第五十七話 いやな予感と巨人軍襲来
さて、気を取り直してさらに次の階層へと向かったんだが、みんなさっきのオーガのことが気になっているのかどこか上の空になっているのが気になった。
二呪一階層からは昨日とほとんど変化が無かった。ゴブリンがいなくなった代わりにオーガが良く出現するようになりオークも進化した上位種ばかりになっている。
闘気はもちろんキャリーでもきついか? と思ったが
「ゴッ!」
棍棒でオークのひざをへし折って倒れさせる闘鬼。
そしてそこに全速力で突撃し、轢殺させるキャリー。二人一組で行動することでどうにか上位オーク一匹と張り合えてる。
リナの方はオーガを相手どってるがコッチは相変わらず安定していて問題なく対応できている。まぁ、いくら数がいようが森で倒したオーガエンペラーには遠く及ばないような下位種族なので当たり前と言えばそれまでなんだがな
先生とオレは監督。危険と判断すれば即座に魔法で援護に入れる準備を固めてるがこの分だとどっちにも必要ないな。
《闘鬼》 種族:ホブゴブリン 性別:オス 職業:戦士 年齢:1日
レベル:12 魔力:33 攻撃力:57 魔攻撃:19 防御力:54 魔防御:42 敏捷性:58 運:30
《装備》鬼の金棒 鬼鉄斬斧 鉄のスティレット 中鬼の皮鎧
《魔法》無属性魔法:初級 火属性魔法:初級
《スキル》暗視 繁殖 魔力操作 気力操作 鈍器術:初級 斧術:初級 剣術:初級 体術:初級 剛力 頑強 機敏 連携
《称号》闇の眷属 大樹の加護を受けし者
《信頼度》100%
《キャリー》種族:ゴーレムブラッドキャリッジ 性別:無 職業:無職 年齢:2日
レベル:2 魔力:26 攻撃力:145 魔攻撃:13 防御力:105 魔防御:21 敏捷性:175 運:19
《装備》無し
《魔法》無属性魔法:初級
《スキル》魔力操作 気力操作 運転 悪路走行 衝撃耐性 剛力 機敏 精密駆動 拡張 突撃 連携
《称号》大地の眷属 大樹の加護を受けし者
《信頼度》100%
進化完了していた。キャリーのステータスはスピードの敏捷性が最も高く、それを生かした突撃をよくするので攻撃力。そしてそれから発生する衝撃に耐えるために防御力が向上しているんだな。
逆にそれ以外のステータスにほとんど変化がねぇ上に後から参戦した闘鬼にも負けている。まぁ、もともと荷物持ちとしてキーパーに創造させたモンスターだ。あれもこれもと期待をかける方が残酷だろう。うん。
闘鬼の方は順調だな。スキルも増えているし、ステータスも順調に伸びている。上位種だったとはいえオーク一匹でこの伸びしろとは
幸いこのダンジョンにはまだまだオークもゴブリンもいる。もしかしたらオーガも相手どれるかもしれない。そうなればまだまだ伸びることができるはずだ。
そして・・・
やってきた二十五階層
「前回はここに強いボスがいたんだが今回は・・・」
ハッキリ言って前回以上だ
ボスであるトロールは前回討伐した個体より装備が充実していてる上にトロール自体もより洗練された武人の気配が漂っている。
さらにその配下もぐれーづが上がっている。オーガ、オーク、ゴブリンのそれぞれの上位種たちが自らの配下を統率しておりそれぞれの指揮をも担っている。
つまり、トロールが最高指揮官であることには変わりないがオーガ、オーク、ゴブリンがそれぞれ独立した戦力でもあると言う事だ。
「ゴブリンは闘鬼とキャリー。オークはリナ。残りはオレが引き受けた」
オーガの上位種が率いる群れとトロールへと突撃した。
《闘鬼》 種族:ゴブリンウォーリアー 性別:オス 職業:戦士・闘士・戦騎士 年齢:1日
レベル:22 魔力:83 攻撃力:167 魔攻撃:69 防御力:154 魔防御:62 敏捷性:158 運:30
《装備》鬼の金棒 鬼鉄斬斧 鉄のスティレット 魔獣の皮鎧
《魔法》無属性魔法:初級 火属性魔法:初級
《スキル》暗視 繁殖 魔力操作 気力操作 鈍器術:中級 斧術:初級 剣術:初級 体術:初級 剛力 頑強 機敏 連携 激怒 狂乱
《称号》闇の眷属 大樹の加護を受けし者
《信頼度》100%
《キャリー》種族:ゴーレムブラッドキャリッジ 性別:無 職業:無職 年齢:2日
レベル:29 魔力:26 攻撃力:175 魔攻撃:13 防御力:135 魔防御:21 敏捷性:205 運:19
《装備》無し
《魔法》無属性魔法:初級
《スキル》魔力操作 気力操作 運転 悪路走行 衝撃耐性 剛力 機敏 精密駆動 拡張 突撃 連携
《称号》大地の眷属 大樹の加護を受けし者
《信頼度》100%
結果発表~~~ッ! てか
闘鬼の方は無事に進化できたがキャリーは進化できてない。
レベルの方は上がっているし、そのうち進化するだろうとは思うんだが・・・
あ、ちなみにリナの方も順調にレベルが上がっているらしく
《リナ・カウリア》 種族:高位獣人族・牛種 性別:女性 職業:守護戦士・格闘師・槍戦士 年齢:15歳
レベル:20 魔力:2000 攻撃力:4000 魔攻撃:2000 防御力:3900 魔防御:3000 敏捷:3900 運:601
《装備》女帝豹の羽織 大地精と大風精の戦乙女装束 牛人族女性専用の下着 水龍と水面の乙女の戦槍 シルフの耳飾り 詐欺師のブレスレット 万人力の腕輪 サバイバルスパイク
《魔法》無属性魔法:最上級 水属性魔法:中級 風属性魔法:中級 土属性魔法:中級
《スキル》斧術:中級 槍術:最上級 槌術:中級 体術:中級 魔力操作 気力操作 剛体法 超集中 肉体活性 苦痛軽減 怪力 瞑想 気拳法 房中術
《種族固有スキル》闘獣化 受け継がれる血脈
《奥義》明鏡止水 重撃無双 光貫く螺旋突き
《称号》一族の護り手 英雄憧憬 不屈 槍の達人 斧の一人前 槌の一人前 拳鬼 超人の婚約者
現在のステータスはこんな感じ
うん。順調そのものだ
オレと比べると若干ステータスの伸びが悪いようにも感じるがそこはオレがおかしいのだと納得しよう。
あ、ちなみにのちなみにオレもレベルが上がりました。
昨日のハイ・フォモールと剣魔豪鬼との戦い以来のレベルアップだ。やっぱりダンジョンにいる魔物はそれ以外にいる魔物よりレベルアップに向いているような特徴でもあるんだろうか?
そんなことを考えながらやってきました三十階層。
ハイ・フォモールと剣魔豪鬼の二体と戦った場所だ。オレでも足手まといをかばいながらだったとはいえ苦戦した場所なだけに警戒を怠るべきではないだろう。しかもこれはオレが単独で来た場合の話だ。今はリナや先生はともかくキャリーに闘鬼までいるんだし、余計に気が抜けない。
目の前にそびえたつ扉を睨みつけつつそう思う。
オレは半ば覚悟を決めて扉をあけ放った
『フォモールウィザード Lv609』
『鬼天狗 Lv622』
「やっぱりかッ!」
オレは覚悟していた通りの事態になったことを嘆き半分に叫び、レオルドを握りしめて突撃した。
『山羊頭巨人魔術師の杖』・・・特殊級装備品。フォモールウィザードの所有していた杖。フォモールの巨躯に見合う大きさの杖。魔法の威力を増幅させる効果がある。
『鬼天狗の馬上槍』・・・伝説級装備品。鬼であると同時に天狗でもある鬼天狗が所持していた巨大な槍。大きさに見合う重量を持ち、それ相応の攻撃力を有する。風属性魔法との親和性があり風属性魔法発動に際し、魔法威力向上と共に消費魔力一割減の効果を持つ。
戦利品ゲット。
流石にキャリーと闘鬼は剣が下ったけどリナには参戦してもらった。リナはオレの予想以上に成長しているようで最初はどちらか一体を相手に数回打ち合うことで時間稼ぎができればそれでいいと考えていたんだが、フォモールウィザードの懐へと飛び込んで槍を片手に暴れまわることで時間を稼ぐどころか順調にダメージを稼げ、終いには討伐して見せた。
オレがしたことと言えばフォモールウィザードの魔法を相殺することでリナが飛び込めるタイミングを創ったことだけ
フォモールウィザードに関してはもうほとんどリナだけで討伐して見せた。
おかげでオレは鬼天狗とやらだけを相手取れた。
鬼天狗というのはどうやら鬼系統の魔物であるのと同時に天狗でもあるらしい。どっちなのかはっきりしてほしいが鑑定結果にそう記載されているので仕方がない。鬼と天狗の両方の性質を持っており、天狗、妖怪の頭目とされているだけあって「個」の強さはもちろん引き連れていたオーガやゴブリンなどの鬼系統の魔物たちを指揮する「軍」の強さもスバ抜けていた。
最弱のゴブリン系統だけは闘鬼たちに任せられるかと思ったんだが、最弱な個体ですら素で闘鬼と同等かそれより少し下。鬼天狗大将の指揮が加わることでさらに上乗せされたので速攻却下した。もともと頭の片隅にあった考えだったんだがまず勝てないので却下だった。
『レベルがアップしました。レベルがアップしました。レベルがアップしました。』
《松田 太一》 種族:超人類 性別:男性 職業:自然の守護者・斧滅師・魔王殺しの英雄・秘宝の守護者・開拓者・格闘師・武士 年齢:15
レベル:120 魔力:401000 攻撃力:900000 魔攻撃:390000 防御力:7800000 魔防御:750000 敏捷性:7700000 運:143470
《装備》金色獅子神の極戦斧 鬼帝の戦装束 不労と不滅の新緑手袋 獣帝の袴 天空帝の靴下 守護神の不壊鎧<一式> 竜麟尾翼のベルト 洗練された上質な下着
《魔法》土属性魔法:極 火属性魔法:極 水属性魔法:極 風属性魔法:極 無属性魔法:最上級 光属性魔法:上級 雷属性魔法:中級 闇属性魔法:初級 氷属性魔法:初級 木属性魔法:初級 聖属性魔法:初級
《魔術》土属性魔術:上級 火属性魔術:中級 水属性魔術:中級 風属性魔術:初級
《スキル》斧術:極 剣術:最上級 刀術:上級 長柄術:最上級 体術:極 瞑想 索敵 隠形 魔力操作 気力操作 無詠唱 剛体法 鬼門法 竜気法 仙法 魔拳法 付与 大地の息吹 蒼天の大海 浄火の導き 可能性の卵
《ユニークスキル》超健康 アイテムストレージ 第六感 限界突破 ???(鑑定不能) 可能性の卵
《種族固有スキル》強靭たる超人の肉体 高速思考 傷付かぬ超人の硬皮
《魔眼》世界眼
《奥義》斧身一体 斧斬滅殺 富嶽抹消斬 静動一身 獣牙咬合拳 爆斧如脚 居合斬り・滅
《流派》ゼオゲンダー戦斧術:免許皆伝
《称号》絶望に打ち勝つ者 稀代のギャンブラー 斧神 拳神 刀剣の達人 槍の達人 長柄武器の達人 刀鬼 異世界人 鬼殺し 竜殺し 不死者殺し 魔王殺し 大物食らい 魔法の探究者 真理を追う者 魂の救済者 ダンジョン制覇者 大地に愛されし者 大海原に愛されし者 護火に愛されし者 神風に愛されし者 牛人族の救世主 魂の救済者
《リナ・カウリア》 種族:高位獣人族・牛種 性別:女性 職業:守護戦士・格闘師・槍戦士 年齢:15歳
レベル:32 魔力:3200 攻撃力:6400 魔攻撃:3000 防御力:4300 魔防御:2800 敏捷:5900 運:610
《装備》女帝豹の羽織 大地精と大風精の戦乙女装束 牛人族女性専用の下着 水龍と水面の乙女の戦槍 シルフの耳飾り 詐欺師のブレスレット 万人力の腕輪 サバイバルスパイク
《魔法》無属性魔法:最上級 水属性魔法:中級 風属性魔法:中級 土属性魔法:中級
《スキル》斧術:中級 槍術:最上級 槌術:中級 体術:中級 魔力操作 気力操作 剛体法 超集中 肉体活性 苦痛軽減 怪力 瞑想 気拳法 房中術
《種族固有スキル》闘獣化 受け継がれる血脈
《奥義》明鏡止水 重撃無双 光貫く螺旋突き
《称号》一族の護り手 英雄憧憬 不屈 槍の達人 斧の一人前 槌の一人前 拳鬼 超人の婚約者
うん。並べると余計にオレがどんだけぶっ壊れてるかがわかるし、それ以上にこのステータスで苦戦する方がおかしい。
多分オレは急にステータスが上がった影響でちゃんと使いこなせていないんじゃないか?
あの森で一年以上も戦ってきたことで地球にいた頃とは比べ物にならない程の身体能力は有しているだろうがそれでもここ数日で一気にステータスが向上したせいでコントロールが乱れてるんじゃないか?
だとすれば
「このダンジョンはオレにとってもチャンスなのかもしれないな・・・」
「なにが?」
「いや、な? オレはここ数日でステータスが急上昇したせいか十二分に使いこなせていないんじゃないかと思ってな。そうだとすればここからさらに深い階層へと行けばオレの修行にもなるなと思ってな」
「え? アンタ、今以上に強くなる気?」
リナの驚いたような声にオレは呆れ半分な気持ちになりながら答える
「強くなるというより自分が持っている力をより使いこなすと言う方が正解だな。どんなに素晴らしい力を持っていようと使いこなせていなければただのお飾りにしかならん」
「正論ですね。特に魔法は細かい魔力運用も必要ですし、日々の鍛錬や研鑽は絶対必須です」
先生がオレの言葉に乗ってくれた。
確かに初級魔法とかは大雑把に魔力を込めても問題ないけど上級以上になればキチンと的確に魔力を込めなければ最悪発動しないし、発動したとしても威力が弱い。もっとひどいことになれば込めた魔力が逆流して自分や周りに炸裂する事故を起こす。
魔力操作は例えスキルを覚えていたとしても感覚によるところが多くあり、ただ漠然とスキルを行使するんじゃなくてキチンと目的とそのための必要量の調節などを考える必要がある。
そのために必要な感覚を養い、そして衰えさせないためにも実戦経験と日々の訓練は必要不可欠なものだと思う。
さて、あれから踏み込んだ三十一階層。
ここからは巨人も出現するようになった。
巨人、書いても字のごとく大きな身体を持つ人型の魔物はその巨体に見合うだけの膂力を備えており、簡素な気の棍棒、上位種らしき個体のその体型に見合った金棒がせいぜいで特に特別な効果を持っているわけじゃないんだ。
こう聞くと何だが弱いように思われるかもしれないがその威力は圧巻の一言。
細かな戦術もちまちました小細工も全くいらない純粋極まるパワーですべてを解決させてしまいかねない理不尽なまでの物理的攻撃力。当たらなければどうと言う事はないんだが、逆に言えば当たりさえすればそれだけですべてが終わる。
そんな攻撃力を誇る巨人がいた。
もちろんこれまでもいたオークにオーガやフォモールもいる。
もうこの階層にはただのオークやオーガは一匹もおらず、すでに複数回は進化したことがうかがえる上位種のみがいた。
ミスリルかもしくはその合金で創られているのであろう金属甲冑に身を包み、歴戦の風格漂う片手斧と己の身をすっぽりと覆えるほどの大盾を装備しているオーク。
和風で趣のある着物に人間ほどに縮んだ身を包み、磨き抜かれヘタな鏡よりも映りのよさそうな穂先を持つ槍を携えたオーガ。
簡素ではあるが金属製の胴鎧で心臓を護る程度の防具に多節鞭や杖などを装備をしているフォモール。
これらがこの階層にいた魔物たちだ。もちろん個体によって装備は少しずつ変わっていたが特に印象に残っていたのがこの装備を持つ個体だった。全部もれなく何らかの効果を持つ装備品だったので遠慮なく全部戦利品としてもらっておく。
鑑定してもいいけど今はそれよりも次の魔物討伐へと向かうべきだろ。
ちなみにここからは主にオレが戦っている。今まではほとんどをリナたちに任せっきりで正直退屈していた上に自分の力をコントロールするためという目的までできてるんだ。気合もやる気も入りまくろうという物だ。
三十一階層から三十九階層までがひたすら魔物を討伐してごくたまにおられている宝箱らしき箱や宝物庫、もしくは武具管理室らしき部屋の物を洗いざらいすべてストレージに収納した。
そんな調子でやってきた四十階層。
ココにはどんなボスがいるんだ?
恐ろしさ半分、楽しみ半分の気持ちで扉を開け
『ノーブルジャイアント Lv610』
『鬼武者 Lv599』
「先手必勝ッ!」
レオルドを握りしめて突進した。
オレの突撃にいち早く気付いたノーブルジャイアントは自身が引き連れていた数匹の巨人を指揮し、その中で巨人が持つにしては少し小さめの盾を装備している個体が前面に展開。盾を構えた時に単独で行動するらしい鬼武者が携えていた刀を抜き放ち、こちらへと向かってきた。
「迎え撃とう、てわけか? 上等だッ! 受け止められるものなら受け止めてみろッ!」
気合一閃でレオルドを遠慮なく振り抜き、向かってきた鬼武者がそれを刀で受けるが受け切れず吹き飛ばされた。
追い打ちをかけるべく踏み込んだオレだが盾を装備した巨人の一体が間に割って入りまだ力が十分に入り切れていないレオルドを受け止めた。
全力ではないとはいえ、オレの攻撃を受け止められたことに少々ムカッとしてその体勢のままで再びレオルドを叩きつける。
今度は十分に力が入っていたからいとも簡単に盾巨人を吹き飛ばせた。
今度こそ追い打ちをと思うんだが、また別の個体に阻まれることを想定して、特に今まで意識していたわけでもないが魔法を行使する。
「『アースプラントパイルダンス』ッ」
土属性魔法と木属性魔法の複合魔法『アースプラントパイルダンス』。
地面から岩石と樹木の杭がものすごい勢いで伸び、効果範囲内に存在する敵を串刺しにする魔法。
この魔法で吹き飛ばしていた盾巨人はもちろんオレの予想通りに割って入ろうとした別の盾巨人にもダメージが入った。
「『フレイム』ッ!」
火属性魔法でさらに追い打ちをかけつつ割って入りそこなった盾巨人に襲い掛かったが
「流石にそこまで甘くねぇか・・・」
魔法使いらしい杖を持ち、ローブを羽織った巨人二体がそれぞれ炎の塊と氷の塊を盾巨人の影に隠してオレに見えないように打ち出していた。慌ててオレも火属性魔法を氷の塊に、水属性魔法を炎の塊にぶつけ相殺させた。
辺りに水蒸気が立ち込め、視界が悪くなった。索敵魔法を展開。これで周囲の情報を入手できる。どうやら魔法使いの巨人も似たような魔法を展開しているようで迷わずオレへと向けて第二弾を発射した。向かってくる方向と魔力量の大きさは分かるが流石にどの属性魔法かまでは分からないので回避する。
水蒸気を切り裂いてやってきたのは雷属性の魔法だった。どっちの個体が放った魔法だったのかはわからないが雷が来た方角へオレも火属性魔法を放つがこれは盾巨人。それもオレに追い打ちをかけられていた方の個体に防がれてしまっていた。
脚は串刺しにされ、血がとめどなく流れ落ち、今にも死にそうな風体だが構えた盾だけは威風堂々としていてとても今にも死にそうには思えない。
大きい奴はそれ相応に生命力が強い。このダンジョンにいる魔物は鬼系統と巨人系統であり、この二つは総じて生命力に優れている魔物ばかりであることが特徴だ。
おろらくこの盾巨人も盾役にふさわしい生命力を持っておりこのまま放っておけば串刺しにされた脚も完治してしまうだろう。
だから
「そうなる前に止めを刺す。『ボルカニックインフェルノ』ッ!!」
火属性魔術を行使して盾巨人を焼き尽くした。高熱すぎて赤ではなく蒼い炎へと変わっている噴火炎は生命力に優れている巨人をいとも簡単に焼き尽くし、たまたま効果範囲から出ていた盾だけが無事だった。
突然盾巨人を失ったことで動揺が激しい魔法使い巨人。
すかさず追い打ちをかけたいが
「そりゃ来るわな」
水蒸気など関係ないと言わんばかりに突撃してきたノーブルジャイアントとその側近ら指揮巨人たちに苦笑いが出た。
ノーブルジャイアントは並の巨人より5割増しで大きい身体を有し、仕立てのよさそうな上質な外套を羽織り、胸には勲章や指揮飾りと基本的に腰巻しか身に付けていない巨人では珍しい半ズボンにタンクトップ、それからかかとやつま先に足の甲を板金で補強している革製のブーツを履いている。
服装だけでも並の巨人ではないことが明らかであり、それは武装から見ても同様であった。
その巨体に恥じない膂力を十全に生かすためであろう巨人基準の大斧。並の巨人より5割増しで大きい身体を持つノーブルジャイアントが持っていても大斧と言わしめる巨大な斧である。
普通に鉄製ではない。ノーブルジャイアントが持つ魔力ではなく斧そのものが放つ魔力量か察してミスリルとアダマンタイトによる合金製の魔法媒体。もしくはオリハルコンをも含んだ物理魔法攻撃両用の武器であると見た。
その服装武装共に充実しているノーブルジャイアントに付き従うのはそれぞれ接近戦用武器を携える屈強な巨人たちだ。
まず一番小柄な巨人が腰に差していた投げナイフを数本投擲してきた。小さい投げナイフ(巨人基準で小さいであって人間基準ではバスターソード並みの大きさ)が四本も一気に襲い掛かってきたがここでオレが引いたら投げナイフのうち一本はリナたちの方へと行きかねない。
故に退けないッ!
レオルドを握りしめて投げナイフを一本一本弾き飛ばす。ステータス向上の恩恵なのか思いのほか手にしびれが来なかった。
投げナイフを投擲するために足を止めた巨人を追い越して今度は槍を構えていた巨人が飛び出してきた。踏み込みから一気に槍を突き出すスピード。そして槍に込められている力。さらに穂先を全くブレさせず、威力を損なうことなく発揮させる技術。どれをとっても素晴らしい。文句のつけようがない。
紙一重で躱しても槍が巻き起こす風に足を取られ、後続の巨人たちの攻撃を防げなくなると思ったオレは敢えて上へ跳んで槍が巻き起こす風に身を任せた。
いつの間にか習得していた称号『神風に愛されし者』の効果なのか? 風はオレの望むとおりに我が身を運び、ちょうどオレが宙返りする格好になった。そしてオレの脚が天へ向いた時を見計らって
「【爆斧如脚】ッ!!」
斧の振り下ろしに等しいかかと落としが槍巨人の額にめり込み、爆発が炸裂した。槍が手から零れ落ち、両ひざをついて倒れそうになった槍巨人を
「【豪一閃】ッ!」
首を切り落として討ち取った。
『『オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!』』
槍巨人が打ち取られたことに怒り狂ったであろう咆哮を挙げて突進してきたのはそれぞれ大剣を構えた二体の巨人だ。
大剣巨人たちが示し合わせたように横薙ぎの攻撃を繰り出した。ちょうどオレで互いの武器が交差するようにだ。
左右どちらかに逃げればより近い巨人の大剣が襲い掛かる。たとえ大剣自体が当たらなくとも槍の時と同様に巻き起こされる風がオレの動きを縛る。二段構えの作戦になっているわけだ。
おまけにまた上へ跳ぼうとすると今度はノーブルジャイアントの大斧が迫ってくるんだな。
ノーブルジャイアントはそれを見ているだけで何もしない。だがそれは怠けているからではない。オレの出方をつぶさに観察しているからだ。
槍巨人の時にオレが上へ跳んで反撃したことを見ていたノーブルジャイアントはオレがまた同じ手を使ってきた際に自分がその大斧でオレを叩き斬るつもりなのだろう。背負った大斧に手をかけているところから見てまず間違いない。
つまり、上へ跳べば今度は大剣巨人よりも力強いであろうノーブルジャイアントの大斧による一撃をまともに受けることになる。
逃げられない。そう考えるのであろうよ。普通であれば
「ッ!」
『ッ!』
上へ
ノーブルジャイアントの首の高さまで跳んだオレにノーブルジャイアントは予想通りに大斧を振り上げた。
「予想通りだな」
『ォ? オオオウっ?』
忘れてもらっては困る。オレには
『天空帝の靴下』・・・神話級装備品。かつて天空を支配していたとされる伝説の魔物。『スカイカイザードドラゴン』の鎧皮を加工してく釣られた靴『空帝のブーツ』がダンジョンコアの破壊よって変化した靴下。使われていた素材が糸へと変換される過程で攻撃する性能は失われたが代わりに敏捷が大幅に向上し装備者が手をつなぐことでその対象にも空中に足場を形成して走ることができる効果が追加された。
この装備があることを
空中で足場を形成して走れる効果を与えてくれる天空帝の靴下。コレのおかげで空中戦も地上戦と変わらない戦い方が戦える。
「【大地激震】ッ!!」
レオルドがノーブルジャイアントの肩をしっかりととらえたかと思ったがノーブルジャイアントがその巨体に似合わない機敏な動きで躱して見せた。
「『アクアランス』」
水属性魔法をノーブルジャイアントの顔面に命中させ、ノーブルジャイアントがつい反射で水を拭おうと片手を上げた瞬間に
「【真空螺旋鎧通し】ッ!」
ストレージから取り出した破魔槍ラカンを闘技で投擲し、ノーブルジャイアントの喉を貫いた。
喉を貫かれたノーブルジャイアントだが、巨人の生命力ではこの程度では死なない。直に何事もなかったかのように回復するだろう。
だがしかし、回復しきるまでの間にノーブルジャイアントが配下たちに何かしらの指示が出すことはできなくなったはず
実際に配下たちの様子を窺っても混乱してるのが見て取れる。
1、自分の長の身を案じていち早くオレから遠ざけようとするヤツ
2、自分の長に傷をつけた気に入らない虫けらを駆除しようとするヤツ
3、この両極端の行動を始めたやつらのどっち行動を支持すべきか迷うヤツ
大きく分けてこの三パターンに分かれた。
優秀な上司に率いられていた群れであればあるほどこの混乱で生まれた時間は何よりの命取りだ。隊列が崩れ、個々の役割を果たせなくなった集団などただの烏合の衆だろう
その間、ノーブルジャイアントが率いていた群れは放置していても構わないわけだ
「つまり、テメェが相手だッ!」
なぁ?
鬼武者よ?
水蒸気が立ち込めていた中、索敵能力に乏しいのかほとんど参戦してこなかった鬼武者。
ノーブルジャイアントが喉を貫かれ、率いられていた群れが秩序を失い混乱してきた時には大分水蒸気も晴れてきており、索敵魔法がなくとも十分周囲の様子を把握できるようになると鬼武者が今まで参戦できなかった鬱憤を晴らすと言わんばかりに斬りかかってきた。
空中になっていたオレに一撃加えるために勢いよく跳んで放たれた一撃は確かにオレの脚を捕らえそうになっていたがレオルドを振るい、鬼武者の刀を弾いた。
刀を弾かれた鬼武者が崩れた体勢のまま後転受け身で地面へと戻った。このまま空中で魔法を打ち込み続ければオレが勝つ。
そう。このまま鬼武者が何の対策も講じなければな。
「そら来たッ!」
オレに向かってきた巨人と結託して再び空中へと舞い戻ってきた鬼武者を見てオレは笑った。
ノーブルジャイアントという頭目がいまだに回復しきれていない現状において、その原因であるオレの排除こそが最優先であると判断したのであろう大剣巨人
大剣巨人が今までオレに向かってこなかったのは鬼武者が邪魔だったからでもましてや一対一を尊重したからでもなく、オレが警戒していたことを察していたからだろう。
槍巨人という同胞を失い、自分が付き従っているノーブルジャイアントにまで危害が加えられた以上。もう目の前にいる虫けらをザコだなんて思えない。だからこそオレに警戒されていることが分かっていたから仕掛けられなかった。
と大剣巨人の心境を分析するとこんなところか?
そんな大剣巨人だが、どうやらオレへの偵察をやらせるのが目的で鬼武者と手を組んだようだ。そして鬼武者も大剣巨人の魂胆は見抜いている。そしてそれをも利用する気で手を組んでいるのであろう。
具体的には大剣巨人がその膂力と体型を生かして鬼武者を野球ボールのノリで空中へと投げ飛ばし、オレがどのように対応するのかを観察しながら鬼武者の攻撃で高度が下がったオレを狙い打とうという作戦なのだろう。
鬼武者はこのことに気付いていてわざとオレの頭上へと飛び上がり猛攻を仕掛けることで否が応にも大剣巨人の思惑に気付かせようとしているんだな。
まぁ、鬼武者を投げるのはあくまで大剣巨人だからオレと同等の高さまでしか投げてもらえてないけどな。あ、しまった! と言いたげな表情だった鬼武者を見ると恐らくそうだったんだろう
思考が乱れた隙に遠慮なく斬りかからせてもらうぞ?
オレの斬撃に間一髪で耐えた鬼武者。そう。オレと同じように空中で自由の利く装備品もない状態で拮抗状態になったんだ。
当然の事前の法則により落下を始める鬼武者。つまり、鍔迫り合いの状態で勝手に落ちていく鬼武者とその鬼武者を抑えつつ体勢を変えるオレという状況が生まれ
大剣巨人の視点では鬼武者がオレの盾になって攻撃できないという結果ができる。
「さぁ、どうする? このまま遠慮して攻撃しないのか?」
まぁ、攻撃するときはまず、鬼武者に攻撃が当たるんだけどね?
大剣巨人は迷うことなく攻撃してきた。
「あぁ、そうゆう選択肢ね。ハイハイ・・・」
正直気分が悪い。コレは問答無用の殺し合いで打てる手は何でも打つべきなのは十分わかってるつもりだ。でも、それイコール一度は協力し合おうと決めた相手を自分勝手に捨てる行動を許すことじゃねぇだろ・・・!
怒りの感情がオレの中で暴れくるってるのがよく分かる。まるで体内に暴風雨が吹き荒れているようだ。だがその暴風雨にのまれること無く、それでいて押さえつけることなくその力を利用する方法がある。それは
「【静動一身】・・・ッ!」
体内で暴れ狂っていた暴風雨が灼熱の焔になったように一気に体が熱くなった。なのに頭は極寒の氷原にいるみたいに冷え切っている。
余計な感情がいてついてくれたおかげで今ははっきり見える。眼前で繰り広げられている鬼武者と大剣巨人による仲間割れはもちろんオレの戦いを食い入るように見つめるリナや闘鬼、そしてこちらを呆れたように見ている先生も見えている。さらに魔法使い巨人によって喉の傷が順調に感知しつつあるノーブルジャイアントの様子まではっきりと見える。
「『神聖の焔』」
もうこの二体に手こずってる場合じゃない。
すぐにでも始末して次のノーブルジャイアントとの戦闘に備えるべき。
よって
現時点で火属性最強魔術である神聖の焔を使用し、この二体の魔物を焼き尽くすことが最善であると判断する。
今までのオレと打って変わった一手に戸惑った様子を見せた鬼武者と大剣巨人。
戦場においてその戸惑いは命取りだと来世では学んでおくといい。こんなことを考えながらオレの魔術が二体を焼き尽くしたのを見送った。
すぐさまノーブルジャイアントへと突撃する。
ちょうどノーブルジャイアントの傷も完治したようですぐに残りの巨人をまとめ、指揮を執る。
さぁ、最終決戦だ
ノーブルジャイアントの指揮のもとまず飛び出してきたのがもう一体の盾巨人。
その盾でまずは防御を固めるのではなく、盾打による攻撃でオレの意表を突こうとしているんだが、決定的に速度不足だ。
あんなに遅いのであればどうとでも対応できる。
眼前に迫りくる岩壁のような盾。そしてその盾が巻き起こす風の流れがこの身をオレの望んだ方向、場所へと運ぶ。
盾巨人の足元へとたどり着いたオレは基本に則って正確な姿勢で盾巨人の左足を斬り飛ばした。
「『ボルカニック』」
盾巨人の脚を斬り飛ばした勢いそのままに敢えて体勢を崩して拳を地面につけて発動させた火属性魔法『ボルカニック』によって全身を焼かれた盾巨人が崩れ落ちた。
体勢の崩れたオレに隙があると思ったのだろう。もう一体の大剣巨人とノーブルジャイアントが殺到してきた。
大剣と大斧が唸りを上げてオレに迫る。なるほど盾巨人の盾打よりはスピードのある攻撃だ。だが、これでも遅い。
普通の人間であればその武器の巨大さと巻き起こされている風におびえて動けなくなるか、後ろへ下がろうとするだろうが、それは悪手だ。
攻撃の受け手が下がると言う事は攻撃を放つ側が前へと詰めるチャンスを与えることになる。そうなると前進する分さらに勢いの増した攻撃にさらされることになり、さらに逃げざるを得なくなってしまうという悪循環ができてしまう。
よって
ココは敢えて前へ、大剣と大斧、そしてそれらの攻撃を繰り出す巨人の足元へと飛び込む必要がある。
冷静に大剣と大斧の動きをしっかりと見極めて必要最低限の動きで
躱す
大剣と大斧によって巻き起こされた風に身体の自由を奪われないために風と風の間。大剣によって巻き起こされた風と大斧によって巻き起こされた風が互いにぶつかり合って一時的に無風状態になったスペースへと滑り込むように移動する。
こんな芸当ができるのも称号『神風に愛されし者』の効果なのかな?
「【煉獄一閃】ッ!」
燃え盛る炎を宿したレオルドが振るわれ、大剣巨人の脚が切り飛ばされた。
突然片足を失ったことで体勢が崩れた大剣巨人だったが盾巨人が切り飛ばされていたところを見ていたからだろう。そこまで慌てる様子もなく斬り飛ばされた脚で大地を踏みしめることで体勢を整えた。それでも数コンマは隙があったんだがノーブルジャイアントがそのスキを突くことを許さなかった。
大斧を躱され、すぐさまに返しの一撃を放っていたノーブルジャイアント。その一撃はちょうど大剣巨人の脚を斬り飛ばしたオレを捕らえていた。
振り抜いたレオルドをどうにか大斧の軌道戦場に置くことで防御には成功したがその威力は想定を大きく上回っており、オレの身体が浮かされた。
すぐに風属性魔法と天空帝の靴下の効果で体勢を立て直しレオルドを構えるが、その時にはもう大剣巨人が体勢を立て直していた。
大剣巨人が空中に立つオレに攻撃を仕掛けるがやはり足がないせいか攻撃に力がこもっていなかった。ノーブルジャイアントはオレの回避先を予測し、そこに攻撃を「置く」ようにしている。このせいでかなり戦いづらいがもう慣れた。
ノーブルジャイアントの大斧をレオルドで受けた。
今までとは全く違う行動に面食らった様子のノーブルジャイアント。そのスキを突くと思ったであろう大剣巨人がフルスイングで大剣を振るうが
「それを待ってたんだよ。『這い寄る蛇雷』」
迫りくる大剣を直接手でつかみ、雷属性魔法を発動させる。雷属性中級魔法『這い寄る蛇雷』によってしっかりと握りしめていた大剣から電流が流れた大剣巨人は両腕から感電しつつも決して大剣を手放さなかった。それが単に魔法の効果によるものなのかそれとも戦士としての教示によるものなのかはわからないが、コレ最悪の悪手。
両腕が感電したことで身動きも満足に取れなくなった大剣巨人はオレに首を斬られ、打ち取られるほかなかった。
魔法使い巨人たちの回復魔法がいまさらながら大剣巨人へと届けられる。もうすでに打ち取られた後なので何の意味もない回復魔法だ。
おそらくノーブルジャイアントの本来の狙いは自分と大剣巨人が前衛を担い、魔法使い巨人二体で後衛を賄うことで攻撃、防御、回復、砲撃の四つを補う狙いがあったのだろう。
ところがその作戦には『攻撃を仕掛けたら人間は避ける』という前提があっての物。
実際はオレが攻撃されるたびに下がるのではなく踏み込むことで前衛との距離をなくすことで後衛の魔法使い巨人二体は援護も砲撃もままならず立ち尽くすしかなかったようだ。
だがもうそれもここまで
ここからは前衛を担えるのはノーブルジャイアントだけ。だからこそ後衛の魔法使い巨人たちも迷うことがない。主君に危険が迫れば加勢し、回復と補助を欠かさない。以上の点を踏まえればいいのだから迷う要素がない。
ノーブルジャイアントが大斧を振り下ろす。威力は絶大だろうがスピードが足らず、何より足元がおろそかなため大した脅威にはなりえなかったのがこれまでだが、もうすでに魔力を温存する気もないのだろう。魔法使い巨人の補助魔法がノーブルジャイアントに届き、ノーブルジャイアントの敏捷性ステータスを上げたのだろう。足りなかったスピードが補われ、脅威そのものになったノーブルジャイアントの大斧が迫りくる。
「【ワイルドメガスイングインパルス】・・・ッ!」
オレは今現在使える最大の斬り上げる闘技でレオルドを振り上げたッ!
オレのレオルドとノーブルジャイアントの大斧が激突し――――
――――オレのレオルドが振り抜かれた
ノーブルジャイアントの大斧が柄の半ばから折れ、打ち上げられた。
ノーブルジャイアントはそのことが信じられないようで折られた柄を不思議そうに見つめる。戦闘中ではありえないような隙だが、オレも自分がやったことが信じられず、尻もちをついていた。
いや、え?
確かさ、確かにオレは自分にできる最大限の闘技をを使ったよ? 普通の斬撃じゃ太刀打ちできなかっただろうし、中途半端な闘技は跳ね返されて終わっていただろうし。あのノーブルジャイアントの強化込みの攻撃は流石に厳しいと思ったからさ?
でもここまで強くなるものか?
「いや、違うな・・・」
奥義『静動一身』の効果で冷静そのものになってる頭脳と本能が猛り狂っているからだが教えてくれる。これこそがオレの本来の力なんだと
今までの攻撃は自身のステータスを極限にまで押さえ込んでいた状態だったんだ。
もともと格闘家でもなければスポーツ選手でもない。ただの一般人に過ぎないオレはこの一年と少しで急激に伸びた身体能力に心のどこかでブレーキをかけ続けてたんだ。そしていつの間にかそのブレーキをかけ続けている状態を素の状態だと思い込んでしまっていたんだ。
もともとステータスなんて表示されない世界である地球の出身であるオレはステータスに表示されている数字が具体的にどれだけの効果を発揮するものなのかが分からなかったんだ。
「だが、その枷が今外れた」
もう尻もちもつかない。踏み込む。
つま先で地面をしっかりとつかんで、力を込めて蹴る。
たったこれだけの動作で地面が陥没し、たったの一歩でノーブルジャイアントの喉元へと到着した。これもレベルアップによるステータスの恩恵なのか? 今は考える時間も惜しい。
踏み込みのエネルギーを損なうことなく攻撃に変換し、振り抜く。
ノーブルジャイアントの喉を引き裂くかと思ったが、ノーブルジャイアントがとっさに折れた大斧の柄を盾にしたせいで浅かった。それでも動脈を傷つけたのか血が恐ろしい勢いで噴き出した。
ノーブルジャイアントの血を見て慌てた様子で治療を施そうとする魔法使い巨人と己の主君を傷つけた敵を焼き殺さんと言わんばかりに攻撃魔法を連発して来る魔法使い巨人がいたが
「好都合だな」
またあの踏み込みを行い今度は魔法砲撃を刊行してきた魔法使い巨人に襲い掛かる。前衛であり運動能力に秀でているはずのノーブルジャイアントでも反応できなかったこの踏み込みに光栄である魔法使い巨人が反応できるはずもなく、懐への接近を許した。
「【ジャイアントスイング】ッ!」
片手でレオルドの石突を握り、石突を握る手とは反対の脚を軸に全身を使って大きく円を描くことで広範囲を攻撃する闘技で暴れ狂った。
足を
腹を
胸を
腕を
レオルドが切り刻んで首を跳ね飛ばした。
魔法使い巨人を討ち取った。次はノーブルジャイアントの治療に当たっている魔法使い巨人かあるいはノーブルジャイアントを狙う。
ちょうどノーブルジャイアントの治療が終わったようだが
「遅ぇよ『バーストフレア』」
火属性魔法がさく裂し、ノーブルジャイアントと魔法使い巨人にやけどを負わせた。
ひるんだ隙にまず魔法使い巨人に斬りかかり、レオルドを振るって打ち取った。もうすでに無手になっているとはいえまだまだ魔法使い巨人の残した補助魔法が効いていてステータスの高いノーブルジャイアント応戦しようとしたようだがどうすることもできずに討ち取られた。
『レベルがアップしました。レベルがアップしました。レベルがアップしました。』
「残心・・・」
呼吸を整え、猛り狂う本能を押さえ込むことで凍てつくように冷静だった頭脳もじんわりと熱が広がってきた。この感覚がこの奥義『静動一身』解除の証なんだろうな
『高貴巨人の大戦斧』・・・伝説級装備品。幼い頃より優れた教育と栄養豊富な食事を十分以上に与えられ大切に育てられてきた巨人の中でも尊き血を有する巨人が己のその膂力を十分に生かすためにあつらえた巨大な戦斧。ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトのほか複数の金属を用いた合金と希少な素材をもって創造されており、単純な武器としてはもちろん魔法場としても使用可能。巨人の中でもかなり大柄な上位種を基準に創られており人間では装備できない。刃は無傷だが、柄の半ばから折れている。修復は不可能。
『巨人の大盾』・・・特殊級装備品。巨人基準においても大きく頑強な大盾。タングステンを筆頭にとにかく強く重い事を基準に選ばれた鉱石と素材で創られているので非常に壊れにくい。物理はもちろん魔法においても耐性があり装備者の傷を回復させる効果を持つ。
『巨人の戦槍』・・・特殊級装備品。巨人基準にて創られた戦槍。巨人の膂力に合わせて創られているので非常に重く、穂先は鋭いが全体的に打撃武器としての適性が高い。
『巨人の魔法杖』・・・特殊級装備品。巨人基準にて創られた魔法行使に用いられる触媒の一つ。使い手の魔力を増大させる特別な鉱石が素材となっているが純度低く、魔法に関する触媒としては質が悪い。主に打撃武器として用いるべき
『巨人の大剣』・・・特殊級装備品。巨人基準にて創られた大剣。有り余る巨人の膂力を受け止めるために拵えられた体験は非常に重く、職人によってわざとガタつきのある刃は切れ味が悪いが大剣の重量と合わさって斬り付けた対象をえぐり取るように切ることを可能にしている。
『巨人の投げナイフ』・・・特殊級装備品。巨人基準にて創られた投げナイフ。巨人の膂力をもって投げるので投擲武器としては規格外の重さを持ち、刃先に返しがついているので一度でも刺さると抜けづらくなっている。
「戦利品はこんなところか・・・」
回収した破魔槍ラカンと一緒にストレージへと入れた装備品の鑑定結果を見ながらつぶやくオレ。
流石巨人基準というべきか一番小さいはずの投げナイフですらオレの背丈と同程度の大きさを誇っている。
とりあえず大斧はなにかに使えないかな? レオルドもいるし、オレが装備することはないだろうけど例えばキーパーに渡してある剣が壊れた時に渡せるんじゃねぇか?
なんて考えながらオレはこの戦利品たちの利用法を考えるのであった。




