第二十二話 訓練の成果
2025年3月16日に書き直しました。
「はい? ゴーレムじゃない?」
信じられない。きっと顔にもそう書いてあるであろうオレに先生は言う。
「そう。君が今相手取っていたのはアタシが錬金術で造り出した『イミテーション・ゴーレムコア』で作られた人造のゴーレム。正真正銘本物のゴーレムじゃないの」
あっさりと
何でもないような様子で先生は言う。
きっとこの先生にとってはそれだけ関心がないことなのだろう。
実際先生はオレが討伐したゴーレムの残骸からコアの欠片を拾い上げたと思いきや三つあるコアのうち二つ、確かサンドパオペットにマッドドールのコアだったか? わずかに砂と泥が付着している割れたビー玉の破片にしか見えないコアを握りしめたと思えば次にオレの目の前で開かれた手のひらにあったのは罅一つないビー玉が二つだった。
どうやら立ったあれだけでビー玉、ゴーレムコアを修復してしまったらしい。
あまりにも簡単見せられたものにどれだけの超技術が使われているのかわからず呆れればいいのかそれともまたこの稽古ができることを喜べばいいのかわからずにいると先生がオレの相棒を見せるように言ったので素直に応じた。
応じて実際に渡した後で後悔した。
破損したことを報告してない。これは起こられるかと思えば先生はもう鼻から知っていたようで修復するついでにゴーレムコアのもう一つの使い方を教えてくれるらしい。
「このゴーレムコアの特徴は一度発動させると破損されるまでの戦闘記録を保存することができるの。この機能を使うことで次にゴーレムを作るときにより強い個体を創り出しやすくしてくれるし、作ったゴーレムの素材の性質も保存してくれるからこのコアを素材にすることで武具をより強くすることができるの」
唯一の欠点はその作り方の難しさ。おそらくはアタシ以外にこれを作れる奴はいないわね
と先生は言った。
やはりあのビー玉はとんでもない代物のようだ。
そして相棒を先生に預けたオレはいつもの習慣通りに気力と魔力の鍛錬に勤しんだ。千里の道も一歩からということわざにもあるように毎日の積み重ねが大事なんだ。
「でももっと負荷のかかる鍛錬方法も知りたいな」
今はそれほどだとしてもこのままではこの鍛錬方法では時間が足りなくなる。もっと負荷のかかる方法で一気に追い詰める方法も必要になってくるだろう。
オレはついに七割近くまで溜まった風呂の水を見てそう確信した。
魔力量が徐々に増えてレベルも揚がるから更に魔力が増える。
その魔力を消費させるんだからどんどん水が増えていく。
このままのペースならいずれ風呂を溢れさせても十分以上に魔力が余ることになるな。そうすればもう鍛えることができない。
家庭で一番水を使うであろう風呂で不十分になれば選択や炊事に使う水をオレが担っても焼け石に水になるな。
「もう魔力は一割もないけど次はたまった水を沸かすことをやってみるか?」
先生に相談だな
なんてことを考えながらも鍛錬はまだまだ続いている。
次は素振り。
相棒は先生に預けてるからもっと重い戦斧
『素振り用戦斧・重振』・・・特殊級装備品。名前が示す通り訓練用の戦斧。アダマンタイトを主に素材として作られており非常に重く、装備者がいくら魔力や気力を込めようとも分散拡散させてしまうためいくら魔力や気力を込めようとも強化は出来ず、闘技も放てない。
コイツで鍛錬。
実戦感覚で魔力を込めようともちっともまとまらず、散っていく。まるで底の抜けたバケツに水を入れているようでとても不毛だ。だがこれでいい
「フー、…」
呼吸を整えて腰を落とし、下半身をしっかりと安定させる。
胸を大きく張るように腕を振り上げて掌の力を抜く。手をリラックスさせてから
「ッ!」
一気に力を込めて戦斧を握りしめて振り下ろす。
振り下ろされる戦斧によって切られた風が、空気がうごめき、背中から全身を駆け抜けていく。
全身のバランスや筋肉の動きなどなどを逐一確認しつつ間違いや変な癖がないかを丁寧に確認しているといつの間にか全身から滝のような汗が流れていた。
もちろん振り下ろしだけではない。
斬り上げや袈裟斬りといった斬撃の基本をこれでもかと丁寧に繰り出し続けた結果だ、もう今日だけでどれだけ振ったのかもわからなくなった。
手の皮がむけて血が出ている。鍛錬のたびに血が出ているので今では胼胝ができている。今日の鍛錬でも胼胝がつぶれてすごく痛い。
初めはコメ粒ほどの大きさだったが今では大豆に迫るほどの大きさになっている。きっと今日の分の血が止まり、また胼胝ができるころにはもっと大きくなることだろう。
「また包帯にポーションをしみこませないとな…」
また明日も斧が振るえるようにするために
鍛錬で汗をかいてからはいる風呂は格別。格別なんだが
「沁みたぜ…」
主に手に
皮がむけて血が出てるからな。お湯だけでも滲みるのに石鹸とかもあるから痛いのなんの
なんて思っていると先生に呼び止められた。もしかして…
「出来たわよ」
『白銀のバトルアックス』・・・特殊級装備品。魔力の伝導効率のいいミスリルが含まれている戦斧。武器としてはもちろん魔法を使用する際の補助具である杖としても使える。魔力を纏わせることで切れ味を、気力を纏わせることで耐久性を大幅に強化できる。
鑑定結果に変化は無し。だがわかる
以前と比べると斧刃が分厚く大きくなっている。そして重い…ッ!
今までの一割? いや二割増しで重くなった。これは斧刃だけじゃない。柄も石突もすべての密度が濃くなったんだ。
その重量は素振り用戦斧・重振には及ばないがそれでもかなりの重量。これでは今までのように手数で攻めるよりも先ほどのゴーレムの時のように一撃で決める戦法の方がいいだろう。
「上等だ…ッ!」
もう間違わない。
オレは斧を極めるんだ。
心に誓ったオレは我慢できずに新しくなった相棒を慣らすために振るい始めた。
気が付くともう日が暮れていた。また汗だくになっていたのでまた風呂に入った。
手の皮がむけたままなのでまた沁みて痛い思いをしたがそれでも相棒の重さに慣れることができた。
そしてポーションをしみこませた包帯を手に巻いて一晩立った。
完治はしなかったがとりあえず血は止まった。良かったよかった
そして朝食を食べてからオレはまた森の探索をすることにした。
あの赤鬼が倒されたことは残念ではある。だがあの赤鬼よりも強い魔物はきっとこの森にはいくらでもいる。そんな魔物を倒せるようになるためにもレベルアップもしなくちゃいけない。
そしてあの娘、リナ、だったか? アイツにもまた会えるといいんだが…
「なんて思っていたんだっけな…」
もう懐かしさすら感じるよ。
え? なにをしてるんだって?
それは
「ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
『ハイゴブリン LV84』
現実逃避。いや、違う。
脱力
猛烈な一撃を繰り出すためのリラックス状態をするためだッ!
「おっッラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
一瞬
ただその時のためだけに振り抜かれた相棒は蛇腹剣、フランベルジュというのか? 特徴的な剣ごとハイゴブリンを両断して見せた。
一刀両断ならぬ一斧両断により決着――ではなかった。
なぜなら
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャッッッッッ!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
『ゴブリン LV50~100』×20
「「「「「「「「「「ごギャァア嗚呼あああああああああああああああああああああああああッッ!!」」」」」」」」」」
『ゴブリンアーチャー LV60~80』×10
「「「「「「「「「「ゲギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャッッッッ!!!!」」」」」」」」」」
『ホブゴブリン LV60~80』×10
まだまだ無数と言っていい数がいるから
どうしてこうなったんだっけ?
あぁ、確か森の探索中に物音がしたから様子を見たらこのゴブリンの群れがいたんだっけ
そして運が悪いことに見つかって仕舞って応戦することになったんだ。幸いというべきか見つけたときにはもっと大きかった群れだがオレが入ゴブリンとやらを斬っている間にほかのハイゴブリン率いられていた群れはどこかに行ってしまった。
オレの予想だがこの群れを含めたゴブリンの大群はそれこそゴブリンキングのようなハイゴブリンよりも上位種の先遣隊のようなものでオレがたまたま部隊長を殺したからほかの部隊長たちは手勢を率いて逃走。そしてオレが討伐した部隊長に率いられていたゴブリンたちがオレを殺そうといきり立っているのが現状なんだろう
その証拠に今ここに残っているゴブリンはどいつもこいつも怒り狂っている。特に遠距離攻撃手段を持っているゴブリンアーチャーたちがすでに何発も矢を射ってきている。
そんなゴブリンアーチャーの矢を躱したり斧で防いでいると雄叫びを上げて迫ってきたゴブリンの群れを見てオレは
「ちょうどいいな」
考えることをやめることにした。
この世界にやってきてから懸命に磨き続けてきた力と技。そしてこの森の探索で培ってきた生存本能と闘争本能にオレのすべてをゆだねることにした。
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!」
自分の口から信じられないほどの雄叫びが轟いているのもどこか遠くに感じながらゴブリンの群れに向かって行った。
斧を振るって斬る。切る。伐る。きる。キル。切る。斬る。KILL。斬る。切る。伐る。きる。キル。切る。斬る。KILL。斬る。切る。伐る。きる。キル。切る。斬る。KILL。斬る。切る。伐る。きる。キル。切る。斬る。KILL。斬る。切る。伐る。きる。キル。切る。斬る。KILL。
盾で防がれようが鎧で受けられようが武器で受けられようが関係なく、近づくゴブリンを斬って斬って斬りまくった。
遠くにいるゴブリンには魔法を使った。火属性や土属性を使ったが基本は近づいてぶった切る。
もう耳に届くこの音が自分の出してる声なのかそれともゴブリンの断末魔なのかもわからん。とにかく斧が届く範囲にいるゴブリンは切り刻み、縦横無尽に体をひねって斧を振るい続けるオレをどこか遠くに感じながら戦い続けた。
気が付くとオレは自分も含めた戦場を俯瞰的に見下ろしていた。
まるで戦略シミュレーションゲームのようだった。いや、どちらかというと無双ゲームに近いか? とにかく今敵がどこにどれほど固まっているのか、今オレを狙っているゴブリンアーチャーはどこにどれだけいるのかが見えるようになったオレは夢中になって見える。感じる範囲のゴブリンを斬りまくった。
「ゲホゲホッ!」
そして最後のゴブリンを斬った途端に全身から力が抜けて倒れ伏した。
ヤバイ…
全然力が入らねぇ…
オレ、もしかしてここで死ぬのか? なんかヤバい攻撃でも喰らったのか? おかしいな。そんなヘマしてなかったはずなのに…
全身が燃えるように熱い。特に頭が熱い…
一体にオレに何が…
あれからどれほどの時間がたったのだろう。
もうホントに死んでしまうんじゃないのかと不安に駆られながらうつ伏せに倒れているとだんだん冷たかった地面が温かくなっていき、逆にオレの身体の熱が抜けて行くのを感じた。
砂利や土の味を感じながら土の心地よさを堪能しているとだんだん身体が動くようになってきた。
先ほどまでの体調不良がウソのように軽くなった体に違和感を感じて鑑定してみると
《松田太一》種族:人間 性別:男 職業:狂戦士・斧豪・魔法使い・格闘家 年齢:24歳
レベル:85 魔力:500 攻撃力:680 魔攻撃:460 防御力:580 魔防御:580 敏捷:530 運:87
《装備》白銀のバトルアックス 上質な鋼の剣鉈 アダマンタイトナックル カイトシールド アダマンタイトの鎖帷子 白銀の軽鎧 アダマンタイトの兜 鋼糸のシャツ 癒しの肌着 鋼糸のズボン 革のベルト サバイバルハードシューズ 上質な下着 風のイヤリング
《魔法》水属性魔法:中級 土属性魔法:中級 火属性魔法:中級 無属性魔法:中級
《スキル》斧術:上級 体術:中級 剣術:中級 杖術:初級 瞑想 索敵 気配探知 潜伏 気配隠遁 魔力操作 気力操作 上級鑑定 アイテムボックス 超感覚 詠唱破棄 咆哮 集中 俯瞰の目 強撃 連閃 狂化
《ユニークスキル》健康体
《称号》絶望に抗いし者 豪運の持ち主 熟練の斧使い 修行者 求道者 小鬼殺し
変わってた。
うん。まず装備。前回の装備と全然違うんだがこれはいいんだ。壊れた籠手や盾が新しくなって、新しく肌着の上にズボンと同じ作りのシャツを着るようになっただけでそこまで見た目に変化はない。
問題なのは職業。増えてる上に変わってる。
『狂戦士』・・・身を焦がすような激情を爆発させて身体のリミッターを外すことで本来以上の身体能力を引き出す戦士の職。状態異常に高い耐性を持ち、痛覚が鈍化し、限界を超えて活動することができる。限界以上に気力と魔力をひねり出すことができる。しかし、肉体の限界を超えたとき、自身にダメージが蓄積されるため戦闘終了時に解除すると同時に瀕死になり、最悪の場合死亡することもある。
『斧豪』・・・戦士の中でも斧の扱いに長けた『斧使い』が更に斧の扱いに磨きをかけ続け、死線を潜り抜けることでたどり着ける職。斧装備時にステータスに補正が入り、斧を使った闘技発動の際の気力消費を軽減させ、威力を向上させる。レベルアップに際し攻撃力のステータスに成長補正がある。斧関連及び斬撃関連のスキルの習得条件が緩和される。
うん。なんか如何にもって感じの鑑定結果だな。
狂戦士なんてまるで死ぬまで狂ったように戦い続ける戦士といった印象だし、斧豪は斧の扱いが巧い戦士といった感じか?
もしかして先ほどまでの痛みって狂戦士の影響か? 確かに無傷ではなかった。ゴブリンの大群を相手取った時に何かしらの攻撃は食らったし、鎧越しとはいえかなりいい攻撃ももらった。
でもそれだけで別に致命傷をもらったわけではない。にもかかわらずあれだけの反動を受けたと言うことは下手に攻撃を受けれねぇな…ッ!
「要検証だな…」
もしも発動だけであんな痛みを受けるのなら立ち回りも根本的に変える必要もあるかもしれない。
次にスキル。
「こっちも色々増えてるな…」
どれどれ…
『咆哮』・・・感情を乗せて一気に吼えるスキル。敵対者の注目を集めることができ、使用者のステータスに若干の補正をかける。発声量、肺活量に応じて効果が向上する。
『集中』・・・集中力を高めるスキル。スキルや魔法の同時発動による使用者の負担を軽減する。熟練度によって時間間隔の延長にレベルアップに際して敏捷のステータスの成長補正などなど様々な恩恵が発生する。
『俯瞰の目』・・・使用者自身も含めた周囲の状況を把握できるスキル。スキル熟練度によって効果範囲が変化する。さらに熟練度によって行動予測を始め、行動及び攻撃範囲などが表示される。
『強撃』・・・一撃の威力が上がるスキル。闘技や魔法と掛け合わせて使うことができ、スキル熟練度によって威力上昇率の上昇と効果時間の延長に闘技や魔法と掛け合わせる際の気力と魔力の消費削減などの恩恵が発生する。
『連閃』・・・連撃の速さが上がるスキル。闘技や魔法と掛け合わせて使うことができ、スキル熟練度によって攻撃速度上昇率の向上と効果時間の延長に闘技や魔法と掛け合わせる際の気力と魔力の消費削減などの恩恵が発生する。
『狂化』・・・狂戦士を筆頭とした一部の戦士が己の限界を超えるために用いるスキル。使用者は非常に獰猛な性格になり、理性が著しく鈍化することで他者とコミュニケーションが取れなくなる。身体能力を飛躍的に向上させることができ、使用者が使用できる気力量が大幅に増加する。だがそれは生命活動に必要な分を戦闘に回しているだけなのでもしもスキル使用中に気力を使い果たしてしまえばスキル解除と同時に使用者が死亡する。
おい。
いろいろ言いたいがとりあえず最後。狂化。お前は何なんだ
オレもこの世界に来ていろんなスキルは調べたし、身にも着けたから知識はあるけどそんなオレでも初めてだよ。解除後に使用者が死亡するなんてスキルがあるなんて知らなかったよ
まぁ、いかにも狂戦士が持つスキルらしいと言えばそれまでだがそれでもこんな恐ろしいスキルを身に着けるなんてどういうことだよ
「ま、まぁ、要するに気力をすべて使いきらなきゃ大丈夫なんだろう…」
鑑定結果にも使用中に気力を使い果たしてしまえばと表記されていたんだし、逆に言えば使い果たしさえしなければ大丈夫なんだろう。うん。そうに違いないよ。うんうん
まぁ、狂化のスキルのインパクトがすごすぎるが他のスキルも大概おかしい。大器晩成というのか? なんか使いこなせればいろんなことができるようになるようだがそれは一体…
「これも要検証だな…」
まぁ、強くなったことには違いないんだからそれでいいはずだ。うん
最後に称号。
「まぁ、予想は付くけどね」
一応はね
『小鬼殺し』・・・一定数以上の個体数と上位種類のゴブリンを討伐した者に贈られる称号。ゴブリンとの戦闘時にステータスに若干の補正が入る。
「うん。想定内」
なんか、いかにもと言った称号だった。
「まぁ、これだけのゴブリンを殺せばこんな称号もつくか…」
今更ながら、あまりにもあんまりな大量のゴブリンの死骸とその匂いに意識を向けて、オレはその惨状にため息が漏れた
前話も同じ日にちに書き直しております。
そちらでも書いてあるのですがこの度、私は当作品の書き直しを優先すべく最新話の投稿を二ヶ月に一度に抑えることにしました。
楽しみにしていたのに残念と言ってもらえると非常に心苦しいのですがとても嬉しいです。




