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第十九話 共闘

編集完了。

 あれからしばらくたって



「つまり君は私たちを追ってきたわけじゃないのね?」

「あぁ、もちろんだ。オレはお前さんの種族を知らないし、別に会ったからどうこうするつもりもないよ」



 オレは変わらず半裸のまま両手を上げた状態で話していた。

 幸いこの降参ポーズの意味は伝わったようで眉間に寄せてあったしわは取れたようだがまだまだ警戒されていた。

 まぁオレもいきなり警戒を解いてもらえるとは思ってはいなかった。

 だから問題はないんだけど


 コレ、どういう状況なんだ?


 ゆっくりと手を下げていく。その間ずっと牛娘の反応を窺いながら

 やはり何かするつもりなのかと逃げだしたりするのだろうかと思っていたが

「さっさとすれば?」

 どうやら杞憂だったらしい。



 牛娘の許し燃えたのでさっさと服や鎧を着た。やはり寒いし、不安だったからな

 ホントなら武器も拾いたいけど流石にそれは警戒されるか? まぁ、剣鉈はあるし、万が一もないと思うが…


 うん。やはり人間は服を着てこそだな

 と思いながら改めて牛娘と話を―――しようとすると




「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」




 突然すぐ近くから何かが飛び出てきた。

 オレはもう考えるよりも早く戦斧に飛びついて臨戦態勢を整えた。

 完全不意打ちを食らったから心臓の音で全身が震えそうなほどに鳴り響いているせいで視界がブレる。

 そんなオレの視界でも捉えたのは赤い肌を持ち、額から一本の角が生えた鬼だった。見たまんま赤鬼である

 流石はファンタジーと思いながらも鑑定スキルでこの赤鬼について鑑定する



『オーガ LV80』



 あ、オレ。ここで死ぬかも


 オレよりも頭二つ分は大きい体躯。

 そしてその体躯限界ギリギリまで詰め込まれた筋肉。

 さらにはその筋肉を生かすためなのかオーガの身の丈ほどの大きさを誇る鉈

 この三つを見たときに感じた感想。


 そんな風に怖気づいてしまったオレを尻目に



「いやぁあああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」



 鬼と同等かそれ以上の雄叫びを上げて鬼に突っ込んでいく牛娘を見てオレは顔が熱くなった。

 この熱は牛娘に見惚れていたとかそんな浮ついたものではない。自分への恥ずかしさだ


 女神さまから力や武器をもらい、この一年間それらをひたすらに鍛え上げてきた癖にオレは自分よりも強いであろう鬼に簡単に怖気づいてしまった。

 しかし現地人であろう牛娘はそんな様子を一切見せずに立ち向かっている。オレのように力を与えられたわけでもないのにオレよりも勇猛果敢に挑んでいる。

 なのにこのオレの体たらくは何だ?

 オレは今までこの世界にいる人たちをどこかで見下していた。自分たちの世界を滅亡の危機に陥れた元凶。自分たちの尻拭いもできない無能。

 心のどこかで現地人のみんなの事を見下していたんだ。それなのにこの様か?


 なんと滑稽


 なんとまぁ、無様


 我がことながら呆れてしまう。

 すぐにでも駆けだしてしまいそうになる自分を全力で抑え込み、オレは


「炎よ滾れ。煌々と輝き、死と再生をもたらす赤き炎よ。我が意思を聞き届けよ。我が求めるは我が敵を打ち滅ぼす炎の鉄槌。我が意思を聞き届けたなら答えよ。我手に集いて我が敵に滅びを与えよ『バーニングブラスト』ッ!」


 今のオレに放てる最大威力の魔法を放った。



 両手で覆うように魔力を集中させると炎が現れ、燃え盛っていく。

 オレの詠唱に合わせて燃え上がり、威力が見る見るうちに膨れ上がっていき、同時にオレの両手に反発力と言うのか抵抗感が出てきた。それを無理やり抑えつつ更に詠唱を続けていくとやがて臨界点に到達したのか少しでも力を抜くと両手が弾かれて、制御を失ったこの炎がどうなるかわからない。

 そんな不安が首をもたげる中いよいよ魔法が発動した。


 バランスボールほどの大きさを持つ炎。


 それがオレの両手の中で完成され、発射される。気分はさながら某国民的バトル漫画の必殺技のかめ〇め波。


 オレのかめ〇め波は寸分たがわず赤鬼に命中し、苦悶の声が炎から聞こえる。そう()()()()()()()()()()、だ。それはつまりオレの魔法で赤鬼を討伐できていないと言うこと

 だがそれも好都合。



「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」



 痛みと苦しみ、そしてそれ以上の怒りを宿した方向で炎をかき消した赤鬼の眼前で



「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」



 赤鬼以上の雄叫びを上げて戦斧を振り下ろした。




「【パワースラッシュ】ッ!」

 オレの闘技が赤鬼の肩を捉える。

 赤鬼はそんなもの知るかと言わんばかりの勢いでオレの脳天をカチ割ろうと鉈を振るうが



「いやぁあああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」



 そうはさせないと牛娘の槍が赤鬼の腕を突く。

「アンタッ! あんな魔法を使うんなら最初に言いなさいよッ!」

 全く、これだから人間はと怒る牛娘に大声で謝罪しつつもオレは己が持つすべてをフル回転させている。今この瞬間に自分にできることは何か、何をどうすればこの赤鬼に勝つことができるのか

 頭では冷静に考えつつも身体は燃え尽きそうなほどに熱くなって戦斧を振るった。





















 あれからどれだけ時間がたったんだ?

 一時間?

 二時間か?

 もしくはそれ以上かもしれないしもしかしたらほんの数分かそれ以下かもしれない。もう時間の感覚があいまいだ

 それでも



「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 現在戦闘中だったりする。


 バギンッ! と嫌な音を立ててとうとう残った盾籠手も壊れてしまった。

「クソがッ!」

 悪態を吐いてオレは赤鬼から距離を取った。


 満身創痍だ。

 まず盾籠手。これが両方壊れた。

 まず最初は赤鬼の攻撃を受け流そうとした、したんだが失敗して盾は粉砕されるし、その盾籠手を装備していた腕が折れた。

 腕が意図せず変な方向に曲がっているから折れていることが分かった。意外に痛みはないものなのかと思えば時間経過とともに燃えるような痛みを感じる。今では肘から先が燃えるように熱く、痛い指がピクリとも動かない腕の事も心配だ。

 もう一方の盾籠手はうまく受け流せたようで盾を止めていた金具が壊れただけで腕の方に何のダメージもない。壊れた盾はその辺に転がっているがもうきっと普通の盾として使う持ち手の部分も歪んでいると思うから使いずらいと思うし、この腕では…

 腕の事ももちろん心配だが一番心配なのは兜。赤鬼の攻撃がかすれたせいかオレの頭からすっぽ抜けてその辺に転がっている。これは兜の締め付けが甘かったと嘆くべきかオレの頭蓋が無事なことを喜ぶべきか判断に迷う。

 ほかにも鎧のあちらこちらが壊れているし、壊れた個所から血が出ている。

 気合だけで立っているがもう全身の筋肉も限界ギリギリなようでもう体中が痛い。筋肉痛なのかそれともケガが痛いのかもわからなくなっている。

 以上がオレの現状。


 次に牛娘。こっちもこっちで無事ではない。そのご立派な肩装備はまだ健在ではあるがあちらこちらが凹んでいるし、全身が擦り傷や打撲だらけなのが見ただけで分かる。

 なんでオレがここまでボロボロなのに牛娘がこの程度なのかって? そんなの



「あらあら。意地なんて張って私が守ってもいいのよ?」

「うるせぇんだよ。今更引けるかい」

 こういうことだ。



 はい。オレはバカです

 冷静に考えなくてもこんなことに命を懸けるなんてばかばかしいにもほどがある。

 こんな非常事態に女性である牛娘を護ろうなんて…

 でもさ?

 この牛娘のおかげでオレは自分のおごりというか傲慢さに気づけたし、牛娘も一緒に戦ってくれているからオレはまだ生きてるんだもの。お礼をしたっていいじゃないか



 そして肝心の赤鬼は全身が焼けただれ、ひどいやけどを負っている。動くたびに皮膚が裂けているのか血が出ていて明らかにもう致命傷のはずなのに


「何なんだろうね。あの紅い蒸気は…」

「鬼の気迫とでもいうのかしらね」


 そう。

 オレの魔法で全身が焼かれ、視界も悪くなったのか攻撃に正確性もなくなっていく赤鬼に一度は勝機を見出したオレだったが突然赤鬼が今までとは違う吠え声をあげたと思えば全身が赤い蒸気のようなオーラに包まれた。

 一瞬気力か何かで身体強化でもしたのかと思ったがそれから繰り出される攻撃は別に変った様子もなかった。試しに戦斧で受けてみても今までより多少強化されたかもしれないがそこまで劇的変化がないと言ったところだった。

 だが違う

 このオーラの本質は


「回復」

「えぇ。全く馬鹿げてるわよこれだけ強くてタフなくせにさらに自己回復とか…」


 そう。このオーラの本質は回復。オーラに包まれている間、赤鬼の身体は徐々に回復していき、同じ攻撃では傷つけにくいようにする耐性の付与が目的。

 つまり早く倒さないと俺と牛娘の攻撃ではこの赤鬼を倒せなくなる。


「全くクソッたれだぜッ! チクショウがッ!」


 口から悪態がとめどなくあふれ出る。

 早く倒さなくて行けない。オレの攻撃がこの赤鬼に通じるうちに倒さなくてはいけない

 不安と恐怖と焦燥感が頭を焦がそうとしてくる。

 しかし、冷静さを失って勝てる相手ではない。その事実が無謀に飛び込むことだけは阻止してくれている。

 オレは大きく息を吸って吐いた。

 肺の中が空になるまで吐き出してから新鮮な空気を吸う。確か空手の息吹とかいう方法。緊張をほぐし、精神を安定させる効果がある。

 オレがやっていたのは柔道だし、別に空手の経験があるわけではない。でも柔道の試合前でよくやっていたこの方法を見た先輩が教えてくれた。

 自分で編み出した方法でもあるから思い入れもあるし、効果ももちろんある。


 うん。いい感じに頭に昇った血が下りた。


 まず耐性の付与。これはオレが接近戦を繰り広げている時に何とか詠唱を完了させて繰り出した火属性魔法で確認できた。さすがに先ほどの全力程の威力は出せないがそれでも明らかに効果が低すぎるから間違いない。


 つまり火属性に対して耐性を有してる状態。オレの最大火力である火属性に体勢があるのであれば別の属性なら…

 しかし、そのための時間はどうする?

 並行で?

 できるのか?

 いや、やるしかない。


「牛娘! 少し時間を稼げッ!」

「牛娘? 変な名前つけんじゃないわよッ! アタシの名前はリナ」


 おっと。名前を聞いてなかったから心の中で呼んでいた呼び方をしたら怒られたぞ。

 リナ、ね。了解



「いやぁあああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 牛娘、いやリナが槍で斧でハンマーで応戦しながら赤鬼を相手取っている。

 槍で突いたと思えば軌道の途中で斧の斬撃に切り替わり、威力の小さい一撃を受けて反撃しようとしている赤鬼の腕を返し刀のハンマーでしたたかに打ち据える。

 刺突だと思えば斬撃か殴打。

 そして斬撃や殴打の隙を縫うように刺突。


 強い。

 そして上手い。


 リナの方は安心できる。そう判断したオレは


「大地よ吼えろ。命の父にして緑の母にして流転する命の舞台よ。我が意思を聞き届けよ。我求めるは我が敵を打ち滅ぼす大地の鉄槌。我が意思を聞き届けたなら答えよ。我が指に従い、我が敵に裁きを与えよ『ランドバンカー』ッ!」

 今現在扱える土属性魔法最大の魔法を放った。



 オレが放った魔法は岩石でできた巨大な釘。いや、もう杭と言うべき代物だった。丸太のような太さを持つ悔いがオレの指の動きに従って動き、赤鬼に向けて発射された。


 赤鬼はリナの相手をしつつオレの事にも注意を払っていたようでオレの魔法を鉈で斬り裂こうと振りかぶるが

「甘い」

 オレは指で魔法を操り、杭が赤鬼の胸に刺さった。

 だが浅い。浅すぎる

 致命傷には程遠く、杭の先端がわずかに刺さっているだけに過ぎない。

 だが刺さった。刺さりさえすれば


「ブッ叩けッ! リナッ!」

「い、いやぁあああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」



 ズガンッッ!!



 オレの指示に肩をビクッと震わせてから一瞬間をおいて振るわれたハンマーがオレの杭を打ち据えた。

 リナの一撃によって赤鬼の分厚い筋肉によって阻まれていたオレの杭は大きくめり込み、血が勢いよく噴き出てきたがそれでも赤鬼は倒れない。

 なのはオレの予想していたので


「大地よ集え。我求めるは岩石の拳。我が敵を打ち抜く岩石の弾丸。我が意思を聞き届けたなら答えよ。我が手に集いて敵を射抜け。『ストーンバレット』ッ!」

 握り拳ほどの大きさを持つ石が住団と同じ速度で杭に打ち込まれ、また赤鬼の身体に杭がめり込む。しかし、それでも止まらない赤鬼。

 いい加減オレもイライラして


「いい加減倒れやがれッ! 【正拳突き】ッ!」

 後先考えずに今残っている余力のすべてを注ぎ込んで正拳突きを放っていた。


 思い出すのはマンガで読んだ史上最強の弟子を育てる空手の師匠の付きの要領。そして柔道部のすぐ近くで練習していた空手部の付きの練習光景。

 腰を落として突く手を腰の位置の大きく引いてからもう一方の手は狙いを定めるために突き出し

 突く手ともう一方の手が活写でつながれているようなイメージでもう一方の手を引きながら体ごと突き出すッ!

 突きの動作に合わせて気力と魔力による身体強化も施して放たれたオレの拳は狙い通りに杭に打ち込まれた。

 籠手に覆われた手が固いものを打ち据えた感触が伝わる。

 籠手がゆがんで指に痛みが走る。

 しかし、そんな痛みと同時に何か堅いものを突き破ったような手ごたえを感じた。


「やっ――」



 と同時にオレは意識が途切れた。





















 ――あれ? オレ、何をしてたんだっけ?


 不思議な浮遊感を感じながら心地よさを感じているとそんな考えが頭をよぎった。


 何か大事なことがあったような気がする。だがそれが思い出せない。


 いや、もういいじゃないか。今はそんなことを思い出さなくても


 今はまだこの心地いい浮遊感を味わっていたい。


 この海を漂うクラゲのような、大空に流れる雲のような心地のいい浮遊感をもっと味わってから考えてもいいはず――




 ――なわけねぇだろボケがッ!




 なんて自分自身の怒鳴り声が聞こえたと思ったら突然電流が走ったような勢いで全部を思い出した。

 なぜ自分がここにいるのか

 一体何をしていたのか

 自分はいったい何をすればいいのか

 自分を取り巻く状況の数々

 そして、とても大事なことに気づかせてくれた牛の特徴を持つ女性の事を思い出したオレはすぐに意識が浮上していった。





















「――ハァッ!」

 目が覚めたオレが最初に見たのは


「うぉ…」



 ド迫力の女性の胸部装甲であった。



 え? コレ、どういう状況?



「あ、起きた?」

 胸部装甲からリナの声が聞こえてようやく状況を理解した。


 オレ、リナに膝枕されてる。


 慌てて起き上がるとリナの胸部装甲に若干触れてしまった。もちろん悪気はないがそれでも

「スマン。でもアリガト」

 礼を言わないとな

 リナは別に気にした様子もなく手を振って立ち上がった。

 その時に自分が若干触れてしまった胸部装甲を見てしまったのは()()()()()せいか? 状況から察するに赤鬼との闘争で気絶したオレを気遣ってくれた相手に何をと自分に呆れてしまう。


 気を取り直して辺りを見渡して状況を確認する。ある程度察してはいるつもりだがそれでも確認はしないとな

 周囲を見渡しているとここがオレとリナが赤鬼と戦っていた場所であることが分かった。だが赤鬼の死体がない。これは一体?

 頭の中をいろんな疑問が出てきているオレを見兼ねたのかリナが声をかけて色々説明してくれた。



 まずオレが気絶した時、赤鬼を殺せていなかった。だが瀕死の重傷を負わせたことには間違いなく、多少の傷は負っていてもリナはまだまだ戦える状況だった。

 とりあえずオレが殺されないように倒れているオレを引きずって引き寄せると武器を構えたらしい。だがその後すぐにオークが乱入してきたらしい。


 乱入してきたオークはまず気絶していたオレを視界にとらえたらしいがそんなオレを護るリナを相手取るよりも手負いの赤鬼に狙いを定めたらしい。

 オークに狙われた赤鬼も手負いでありながら必死に応戦しているがやはり分が悪いようでこの場から逃げ出したらしい。もちろんオークはそんな赤鬼を追って行ったらしい。


 そして音が離れていく様子から赤鬼とオークが離れたことを察したリナは血だらけで倒れ伏すオレを介抱してくれたらしい



「なんか、ホントにアリガトな」

 腕に巻かれた包帯をなでながら言う。ほかにも血とか汗で濡れていたはずの顔からが拭き取られていた。まだまだ傷は痛いがこれだけでもとてもありがたい


「別にいいのよ。もちろんアタシにも目的があってもことだし」

 目的? なにがあるんだろうかと首をかしげるオレにリナは聞いてきた。何やら剣呑な気配を漂わせて


「何で? なんでアタシと共闘したの?」

「何でって、何がだ?」

 ホントにわからずに首をかしげるオレにリナは苛立ったように


「とぼけないで! アンタたち人間はアタシたちの敵でしょ? なにが目的でアタシに背中を預けるようなことをしたのよ!」

 眉間にしわを寄せて声を荒らげながら聞いてくるリナ。

 リナの話から察するにオレがリナに背中を預けたことが余程信じられないらしい。オレの考えや腹の底が知りたくてしょうがないようだ

 だからオレは


「だってそうしないと生き残れなかっただろう?」

 本音を言うことにした。


「…………………………………………」

 口をつぐんでただこちらを見ている。

 その顔が「続きを」と言ってるように感じたので


「オレはもともとお前さんたち獣人のようないわゆる「亜人」に分類されるような種族のいない地方の出身だ。だからお前さんたちの事は話しでしか知らん。知らん奴を嫌うことは出来んし、こうして話してるとお前さんという「個人」は信じることができそうだと思った。だから背中を預けることも嫌ではなかったし、お前さんにも信用されたのであれば嬉しいと思う」

 本音を言った。

 獣人などがいない地方出身。うん。ウソではない

 ただ世界が違うだけだ。もっとも地球に獣人やエルフがいるのかオレも知らんし、別にウソは言っていない

 決して異世界から来たとか、この世界の滅亡云々とかを説明することがめんどくさかったからとかではない。断じて違う


 オレが理論武装やらなんやらで頭を動かしてるときにもリナはただ無言でこちらを見てる。うん

 コイツ。美人だ

 学生時代にドルオタの友人にアイドルコンサートに付き合わされたことがあるがその時に見たアイドルよりも目鼻立ちが整っている。

 残念ながら眉間にしわが寄っているし、その眼には強い猜疑心の色がはっきりと浮かんでいる。

 まだまだマイナス様子があるはずなのにそれでも下手なアイドルよりも美人なんだからこれで顔から邪険が取れて満面の笑顔なんて向けられた日にはマジで惚れそうだな


 そんなご尊顔がこちらを無言で見つめてくるこの状況。照れやらなんやらで眼を逸らしたくもなるがここでそらしてしまえばリナからの信頼を得られないような気がするのでできるだけ平静を保ってその顔、特にリナの瞳をよく見ている。



 どれだけそうしていただろう。

 ここが危険な森の中だと言うのに男女が二人無言で見つめ合っていると不意にリナが視線を斬った。


「まぁ、まだ信頼はできない。でもその言葉がウソではないことはわかった」

「…そうか」

 信頼されなかった。

 それはとても悲しいことではある。だがそれもしょうがない

 話を聞く限りリナは人間と何かあったらしいからそのせいで「人間」という種族そのものを信頼できないのだろう。

 でもオレの言葉に嘘がないことはわかってくれた。ひとまずはこれだけで良しとしておこう


 もう離れた方がいいかもな。これ以上必要もないのにオレが近くにいても不快は与えてもいい気分は与えられそうにないし。オレもこの暗い雰囲気からさっさと出たい。痛む指に喝を入れて戦斧を拾ってから家の方向へと歩き出す


「ねぇ!」

「!?」

 呼び止められた。


「こちらこそ」

「?」

 なんだ?


「こちらこそ、ありがとう」

「!」

 リナは続ける。


「あのオーガが出てきた時、もうダメかと思った。アンタとあのオーガを同時に相手取るなんて無理だと思った。でもアンタはアタシを狙うわけでも逃げるわけでもなく戦ってくれた。

 それがすごくうれしかった。

 火の魔法を放ったと思えばいきなりオーガに斬りかかって、アタシを押しのける勢いでオーガと斬り合ったりして、アタシを助けてくれた。

 だからありがとう」


 言いたいことを言い終えたようでこちらに背を向けて歩き出そうとしていたリナがこちらを振り返って

「またね」

「…あぁ、またな」

 驚いた。

 まだまだ表情は硬かったけど


「少しは信頼してくれたのかな?」

 ホント、赤鬼との闘争はまだまだ自分の力不足を痛感させられたし、今も痛い思いをしているけどリナみたいな美人とお近づきになれたならその甲斐もあったかな

 なんて思いながらオレも家路についた。

現地人と交流するまでにここまでかかってる。何ともおかしな話だと我ながら思う。

でも主人公がきちんと努力している描写は絶対に入れたいからこうなったので後悔はしてません

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