第三十話 発見と遭遇
2025年5月10日
編集しました。
一歩。また一歩と踏みしめるようにゆっくりと下っていく。
思いのほか階段もその壁も歪んではおらず、これで電気が通っていれば日本にいると言われても疑わなかっただろう。
そんな階段を下っていると今度は扉が見えてきた。
「鍵かかってるのかな?」
参ったな。もしもそうなら引き返すしかないぞ
なんて思って確認のためにドアノブを回してみるとあっさりと開いた。
「あ、鍵かかってなかったのね」
まぁ、都合良いからいいけど
でもこれ、きっとこの先には何もないかもしれないな。こんな苦労もしないで入れる場所には何もないのが相場だもんな。ゲーム然り、現実然り
まぁ、出口があれば拾いもの。何もなくてもとりあえず今日の寝床にはなる
そう思って開いたんだが…
「マジかよ…」
宝物庫だった。
所狭しと並べられた金銀財宝
目がくらむような輝きを放つ宝石たち
わざわざ鑑定しなくても一目で業物だとわかるような武具の数々
冒険と言えばお約束で登場するような宝物にオレは、ドン引きしていた。
普通こんな場面に出くわせば喜ぶものだと思うがオレはまず罠を疑った。だってここまでの道のりはそんな大したものではない。
確かにオリハルコンガーディアンは強かった。オレでも下手をすれば死んでしまうであろう程に強かったがそれでもただ一回死線を潜っただけでこんなに財宝が手に入るなんて話が旨すぎると思うんだ。
美味い話には裏がある。
タダより怖いものはない。
そんな言葉があるように大した苦労もしてないのにこんな財宝が手に入るなんておかしい。
だからオレは財宝を一つ一つ鑑定した。
この財宝は本物なのか? 懐に入れても大丈夫なのかを調べるために金貨の一つをハルバードで真っ二つにもした。
本物だったからもったいないことをしたと思うがそれでも安心できるんだから妥当な対価だったともうことにする。
そして全部を回収しきると宝物庫の奥にまた扉があった。この財宝よりも大切なものがあるのか? 流石に出入口とは思えないがいったい何がある?
欲をかいたやつを殺す罠でもあるのか? それとも財宝という餌に食いついた間抜けを殺す魔物でもいるのか?
疑問は尽きねぇし、いやな予感もしないわけでない。
だが、
「ここで退いてもしょうがないッ!」
自分の頬をたたいて気合を入れる。
ここで退いてもまた別の変化があるかわからない。また暗い空間を延々と一人でさ迷い歩くことになる。それにもうそろそろ日が暮れるころだ。夜になればオレが落ちてきた穴から差し込む光もなくなってもっと暗くなる。だったらあの奥の部屋を調べた方がいい。
オレはそう決心して扉を開いた。
扉を開くとそこには宝物庫と同じくらいの広さの部屋があった。
違いは宝物庫と違って財宝の類はなく、ただ一冊の本が安置されている。
もうずっとこんな暗いところで安置されているはずなのに全く痛んだ様子もなく、変色したようなところもない。新品のような本を手に取ってページをめくってみると見たことのない文字で書かれている。
「古代語ってやつか…」
確かこの都市も古代の物なんだろう? だとしたらむしろそんな場所に置かれていた本が現在の文字で書かれている方がおかしいか。
とても読めそうにない。一応オレは女神さまにこの世界の言葉や文字がわかるようにはしてもらったがさすがに古代語は範囲外のようだ
数ページを向くって見たがさっぱり内容が理解できない。
だが、
「何だろうね。このライオン? は…」
表紙に大きく書かれたライオン。
オレはそれを見て何だか寂しそうな印象を持った。自分でもよくわからないがそう感じた。
「さて、今日はここで野宿だな」
本が安置されていた部屋で一晩明かすことになった。
ここなら魔物の襲撃にもすぐに気づけるし、この部屋の扉は宝物庫と違って向こう側なら押して開く扉だ。
つまり扉の前にバリケードを置けばある程度防壁になる。最悪の場合は宝物庫を火の海にしてでも籠城できる。そう判断したからだ。
石の上で直接寝るなんて身体が痛くなるがそこはアイテムボックスに収納していた衣服とかを使えば幾分かマシになるな
あとは、熟睡はしないようにしよう…。何かあればすぐに起きれるように……――――
ヤベ
普通にガッツリと寝てたわ。
何時間寝てたんだ? 結構すっきりしてるし、5~6時間は寝たか? 日の入りしてそんなに時間が経ってるとは思えないから今は夜明け前かもう少し早い位か?
バリケード。訓練用の斧とか今日手に入れた武具やオリハルコンガーディアンの残骸を引き詰めた奴が動いてるようには見えないから何も来なかったのか?
とりあえずアイテムボックスから食べ物を取り出して食事にする。
メニューはフランスパン風の硬いパンと燻製肉にザワークラウト風野菜の塩漬けと魔法瓶に入れられていた熱々の野菜スープ。デザートにリンゴみたいな異世界の果物だ。
まずはパンを食う。顎に力を入れてかみちぎって咀嚼する。最初は堅かったパンはだんだん柔らかくなっていくがそれに比例して口の中の水分がなくなってきたからスープを入れる。
魔法瓶に入れらてまだまだ熱々のスープには野菜の甘みが溶け出していて美味い。柔らかくなるまで咀嚼し続けてきたパンにもスープが沁みたのか口の中のスープの量が少なくなってきたところで飲み込んだ。
燻製肉。ベーコンに近い肉を得に切り分けずにそのままかじり、肉の味と風味を堪能しながら肉の油を野菜の塩漬けで洗い流す。
野菜の塩漬けで塩味が強く残る口内をまたスープでリフレッシュさせてまたパンを食う。
そして最後にリンゴによく似た異世界の果物を食べた。味はリンゴとレモンを混ぜたような感じで酸味が強く、わずかに甘みが感じられるのに後味はさっぱりしていて美味い。個人的にはもう少し甘みが強い方がいいんだがこの酸味で目が覚めるので気に入っている。
食事を終わらせてからゆっくりとバリケードを解き、魔物がいないかどうかを確認してからまた宝物庫を通り、階段を上る。
しかし、どうやらオレは早まったらしい。
「オレの体内時計も当てにならねぇな」
バリバリ夜明け前で案の定アンデッドがうろついていた。
ゥ…ウウ
ゴ、あぁお…
ォォォオオオ
カチャンカチャン
『ゾンビ LV40~90』
『アニマルゾンビ LV35~100』
『ゴースト LV20~70』
『スケルトン LV30~90』
『アニマルスケルトン LV25~80』
アンデッドの見本市だった。
まずはゾンビとアニマルゾンビは早い話が腐乱死体。違いがあるとすればその死体が人間の物か動物の物かという違いだ。距離のおかげで臭いは気にならないが近づけばきっと腐った臭いがするのだろう。できれば近づかずに魔法で対処したい相手だ。
次にスケルトンとアニマルスケルトン。こっちは白骨死体だな。こっちも違いは人間の骨格か動物の骨格かという違いだ。スケルトンはもともとこの都市の兵士だったのか粗末ながら武器や防具を装備している個体が目立つ。アニマルスケルトンも軍用犬とかだったのかな? なんにせよ斧との相性は良さそうだからこっつは接近戦で余裕だと思う。
最後にそんなアンデッド達の頭上を浮遊しているゴースト。人魂というやつか青白い光がロウソクのように揺らめいている。若干大きさの違いがあるように見えるのはただ単に遠近感覚がおかしいだけなのかそれとも…?
確かゴーストには物理攻撃が効かない。その体が魔力で構築されているから鉄製の武器でただ攻撃してもすり抜けるだけで意味がない。そんなゴーストを倒すには気力か魔力を込めた攻撃を食らわせればいいらしい。なんでもゴーストの身体を構築している魔力により強い魔力をぶつけることで霧散させるかそれとも気力で魔力を乱してしまえばゴーストはその身体を維持できなくなるかららしい。
らしい。とオレが言うのはそもそもオレがこれまでゴーストを倒したことがないからだ。あくまで先生から教わった「知識」でしかなく「経験」ではない。だから「らしい」とどこか不安が残る言い方しかできない。
だからまずは魔法で攻撃してこちらに向かってくるようなら気力で強化されたハルバードで攻撃するしかない。
そう腹をくくったオレは
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
雄叫びを上げて一番手身近にいたスケルトンをハルバードで叩き潰した。
一体あれからどれほどの時間が過ぎただろう。
オレはまだ
「でりゃぁあ嗚呼ああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
戦いを続けている。
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
あれだけその辺をうろつくだけだったアンデッドがオレを視認した途端、雄叫びを上げて向かってきた。そんなリアルなバイオでハザードな光景に気圧されまいと気合の雄叫び代わりに火属性魔法でゾンビを償却しつつ向かってくるスケルトンをハルバードで粉砕した。
全身を炎で焼かれながらもこちらに向かってくるゾンビの気迫に若干ではあるが気圧され、後手に回らされたオレの隙を付こうとゴーストが上空から強襲してくる。
こちらに向かってくる道中で人魂からより人間に近い姿。おそらくは生前の、人間だったころの姿なのだろう。そんな姿を中途半端に残したような不定形な手でこちらをただ撫でるように触ってきたゴーストにオレは全身の産毛が逆立ち、魔力そのものが削られたのを感じた。
「魔力よ爆ぜよ。我が激情をもって我が敵に滅びと終末を与えよ『マナバースト』」
魔力による爆発でこちらに迫ってくるゴーストを蹴散らしているともう触れ合える距離にまでゾンビが迫ってきた。
流石にこんな超至近距離でハルバードは振るえない。
だから
「【重拳】」
空手の正拳突きに柔道の背負い投げを混ぜたような、パンチングマシンに全力で打ち込むゲームセンターの素人のような威力重視の拳を一番近くにいたゾンビに打ち込む。
一瞬の抵抗を感じたがすぐにゾンビは吹き飛び、すぐ後ろまで迫っていた後続のゾンビもまとめて一気に後ろに吹き飛ばした。
ハルバードを振るうに十分な距離を開けることに成功したオレは慌てたようにこちらに迫ってくるゴーストに
「【一閃】」
スピード重視の人たちを浴びせゴーストを霧散させた。どうやら気力による闘技でもゴーストには十分通用するらしい。
まるで煙でも斬ったみたいで効いてるのかイマイチわからないが復活する様子もないのでこれで大丈夫のはずだ。そんなゾンビにゴーストを掻い潜ってこちらに迫ってくるスケルトンに
「【剛撃】」
ハルバードの一撃を加えて粉砕した。こちらへ迫ってくるスケルトンは一体だけではないので振り下ろしたハルバードを手首の動きで持ち替えて、こちらへと迫ってくるスケルトンを股から脳天にかけて斬り裂く。
どうやらここのスケルトンを構築している骨格はかなり古い骨のようでかなり脆い。これなら闘技を使うまでもなく普通の一撃で十分だった。
あれからどれだけ時間がたったんだ? 夜はまだ明けないのか?
何体ものアンデッドを討伐した。オレが鑑定した時よりももっと多くのアンデッドがいた。
どうも鑑定スキルの効果範囲外にいたアンデッドも戦闘音を聞いたのかこちらへと向かってきて呆れるほどの数のアンデッドを討伐することになった。中には上位種のアンデッドもいたがそれらも難なく討伐することができた。
出来たんだが
パチパチパチパチ……
やる気のない拍手が聞こえた。そちらへと顔を向けるとそこにいたのは
「おやおや、まさかここに生きた人間が来るとは思いませんでしたよ。とりあえずようこそと言っておきましょうか。私は―」
『デビル LV250』
「悪魔か。実際に見るのは初めてだよ」
「おや? もう正体が分かったのですか? 私としては一目でわからない程度には君たちの姿を模倣したと思っていたのですが」
「まぁ、確かに人眼では人間と見分けがつかないかもな。でもそんな禍々しい魔力を漂わせていたら人間でないことはすぐわかるぜ?」
「おやおや。そうですかそうですか。これは盲点でした。何分生きた人間と会うのはこれが初めてでして、比べたことがなかったのですよ」
気安いやり取り。
そう見えるであろうオレと悪魔との会話。そんな中でオレは
『ヤ、ヤベェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ…』
と内心で冷や汗をかいていた。
悪魔。そう呼ばれる存在はこの世に二種類存在し、一つはこの世に負のアルファメスが誕生した際にそれまでの存在したおとぎ話や神話に登場した恐れられる存在をモチーフにこの世に最初に誕生したいわば「原初の魔物」の一体。もう一つはそんな魔物をモチーフに後の世に誕生したとされる魔物。以上二つに分類される。
言ってしまえばオリジナルとそのコピーのような存在に分類され、便宜上前者が「デーモン」。後者が「デビル」と分類されるようになった。
なぜこの二つを分けて故障するかというとそれは単純に力の差。デビルが何千体と集結しようともデーモンには遠く及ばない。それはデビルがいかに進化を繰り返し、個の力を極限にまで高めたとしてもオリジナルであるデーモンには絶対に敵わないことが証明されているからであるらしい。
そしてそんなデビルでも一体で小国を落とすことは普通にできるらしいので今オレの目の前にいるこの悪魔は端的に言ってオレでは敵わない事が容易に想像できる化け物なのだ。
そんな化け物と今こうやって話してるのだからそれはもう内心は心臓が張り裂けそうなほど緊張している。
「さて、ではそろそろ名前でも聞かせてもらおうか?」
「名前ですか…。残念ながら持っていないのですよ。良ければあなたがつけてくれませんか? そうすればあなたはココで死んでも私の名前柄という形で残り続けることになりますよ?」
「あいにくまだまだ死ぬ気はありませんな。できれば女房と子供に囲まれて老衰で死ぬのが目的なんだよ」
でもそんな話はここで終わる。
「そうですか。では死んでください」
ハルバードを振るうには一歩よりも遠い間合いはあったはずなのに一瞬で距離を詰められて右腕だけ筋肉で肥大化したような異形で殴られた。
期待通りッ! 超ラッキーッッ!!
オレは今込められる魔力と気力をあらかじめ用意していた盾に注ぎ込んで、敢えて足に力を入れずに盾を構えた。
狙い通りに悪魔の一撃でオレは地面からはがされて打ち上げられた。
盾の強度不足。悪魔の狙いが違っていたら
不安要素が多すぎる大博打ではあったがそんなオレの狙い通りにオレは壁か天井に叩き付けられた。
あ、ヤベ
一瞬は意識が飛んだ。
口の中にも血の味がする。
だが
「ラッキー…ッ!」
手の感触で分かる。今オレがいるのは冷たい無機質な壁ではなく、土でできた天井部分ッ!
「土よ蠢け。我が魔力を食らいて動き蠢き我が望むままに行動せよ『クレイムーブ』」
オレが触れていた土が動き、まるで飲み込むようにオレの身体を外へと運んでくれた。
オレは悪魔の叫び声と共に朝日の光を見て意識が遠のいた。
四本目編集完了。
本日編集する分は以上ですが今後もストックを貯めて一気に数話分編集するつもりですのでよろしくお願いします。




