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第三十三話 生還とその報酬

三本目変更。

今回は相当短いです

 結局帰った。

 たった一日帰らなかっただけなのにずいぶん懐かしく感じる我が家に到着してすぐにオレが見たのは



「いったいどういうつもりかしら…?」



「oh…」



 憤怒の荒神を背後に顕現させて玄関出仁王立ちしている先生の姿だった。





















「反省。したかしら?」

「はい。誠に申し訳ありませんでした」

 し、絞られた。

 まさか玄関にもあげてもらえずにその場で正座を強要されるとは…

 あと土属性魔法かな? 正座をしているオレの膝上に石畳が置かれたよ。魔力を感じたから多分土属性魔法でその瞬間に創り出したのだろうけどいつの間にかオレが座っている場所も凹凸が大きくなっていて日本の拷問の「石抱き」のようになっていた。

 その状態で長時間説教。

 もう、ホント

 勘弁してください。

 マジで、ホントに


 先生の説教が終わるとさすがに体力的にも精神的にも限界だったオレは自分の部屋に着くと同時に気絶した。

 飯も食えてねぇ…

 けど

 もう、勘弁して

 限界、なんだ…





















 は、腹が減った…

 腹の虫で目が覚めた。


 重い体を引きずりながら部屋を出ると鼻孔をくすぐる香りがしてきた。

 呼吸をするたびに鼻を通り抜けるこの香りは甘酸っぱい果物の香りと焼けた玉ねぎの匂い。


 胃袋が早く食わせろとせっつく中、台所へと行くと


「あら、もう起きたの? おはよう。ごはんはもう少しでできるから座ってなさい」

 先生がいた。



「―――え?」

「あら? どうしたのって何で泣いてるのよ?」

 オレが聞きたい。

 なぜ泣く?

 ただ先生がエプロンを着けて台所に立ってるところを見ただけ、で…


 あぁ…

 そうか……

「安心したんだと思います」


 悪魔に出会った時、オレは勝てないと直感した。

 仮にも年単位の時間を命懸けの闘争とその準備おいてきた身として彼我の実力差をある程度察することはできるようになったつもりだ。

 そんなオレがまず無理だと悟らされた。


 ホント、自分のステータスにも書かれている様に幸運なんて言葉では生ぬるいほどの剛運があって何とか生き残れたオレだが、そんなオレを、弱っているオレを恰好の獲物だと思ったであろう数多くの魔物との闘争があった。

 ブラックドッグから始まり、レッサーグリフィンにオークサージェントなどなど数多くの魔物との命懸けの闘争があった。


 もうダメかと思った。

 オレはここで死んでしまうのかと思った。

 今回の探索だけで何回この考えが頭をよぎっただろう

 出来るだけ考えないようにしていたけどそれでもどうしても頭をよぎることがあった。

 ようやくそんな思いから解放されたんだ…



 用意された朝食はおかゆだった。

 野菜のほかにリンゴが煮込まれたおかゆ。いや、どっちかといえばリゾットか?

 器になみなみと盛られたリゾットのいい香りに食欲がこの上なく刺激された。

「いただきます」

 手を合わせて一手からすぐにスプーンを手にとって一口。


 熱い。

 舌が火傷しそうなほどに熱い。

 だがこの熱さもご馳走だ。


 口に入れて熱さの次に感じるのはしっかりと煮込まれてトロリと柔らかくなった野菜の旨味とチーズのコク

 チーズの濃厚な風味と野菜の繊細でやさしい味わいが交互に現れる。煮込まれている野菜は人参とピーマンと玉ねぎとセロリ。人参と玉ねぎの甘みがチーズとはまた違った甘みを出していて味に奥行きをもたらしてくれている。さらにピーマンとセロリの苦みがチーズやほかの野菜の甘みを際立たせてくれている。

 もうこの時点でかなり満足感ある一品になっているのに付け合わせの厚切りベーコンも絶品。塩気が効いていてこの甘みが強いリゾットと相性がよく、噛みしめるたびに肉汁が口の中であふれて「生きてる」という実感をオレにもたらせてくれている。

 ベーコンを一口かじって、リゾットでベーコンの油を流し込むために数口食べる。そうしていくとリゾットの方が亡くなってしまうんだが


「お代わりならいくらでもあるからね」


 分かってますよと言わんばかりに先生がお代わりをよそってくれる。

 そうしてオレはベーコンが亡くなり、満足するまでリゾットを頬張った。



「美味しかった。ごちそうさまです」

 満腹


「さて、ではそろそろ聞かせてくれる?」

 先生は先ほどまでの優しい気配から一変。

 幾重もの死線を潜り抜けてきた歴戦の古強者としての風格を醸し出していた。

 繁忙期で殺気立ち始めた上司がかわいく思えるような威圧感を受けながらオレは脳内を仕事用に切り替えて昨日のことを報告した。





















「悪魔、ですか…」

 額に手を当てながらため息を吐くようにつぶやく先生。その眉間にはしわが寄せられており、猫によく似たアーモンドのような瞳には苦悩がありありと浮かんでいる。

 賢者である先生ですらそこまで苦悩するような化け物なんだな。悪魔って…

 オレ、生き残れるのか…?

 いや、違う。生き残れるではない。生き残るんだ。オレはまだまだ生きたい。死にたくない。死んでたまるかッ!

 くじけそうな、心が折れそうな気持に喝を入れつつオレもこれから先どうすべきかを考えた。





















「どうやらもっともっと修行の内容を変えた方がいいわね」

「あるんですか?」

 驚いた。もう十分起訴は教わったと思っていたし、ここからは実戦で必要なものを学び取っていくものだと思っていたんだが…


「もちろんあるわ。むしろもうとっくにそこまで移行してもよかったんだけど…」

「だけど?」

 もっと強くなれるのならやるべきでは? 何か問題でもあるのか?


「ぶっちゃけ君と私とではタイプが全然違うからどこまで引き上げればいいのかわかんなくて殺しちゃう可能性もあるの」

「物騒だな。おい」

 オレ、訓練で殺されるの?

 それは困る。ものすごく困る。

 死にたくないから鍛えるのにその鍛えてる段階で死んでしまっては意味がない。

 一体どんな荒行をやることになるんだとオレは血の気が引く思いだった。

次回からまた修業が一層厳しくなるので今回はここまで

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