第六十話 嬉しいやら恥ずかしいやら訳わかんねぇことってあるよな?
ごめんなさい。
本当であれば二十五日に投稿する予定だったのですがリアルの仕事が忙しく、ここまで遅くなっちゃいました。
とりあえず今月分最後の投稿です。
水の中を揺蕩っている。
全身くまなく水に浸かっているはずなのに息苦しさが全くなく妙な安心感と心地よさに揺られながら水の中を漂っている。
そんな中自分の意思とは全く関係なしに急に体が浮上し、水面から顔が出たところで夢から覚めた。
朝から妙な夢を見たが小鳥のさえずる音となぜか鼻をくすぐる果物のように甘い匂いに腹と胸から感じる絶対に崩れないプリンのような柔らかさで目が覚めた。
ダメだ。全然頭が働いてくれない。
ここまで思考が鈍いことはこの世界に来て初めてなんじゃないか?
そう思えるほどに思考が鈍かった。
もし今オレがいる場所がダンジョンであればオレはなすすべなく殺されていただろう。
「ン・・・ウン・・・」
ん?
待て、なんか今明らかにオレじゃない声が聞こえたぞ?
思考同様鈍い身体を起こしつつ視線をやると
「ンゥ、ムゥ・・・ん」
生まれたままの姿でオレにもたれかかるリナがいた。
「ッ! ・・・・・・」
驚きのあまり声が出そうになるのをギリギリで押させつつ一気に思い出したことを整理していく
昨日の晩。ギルドマスターに報告とギルドによる指名依頼の詳細を聞き終えて先生が取っておいてくれて板宿で就寝したのがもう夜中だった。
もちろん部屋は一人部屋を三人分取っておいてくれていたので何事もなく翌朝を迎えるはずだったが・・・
「急にリナがオレの部屋に来てなし崩し的に一線を越えたんだっけ・・・」
この世界では初めてでした。
うん。ありがとな
なんてことを考えていたら起きたらしいリナが
「ん? ・・・ッ! ~~~~~」
オレの顔を見たと思ったら急に完熟トマトにでもなったように真っ赤になって顔を伏せ、恥ずかしさから華夏をぐりぐりさせている。オレの胸の上で
え? なに、このかわいい生き物・・・
「う、う~~、動けないよぉ~。タイチのバカッ! ケダモノ~」
「大変おいしゅうございました」
ポスポスポスポス
なんて擬音が聞こえてきそうな様子で拳をオレの胸に落とすんだが、正直言って甘えてるようにしか見えない。
そして同じく初体験だったリナに教えてあげよう。
朝、寝起きの男にそんな態度をとるとどうなるのかを・・・ッ!
「ん? あれ? 足に・・・ッ! ま、待」
「待たない」
この世界に移り住んだ年月合わせて25年。
控えに言って
最高の朝でした。
「へ~~~~~~~~、ほ~~~~~~~~~~、フ~~~~~~~~~~ン」
『あ、主殿。ご子息が生まれましたらお名前はこのレオルドにお任せいただけますかな? もちろんご息女が生まれ申しても着けさせていただきたいのですが』
「よし。お前ら二人ともそこに正座な?」
まぁ、バレるとは思っていたよ。
オレとリナが一線を越えたことは
そりゃあ、そうでしょうよ。
だってこの宿をとったの先生だったし
レオルドに至ってはオレの部屋にいたもんな
こりゃ秘密にするもクソもないわッ!
そんでさっきからもう羞恥やらなんやらで顔はもちろん肩まで真っ赤にしたリナがそろそろ限界を迎えるからやめておけ?
さて、リナをなだめて、しつこいくらいにリナにからもうとする先生にアイアンクローを喰らわせ、真剣そのものに男であった時の名前と女であった時の名前の候補を由来や伝統を事細かに伝えながら解説してくるレオルドに拳骨すべきか真剣に悩んだ。
これが悪意あっての行動なら問答無用で鉄拳制裁だが、孫気配は全くなく純粋に子供名前を決めようとしてくるようではとても殴れんし・・・
でもまだ早いと言う事で一発殴っておいた。
そんなこんなで油断しているとすぐにオレやリナをからかおうとしてくる先生と段々地球でも聞いたことあるような名前を上げ始めたレオルドを止めつつ今度の方針を決める。
「まず指名依頼ですけど、受けるべき。それも早急に取り掛かるべきね」
『ですな。どのような魔物が住み着いたかはわかりませぬがそれが原因でその鉱脈とやらがダンジョン化してしまってもおかしくありませんからな』
「だとするとどこからか手を付けるべきですかね? 近場からだとオレがついでに取ってきた依頼現場からですが・・・」
「その依頼ってどんなの?」
「村娘を中心に流行っている病の治療のために近くの山にある薬草を採取してきてほしい。て依頼だな」
「ん? なんでこんな依頼を取ったの?」
まず先生がズバリ結論から言い。レオルドが補足した。
ひとまずはそれでいいとして次の問題、どの依頼からこなしていくべきか。
この街を拠点にするのであればいっそのこと一番遠い現場から順に回っていくのが効率がいいのかもしれない。だがこの街を拠点にしないのであれば近場からこなしていき最も遠い現場の依頼をこなした後にそこから最も近い町や村に行くのも手かもしれない。
ではそもそもその一番近場の依頼は何なのかを問うてきたのリナ。さすがにもう切り替えたのかと思いきや身を乗り出した際に触れた腕に過剰反応したり、ふっとした瞬間に顔が真っ赤になったりと情緒不安定な様子だった。
そんでそんなリナの様子がいちいちかわいく見えるオレも重症だな・・・。なんて自分自身にため息が出てきそうだ。
なんてのろけ話はここまでにしてリナの質問に対する答えを
「この森がすでにダンジョン化してるからだよ」
「え? なんでそんなことが分かるの?」
オレの答えが意外だったのかリナが説明を求めてくる。
実を言うと昨日も潜った『小鬼の塒』に挑戦するときにオレは自身の魔眼『世界眼』を使ってこの近くのダンジョンについて調べたんだ。
その結果、今オレ達のいるこの街の知覚には生まれたばかりの未熟なダンジョンコア含め四つのダンジョンコアがあることが明らかになった。
一つは昨日も潜った『小鬼の塒』にあり、二つ目はまた別のダンジョンにあり、三つめは生まれらばかりの未熟なダンジョンにあり、最後の四つ目がオレが依頼を取ってきた村の森にあるダンジョンのコアだ。
「ん? だったらなんでそこだけなの? どうせならほかの場所もみんな攻略しちゃえばいいのに」
これは先生の質問。まぁ普通にそこは疑問に思うよな
「方角の問題ですよ。二つ目は鉱山や炭鉱の逆の方向にあるのに三つ目のダンジョンコアはその村へ向かう途中に行きつくんですよ」
「あぁ! それでか!」
納得した様子の先生。リナやレオルドも異論がないらしくこのまま未熟な談コアをつぶし、その足で村の依頼へ向かうことに決まった。
そうと決まればさっそく準備だ。と言ってみんなそれぞれ別行動をとってるんだが、せいぜい娯楽品があったら買う程度のものでしかない。(あ、レオルドだけは一緒だよ? オレの武器だし)
だってしょーがねぇじゃん? 食い物も飲み物もストレージにイヤって言うほどあるんだし、あったかい毛布も新しい衣服類も照明機器もバッチリそろってる。
もう旅においていちいち買い置く必要がこれっぽっちもない。
むしろこんな街の状態じゃロクな品質も物がないからお金の無駄以外の何物でもない。
あ!
「思いついた」
『何をですかな?』
別に大したことじゃねぇよ。
「ただの偽善者ごっこだ」
「はぁ・・・」
いけない。そう思っていてもため息が出る
それが私、エルゼ・リゼルグの本心よ。
なんでため息が出るかって? それは・・・
「シスター、ダメだぁ。また枯れたぁ・・・」
「もうろくな種もみもないよぉ・・・」
「井戸もそろそろおかしくなってきた。いい加減崩れそ」
「え? あれって確かジャバスが直したって言ってなかった?」
「そのジャバスが今なんであんなに崩れそうになってるのか調べてる」
「そっか・・・」
この子たちの事よ。
一番上の男の子ランデが言ったように私はシスターだ。神の教えに従い、無力な孤児たちを救い導くために孤児院をやってるんだけど・・・
少し、いいえ全然上手くいってないの・・・
なんでこんなことになったんだっけ?
なんてこんな思考に意味なんてないわよね。今の私にできることなんてせめて井戸が枯れないように神に祈ることしかないんだから
「シスタ~~! お客さんだよ~~!」
「「「「「ッ!」」」」」
一番下の女の子アンジェの言葉に私を含むほかのみんなが緊張した。
ワタシは表面上アンジェをねぎらいつつこっそりと一番上の女の子でこの孤児院のナンバースリーであるコレットに目配せをした。
ワタシのメッセージが届いたのかコレットは無言でうなずきアンジェに詳しい内容を聞きつつこっそりとさりげなくアンジェを別室へと向かわせた。
そんなアンジェの後姿を見つつ民はそれぞれ準備を始めた。
何の準備かって?
夜逃げの準備よ。
だってこれからくるお客さまって・・・
「アイツらだよね? この孤児院の土地を売れって言ってきた・・・」
「あぁ、もうアイツらぶっ殺してェ・・・ッ!」
「辞めときなよランデ。おいらたちはまだまだ子供だ。そう油断してるやつらを殴れるのは一回だけだぞ? その一回で決めることができてもソイツに仲間がいる時点でもう詰んでるだろ」
「チッ!」
「舌打ちしてないでさっさと準備しよ? グズグズしてると――――」
「来たわよッ!」
とうとう来たわね。
この孤児院はもともと私の所属する宗派の教会の一つだった。
神の教えに従い、子供たちに雨風をしのげる「家」を用意するためにこの街の顔役に相談した結果。今はもう使われていないこの教会を譲っていただけることに相成りました。
宗派からも孤児たちの更生と教育に加えて打ち捨てられた教会の再興にも力を尽くそうとする私の姿勢を評価するという建前でこの教会の土地を譲ってくださいました。
その土地を不当に奪おうとする暴力団組織に私たちは狙われているんです。
彼らの主義主張に一切の正当性はなく、ただただ自分の我欲のためにこの教会を取り壊し、あろうことか拒否権のない奴隷の女性たちにいかがわしい接待をさせる風俗店を開こうとしていたのよッ!
当然辞めさせるために尽力したけど結局力及ばず、何よりもまずは子供たちの安全を確保することを最優先にしなければなりません。実際の彼らは自分たちの欲のためなら子供であろうとも一切の容赦もなく暴力を振るうような連中だったわ。
そんな連中と事を構えるのであればまずはこの子たちを私が最も信頼を寄せる司祭様の元へ預けることから始めなければなりません。
幸いこの街の顔役様はこの土地を彼らの隙にさせる気は全くないらしく、私が留守の間に彼らが入ってこようものなら即捕縛して衛兵様に付きだす手はずを整えてくださいましたわ。
あとはいちゃもんをつけられないように夜逃げするだけ
「すみませ~~~ん」
来たわね
私は覚悟を決めて「お客様」のいる玄関へと向かう。「お客様」が本当の意味での「お客様」であることをこっそりと神にお祈りして
カビくせぇところだな。
これがこのオレ、松田太一のウソ偽りのない感想だ。
オレは今、この世界の宗教慣例の施設いわゆる教会に来ている。いや、正確には教会というより孤児院と言う方が正しい。
もともとは教会だったんであろう施設を後から孤児院として再利用しているのが現状か
ただし、その再利用に職人が関わっていないのか所どころの修繕が雑だし、そばにあった井戸に関しては天津湯を井戸に入れないための屋根かは知らないが今にも崩れそうで正直言って近づきたくない。
まぁ、いざとなったらあれも・・・
なんてアレコレ考えながら
「すみませ~~~ん」
声をかけてみる。
どうせ誰かがいることは分かってるからね
「は~い。ただいまぁ・・・」
なんてちょっと間の抜けたような声で目の前に来たのはシスターさんだった。なるほどね。ここは教会。正確には元教会だった孤児院。だったらその教会関係者のシスターがこの孤児院を取り仕切っていたって何の不思議もないな。うん。
なんかオレを見て驚いてるような気がするが気のせいだろ? 少なくともオレはこのシスターに見覚えなんてない。
驚きました。
だってそうでしょ?
私たちはてっきり「お客様」とはこの土地を不当に奪おうとする不届き者のことだと思っていました。ので、こんなに立派な鎧を見にまとった騎士様がここにいらっしゃるなんて全く予想がつきませんでした。
本当に立派な鎧ですわ。私はあまり武器や防具なんて言う物騒なものに詳しいわけではなのですけれどそれでもこのお方が身にまとっていらっしゃるこの鎧は相当に立派なものなのだと言う事は判ります。
子供たちも様子を見て惚けたように見惚れる子と、そんな子を見て正気に戻りその子を叱る子に分かれた。
さて、私と子供たちの考えはきっと一緒ね。
この立派な鎧を身にまとった騎士様は私たちに一体何のようなのだろうか?
私たちに味方であってくださればそれいいのですけれどもしこの方があの不届き者の仲間であれば私はもう夜逃げもできない。
私はもともと間違っているは無効にもかかわらずこちらが逃げるしかないこの状況には腹が立っていたのでそれでもいい。
せめて最後に私たちにこんな理不尽を強い、射台にして敬愛すべきお方を崇める土地にいかがわしい目的の建築物を建てるなんてフザケタ目的を持つ不届き者たちに渾身の怒りの鉄拳を喰らわせられればそれでもいいと思った。(神の教えでは暴力は己の感情もロクに制御できぬ未熟者が行う行為であるとされていますが未熟者程度のそしりであれば喜んで受け取らせていただく覚悟でした)
ですがそれは子供たちの無事を確保できていればの話です。子供たちも私個人の感情を優先させるなんて神に仕える者である私がするわけがありません。
ですのでこの状況は非常にまずいものですね。ですがまだ最悪ではありません。幸いにもまだこの場にいない子供たちはいます。せめて彼らだけでも逃がさなければ神にお仕えする者としての名折れです。
「ここにいくらか寄付したいんだが、どうすればいいんだ?」
「・・・へ?」
私は今相当に間の抜けた表情をさらしているのだろう。なぜか冷静になった部分の心がそう分析しましたが、え? このヒト、今なんて言いました?
「聞こえなかったのか? 寄付はどうすればいいんだ?」
「気のせいじゃなかった?」
ウソでしょ? こんな時に孤児院に寄付したいなんて言う人が現れるなんて
久方ぶりの本当の意味での「お客さん」に子供たちの慌ててお茶の用意を始め、比較的小さい子たちが騎士様に駆け寄り、鎧や武器に興味を抱いてるようにふるまうことで騎士様の機嫌を窺っている。
そう。これ全部私が礼儀作法を教えたから出来ているのではなくどこかで学び、自分たちで解釈することで身に付けた処世術なのだ。
恐ろしいところは小さい子供たちの行動すらもそのあどけない子供っぽさを出しつつ大人相手を手玉に取るための武器にしているところなのよね
実際そうされている騎士様も自分の鎧や斧に興味を持たれるのは悪い気がしないようでさっきのワタシに対する不機嫌さが途端に消えてしまっている。
子供たちを抱えてあやしている内にお茶が入ったようなので騎士様を奥の部屋へと案内する。
子供たちが入れてくれたお茶を飲みながら子供たちの手並みを褒め、ポケットからアメを取り出してお茶を入れてくれた子供たちはもちろん自分の鎧や武器に興味を持っていた小さい子供たちにも渡してくれた。はしゃぎながらもキチンとお礼を言う子供たちになごんだ騎士様は部屋を出ていく子供たちを見送ってこちらに向き直る。
「さて、さっそく本題に入りたいんだがいいか?」
「はい。よろしくお願いします」
フゥ、もう大丈夫です。子供たちがいれてくれたお茶でもうすっかり気持ちが落ち着き、思考もまとまりました。
「マズき負の内容だがわかりやすく使い勝手のいい金と子供たちの様子を見ていくつかの食料にしようと思うんだがそれでいいかね?」
「まぁ! そんなにですか? ありがとうございます!」
私はもう条件反射の勢いで頭を下げました。だって文字通り今私に一番足りていないものをくれるというのですからありがたいことこの上ありません。
まず単純にお金。コレは子供たちの衣服を買う資金になります。子供たちに卸した手とまではいかなくとも綺麗な服を着させてあげることができます。それにお金の価値はそれだけではなくほかにも毛布やこの孤児院の修理にも使うことができます。更にはこれから逃げる私にはは限られた荷物しか運べません。そんな私たちには十分な量さえあれば衣服にも食糧にもなりなるお金は何よりもありがたいものです。
さらに食糧。人間が生きていくには絶対必須であり今この孤児院で最も消費が激しいものです。ここにいるのはまだまだ育ち盛りの子供たちですからとてもたくさん食べます。良く食べて良く遊びよく学ぶことこそ子供にとっての何よりの生き方です。その一翼を担う食料はどれだけあっても困ることはありません。
私たちもこの孤児院の裏で畑を耕したり、この街の顔役が紹介してくださった商人の方と交渉し、できるだけの食料を調達しようとしたのですけどこの街の土は悪いのか、はたまた私たちの耕し方が悪いのか例え芽が出てもすぐに枯れてしまい、今でもう手付かずの荒れ放題になってしまってます」
「そうなのか。良く分かった」
「え? あの、私口に出してましたか?」
「無意識だったのか? 食料についてぺらぺらと話してくれてたぞ?」
カァと顔が赤くなるのが分かった。恥ずかしい。コレは恥ずかしすぎる!
「ではまずそこからか・・・」
「え? あの、どちらに?」
まだ顔が熱いままですがそれよりもまずはこの騎士様が何をしようとしているかです。
「その畑とやらに案内してくれ」
こりゃ酷い。
うん。もうこりゃ畑じゃねぇよ。ただの雑木林じゃねぇか
「さ、最近ではもう放置状態でしたので・・・」
この三条に流石にいたたまれなくなったのか言い訳を並べ始めるシスター。
まぁ、シスターの独り言にも出ていた眼が出てもすぐに枯れるという現象だが当然だな。なんだ? この瘴気は・・・
流石に機能のダンジョンで見たあのオーガのような瘴気と比べれば弱弱しい限りだがそれでもただの植物にとっては百害あって一利もねぇ害悪でしかない。
「『パージ』」
聖属性魔法で正気を浄化。
「『クリエイトプラント・アップナー』」
木属性魔法で食える植物を適当に生やしておく。この時、ストレージからあの森で食っていた果物の種を握っているとその果物の詳細な情報とその果物を育てる際にどうしたらいいのかを知ることができるのが分かった。
ついでにこの木属性魔法で品種改良することで普通であれば年単位の時間がかかるところをほんの数日で終わらせてしまえるというのだからつくづく魔法とは常識外れだと思った。
オレの所業に理解が追いつけないのか「え? え? え?」と壊れたスピーカーのように繰り返してるが知ったこっちゃねぇ。オレはオレのやりたいようにやる。
今回オレが協会に寄付なんてしようと思ったのも女神から仕事の一つに人々にプラスのアルファメスを出してもらうために希望や勇気と言った良い感情を与えるために過ぎない。別に善意でやってることじゃない。まぁ、小さい子供たちが無邪気にはしゃぎまわっているのは見てて悪い気はしないけど・・・
さて、あれからのことをまとめておくとあの後シスターにはもの凄く感謝された。まぁ、単純に食いものがただで手に入るようになったんだから喜ばれるに決まっているよな。
それからそもそもこの孤児院はどうしてこんなにさびれているのも訪ねて一通りの話も聞いたんだが
どうにもその顔役が怪しい。
そもそもこのシスターがこの孤児院を開けたのもその顔役がこの教会の事を教え、周りにも紹介したからこそ孤児院を開くことができたみたいだが
なんでその暴力団的組織の事を知らなかった?
仮にもこの街に顔が利く重役であるならばその手の輩が出たとしてもある程度事前にそのことを知りえたはずだ。
何でそれが分からなかった?
そういった情報把握ができないような凡夫な人間だった? 仮にも顔役として住民から慕われるくらいの器量の持ち主だったのに?
その組織が貴族や権力者の賛歌に入っておりその顔役の手が出さないところから攻撃されている? たとえそうだったとしても宗教施設を攻撃して何の利益がある? 国に、それも歴史ある国にとって斬っても切れぬもの、それが宗教。仮にもその国に所属している貴族がそんな宗教やその団体を敵に回すような行動をとるか? 周りの貴族から総スカンを喰らったらもうやっていけなくなるだろうに
クソ、分からん
これ以上考えても机上の空論にすぎん。
そう結論付けたオレは心配するシスターに大丈夫だと伝え、昨日ギルドで支払われた報酬と森で得たボアやブル、バイパーなどの肉を寄付した。
ぶっちゃけ言って解体するのも面倒くさかったので孤児の中から解体や冒険者業に興味のあるやつに解体用にナイフを持たせ、横でオレが実際に解体して見せながらどうやれば肉がよりよくとれるのか。骨に余計な肉を残さないコツは何なのかを教えていった。
四匹分のボアをダメにした辺りでそこそこ解体がこなせるようになったのでもうワタシてあるナイフとは別にもう二本ナイフを渡した。
一本はなめし用のナイフ。解体の時に皮にこびりついた肉片や油かすなどをこそぎ落とすためのナイフ。たとえそれからの鞣し作業ができなくともそうやって肉片も油かすもこそぎ落とした状態でギルドなどに持ち込めば普通よりもちょっと高めに買い取ってもらえるし、革細工職人も元に持ち込めば普通よりも格安で革製品を作ってもらえるはずだと教えた。教えられた子供は真剣そのものにオレの話を聞き、早速渡されたナイフで自分が解体した皮をこそぎ始めた。
二本目は戦闘用のナイフ。子供の内から大人用の普通の武器を振るうことはできない。費用云々ではなく体の大きさ的に不可能なんだ。だからこそその小さい身体でも十分に扱えるナイフを渡した。冒険者になるのであれば武器は必須。ホントは防具も渡してやりたいところだが流石にそれは優遇しすぎ
この子はオレがたまたま目を付けただけで知識や武器が手にはいたんだ。もうこの時点で宝くじに当選したようなもの。
これ以上優遇してこの子が冒険者になっても長続きせずに死ぬだけだ。
もう十分すぎる程に優遇した。
これ以上はこの子をダメにすることになる。
だってそうだろ?
戦場で優遇されるなんてことある訳がねぇ。
自分にとって都合がいい事が起こるなんて考えてるやつは現実を舐めて死ぬ奴だけだ。
今回の知恵に武器だけでもこの子の将来にとても役立つはずだ。今はこれで満足してもらおう。
尾下子以外にもナイフが欲しそうな子はいたが流石にもうこれ以上ナイフは持っていないと嘘をついた。ホントはストレージの中にまだまだナイフはある指南ならあの森で死んだ冒険者が使ってたんであろうミスリル性のバトルナイフまである。
だが今回は一番年長であろう男の子に渡した鉄製のナイフ三本で良しとしてもらおう。
こうして俺は孤児院を後にした。
さて、これからクエストだな。
偽善ごっこ。そう今回この孤児院でオレがやったことはただの自己満足にすぎないんだ。今日ここで会えたのも何かの縁。あぁして教えた知識やナイフでこれからはちょっとはましな人生を歩んでほしいモンだ。
会社での人事異動の結果。なぜか大量仕事が舞い込み、この引継ぎと効率化に追われています。
次回はいつも通りに五日には投稿したいのですが、もしかしたらこっちも投稿も見直すことになるかもしれません。
次回の投稿にはそこら辺がハッキリしていると思うので是非ともお待ちいただきたいです。




