第三十八話 そして時は流れ…
今月二本目の投稿。
今回は短いです
あれからもう一年が過ぎた。
静かで重く、火傷しそうなほどに熱いナニカがオレの胸の内にあるのを感じて一年。つまりオレがこの世界にやってきて二年以上。
うん。改めて文字にしてもホント少ない。
こんな簡単に言い表されていいのかと自分でもよくわからない怒りにも似た感情がある。こんな文字では表せないほどの苦労や冒険があったんだぞと言ってやりたい気持ちもある。
だがそれもこれも全部
「テメェを始末した後でいい」
なぁ、ドラゴン?
そう呟きつつオレは闘争に集中した。
「ガアァアアアァァアアアぅォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッ!!!!!!」
超大音量の咆哮を上げるドラゴンがいる。
そのドラゴンは鱗の一枚一枚が分厚く、腕に至ってはまるで大盾でも取り付けるような独特の形をしている鱗、いや外骨格か? が爪を隠す様についている。いや、違うな。
「あの大盾そのものが爪なのか…」
内側に申し訳程度に指らしきものが見えた。その指はオレ達人間に近い形状をしており、爪がない代わりに大盾の縁の部分が鋭くとがり、まるで鋭利な刃物のようになっている。実際に今オレと戦っている場所にあった木々や岩石を豆腐か何かのように楽々と斬り裂いている。
爬虫類というよりも人間に近い骨格をしており、双剣のように両腕の大盾を振り回すドラゴンだがこちらからの攻撃を受ける際には両腕の大盾だけではなく翼まで使って丸で貝のように防御を固める。さらに顔のデザインはどこかトリケラトプスを思わせる形状をしていて、とことん防御に特化している風貌だった。
「流石は盾モチーフにされるだけはあるな」
確かポケモンだったか? 恐竜のトリケラトプスと盾を組み合わせた様なモンスターがデザインされたゲームは
それに今こうして相対してよくわかった。トリケラトプスによく似たその顔面はそれそのものが防具。頭蓋に覆われた脳髄はもちろん、眼玉や鼻腔などなどもガチガチに防御を固められていて急所を狙えない。
おまけに…
「クソが! またかよ!」
思わず毒づいた。ドラゴンが緑色のオーラを纏ったと思えば今までオレが与えたダメージをどんどん回復させていった。苦労して割った鱗がみるみるうちに再生していくのが見ていてホントに腹立つ!
『フルメイルドラゴン Lv:301』
ちなみにこれがこのドラゴンの鑑定結果だ。
名前からも察せられるように防御に秀でているらしい。つまり
「この技が有効なわけだなッ! 【浸透爆掌】ッ!」
斧を仕舞い、一瞬で呼吸を整えて踏み込みの力を全身の骨を連動させて叩き込む。
某格闘漫画の空手家の二代目館長の代表技の「マッハ突き」と同じ要領。全身の関節を連動させて力を何倍にも飛躍させていく。
そんな掌底。相撲の張り手とも違う拳法の打突技の一つ。を叩き込んだ。
普通であればこれよりも斧を振るって攻撃した方がいい。その方が威力があるんだから
でも今回のこのドラゴンのような手合いなら…
「ぐ、がぁ…ぉ、ゲガァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!?????」
ビンゴ
ドラゴンが困惑したような声を上げながら血反吐を吐いた。それはもうまるで噴水のように勢いよく吐血した。
オレはそんなドラゴンを見て自分の予測が正しかったことを確信した。
オレがやった攻撃は体術闘技【浸透爆掌】。相手に掌底を叩き込むのと同時に自身の気力を相手の内部に直接注入すること。注入された気力は相手の体内で爆発し、内部から相手を蹂躙する技。
分かりやすく言うと防御力貫通攻撃。いや、少し違うな。相手の防御力を無視するんじゃなくて、相手の防御力の高ければ高いほどダメージを与えることができるという技だ。
ゴーレム系統には効果抜群なので覚えていたんだがそれが役に立った。
ドラゴンは相変わらず血反吐を吐いているがどうやら今は回復よりもオレへの攻撃を優先するつもりのようだ。
雄叫びを上げながらこちらへと迫ってくるドラゴンをどこか遠くに感じながらオレは、自分の内側から燃え上がってくる黒い炎の制御に集中した。
「オォオオオオオオオオオオオオオオォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!!!!!!」
先ほどのドラゴンの雄叫びをかき消すような咆哮が自分の口から轟くのすらもどこか遠くに感じながらオレは俯瞰的な位置でオレとドラゴンの闘争を見ていた。
一度は仕舞った斧を再度引き抜いて一側でドラゴンの懐へと踏み込んだオレ。
「【強振乱舞】ッ!」
全身の力を斧に込めて一歳の迷いもなく振るう。
振るわれる斧の勢いの身体を委ねて、姿勢が崩れて斧刃が地面に着いたところでもう一度足の親指から力を込めてもう一度、今度は逆方向に振るう。
何度も何度も
振るって振るって振るって振るって
触れるものすべてを斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬りまくり続ける。
コレが斧術闘技【強振乱舞】
自分で発動させているにもかかわらず、どこか他人事のように感じながらオレはオレ自身を眺めつつより深くより多くドラゴンが斬れる位置へと微調整をしていく。
まるでゲームのようだと思いながらもオレは順調にドラゴンを斬っていくオレを見ている。斬るたびに鱗へと叩き付けていくうちにだんだんコツがつかめてきたのか弾かれてもいた鱗にだんだん斧が食い込んでいくように感じ、やがて
バキィッ
雄叫びも闘技も何もかもがどこか遠くに感じていたオレにもはっきり分かる手応えと共にオレの意識は急速にオレ自身へと吸い込まれて行った。
耳を貫くような悲鳴に顔をしかめつつ、しっかりと斧が食い込んだ首の鱗をよく観察。斧にも血がついているので鱗の下の皮膚を斬れたことは間違いない。
だが残念ながら致命傷には程遠いようで今もドラゴンは元気いっぱいに悲鳴を上げている。
こんな悲鳴を上げる元気があるんならすぐに攻撃して来いよと呆れる思いだがきっとこのドラゴンも人間に鱗を壊されることは初めてだったんだろう。思いがけない痛みで意識が混乱しているのなら
「利用しない手はないよな」
オレは身体をコマのように回転させて斧を引き抜くとそのままの勢いで反対側の首を目掛けて斧を振るう。
残念ながら今度の攻撃は鱗の破壊までは至らなかったがそれでも手応えはある。もう一二度振るえば壊せるはずだが
「流石にそこまで甘くはないか」
今の攻撃の衝撃で正気に戻ったであろうドラゴンの攻撃をよけるオレだが今までの混乱がウソのようにドラゴンが猛攻を仕掛けてくる。
今も大盾爪で攻撃してきたがそれを躱すと待っていたと言わんばかりのタイミングでブレスが来た。
火の玉。見た目だけなら火属性初級魔法『ファイヤーボール』に見える。だが大きさと熱量が桁違いだ。炎の色が白くなっていて近くにいるだけでも燃え尽きそうなほどに熱い。そんな火の玉が大玉転がしほどの大きさで向かってきてるんだから笑えない。
「だがやってやるだけだ。【強撃】」
向かってくる日の球を斧で斬り裂きつつ前進してドラゴンの懐へと飛び込む。
ドラゴンも斬られるとは思っていなかったようで攻撃の手が止まった。
今なら…ッ!
「その首、斬り落とせるかもな」
渾身の力を込めて振るった斧はドラゴンを正気に戻してしまった一撃と全く同じ軌道を描き、今度こそ砕いた。
残念ながら反対側よりも傷が浅く、致命傷には程遠い。二度目ともなるとなれるのかドラゴンはすぐに反撃に出ようとするが
「遅ぇよ。【断頭斬】ッ!」
オレは使い込んでいる黄金色の大斧を両手でしっかりと握りしめて、まるで風車のように回転してドラゴンの首を切り落とした。
「フ―――」
息を吐きだして残心を解くと
『レベルがアップしました。レベルがアップしました。レベルがアップしました。レベルがアップしました。レベルがアップしました。レベルがアップしました。レベルがアップしました。レベルがアップしました。レベルがアップしました。レベルがアップしました。・・・』
「相変わらずだなぁ…」
もう二年以上にもなるのに相も変わらないこの展開に安心するような飽きるような複雑な思いだった。
気づいてくれた人がいてくれると嬉しいのですが今回の投稿分には変更前の投稿の一部分をいくつか流用しています。今後も変更前の投稿の一部分をも利用して投稿していくつもりですのでよろしくお願いいたします。
次の投稿もすぐの予定です。




