土産話をしてやろう。あの冒険者に憧れていた少年にナイフの稽古をつけてやろうか? いや、オレはナイフの扱いがへたくそだ。幻滅されないように手斧でも使って稽古してやろうか?
それともあの子以外にもナイフに興味を持っていた子のために今から行く街でナイフでも買うか? あくまでも今現在の人間社会の調査の一環で
そんなアレコレを考えながらキャリーに揺られて進む。
キャリーはずいぶん大きくなった。所持していたスキルに『拡張』という物があったがそれを使ってオレ達三人が十分に足を伸ばして座れて、しかも武装の点検ができるくらいには広くなった。
そしてそんなことをしてる間にも…
「グギャギャ」
「ゴギャ」
「ゲギョん」
ゴブリンをやってきてはキャリーに轢き殺されるか、渡した槍で貫かれるか、もしくは…
「アイツらに殺されるかのどれかだな」
「一体あの人たち何なんでしょう?」
リナが見ている先には
微かに傷があり使い込んだであろうことがうかがえる革鎧を身に纏う戦士が
糸目で安物と分かる。だが、丁寧に手入れが施されているのが分かる弓を携える狩人が
まだ年若く未熟な点も多く見られるがひたむきで自分にできることでベストを尽くそうとする魔法使いが
ふくよかな腹を弾ませゼィゼィと情けない息切れをしながらも懸命にナイフを振るい、戦士の手助けをする商人らしきおっさんがいた。
彼らはそれぞれの役割を懸命のこなし、手痛い反撃を食らいながらも決してあきらめずにゴブリンの数を減らしている。
「なんだかアタシに近い気がするんだけどね…?」
「ある意味では間違ってないですね。アイツらって『勇霊』て出ましたよ」
そして納得もした。だってキャリーに渡した装備の一つは
『勇霊の御旗槍』・・・神話級装備品。もとはただ戦場において友軍の指揮を上げるために掲げられた旗に持ち主が戦えるように槍を取り付けただけの武器だったが勇敢なる戦士たちの生き血をもって赤く染め上げられ、幾人もの英雄たちの死にざまを見届け続けた旗槍が変化した槍。一振りするだけですでにこの世を旅立ってしまった幽霊たちを呼び寄せる。幽霊たちにはそれぞれ本物の意思が宿り、もし手を貸すに値せずと判断された場合。その場で還ってしまうだけではなく、もう二度と同じ勇霊は召喚されない。が、手を貸すに値すると判断された場合。本来であればアンデッド系に効果抜群のはずの聖属性魔法を始めにほとんどの魔法を無効にする『勇霊』として戦ってくれる。闇属性魔法、魔術、魔導に大幅な補正あり降霊術習得に大幅を補正をかけ、効果を大きく向上させる。
こんなのだった。
オレには降霊術なんて使えないし、持っていてもストレージの肥やしになるだけなのでキャリーに持たせたんだが予想以上に使いこなせているな。
降霊術の底上げができれば御の字と思っていたので思わぬ嬉しい誤算だった。
今ゴブリンと戦っている彼らはキャリーの降霊術をもってここにとどまっていた残留思念が霊となり、『勇霊の御旗槍』の力で『勇霊』へ至った者達だった。
つまり彼らはここで死んだ者たちと言う事になる。
そして彼らの形相。まるで思いもよらぬところで絶好のチャンスが手に入り喜び打ち震えるようにも見えるし、ここで会ったが百年目と言わんばかりに犬歯をむき出しにしつつゴブリンへ襲い掛かるものもいる。
これで察しが付こうというもの。
彼らはここでほかならぬゴブリンに殺されたんだ。
だからあんなに必死になってゴブリン相手に戦ってるんだ。
別に意味のない復讐をしようとしているんじゃない。
ただ己の怒りをぶつけたいわけじゃない。
ここでゴブリンを討伐出来なければもう彼らは自分に、そして自分の大切なものに胸を張れない。自分たちがもう死んでしまっていることはもうわかっている。それでもやられっぱなしで終わりたくないという決意と意地の表れなんだと思う。
未熟だ。無駄で非効率的で時間ばかりが無為に過ぎていくばかりだ。でもこの闘争に割って入っていけない。そう思わせる何かがあった。
絶対に犯してはならない何かがあった。
だからオレは見守る。これがきっと彼らにとっての最良の結果になると思うから
しかし、キャリーが呼び出したはずの勇霊たちがみんなオレの方を向いたりちらちら見てくるのはナゼだろう?
「そりゃアンタ。あの勇霊? とやらたちはアンタの力を見抜いて従ってる部分もあるからさ」
「ハァ? なんだそりゃ…」
なんでオレ? そこは普通呼び出した張本人であるキャリーを見るべきだろう?
「ええ。だからこそ彼らは自分たちを読んだ存在の主人であるアンタを見た。そしてこの世ならざるものになったからこそわかるアンタの底知れずの強さを見抜いた。だからこそあの子に、そしてアンタに従ったのよ」
「え~…」
なんだそりゃ
別にいいんだよ? オレが強いから素直に言うこと聞くってんならその方が都合もいいからな。でもそれってなんかキャリーの頑張りが軽視される気がするから複雑なんだが…
「それに多分サリーちゃんのことを知ってるからあの反応なんじゃない?」
「あ! そっか…」
サリーはもともとダンジョンコアの養分にされつつあった魂の一つだ。それをオレが自分のモンスターに転生させて現在に至っている。現在は六腕骸騎士に進化してキーパーたちと共にカウリア一族の手助けをしているはずだ。
そんなサリーの存在を知っていたら自分もそういうふうに扱ってもらえるんじゃないのかってこと? ていうかどこでそんな情報が手に入った?
キャリーが教えた? 何のために
先生が教えた? どのタイミングで
コイツ等がもともとサリーの関係者? サリーが生前の時に知り合った面々? そうだとしても今現在の状況をどうやって確認するんだよ
「ちなみに彼らが勇霊として活動するときにキャリー君が教えたっぽいよ?」
「…さいですか」
そんなタイミングがあったんだ。で、それでなんのために教えたの?
「う~~ん。働き加減であの人たちもサリーと同じ扱いにと思ったのかは分からないけどとにかくあの人たちをたきつけるために言ったんだと思うよ?」
「えぇ…」
それってこの後あの人たちをモンスターに転生させないといけないの? わざわざ?
戦力アップは有難いけど使い物になるのにいつまでかかると思ってるんだ。今はそんな余裕はないよ?
なんて考えていたけどそんなこともなかった。
ていうより、もうゴブリン討伐で満足したようで成仏していった。
その時商人風のおっさんからダンジョンコアの場所を教えてもらった。ついでにホントに商人だったおっさんとその護衛だったらしい冒険者たちの遺体の場所も教えてもらい供らわせてもらった。
土属性魔法で地中奥深くに埋めて、火属性魔法で遺体を燃やさせてもらっただけだが、もうこれで間違ってもアンデッドになったりしない。ホントに成仏してもらえるんだと思う。
まぁ、たった今成仏していく様を見たんだからそれはないと思うが間違っても骸を何かに利用される心配はなくなったはずだ。
《マンリキ》 種族:ギガントクラブ 性別:オス 職業:漁師・重戦士・破壊戦士 年齢:十日
レベル:1 魔力:450 攻撃力:1020 魔攻撃350 防御力:3000 魔防御:2900 敏捷性:600 運111
《装備》鎖付き超巨棘鉄球 芯伸刺突竿 守護海神の腕輪 不変の腕輪
《魔法》無属性魔法:初級 水属性魔法:中級
《スキル》魔力操作 身体強化 デコイ 泡操作 クラブハンマー 金剛力 堅固 身命 射出 高速再生 鈍器術:初級 槍術:初級 鎧殻精製 重積鎧甲殻 不屈
《種族固有スキル》甲殻再生 自切 強化再生 瞬間再生 巨蟹豪鋏返
《称号》大海の眷属 大樹の加護を受けし者 大海の加護を受けし者 苦労人 我慢の達人 報復を笑う者
《信頼度》100%
それから早速生まれたばかりで未熟なダンジョンコアへと向かい、今回はマンリキに砕かせた。その結果、マンリキはとても大きくなった。
進化前は確かオレが腰かけられる程度の大きさだったはずだが今はもう全長が屋敷ほどの大きさになっているし、脚を除いてもオレ達を乗せたキャリーが乗れる大きさだった。
そんな巨体を持つマンリキにそれ相応の大きさを誇る装備を持たせた。マンリキには以前、釣りに使うための釣竿を渡したことがあったのでその経験が生かせそうな鎖付き鉄球と普段は(マンリキにとっては)手のひらサイズのバトンに過ぎないが勢いよく突き出すと一気に二十倍以上の長さに伸びる刺突剣が武器で、もうマンリキくらいのサイズじゃ人サイズの腕輪が目元を飾るアクセサリーになってしまっているがそれぞれ装備させ森へと帰らせた。最初に持たせたのはキーパーとサリー、次は闘鬼にボロとキャリー、そして今回のマンリキ。
まだまだ装備を持っていないヤツも多いがこれでだいぶオレの配下が十分な強さを持つようになった。まだまだ闘鬼は危なっかしそうだし、最初のキーパーといい今回のマンリキといい敏捷性の低いやつが目立つ。
今後またモンスターを召喚するときにはそこを注意してみるべきか?
そんなこんながあってやってきた村。ここがオレが選んだクエストのある村だが、一言で言って
「何だこの要塞…」
である。
だってそうだろ?
都会だったであろう街ですら衛兵も活力のない廃墟三歩手前の風体だったのに何でここはまるで戦場最前線よろしくの活気だよ。
「さぁさぁ安いよ安いよ! 奥さんこのオーク肉見てよついさっきまで生きてたんだ。鮮度が違うよッ!」
「こっちは今朝あのダンジョンで採れた鋼樹で拵えた。名付けて『樹衣』だ。見てよこの色つや、普通の麻でこんな色合いが出せますか? 自信があるからこのお値段だよ! お一つどうだい?」
「見て見て見てッ! どう? この仕上がり。向こうの軒先のガンテジジィが打った投げナイフ一式がこのお値段。これはこの俺とガンテジジィのコネの強さがあって初めて可能なお値段だよ」
「ねぇねぇ奥さん聞いたかい? まぁたグランツのヤローが鋼樹の化け物を倒したんだってさ! そんでこれはその現場を見た冒険者が持ってきてくださった『トレントの樹液』っつー銘酒だよ。滅多に手に入らないけどひとついかが?」
これでほんの一部と言うんだからもう喧々囂々の言葉を具現化したようなやかましさだ。
だがこのやかましさは活気の表れだ。自分たちの暮らしに充実感を得ており、さらに上へと目指す気概のあふれるやかましさだ。コレが自然と心地いい。
市場を見てみても昨日までの都会とはまるで違う。市場には品物があふれており、決して何も置かれていない空間が目立たない。あっても複数の店でほんの一か所あるかどうかでその場所もすぐに別の商品で埋められている。
そんなことができるくらいには売るものであふれているらしい。
売っているものは主にこの村で作られた加工品とすぐそばのダンジョンで採取された野草に魔物の肉などの食べ物に薬草、鉱石類などだ。
試しにオーク肉の干し肉を狩って食ったがなるほどこれは美味い。干し肉自体がこの世界に来てから食うようになったものだがやっぱ日本のスーパーで売ってるようなソーセージにウインナーと比べたら堅い上に味も悪いものだった。
あの森で食える魔物を討伐出来なかったときにやむを得ずに食ったんだが正直嫌な思いでしかないものだった。
でもこの干し肉ならそれなりに美味しく食えそうだ。リナや先生にもおおよそ好評でその干し肉を大量に買っておく。ついでにストレージに仕舞ってあったオークの上位種などの肉も干し肉にできないかを尋ねたらできると言われたので持ち込んだ肉を早速干してもらう。
クエストが終わるころには美味しく出来上がってるはずなので楽しみにしておこう。
「で、ではこの依頼を…ッ」
「あぁ、引き受けた」
「ありがとうございばふ。…ッ、ずみばぜん、も、もうだめだと…ッ、もう娘は助がらないのだと思っておりました。もう、メアリーの元気な姿は見られないのだと思っておりました」
人目もはばからずぼろぼろと泣いているのはこの村の村長だ。
オレと変わらないくらいの体格で強そうな印象を受けそうだが、初対面の時から見た目よりずっと小さく感じていたが原因がハッキリしたな。
娘さんが病気なんだ。
それも魔法で治せず、薬も効かない病。
世界眼で調べてみるとそれは病気ではなく呪いの一種らしく、ダンジョンの最奥に存在する呪いをかけた張本人を討伐することでしか治せないらしい。
村長もそのことを知っていたらしく村を上げてその魔物の討伐の乗り出しているんだが、未だその中間地点すらたどり着けていないらしく、藁にも縋る思いで依頼を出したらしい。
村長自身も若いころは冒険者だったこともあって前線に立ったのだが結果は惨敗。愛した妻には先立たれ、そんな妻が残してくれた最愛の娘すら自分で助けることができず、手塩にかけて育ててきた冒険者でもたどり着くことすらできず、ただ無意味に時間だけが過ぎていく。
そんな生活が続いた結果やつれてしまったらしい。
うん。そんな生活が続けばやつれもするだろうよ
もともと準備は整えていたので早速出発した。村長を始めに数名の村人が見送ってくれたんだが、その中の約一名にもの凄い目つきで睨まれたのが謎だった。
さて、いまさらかもしれないがリナや先生にこのダンジョンについて説明しておこう。
このダンジョン。正式名称『三すくみの魔境』は名前で察することができると思うが三つのダンジョンが複合してできてる。いや、違うな。三つのダンジョンがそれぞれ残りの二つのダンジョンを飲み込もうとしていたのを四つ目のダンジョンコアがゼンブ一緒くたに飲み込んだんだ。言ってしまえばあの森の完全下位互換である。
飲み込まれたダンジョンコアはそれぞれ森、湖、山のダンジョンを構築しており、それぞれ主というべき魔物に守られている。四つ目、最後のダンジョンコアはオレの世界眼をもってしても感知されないほど高度な隠蔽魔導によって隠れているらしく見つけることは困難だ。
だがこの四つ目のダンジョンコアは他三つそれぞれのダンジョンを自由に移動し、魔物に強化を与えているらしく昨日までとは全く違う魔物が現れたり、急に上位種が増えたりするらしい。
ダンジョンに踏み入ったその瞬間からオレ達に襲い掛かってくるゴブリンにアント、トレント系統の魔物を全滅させつつ説明を続ける。あ、ちなみにキャリーは道が狭いのでこの森には連れてきていない。村はずれから魔物があふれ出していないかの監視とその報告、そして可能であればその討伐を担ってもらっている。
そんで・・・
「いつまで見ているつもりだ? 隠れてないで出て来いよ」
「あ、やっぱり気のせいじゃなかったんだ」
「この気配の消し方から察して戦士ね。レンジャー系統じゃないわ」
オレの一言に納得と言わんばかりのリナとおおよその推測を言う先生。
そしてそいつは現れた。
「お初にお目にかかります。自分の名前はグランツ。グランツ・イエホドです」
鬱蒼と生い茂る木々を押しのけて現れたのは大男だった。
身の丈はザッと見たところオレと差がないくらい。その身を覆うのは幾重にも傷つけられ、そのたびに修繕されたことをうかがわせる歴戦の鎧と盾、それから新調したばかりなのか真新しい片手剣を装備している。
枝葉から漏れ出てくる陽光を反射してわずかにきらめく鎧の様子から察してごくわずかではあるがミスリルが使われていることがうかがえた。
そんな鎧の上にはそれまた歴戦の戦士の相というべきか左頬から鼻にかけて大きな傷跡が目立つ目つきの怖い人物だった。俗にいう三白眼というやつか?
さて、そんなグランツ? だがなぜここについてきたのかをまとめるとこうだ。
1、村長の娘、メアリーを助けたい。
2、第二、第三のメアリーを生まぬため、この呪いをかけることができる魔物を討伐してしまいたいため
3、近年続く森の増殖に一矢報いたいため
以上の三点の理由だった。
うん。一人の男としての理由にダンジョンのすぐそばで生活している村の守り人としての理由もある。非常にわかりやすく合理的な理由だ。
それに口に出してはいないが多分オレ達の事も信頼していないな。このことも理由の一つだと思う。見ず知らずの赤の他人の事なんて信じられないか。まぁ仕方のない事だ。
その判断は間違っていないと思うし、別に不快に思う事でもないがこれはあくまでオレ個人の考え、人にとってはその判断は不快なことかもしれない。
だから表立っていうことはない。
まぁ、それでも先生もリナも気づいてるっぽいけどな
結局ともに行動することになった。
まぁ、村長の娘を助けたいという理由に約二名ほど盛り上がって強制的に決定したんだが…
「いやいや、太一君も別に異存ないよね?」
だからオレの思考を読まないでほしい。普通に怖い。
まぁその通りなので頷いておく。
それからともに行動していくのだからという理由で本人の許可をもらい、ステータスを鑑定した結果
《グランツ・イエホド》種族:人間 性別:男 年齢:18歳 職業:戦士・格闘師・傭兵・衛兵・騎士
レベル:30 魔力:19 攻撃力:45 魔攻撃:16 防御力:41 魔防御:25 敏捷:36 運:41
《装備》歴戦の戦鎧<一式> 歴戦の大盾 獣牙斬剣
《魔法》無し
《スキル》剣術;初級 盾術;初級 体術;初級 忍び足 気配察知
《称号》叩き上げの歩兵 戦場帰りの戦人 不動の衛兵
これである。
うん。弱い。コレがこの世界の一般的なステータスなのか?
だとしたらもうオレのステータスってどうなってるの?
このヒトのステータスが低いんだとしても異常すぎやしないか?
今までオレは自分のステータスを「高いなぁ~。これ、オレに使いこなせるかなぁ~」と思っていたんだが、もうこれはそんなレベルじゃねぇな。うん。もうこれ人間じゃねぇな
まぁ種族名も人間じゃなくて超人類なんだが…
結局グランツには先生が付くことになった。グランツには悪いがこの中で誰よりも弱いのはグランツだ。本人にそのことを悟られないようにしつつオレ達が本来の仕事をこなすためには先生のようなベテランに若者を導いてもらおうと考え伝えた結果だ。まぁ先生もこうなることは承知していたようで特に異論もなくそのことがアイコンタクトで決まり、さっそく行動に移してくれた。
表向きはどこにその呪術師の魔物がいるのかが分からないので手分けして探すという体裁でグランツと共に分かれた先生。
しかしこうなってくるとオレとリナが二人っきりという問題が出てくる。まぁ、レオルドもいるんだがこの変な空気の読み方をするライオンは「フフフ、あとは若い者同士ですかな・・・」なんてぬかしたと思ったら黙りやがった。もうオレがゆすっても歩く振りしつつ踵でレオルドを蹴っても無反応だ。コイツ、あとで覚えてやがれ…ッ!
さて、オレでもかなり混乱と言うかテンパってるこの状況、本来であればオレよりも年下のリナが動揺しないはずもなく、嬉しいような恥ずかしいような様子でモジモジしている。
おいやめろよ。お前にそんな雰囲気出されたらオレまで照れてくるじゃねぇか…ッ
赤くなってきた頬をポリポリと書きつつ何か話題を探そうとするが、どうにもリナの顔を見ると昨日の晩のことを思い出し、一気の脳がピンク色になる。
イカン。切り替えろ。まだ日の高いんだ。せめて夜が更けてからにしろ
自分の煩悩を殴り飛ばしつつ言い聞かせる。
うん。どうにか煩悩を追い払いつつ合理的思考が戻ってきたな。
一方リナの方はまだあれこれと考えてるようだが、もうこっちの方から話題、というよりこれからの行動の相談や意見交換をやっていこう。そうすればリナの方も思考の切り替えができるだろうよ。
「さて、これからオレ達は二人でこのダンジョンに挑むわけだが、分担はどうする?」
「えっ! えっと…、その…」
リナはアワアワと擬音が付きそうな様子でうろたえつつも考え
「えっと、アタシが多く魔物を倒したいんだけどいいかな…?」
希望を伝えてきた。
「うん。いいんじゃねぇか? この森のダンジョンがどのくらいの強さなのかは知らんがあの洞窟の下層やあの森程のレベルじゃねぇだろ。もしリナの手に余るようならオレもいるし、先生のとの連絡がすぐに取れるオレが後衛に回るのはいいんじゃねぇか?」
「うん。じゃ、そうしよ」
緊張が見られるが大丈夫だろう。いざというときはオレが割って入れるし、あのステータスのグランツが今日まで生き残れたんだリナで問題が出るわけがない。
オレの予想は正しかったようで
「シッ! ハッ! フッ!」
リナは身の丈ほどはあろうかという槍を振り回し、周囲にいる魔物をバッタバッタとなぎ倒していく。出てくる魔物はどれもこれも低レベル、この辺りの主ですとでも言わんばかりの態度だった魔物ですらレベル100も超えていない。
あの森は言わずもなが、『小鬼の塒』というあの洞窟でもこのレベルはニ十階層に届くかどうかというレベル。それくらいならばリナ一人でも問題はない。
リナの槍さばきは速度と力は申し分ないがまだまだ動作の継ぎ目や次の動きまでのタイムラグがあるように思える。まだまだ槍さばきも完璧じゃない。
リナもそのことは重々承知しているようで一振り一振りするたびに少しではあるけど確実に問題点を洗い出し、改善しようとする気配が見て取れた。
膝の踏ん張り、腰の落とし、背中から肩、肘に手頸への力の連動等々槍の一突き一つとっても様々な部位の筋肉や骨格が必要としているのが分かる。
そのどれか一つにでも手を抜いたら全力が発揮されないことも大いに参考になった。
結局あれからリナ一人の無双状態で魔物を討伐し続けた。今日だけで討伐した魔物の数は百は超えていたがそれからはもう数えていない。多分この倍は討伐したと思う。
それだけ討伐されれば
《リナ・カウリア》 種族:高位獣人族・牛種 性別:女性 職業:守護戦士・格闘師・槍戦士 年齢:15歳
レベル:54 魔力:5400 攻撃力:10800 魔攻撃:3600 防御力:10300 魔防御:3000 敏捷:11000 運:610
《装備》女帝豹の羽織 大地精と大風精の戦乙女装束 牛人族女性専用の下着 水龍と水面の乙女の戦槍 シルフの耳飾り 詐欺師のブレスレット 万人力の腕輪 サバイバルスパイク
《魔法》無属性魔法:最上級 水属性魔法:中級 風属性魔法:中級 土属性魔法:中級
《スキル》斧術:中級 槍術:最上級 槌術:中級 体術:中級 魔力操作 気力操作 剛体法 超集中 肉体活性 苦痛軽減 怪力 瞑想 気拳法 房中術
《種族固有スキル》闘獣化 受け継がれる血脈
《奥義》明鏡止水 重撃無双 光貫く螺旋突き
《称号》一族の護り手 英雄憧憬 不屈 槍の達人 斧の一人前 槌の一人前 拳鬼 超人の正妻 獣の敵対者
レベルとステータスが爆上がりもするわけで
スキルが増えていないのはそうなるための行動をしていないからか? まぁ、こんなレベルの魔物が相手じゃそうそう高レベルスキル取得条件が満たせるものでもないか
細かいところで変更点はあるが今のところは特に重視すべきことじゃないな。
個人的には称号において無視できないところがあるんだが、なんで急に妻、それも正妻になる? まるでオレが何人もの女性と結婚するようではないか。
そんなことを考えながら昼食をとる。
もう日も高くお昼ごろになり、近くにいた魔物もリナによってすべて駆逐されたことでこの辺りはもう魔物の心配もない安全地帯になった。ので、昼食をとるのに絶好のタイミングになった。
簡単なものだけだが一応この一年で料理もこなしてきたんだ。戦闘もただ立っていただけのオレが用意しようと思って準備を始めたんだが、リナが自分もやると言い出したので二人で昼食を用意することになった。
メニューはサンドイッチにスープ。代り映えのない簡単な食事だ。だが、
「良かったらこれも食べてみて…?」
「これは?」
オレの二つ目のサンドイッチに何を挟めた?
「そ、その、先生さんが男のヒトにはこれを食べさせるといいって教えてくれたソース漬けのお肉。口に合うといいんだけど…」
「ありがたくいただきます」
コイツ、わざとやっているのか?
アワアワと擬音の付きそうな様子で説明しつつ恥ずかしかったのか頬を赤らめたリナ。うん。可愛い。
完成したサンドイッチを早速かじる。うん。普通。今までと同じ作り方で、同じ材料で作られたサンドイッチは何と代わり映えのないごくごく普通でありきたりな味なんだろう。
では本命の二つ目を
うん。コッチは――
「うん。美味い」
「ほ、ほんと?」
「あぁ、このこってりとした味付けといいボリューム感といいかなり満足のいくサンドイッチだぞ」
「よかったぁ…」
オレの感想にほっと胸をなでおろすリナ。そうか。この肉はオレが孤児院に言っている間にリナが調理しておいてくれていたんだな。
そういえば先生以外の人に料理してもらうなんてこの世界で初めてじゃないか?
そう思うと、なんか胸の奥が温かくなった気がする。
リナもオレと同じサンドイッチを食べながら穏やかで温かい時間を過ごした。
思えばオレとリナはデートの一つにもいっていない。
仮にも身体を重ねたというのにそれはあんまりではないのかと思う。もしもの時にはしっかりと責任を取ろうと思うし、オレはリナのことを真剣に想っている。
地球で恋人の一つもいなかったオレにはこの気持ちが恋愛感情であると言い切れる自信はない。でも好きなんだと思う。リナの事
だからこの仕事が終わったらデートに誘ってみよう。
いまさらだとは思う。
それをやってなんになるとも思う。
それでもやろう。
償いとか
埋め合わせとかじゃなくて
一人の男性として一人の女性であるリナをこの目で見よう。
そんなことを考えながらオレは残ったスープを飲み干した。
今後しばらくは投稿が安定しない日々が続きそうです。できるだけ予定日には間に合わせるようにしますので何卒見捨てないでください。お願いします。




