第五十六話 新しいモンスターの召喚と再びのダンジョンアタック
今月二回目の投稿。
最近雨続きのせいか家の軒下にキノコらしき物体を見つけました。もうどうせネズミにでもかじられてるんだと思いますが季節外れに鍋が食いたくなった出来事でした。
《闘鬼》 種族:ゴブリン 性別:オス 職業:無職 年齢:一日
レベル:1 魔力:3 攻撃力:7 魔攻撃:1 防御力:4 魔防御:4 敏捷性:8 運:27
《装備》棍棒 鉄の斧
《魔法》無し
《スキル》暗視 繁殖
《称号》闇の眷属 大樹の加護を受けし者
《信頼度》100%
うん。ゴブリンにしました。一日考えて今日の朝決めた。
新しく召喚したモンスター、ゴブリンの闘鬼。何気にオレが召喚したモンスターでは初めての漢字の名前だったりする。
うん。コレはもう、あれだ。あの洞窟で戦った剣魔豪鬼の事が頭から離れずに選んだ選択だ。それにこれからオレ達が向かう洞窟はどう考えも鬼系統の魔物が多かったからこそコイツが学ぶべきことがたくさんあるに違いない。
そしてオレ、リナ、先生そしてキャリーに闘気のメンバーで昨日の洞窟へとやってきた。
まず最初、一階層から九階層まではまるで何もなかった。ゴブリンの姿かたちも影すらない。昨日あんなにいたゴブリンがまるでいなくなっているのはとても不思議な光景だ。
確かにオレは昨日この洞窟にいる魔物を三十階層まですべて根こそぎ討伐したがそれでも帰るときにはもうこの階層にはゴブリンの姿が確かにあった。
オレが大量に討伐したせいで魔物がいなくなったスキを突いて侵入してきたウルフ系の魔物集団に対抗していたんだ。
リスポーン。ゲームなんかではよくあるシステムである敵キャラが尽きないように一定時間が過ぎれば新しく配置されるヤツのようにこの洞窟、いやこのダンジョンを管理するダンジョンコアが自身に内包されているアルファメスを消費することであのゴブリンやオーガたちを精製しているのか? この疑問についての答えは判らない。少なくとも今のオレにはこの問いの答えは用意できないし、あまりアレコレと考えても意味がないしこの思考はここまでにしよう。
んで。その中でも特に目立つ働きをしてるものまでいたんだが、今のところのソイツらしき姿も見えねぇ。オレの探知系魔法でも全然探し出せもしなかった。
「もしかして十階層にいるのか?」
ポソ、と呟いた。
そう考えればすっきりするんだが、まだ昨日の今日だぞ? そんな風にポンポンと出世するか? 確かにオレは昨日この洞窟を三十階層まで蹂躙したが、それ以降の階層には全く手を付けていない。
三十階層分の空きスペースができたんだから底に三十一階層以降の魔物が進出していても全く不思議はないはずなのに十階層までその手の魔物はおろか最弱種のはずのゴブリンまで全くなし? 不自然すぎるだろ? どう考えても
そんなこんなを考えやってきた十階層だったがここにも何もなかった。ゴブリンの姿かたちも、だ
「いよいよおかしいな・・・」
一体何があったんだ?
なんでこんなにゴブリンの姿が見えない?
「タイチ君?」
「タイチ?」
「すまん。オレにもよくわからん」
昨日まではあんなにウジャウジャといたのに何で今日はこんなにいないんだ? オレでも解らないのに話ででしかこの洞窟を知らなかった二人はますますわからないだろう。
「まぁ、タイチ君が樹の大暴れした反動でこんなに空いているんだろうけど、ここまで魔物がいないの正直異常ね・・・」
先生もこの状況をいぶかしんでるようだ。やっぱりこれっておかしいよな?
リナも獣人特有の五感の鋭さを生かすためかやけに鼻をスンスン言わせている。
その瞬間
「? 何か来る?」
先生の一言が耳に届いた時を合図にして十階層の地面が光始め、中央に魔法陣が現れた。
「! 何の魔法・・・?」
「多分召喚、いや送還魔法ね。コッチ何かを送り込む魔法よ」
「え? それってどこから来るかわからない未知のナニカが明らかにアタシたちを狙ってきてるってことですか?」
「そういう事ね」
リナも油断なく槍を構えて警戒する。この時、普通であれば魔法陣に意識を集中させてしまうものだが、もしこの魔法陣がニセモノ、もといオレ達三人の注意をひきつけるだけのものだったときに備えて周囲への警戒を欠かさないのが素晴らしい。
以前のリナであれば魔法陣への警戒にすら穴があり、そこを突かれるのではと思うとハラハラさせられるところがあったけどまるで見違えるようだ。
これも先生の心当たりのおかげだろうか?
それとも訓練のおかげ?
いずれにしてもリナの成長が見られてうれしかった。
さて、そんなこんな考えてるうちに魔法陣からナニカが出てきた。
それは
「・・・手?」
そう手である。左手である。
手首から指先にかけて
大きさはハイ・フォモールの手と同等かそれ以上
そして一番の特徴は魔法陣から出てきたその左手が鎖でつながれていたことである。
「・・・なぜに鎖?」
「おそらくあの手はタイチ君が到達していない階層の魔物の手であり、また自身の拠点であるこの洞窟を蹂躙しに来たであろうタイチ君の駆除に乗り出したいがダンジョンコアの決めた規則に縛られてここまでが限界だった。てところかしら?」
オレのもっともな疑問に先生が立て板に水な回答をくれた。なるほど。たしかにそれなら一部を除いて納得できるな。今しがたの先生の発言に出てきたダンジョンコアの決めた規則って何? という疑問を除いて
出てきた手に集中する。一応魔法による周囲への警戒も怠らないが先生の意仮説が正しければこの手の持ち主は三十一階層よりもさらに深い階層にいる魔物の物らしいので警戒しすぎなような気もするがしておいて損はない事なので一応はしておく。
ギチギチと今にも鎖を引きちぎりそうにしている手の様子を窺うがどうにもあの鎖が邪魔で自由に動くこともできないらしい。
「であれば先手必勝ッ!」
一息に間合いに踏み込み
一気にレオルドを抜き放ち
勢いを殺さずうねりをつけて振り抜くッ!!
ここまでに零コンマ数秒でまず小手調べも込めて小指を斬り飛ばした。手に巻き付いている鎖を斬らずに小指だけを斬り飛ばされたことで手の持ち主は怒ったようで殴り掛かってきたが鎖で本来の動きが出せないのか非常に遅く、オレでなくとも簡単に躱せそうな一撃だった。躱しついでにもう一撃加えて薬指も半ばまで切り裂いた。
手の主はさらに怒り狂ったようだがこのままで不利だと言う事も悟ったのだろう。そのまま暴れる様子もなく消えていった。
「不気味にも程があるだろ・・・」
魔力とか気力の消耗はホブゴブリンを相手どった時と大差はない。まだまだ魔力や気力は満ち溢れている。というより今こうして試行している間にも回復しており、消耗以上に回復している。
オレのことよりも大事なのは新入りである闘鬼とその少し先輩であるキャリー、そして手が元の場所へと帰ったことを確認して残心を解くリナだな。
今の状況ではオレが攻略した三十階層まではこんな緩い環境が続くのか?
この洞窟がどこまで、何階層まで続いているのかは分からない。でも普通に考えて三十階層は随分多いはずだ。もしこの洞窟が百階層ほど続いているんであればすでに三割が攻略済みという計算になる。
もし百階層よりもさらに続いていたとしてもそれなりに攻略したはずなのになんでこの洞窟にあるはずのダンジョンコアは何の対策の打ってこない?
あり得ないだろ。
十一階層以降はどうなっているのかはわからないがここまでの階層はもうホントにガラガラもいいところだから少し心配だ。
「・・・行こう」
オレの言葉にみんなが無言でうなずき昨日ギルドマスターとキャリーとの二人と一体で通った階段を下りて行った。
十一階層に到着。
「よしよし。ちゃんといたな」
流石にここまでくるとちゃんと敵がいた。
昨日来たときにこの階層にいた魔物はゴブリンとオークだった。
昨日ほど多くはないがちゃんとそれぞれの魔物がいた。
「ゴブリンはキャリー、オークはリナが担当。闘鬼はオレの指示があるまでそのまま待機」
「了解ッ!」
勢い良く返事をしたリナが流れるような自然で無駄のない動きで槍を構えて一番手短にいたオークに突進した。
リナに気付いたオークが迎撃のために手に持っていた棍棒を振りかざすがリナはお構いなしに突撃し、オークの棍棒が振り下ろされ、リナに激突する――――寸前のギリギリで躱し、槍でオークの首を切り裂いた。斬られたオークはたたらを踏んで斬られた個所を抑えたが、膝関節部分を槍で叩き折られ本来曲がるはずのない角度に変え、激痛にのたうち回るオークは槍で首を刺し貫かれ絶命した。
すぐ近くにいたゴブリンは突然何か大きな音が聞こえそれが自分へと猛烈な勢いで近づいてくることに危機感を抱いたが何か行動に移ること無くキャリーに跳ね飛ばされ、痛みにさらに混乱するして何度も轢かれ、絶命した。
「うん。危なげねぇな」
「いや、そりゃそうでしょうよ。あのキャリーって子も一度は進化したんでしょう? いくら戦闘種族じゃないからってゴブリンに負けるようなことはないでしょう? リナに至ってはもうこの私が鍛えたんだからこれくらいはできてもらわないと困るわ」
物の数分もする頃にはキャリーはゴブリンはもちろんその進化系であるゴブリンファイターにゴブリンマジシャンを相手どっても余裕を持って対応できている。
進化と言っても接近戦が上手くなっただけのゴブリンファイターはともかく遠距離戦をこなせるようになったゴブリンマジシャンまで相手どれるとはちょっと驚いた。
ゴブリンマジシャンが魔法を放つまでに全速力で突撃を刊行して詠唱を中断させ、そこから行きもつかせず追撃に追撃を重ねていくことで危なげなく討伐出来ていた。
最悪でも荷物持ちにと考えていたが意外にもあっさり戦力に数えられそうだ。
「とりあえず今はその返り血を何とかしよう」
うん。全身血まみれだぜ? どこのスプラッター映画に登場する荷車なんだ?
リナも法はもう階層にいるオークを絶滅させる勢いで討伐、いやもうこれは駆除と言ってもいいな。槍を巧みに使いこなし棍棒やつるはしを持ったオークを相手に全く危なげなく倒している。駆除という言葉を聞いてパターン化された機械的な印象を受けるかもしれないがそんなことまったくなく、一体一体違う行動をとるオークにこれ以上になく効率的で無駄のない行動をとるリナ。
そこにはいつ不測の事態が起きても即座に対応できる余裕と柔軟性がある。
おかげで見てるオレとしては安心だ。危なくなればいつでも割って入る準備はしているが必要ない。そう強く思わせてくれるくらいリナの戦い方は安定している。
「ねぇねぇタイチっ、アタシまたレベルが上がったよー」
嬉しいッ! と全身で表現しつつピョンピョン跳ねるリナになごみつつさらに下へと進む。
そんなこんなでやってきたニ十階層。昨日ではここには今まで出てこなかったオーガがいて、それ以外にもゴブリンやオークの上位種がそれぞれ付き従っていた。
今までが今までだから今日はどんな敵がいるのかと思ってたら普通にオーガがいた。取り巻きのオークとゴブリンはだいぶ質が落ちてはいたが
「よしよし。オーガは闘鬼にやらせる。残りのオークとゴブリンは引き続き任せたぞ」
「了解ッ!」
さて、改めてオーガを観察しつつ
「すまないがオレの手下のために、そしてオレのために拷問を受けてもらうぞ?」
生命力に定評のあるオーガにとってこの上なく残酷な最後だと思うがまぁ、オレのために受けてもらおう。うん。
「ッシ!」
アタシ、リナの一撃で最後のオークが絶命したわ。タイチから支持をもらってツッコンで見たけど、もうこれくらいの相手なら余裕で戦えるように離れた。残心を解きつつちょっとニヤけるくらいはいいよね?
アタシは強くなれた。もちろんこれはアタシが自分一人で身に着けた力じゃない。タイチがアタシに今までよりずっと強くて丈夫な体をくれて、先生さんの猛烈なご指導によってその身体を余すことなくちゃんと使えるようになっただけ
なにからなにまでヒトに頼ってばかりで自分だけじゃ何もなしえていない。
自分はタイチにふさわしくないんじゃないのか
そもそも自分なんかがこんなところにいていいのか
そんな疑問が頭の隅にくすぶっている。
もちろんタイチや先生さんはこんなことを少しも気にしないだろうと言う事は分かってる。こんな気持ちに踏ん切りをつけたくて鬼の上位種とも戦ったし、それに勝つことで気持ちに整理をつけられたとも思った。
でも実際にはふっとした瞬間にこの気持ちがあふれて止まらなくなっているアタシがいた。
なんで?
踏ん切りをつけたんじゃないの?
気持ちに整理をつけたんじゃないの?
ホントこんな自分がいやになる。
でも諦めたくない
タイチが好きッ!
この気持ちにウソをつきたくない
だって惚れたって仕方ないじゃんッ!?
アタシ、ずっと自分が一族の中で一番強かったんだもん
別にそれで何かが変わるわけじゃないんだけど、心のどこかでずっとアタシより強くて頼れる人を探していた。
一族のみんなはアタシの大切な家族。でもアタシより弱くてアタシが頑張らないとみんな死んじゃう。
だからアタシは戦い続けた。
ここに後悔はない。むしろ誇りしかない。
でもつらかった。
この気持ちを吐露するたびにみんなが苦しそうな悲しそうな表情をするのがとても申し訳なくって気が付けばみんなに気持ちを言うことがなくなっていってホントにつらかった。
そしてタイチはそんなアタシの悩みを吹き飛ばしてくれた。
最初に出会った時、アタシは自分を助けてくれたタイチを人間だからという理由で警戒していた。当然でしょ? アタシたちの一族は人間によって故郷を追われたんだから
それなのにタイチは気にした様子もなく、「女が襲われていると思ったから助けた」なんて言うんだよ? 呆れるやら肩の力が抜けるやらで笑っちゃった。
毎日がつらかったのに、ね
それから何回かあっている内に段々意識するようになって、いつの間にかこんなに好きになってしまっていたわ。
これが誰かを好きになる気持ちってやつなの? と困惑したし、いくらなんでも人間を相手に、なんて思ってたりもした。
でも好きになってしまったものはしょうがない。
一緒にいるだけで楽しい。
アタシの事を見てくれてるだけでうれしい。
こんなふうに思わせてくれる人に初めて出会えた。だからタイチのことが大好きでこれからも一緒に居たい。
「好き、か・・・」
心の中で言っただけなのに、もう心がぽかぽかと温かくなる。
タイチに直接行ったときは恥ずかしくて心臓が破裂しそうで頭の中が真っ白になったけど、どこか気持ちよかった。
「また、言いたいな・・・」
・・・アタシは一体何を言ってるんだろう。
戦いとは別の理由で火照る頬を抑えて湧き上がってきた煩悩を押さえ込む
「さて、そろそろかね?」
『ガ、ガギ・・・ギ』
オーガがオレを見て何かを訴えている。
おそらく『なんでこんなひどいことができるのか?』とか『ヒトとしての心はないのか』とかそんなことろじゃないか?
「まぁ、理由としてオレのモンスターを強く育てるためだよ? お前からすればひどいことこの上ないかもしれないけど、恨みっこなしだぜ?」
オレは最後の一本をオーガに突き刺しながら言う。
『千手観音の霊刀』・・・伝説級装備品。千手観音地蔵菩薩が愛用していたとされている刀。千手観音地蔵菩薩の霊力が残っているらしく。魔力に反応して本数を増やせるが本来の力は失われている。
まずストレージからこの刀を取り出したオレはオーガを仰向けに転ばせて両掌に両足首を貫いて昆虫標本のようにした。
持ち前の生命力で死ねなかったオーガはそれはもちろん痛みに泣き叫んでいたし、どうにか抜け出そうとしてもがいていたけどいつぞやも使った『デトリーザドの牙』で全身に麻痺毒が回っているせいでロクに身動きも取れなくなったオーガ。
「よし。準備はこんなところかな?」
ロクに身動きもできない。そんな状況ならいけるだろ?
「やれ。闘鬼」
オレの号令で闘鬼は森で拾っただけのタダの棍棒を両手で握りしめて、オーガの小指に殴り掛かった。
「よしよし。狙いはいいぞ」
殴られるたびにオーガから情けない悲鳴が上がった。まず間違いなく闘気の攻撃が効いてる証拠だ。普通はオーガにゴブリンの攻撃が通じるなんてことはあり得ない。ゴブリンとオーガでは生物としての格が違いすぎるからだ。
本来であれば物の数ではなく、一息でひねり潰せて当たり前。複数以上進化した個体ならともかくタダも一度も進化したことがない個体に対して脅威など抱いたことのない生涯だったであろうオーガ。
そう。生涯だったであろうだ。
《闘鬼》 種族:ゴブリンファイター 性別:オス 職業:戦士 年齢:一日
レベル:2 魔力:13 攻撃力:17 魔攻撃:9 防御力:14 魔防御:12 敏捷性:18 運:29
《装備》棍棒 鉄の斧 鉄の短剣 小鬼の皮鎧
《魔法》無属性魔法:初級
《スキル》暗視 繁殖 魔力操作 気力操作 鈍器術:初級 斧術:初級 剣術:初級
《称号》闇の眷属 大樹の加護を受けし者
《信頼度》100%
これにすべては集約されている。うん。スキルも変わった内容は特に内容だし、今回は鑑定無しでいいや。さて、それにしてもオーガは実に有意義な犠牲になってくれた。
棍棒で指を全部潰されて、斧で手首と足首を全部斬られて、最後に鉄の短剣で首を切り取られてようやく死ねたオーガ。その死は悲惨の一言だっただろう。うん。それをやらせたオレの言えることではないだろうけどそこまでやらないと死なないオーガの生命力もホントにすごい。
で、ようやく死ねたオーガの死体も大事だけど
今現在進行形で怒っているこの異常事態の方が優先だろ? どう考えても
「さて、なんで昨日通った階段意外に扉があるのかな?」
扉だ。
それもそれなりに重厚感がありそうな木の扉だ。
で、問題は・・・
「このあふれ出る瘴気、なんだよなぁ・・・」
「えぇ、何なんでしょうね? コレ・・・」
「う~ん。獣人の勘もロクなことがないからここから進むな、て言ってるね・・・」
うん。三者三様でこの扉をくぐらないことでまとまっている
「でもそういうわけにはいかないんだよ」
突撃アンド扉開放、と
「なんだ? この瘴気は・・・」
「こ、これは・・・」
「うげぇ、吐きそう・・・」
早速後悔したな。扉の向こうにあったのは瘴気の塊だった。
黒く
暗く
冷たくて
恐ろしい
本能の部分でこれは危険だと全身が訴えかけているのが分かる。今すぐにでも逃げてしまいたいのだが、そうも言ってられない
「この瘴気を放っておいたらソコから強力な魔物が生まれるかもしれないからな」
「まぁ、確かにこの瘴気こそが負のアルファメスの正体なんだけど、ちょっとこの濃さは異常よ? ナニ? 魔王でも生まれるの?」
「とにかくここから離れたいです・・・」
確かに、先生の言う通りこんなに色濃くはっきりと認識できる負のアルファメスは森でも見たことがねぇし、ていうか
「なんでこんなに溜まってるんだ?」
瘴気、負のアルファメスはとどのつまり一種のエネルギーである以上一か所にとどまるのではなく世界全体へとめぐっていくもののはずだ。
少なくとも地球では電力といい原子力といい入れ物に入れることでその場にとどめることはできてもそれは一時的な処置であってエネルギーそのものの性質としてとどまっているわけじゃない。
負のアルファメスにしてもエネルギーである以上。基本は同じはず
それなのになぜこの場にとどまっていた?
この空間そのものがエネルギととどまらせる特別な性質を持っている?
この空間にはそもそもこの負のアルファメスを精製したナニカがあった?
すぐに思いつくことはこの二つの可能性か――――
「「「!」」」
一瞬だった。
ほんの一瞬で負のアルファメスは俺たちの頭上を通り過ぎてオーガの死体にしみこんだと思ったら
「グ、ギ――ぁオア・・・――――」
確かに斬り落されたはずの首がうめき声をあげて死体がずるずると動き出し――
「ギ――」
たと思ったらオーガに十階層に出た手首と同じ鎖が巻き付かれたと思ったらいつの間にか出現した魔法陣に吸い込まれ、どこかへと送られた。
「何だったんだ? アレ」
「多分今のが魔物の生まれる瞬間でしょうね」
「あ、あれがですか? 何かホントにろくでもないのが生まれたことは分かるんですけど・・・」
ついさっきまであったはずの負のアルファメスによる重圧も消えて文字通りなにもなくなったはずの階層でオレ達の声だけが不気味に響いていた。
次の投稿予定日は25日。今月も三回投稿を目指します。
今書いてる分の進行次第ではワンチャン祝日にも投稿するかもです。




