第五十三話 冒険者登録とギルドマスター
最近ストックが溜まってるので試しに投稿頻度を上げて月に三回投稿してみることにしました。
これで安定するようなら続けますがこれで問題が出てくるようであればまた少し変えると思うので結論が出るまで少々お待ちください。
改めて到着した冒険者ギルドを眺める。
うん。西部劇に出てきそうな扉を持つ三階建ての建物。窓にはガラスではなく木材がはめ込まれてるっぽいな。
まぁ、地球でもつい最近までガラスは高級品らしかったから荒くれ物が多そうな冒険者ギルドで鐘がかかりそうなガラス張りの窓がないのもうなずけるな。
一通り観察し終えた後扉をくぐって中へ入る――――
「「「「「「「「「「――――――――ッ!!!???」」」」」」」」」」
――――瞬間に周囲を威嚇する。
多くの冒険者らしき人々が突然降ってきた重圧感に戸惑っている内にカンターらしき場所まで行く。オレの所業を察した先生にリナがしょうがないなぁ~と言わんばかりの表情でコッチの顔をのぞき込もうとするが敢えて、そう敢えて無視しつつカウンターへ急ぐ。
カウンターにはいかにも経験豊富なベテラン然とした恰幅のいいオバチャンがいた。実際オレがまき散らしている威圧の効果範囲以内にいるにもかかわらず柔和で穏やかな表情を崩していない。同じく効果範囲以内にいる冒険者は老若男女問わず緊張したり困惑したり怯えてるものがほぼ全員。残りのメンツに至っては気絶しているにもかかわらずだ。
「おやおや。ずいぶん生きのいい男が来たじゃないかい」
「・・・そりゃどーも」
オレの方を頭からつま先まで見据え太々しく笑うオバチャン。その様子から鑑定スキルが使われた気配はないんだが、ホントにそうか?
何か俺の知らないスキルでも使ったんじゃないか?
そんな疑問が頭をよぎり、若干返事が遅れた。
オバちゃんは大して気にも留めずに進める。
「ここは見ての通り冒険者ギルドさ。体力だけはある能無し共が食い扶持稼ぎたさに命を安値で売る場所だよ」
「アンタ仮にもココの職員だろ? そんなこと言ってていいのか?」
「ハッ! 構うものかい。実際その通りだろ? アンタ見たところ随分魔力がありそうだし、装備もアタシみたいな素人でもわかるくらいの逸品だろ? なんでそんな奴がこんなところに来たんだい?」
随分ズバッとモノを言うオバチャンだな。そんで間髪入れずにこっちに質問かい。
まぁ、確かに気になるだろうね。
オレの装備は背中に背負ってるレオルドを筆頭に伝説級や神話級で固められた豪華極まる装備だ。オレだけじゃなくリナや先生もそれぞれ最上級の装備品を身に付けている。
本来であればすでにベテラン冒険者の装備内容を超えている。いや、それどころかどこかの国の国宝と言われても待った違和感がないほどの逸品だ。
そんな超豪華極まる装備で身を固めた人物が荒くれ物集う冒険者ギルドへとやってきた。
うん。ここまでがオレなりに自分が置かれてるだろう状況を第三者目線で考えてみたが、考えれば考えるほど不自然極まりないな。
なんでいまさら感が天井知らずだ。
そんな状況でこれ言うの嫌だなぁ・・・
でもこれを言わないと先に進まないし、今更別のギルドへ行くのももったいないしなぁ・・・
これから仕事にも絶対に必要なものになるだろうし、ここは今まで町へ行くのを延期し続けてきた自分への罰だと思おう。うん。
「ここへは冒険者登録に来たんだ」
「・・・へぇー」
さぁ、何を言ってくる?
来るなら来やがれ!
笑われたりバカにされる覚悟はもう決めたぞ!
「アンタみたいなのが参加してくれるんならこのギルドも華やかになるよ! 見てもらえばわかるだろうけどこのギルドを利用してるのはほとんど芋男ばかりでね。受付やってても全然目の保養がないのさ♪」
・・・ん?
何か思ってた反応と違う・・・
いや、油断するな。この受付のオバちゃんはたまたまこんな反応だったかもしれないがきっとこの話を耳に入れた冒険者が辺りに吹聴してみんなで言葉のリンチを仕掛けてくる――――
「そっちのお嬢ちゃん二人も登録でいいかい?」
「はい。よろしくお願いします」
「よ、よろしく。です」
先生はやっと話が回ってきたと言わんばかりに手早く言葉を返し、リナはやっぱり人間の街。人間がたくさんいる環境に緊張してるのか若干返事が遅れた。言葉も妙に堅苦しくなってる。
やっぱりまだ無理が効くうちに街を出た方がいいな。
なんて考えてるうちに紙を手渡された。
「んじゃ、とりあえずこれに自分の名前と歳と職業を書いとくれ。代筆が必要ならアタシに言うんだよ」
代筆、代わりに書いてもらうサービスか。そんなものがこうしてあることがこの街、いやこの国での文字の普及率が高くないことを示している。
地球、とりわけ日本では考えられないサービスだな。ランドセル担いでる子供でも自分で文字が書けるのが普通だった日本では代筆なんてサービスはまずお目にかかれないし、いい年齢になって自分の名前も書けないなんて言う奴は異常としか言えなかったからなぁ・・・
と、文字に関する考えはここまで
渡された紙だがこれは羊皮紙という奴か?
日本でよく使われてるようなやつとはえらい違いだな。何かこうゴワゴワした手触りだ。厚みもだいぶあるな・・・
おっとと・・・
イカンイカン。二人とも書いてるんだしオレも書かなくては・・・
「おらよ」
「はいはい。確かに、エート・・・あの、これはね? 別にでたらめを書く紙じゃないのよ? なに? これ・・・」
「事実だ。その証拠ついでに登録手数料も物納で払ってやるよ」
まぁ、疑われても仕方ない内容だと思うし、気にはしてないんだがここでしょぼい内容を書いて周りに装備が豪華なだけの生意気な奴だと思われても嫌なのでこれを出そう。
ドンッ! と大きな音を出してストレージからコレを出した。
「あ、あぁあぁあぁあアンタッ!!! こ、こここここここここコレって・・・っ」
「あぁ、ドラゴンの首だぜ?」
『フルメイルドラゴンの首』
生々しく、まるでたった今切り取られたように切り口からは現在進行形で血があふれ出ている。雄大で雄々しく、そして限りなく強かったであろうことが誰であろうと簡単にわかるようなドラゴンが生首になって受付カウンターのすぐそばに置かれた。
ほかにも一目で余ほどの大物から取れたであろうことが分かる魔物の角やおどろおどろしいオーラがにじみ出ているアンデッドの頭蓋骨をカウンターに乗せた。
「ああああああああああああああああアンタッ!!! ちょっと待ってておくれッ! いいねッ!? 絶対にどこかに行くんじゃないよッ!!?」
コッチの返事を待たずに一方的にまくし立ててどこかへ向かうおばちゃん。ちゃっかりオレが出したものの中で一番小さく手頃だった角をもって行ってるところは流石ベテランだと思うがな。
ギルドマスターにでも報告に行ったのか?
まぁ、どうでもいい話だな。これでこの冒険者ギルドという組織にオレという存在をぶちかますことができた。
これで最初から高待遇でスタートが切れるのであればいうことはない。最低ランクからスタートで長期間この街に拘束されるのは勘弁願いたいからな。
「さて、君が子の角にドラゴンの生首を持ってきた常識はずれ君だね?」
「そういうことになるな」
初対面の相手にいきなり常識外れとか礼儀知らずなことを言うこの白髪のおじさんがギルドマスターらしい。
そんな相手ならこっちもわざわざ敬語使う必要もないだろう。現にギルドマスターの方も大して気に留めていない様子。まぁ、これはオレの言葉遣い云々以前にオレが持ってきたドラゴンやらガイコツが気になってるだけだな。
ギルドマスターはまるで熟練の鑑定士のようにあらゆる角度から眺めるように舐めるように見て、必要であればその場で新品の手袋をつけて、服や顔に血が跳ねるのも気にも留めずに調べている。
俺が持ってきた者が本物かただ動物の死骸をそれっぽく着飾っただけの偽物かを熱く語り合っていた若者たちもギルドマスターのその真剣なまなざしに段々静かになり、気が付けばギルド全体が物音一つ出すことも憚られる程の緊張した空気に包まれていた。
「これは本物だ。本物のドラゴンの首だよ。ソレのかなりの上位種だ」
ギルドマスターの一言は決して大声を張り上げたものじゃない。それなのにギルド全体に響き渡るのはもちろん。下手をすればこのままこのまち全体へと届きかねないくらいに響いた。
その瞬間――――
「「「「「「「「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッッッッッ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
周りがあげた歓声がまるで爆弾のようにオレの耳に轟いた。うるさく敵わない。
「マジかよ―――――――――――――ッ!! ドラゴンの生首っとホントにどうやって獲ってきたんだッ!?」
「いやいやいやいや、コレはあれだぞ。ギルドマスターもグルなんだよ。そうさ、きっとそうに違いないッ!」
「バッカお前、そんなものやって何の得があるんだよ? アイツのあの装備。どう見たって伝説級装備品かそれ以上じゃないか。あれだけの装備があればドラゴンだってやれるだろ?」
「黙ってろよド素人が!」
「あんだと?」
「装備がいい? ハッ! そんなものでドラゴンがやれると思えるだなんてオメデテェ奴だよ。人間がドラゴンに勝つなんざ結局は蟻んこが人間様にケンカを売るも同じよ! そもそも戦いになる訳がねぇんだ」
「同意する。あの首から判断するにドラゴンであることはまず間違いない。しかもよほどの大物であることは想像に難くない。それをあれほどの若さで討伐しきるなど不可能にも程がある」
「だ、だからそこは装備で・・・」
「否定する。いくら強力な武器や防具で身を固めようともドラゴンはそれを力尽くで覆す。それゆえにドラゴンは強さの象徴であり、戦う者にとっての憧れなのだ」
「だな。それを打倒しちまうなんてことがどれだけヤベェ事かがちったぁ分かったかよ?」
やれやれ好き勝手言ってるな。
「なぁ、そうやってドラゴンの首が本物だって信じてもらえたんならさ? これを売るからその代金で冒険者登録できねぇの?」
「そうだね。これを丸ごとうちのギルドに卸してくれるのであればたかだか三人分の冒険者登録くらいどうという問題もない」
でもね? とギルドマスターは続ける。
「いくら現物を見せられたからと言ってそうポンポンと特例を創るわけにはいかないんだよねぇ・・・。ドラゴンをも殺せるほどの実力者であるならばもうその時点で人類最強の証である最高級の冒険者ランクを贈らねばならないんだが・・・」
「ランク?」
「おや? 知らないのかい?」
「その説明を受ける前にこの首を出したんだよ」
オレの説明に納得したと一つ頷くとギルドマスターが説明を始めてくれた。
「ランクとは冒険者の質の良し悪しを決める目安の事ですね。実力の高さが最重要ではありますが、ほかにも人格の優劣や最低限の教養も求められています。
ランクは上から順にSSランク、Sランク、Aランク、Bランク、Cランク、Dランク、Eランク、Fランク、Gランクの全9種類。上のランクに上がれば上がるほどに様々な特典がついてくる上にそもそもギルドという組織そのものが世界各国をまたいで存在する国に縛られない組織なので高ランク冒険者はそれだけで社会的地位を得ることができます。
また高ランク冒険者はその実力を買われ、国の貴族へと召し抱えられることがありますし、何だったら自分の手で王国を作り上げてしまった冒険者までいるくらいですよ。
基本的に退職を含めたすべてが自己責任で行ってもらいます。一応冒険者家業を引退された後でも元のランクについていた特典の一部は使用可能ではありますが制限がかけられてしまいますね。
最後にもし冒険者活動中に犯罪行為を行った場合についてですが問答無用で国の衛兵に付きだすこととなっているのでご了承ください」
以上となります。と説明をしてくれたギルドマスター。
要するに冒険者にさえなってしまえば世界各国を巡れるうえに高ランクであればそれを利用して商売もできるわけだな。高ランクに直接商売を始められるような特典がなかったとしても国がわざわざ貴族にと召し抱えようとするんだ。そのネームバリューを使えば商売を始めることも簡単そうだ。
説明してくれたことへの礼を言いながら頭の中で今度の予定に変更を加える。もともとここには冒険者という社会的地位を得るためにやってきたんだ。そしてストレージの肥やしになっているだけの森で採取した薬草や低級の魔物の死骸などもここで売れれば十分な路銀も稼げるだろうし、たとえ思った以上に低ランクからスタートであったとしても実力的には問題ねぇんだ。実際に自分の脚でこの世界を見て回りつつオレにできることをやっていこう。
これがもともとオレが考えていた今後の予定だ。だがこの予定には穴がある。具体的には地図がないんだ。一応先生の持っていた地図はあるんだが、もうずいぶんと昔の地図だからホントに正しいのかなんて保証はないし、たとえ保証があったとしてももう国が変わっていても何の不思議もないからな。
だからここで今現在の世界地図を得ようと思う。
思ってたんだが・・・
「なぁアンタッ! ホントにドラゴン討伐出来たのか? どうやればいいんだ? オレにも方法教えてくれよッ!」
「いやいや、それを言うなら『どうやってドラゴンを討伐したかのように見せかけられるのか?』だろ? どうせコイツが使ってなんてこんなものだって」
「君、いい加減黙り給えッ! 見苦しいにも程があるぞッ!」
「同意する。同業者として恥ずかしく思う。今すぐにここから離れるか彼に謝罪することを進める」
「カ――――――ッ!! 出た出たよ。こうゆう堅物クンがさ? お前らだってホントは疑ってんだろうがよッ!? それをなんやかやでひた隠そうとするのが気味悪いんだよッ!! 疑ってんなら疑ってるで正直に面と向かって言って何が悪いってんだッ!!!」
「「なんだとッ!!??」」
え? なに? このメンドクサイ集団・・・
「オッホン・・・」
ギルドマスターが咳払いをした。
たったそれだけで周囲にいた冒険者全員が黙った。
仮にも自分たちの上司に当たる人物だから気持ちを汲んだ? 違うな。特にオレにいちゃもんをつけてきたかと思えばそれをとがめた二人に食って掛かったバスターソードを背負ったひげ面のおっさんはそんな繊細なことする印象はない。
それになによりオレと向き合っているギルドマスターの雰囲気がすっかり変わっている。今までが年相応の覇気のない好々爺だとすれば今のコイツはまるで老人の皮をかぶった野心家というのが一番しっくりくる印象だな。
「さて、話を戻すよ?」
もうすっかり好々爺らしさが消えうせた状態でギルドマスターは話す。もしかしなくてもコッチが素だろうね。仮にも荒くれ物の冒険者をまとめられる塵埃であることが求められるギルドマスターを務めてるんだ。これくらいはあるんだろうさ
「さっきも言ったんだけどそうホイホイと特例は出せない。本来であればまず最低ランクであるGから始めてもらうんだけどその場合はせっかくドラゴンをも屠れる強者を下らない依頼で拘束することになる。
うん。一組織を預かるものとしてまずありえない悪手だね。
でもこのドラゴンの首自体は本物だと言う事は僕が保証してもそれが君自身がこのドラゴンを屠った証拠にはなりえない。そんな胡散臭い人物にそうホイホイと依頼を任せられるわけがない。
うん。せっかく我がギルドを頼って以来を出してくれる依頼主にも失礼だし、冒険者と依頼主の仲介を務めているギルド組織に身を置くものとしても容認できることじゃないよね?」
確認するように、噛んで含めるように言うギルドマスター。
オレ、というより周りにいり冒険者全員に言ってるな。
全員もギルドマスターの言葉に同意なのか頷きながら聞くものが多数いた。
オレもギルドマスターの言いたいことは分かるのでうなずく。確かにいきなりドラゴンの首を出しただけじゃ実力は信じてもらえないか・・・
もともと実力は信じてもらえようがもらえまいが気にしないように決めていたんだがこの調子だと・・・
「そこで君にはある特別試験を受けてもらいます。これに合格すれば一気にBランクから登録させていただきます」
キタ――――――――――――――――――ッ!!!
特別チャンスキタ――――――――――――――――――ッ!!!
思わず小躍りしそうになる脚を思いっきりつねることでどうにか平静を装うオレ。先生は興味がないのか大して気にも留めず、リナはそれがどれくらい凄い事なのかがいまいちピンとこない様子だった。
周りに連中が何かごちゃごちゃ言ってる気がするがもう知らんっ
「で? その試験の内容は?」
もうさっさと終わらせよう。うん。
「試験内容は―――――――――――」
あ、いつの間にか会話に全然参加しなくなっていたと思っていたオバちゃんが何かをギルドマスターに手渡した。
「―――――――これですッ!」
オバちゃんから受け取った紙を広げるギルドマスター。
その紙には・・・
「えっと・・・中型ダンジョン。『小鬼の塒』の攻略・・・?」
次回の投稿は十日後の二十五日を目指しています。どうなるかこうご期待ください。




