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第二十八話 将棋の後、実戦へ

2025年5月10日

編集しました。

 いつも通りの訓練を終えて合間の時間を見つけては本を読んだ。だが残念ながら読むだけではこの本の内容を全部理解しきれないようで将棋盤の前に座り、自分でも将棋を指しながら少しでも将棋を理解しようと努めた。


 いや、努めようと思ったんだが


「そもそもオレの仕事は魔物の討伐なんだからそこをおろそかにはできないよな」


 ちょっと、いやかなり後ろ髪引かれる思いはある。だがそれはそれとして今のオレの実力はこの森でどれだけ通用するものなのか知りたい気持ちもある。

 だから行こうと思う。


 いざ。魔物討伐へ





















 あれから装備を整えて森へと繰り出したオレ。

 そんなオレの現在のステータスはというと



《松田太一》種族:人間 性別:男 職業:狂戦士(バーサーカー)・斧豪・魔法使い・格闘家・戦略家(ストラテジスト) 年齢:24歳

       レベル:95 魔力:1300 攻撃力:2100 魔攻撃:1200 防御力:1600 魔防御:1600 敏捷:1500 運:93

《装備》黒魔銀の重槍斧(ヘヴィハルバード) ミスリルの剣鉈 アダマンタイトナックル アダマンタイトラウンジシールド アダマンタイトプレートアーマー・一式 守護と癒しの肌着 鋼糸のズボン 魔のベルト サバイバルハードシューズ 上質な下着 風のイヤリング 身代わりの首飾り

《魔法》水属性魔法:中級 土属性魔法:中級 火属性魔法:中級 無属性魔法:中級

《スキル》斧術:最上級 戦斧術:上級 長柄術:上級 体術:中級 剣術:中級 瞑想 索敵 気配探知 潜伏 気配隠遁 魔力操作 気力操作 上級鑑定 アイテムボックス 超感覚 詠唱破棄 咆哮(ハウル) 集中 俯瞰の目 強撃 連閃 狂化(バーサク) 思考加速

《ユニークスキル》健康体 生存本能

《称号》絶望に(あらが)いし者 豪運の持ち主 熟練の斧使い 修行者 求道者 鬼殺し 生存者(サバイバー)



 背中にハルバードを背負い、ハルバードを覆うように盾を背負った全身金属鎧の大男。これが今のオレの状態だ。

 本音を言えば『槍術』スキルを習得してから出発したかったがこの実践の中で習得を目指して動くとしよう。



 なんて考えてたら見つけた。



『オーク LV87』



 腰巻きに棍棒だけを装備した豚面の巨漢。オークである。

 周囲にほかのオークは見当たらない。

 群れからはぐれたのかそれとも偵察でもしてるのかは不明だがこれはチャンスだな。

 盾を構えてからハルバードを取り出す。おっと。物音が聞こえたのかそれとも風向きでも変わってオレの臭いが流れたのかオークがこちらに気づいたらしい。


 手にした棍棒で殴りかかるためにこちらへと走ってくるオーク。そんなオークを迎え撃つために盾とハルバードを構える。

 タイミングは一瞬だ。

 相手の身体全体の動きから棍棒の動きを予測して、その棍棒の動きに盾を添えつつ徐々に徐々に本来の軌道と違う方向へと逸らす様に力を込める。


 結果。空振りしたオークの棍棒。

 当てるつもり振るったのか身体が泳いで隙だらけになったオークにオレは渾身の力を込めてハルバードを振るい腕を両断した。


 悲鳴を上げて倒れるオークの脳天にハルバードを振るって仕留める。



 深く息を吐いて緊張の糸をほぐす。

 ハルバードに変えてから初めての実戦だったが中々悪くなかったと思う。オークのレベルはオレよりも低かったし、もともとの斧でも十分対応できたと思うがやはり槍という攻撃手段が増えたことはよかったと思う。

 だが反省点もあるな。まずは…

「盾を生かそうとして後手に回るのはよくなかったな」

 せっかく盾を持ってるんだからと受けることを前提とした戦法を取ったのは良くなかったな。オークとオレとの間に距離はあったんだから盾を構えずにハルバードだけを構えて先手を取る戦法の取れるようにしておくべきだった。

 今回は相手が格下だからよかったが次はどうなるかわからないから固定する場所も変えないといけないな…





















 試行錯誤しつついい塩梅になるように盾とハルバードを固定しつつ森を探索する。

 オークがいたからきっと近くに群れがいると思ったんだが今のところ遭遇することはなく、緑が禿げ上がった丘にたどり着いた。


 始めてきた場所でどんな魔物が出てくるのかまるで分らない。

 だから慎重に進むことにした。


 丘には土のほかには岩石しかなく、特にこれと言って何かがあるように見えなかった。がなんだ?

「この感じ…」

 胸騒ぎがする。


 なんて思ってたら



 地面が急に消えた。



「は?」

 多分、今オレは相当間抜けな顔をしてると思う。

 そんな顔のままオレは悲鳴をあげながら落ちていった。





















「いてッ!」

 思いっきり腰を打った。

 どうやら終着点らしい。暗くてよく見えないから


「灯火を授けたまえ『トーチ』」

 魔法で灯りをともして周囲を見てみると


「広場? いやどこだここ?」

 石畳が敷かれただだっ広い空間だった。

 特に何かあるわけでもなくただ石が規則正しく敷き詰められているばかりで明らかに人工物であることはわかるんだがそれ以外がよくわからない。

 ただの広場にしてはベンチも花壇もなくて殺風景すぎるし、ではどこなんだと聞かれても答えられないんだ。

 とりあえず周囲を警戒しつつ辺りを探索するか



 探索してみた結果。

 どうやらオレが登った丘はもともとあった建造物を覆っていたようだ。そしてその覆われていた建造物なんだが…

「…闘技場?」

 コロッセオっていうのか?

 なんか、中世ヨーロッパとか古代ギリシャとかにありそうな施設? なんかそんな時代をテーマにした映画に出てきそうな施設だった。

 道中ここまで魔物が一匹もいなかった。少なくともかなりの大きさはあるこの施設。日本の一軒家どころかちょっとした住宅街ほどの広さがあったのに全く魔物がいなかったのはなぜだ? そして魔物がいないのならオレが落ちたあの時の穴は何なんだ?

 上を見てもオレが落ちてきたであろう穴はどこにもなかった。

 つまり何者かはいるはずなのにどこにもいない。

 これは一体…?



 ズズズゥ……ン…!!



 地響きがして足元が揺れる。足に力を込めて何とか踏ん張ったがいったい何が起きた?

「あ、あぁ~。…なるほどな」

 そういうことか



『オリハルコンガーディアン LV160』



「お前がオレをここに呼んだわけだ」

 金ぴかのライオン。

 一言で言えばそんな奴がいた。

 だが生物ではないな。身体の表面に光沢がある。それも脂とかいうレベルではなく金属の光沢だ。あと鑑定結果から察するにライオンの姿をしたゴーレムと考えるのが妥当。すると今オレの目の前にいるのはライオンの姿をしたオリハルコンゴーレムということになる。


 オリハルコン。ファンタジー定番の金属の一つで多くの作品において素晴らしい金属として描かれることが多い。

 この世界。アールピーナにおいてもその例に漏れず、ミスリル並みの魔力への適性があり、アダマンタイトには一歩劣るが物理的硬度も高いのにアダマンタイトと比べて軽いという特徴がある。

 先生が言うにはその神々しさとその性能から「神が与えたもうた金属として神聖視されることもある金属らしい

 勿論売買にかかる金額もけた違いで鎧一つ分のオリハルコンを得るには小国を丸々一つ買える金額が必要らしい。


 そんな超希少金属が目の前にライオン一頭分の大きさである。

 ライオンってどれくらいの体長で面積で言えばどれくらいなんだろう。少なくともあの体の中身が空洞でないのなら鎧どころか剣だろうが盾だろうが一式揃いそうだ。

 鎧だけで小国ならここまで揃えるには大国だって無理なんだろう。

 そう考えると緊張する。

 まぁ、すべては

「ここを生き残れればの話か…」

 ハルバードと盾を構えてオレはこの絶望的な戦いで覚悟を決める。





















 ハルバードを構えるオレをオリハルコンガーディアンはただジッとみている。

 様子見かただこちらを見下しているのかは分からないがこれはチャンスだ。この隙に

「魔力よ巡れ。我が膂力となれ『フィジカルブースト』。

 炎よ我が身を覆え。我が力となりて敵を屠れ『ファイヤーブースト』。

 大地よ我が身を覆え。我が盾となりて我が身を護り給え『アースブロック』

 水よ我が足に纏え。我が道を滑り、我が身を運べ『アクアムーブ』」

 出来る限りの肉体強化を施す。


 相手はミスリルと同等かそれ以上の魔法耐性がある以上牽制以外で魔法が生かせるとは思えない。ならそれ以外の分の魔力は全部強化と回復につぎ込むつもりで強化を盛り込む。

 まずは気力による肉体強化と並行して無属性魔法の『フィジカルブースト』で全体的な身体能力上昇。

 次に火属性魔法の『ファイヤーブースト』で力。特に攻撃力を上昇させる。

 そして土属性魔法の『アースブロック』で防御力を向上させる。

 最後に水属性魔法の『アクアムーブ』で敏捷性を底上げした。


 すさまじい勢いで魔力が消費されていくのを感じながらハルバードを握りしめてオリハルコンガーディアンに斬りかかった。



「ガァアアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンッッッッッ!!!!!!!!!!」



 オリハルコンガーディアンが吼えると周囲の石畳がガタガタと音を立てて動き出し、形を変えた。



『ロックゴーレム LV95~100×5』



「クソがッ!」

 悪態を吐くオレにおそらくはオリハルコンガーディアンが生み出したか呼び出したであろうロックゴーレムが殴りかかってきた。


 まるで机が迫ってくるような迫力の拳を紙一重で躱しつつハルバードを振るってロックゴーレムを斬り裂く。

 強化されたこの状態ならロックゴーレムくらいなら容易く両断できるようでこちらを殴りかかってきた腕を断ち切りつつもっとも魔力が集まっている場所を槍の部分で貫いた。

 貫いたハルバードを引き抜く勢いを利用して石突で背後のゴーレムを殴打しつつ斧刃で斬り裂く。

 斧による斬撃だけでなく、槍による刺突、石突による殴打。三つの攻撃手段をもってどんな状況でも生き残る。これがハルバードの強みだとしみじみ感じながら最後のゴーレムを倒したオレだがそんなオレをオリハルコンガーディアンがジッと見ていた。


 まるで観察するようにこちらを見ているオリハルコンガーディアンは非常にゆっくりとした動きでこちらへと歩いてくる。

 土属性魔法で足場を崩す。

 火属性魔法で攻撃する。

 水属性魔法で牽制する。

 やれることならいくらでもある。あるはずなのに行動に移せない。

 コレが重圧(プレッシャー)ってやつなのか? ただこちらに向かってゆっくりと歩いているだけのはずなのに今すぐにでもここから逃げ出したくてしょうがない。

 戦うなんてもってのほかだとオレの本能が大音量で危険信号をかき鳴らしている。



「うラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」



 喉元までせり上がった悲鳴を逆に利用して気合の雄叫びを上げた。

 負けてたまるか

 死んでたまるか

 勝つ

 勝って生き残る

 そんな気持ちを声の限り叫ぶことでついさっきまで感じていた重圧がいつの間にか消えていた。いつも通りに動けるようになった身体で盾を構えた。


 実はつい先ほどの雄叫びで自分にかけてあった強化魔法が乱れて融けてしまっているんだ。

 だから急いで新しく駆け直す必要があるんだが


「グルガッ!」

「ぐおおお!」

 流石にそんな隙はなく、あんなにゆっくりだったくせにもうすぐそばまで来ていたオリハルコンガーディアンの爪の一撃を盾で防ぐ。

 その威力はすさまじく、盾で受けれたはずなのにその衝撃だけで身体が流された。

 たたらを踏んだところにオリハルコンガーディアンの追撃が来る。

 オレは今度こそ受け止めるべく盾を構えるがオリハルコンガーディアンの攻撃は早く、重い。

 たった一撃で体勢が崩されるし、下手に倒れようものならあの巨体にのしかかられて反撃もできないだろう。

 だからこそ倒れずによく目を凝らせッ!

 お前の攻撃なんて全く効かねぇんだと睨みを効かせろッ!

 そのついでに相手の攻撃の隙を見つけて…


「ここだッ! 【斬撃】ッ!」


 反撃に出る。



「【唐竹割り】ッ! 【円舞】ッ! 【剛撃】ッ! 【連撃】ッ!」

 硬い。

 反撃に出たはいいもののそのあまりの硬度には恐れ入る。攻撃しているオレの手の方が痛む。だがその痛みを無視して攻撃を繰り出し続ける。

 繰り出して

 繰り出し続けて

 何度でも繰り出し続けた。



「グルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

「ッ!」



 オリハルコンガーディアンが吼えると周囲一帯の石畳が石柱になってこちらに迫ってきた。

 幸い鎧のおかげで足が貫かれることはなかったが足元が崩されてオリハルコンガーディアンと距離ができてしまった。


 改めてオリハルコンガーディアンの現状を見てみると、どうやらオレの攻撃はそれなりに効いているようでオリハルコン製の身体にいくつかひび割れがある。

 次のオレの現状だがおおよそ問題はない。先ほどの攻撃もどうやらオレを引きはがすことが目的だったようでこちらを攻撃するのは二の次だったのだろう。

 それなら


「魔力よ巡れ。我が膂力となれ『フィジカルブースト』。

 炎よ我が身を覆え。我が力となりて敵を屠れ『ファイヤーブースト』。

 大地よ我が身を覆え。我が盾となりて我が身を護り給え『アースブロック』

 水よ我が足に纏え。我が道を滑り、我が身を運べ『アクアムーブ』」


 魔力の消費は気になるがここいらが勝負どころだ。ならここで再び自己強化を施してからもう一度接近戦に持ち込めれば勝てる。

 だが、


「そう簡単にはいかないか…」

 オリハルコンガーディアンの咆哮に酔ってこちらに押し寄せてくる土石流をどこか他人事のように眺めつつ嘆息した。



 オリハルコンガーディアンはどうやら遠距離戦がしたいようでこちらに全く近づこうとしない。


「グルガッ! グルガッ! クルルルゥおおん」

 一声鳴くたびに周囲の石畳や岩石に土がうごめき、こちらを放む壁にもこちらを狙い打つ砲弾にもなっている。

 ハルバードである程度斬り裂きながら接近を試みるオレに業を煮やしたのかオリハルコンガーディアンがひときわ大きな咆哮を上げるとオレが今経っている自慢も含めた周囲一帯がうごめき、土の大津波が起きた。


 日本の映画やアニメぐらいでしか見たことのない土の大津波。土石流に思わず呆けてしまった。

 超大量の土砂や岩石がこちらに迫ってくる音に正気に戻ったが状況は絶望的だ。あの質量に巻き込まれたらまず助からないだろう。万が一命拾いはしてもその時には文字通りオレは大量の土砂や岩石に周囲を固められてオリハルコンガーディアンの号令一つで殺される。


 では逃げるか? それも厳しいだろう。日本でも走って土石流や雪崩から逃げることは不可能だったはずだ。いくらこの世界で超人的な身体能力を手に入れたとしても自然災害から逃げられるとは思えない。背中を向けて逃げたところで逃げ切れるとは思えない。


 防御はダメ。

 逃げることもダメ。

 ではどうするか? 一か八かで


「貫くしかない…ッ!」

 オレのハルバードでオリハルコンガーディアンの土石流を貫く。

 これしかない。防御も出来ず、逃げることもできないのであればむしろ攻撃しておそらく安全であろう術者本人のいる向こう側に行くの最善のはずだ。

 自分で考えたがかなり難しく、怪しい手段だ。まさに賭けというしかない

 だがやるしかない。生き残るために



 集中…ッ!

 深い、深い集中…ッ!

 もう音も聞こえなくなるほどに集中してからハルバードの穂先に魔力と気力を集中させて力を()()()



 自分でも驚くほど何の抵抗も感じる事無く



 オレのハルバードは



 土石流を突き破って



 オリハルコンガーディアンに突き刺さった。



『―――…



 何か聞こえた気がするが今はそんなことはどうでもいい。

 今はこのオリハルコンガーディアンに突き刺さったハルバードをつかんだまま


「魔力よ爆ぜよ。我が激情をもって我が敵に滅びと終末を与えよ『マナバースト』!」


 残りの魔力のすべてを注ぎ込んで発動させた無属性魔法『マナバースト』によって身体の内側から爆破されたオリハルコンガーディアンだがまだ生きてると本能的に確信したオレは魔力切れを起こしたのか遠のく意識を必死に繋ぎとめて残りの気力をハルバードに込めて


「いい加減に終われ【断頭斬】ッ!


 まさに断頭台。ギロチンのような一撃を放った瞬間。意識が途切れた

二本目編集完了。

三本目もすぐに編集します

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