第十六話 訓練結果
今月、いや今年最後の投稿です。
あれから一年の時が流れた。
その間オレはずっと修行を続けてきた。気力や魔力訓練に魔法の授業。それからキラープラントとの実践訓練も積んできた。
基本的な体力づくりや筋トレも欠かさずにこなし続け、今では学生時代よりも圧倒的に肉体が仕上がっている。
腹筋はきれいなシックスパックに割れ、全身無駄なく見せるだけの筋肉ではなく動くため、戦うための筋肉がついていて夏の海で見せつけたい肉体美になっている。
そのおかげもあって
《松田太一》種族:人間 性別:男 職業:戦士・魔法使い・格闘家 年齢:24歳
レベル:68 魔力:112 攻撃力:148 魔攻撃:94 防御力:127 魔防御:138 敏捷:116 運:87
《装備》白銀のバトルアックス 上質な鋼の剣鉈 盾籠手 アダマンタイトの鎖帷子 白銀の軽鎧 アダマンタイトの兜 癒しの肌着 鋼糸のズボン 革のベルト サバイバルハードシューズ 上質な下着 風のイヤリング
《魔法》水属性魔法:中級 土属性魔法:中級 火属性魔法:中級 無属性魔法:中級
《スキル》斧術:上級 体術:中級 剣術:中級 杖術:初級 瞑想 索敵 気配探知 潜伏 気配隠遁 魔力操作 気力操作 上級鑑定 アイテムボックス 超感覚 詠唱破棄
《ユニークスキル》健康体
《称号》絶望に抗いし者 豪運の持ち主 熟練の斧使い 修行者 求道者
これほどのステータスになった。
まず数値が伸びたことは言うまでもなく職業が変わった。
『戦士』・・・鎧を身に纏い、武器を装備して戦うものが就ける職業。気力回復と闘技に若干の補正あり
『魔法使い』・・・己の魔力を操ることで魔法を繰り出せ、魔法の修練と研究に勤しむ者が就ける職業。魔力回復に若干の補正あり
『格闘家』・・・生まれ出でたときに持っていた五体を鍛え上げ、敵を屠る者が就ける職業。気力回復と格闘系闘技に若干の補正あり
これが職業の鑑定結果。まずオレが言いたいのは見習いの部分が取れたと言うこと
見習いの部分が取れたと言うことはこれは社会で言うところの研修期間が終わり、正式な正社員になれたという認識でいいのではなかろうか? 先生に聞いてみてもその認識でおおむね正しいらしいのでこれがほんとにうれしい。
「ついに正社員…ッ!」
かつて就活に苦しんだ同志であればわかるはずだ。研修期間をどれだけ真面目にこなし、いくら業務についての理解を深めようとも一向に研修期間が明けず、いつまでたっても正社員の給料がもらえない違法労働を強いてくる企業に苦しんだことがあるのならこの感動がわかるはずだ。
ローンを組む時でも部屋を借りる時でも「正社員」という肩書はあるだけで便利だったからな
次に武装関係。もともと使っていたハンドアックスがオレの身の丈に迫るほどの大きさを誇るバトルアックスに変わったのが一番の変化だろう。
『白銀のバトルアックス』・・・特殊級装備品。魔力の伝導効率のいいミスリルが含まれている戦斧。武器としてはもちろん魔法を使用する際の補助具である杖としても使える。魔力を纏わせることで切れ味を、気力を纏わせることで耐久性を大幅に強化できる。
『上質な鋼の剣鉈』・・・一般級装備品。良く鍛えられた鋼の剣鉈。名工が手を抜かずに仕立てた一振りのため非常に丈夫。
『盾籠手』・・・一般級装備品。盾が取り付けられた籠手。盾は付け外しもできる。その場合は鑑定結果に『盾』、『籠手』と独立して表示される。
『アダマンタイトの鎖帷子』・・・特殊級装備品。そのすさまじい硬度で物理攻撃に対して無類の強さを誇るアダマンタイトで作られた鎖帷子。物理攻撃に非常に強く、攻撃を受けた際の衝撃も吸収してくれるので装備者には半分も伝わらない。
『白銀の軽鎧』・・・特殊級装備品。魔力の伝導効率のいいミスリルが含まれている軽鎧。物理攻撃に強いことはもちろんだが魔法攻撃にも強く、受けた攻撃魔法の威力を半減させる。装備者の魔力を纏わせることで鎧の性能強化は無論のこと破損があれば修復する。
『アダマンタイトの兜』・・・特殊級装備品。そのすさまじい硬度で物理攻撃に対して無類の強さを誇るアダマンタイトで作られた兜。物理攻撃に非常に強く、攻撃を受けた際の衝撃も吸収してくれるので装備者には半分も伝わらない。
『癒しの肌着』・・・希少級装備品。ポーションの材料で色付けされた肌着。装備者の気力回復と魔力回復を促す。装備者の気力と魔力を纏うことで回復速度が向上する。
『鋼糸のズボン』・・・希少級装備品。糸のように細く長く編まれた鋼で仕立てられたズボン。多少重いが斬撃と刺突に対して耐性がある。
『革のベルト』・・・一般級装備品。ごく普通のベルト。特に効果なし
『サバイバルハードシューズ』・・・特殊級装備品。つま先とかかとに鉄板が仕込まれて蹴りの威力を向上させているのはもちろん、悪路を歩く時の足の負担を軽減させることを目的とした靴。気力と魔力を貯蓄でき、戦闘時ではそれを消費して移動速度上昇及び蹴撃威力向上ができる。
『上質な下着』・・・一般級装備品。転移してきた日本人が持ち込んだ下着。この世界基準で考えたらかなり上質で長持ちな下着。
『風のイヤリング』・・・希少級装備品。風属性魔法と相性のいい宝石が使われているイヤリング。装備者の聴覚を常時強化し、戦闘時では過剰な音を軽減させる。周囲の風から魔力を吸収し、装備者に還元させることもできる。
まぁ、一部くだらないものも混じっているけどコレがオレの現在の装備一覧。
主力武器の白銀のバトルアックス。握り手以外のすべてが文字通り白銀色の戦斧。ハンドアックスと比べて何もかもが違うから装備したての頃はその変化に戸惑いもした。でも今ではこのリーチの長さと遠心力も加えた一撃の威力が病みつきになっている。
実は以前にキラープラントを討伐していた時に突然変異で庭にあった小石が集まってストーンゴーレムという魔物を形成した時があった。原因は石イモが変化したキラープラントの突然変異種がその中核になっていたのだがいるはずのない魔物の登場にオレは戸惑ってしまった。でも結局はこの戦斧の一撃で身体を形成している小石ごと中核のキラープラントを討伐できた。
そんなわけで今ではこの白銀のバトルアックスはオレの大事な相棒とも言うべき愛用武器になっている。これからも存分に使っていくつもりだ。
次に副武装の上質な鋼の剣鉈。要するにナイフ以上でショートソード以下の刀身を持つ肉厚な剣だ。主に大型武器で生かすにはある程度の距離が必要な戦斧が振るえない近距離での戦闘での出番になる。
元々鉈とは斧のような使い方もできる武器でそこに剣の要素の加えたのが剣鉈だ。もともとハンドアックスで戦ってきた経験に今の戦斧を振り回して得られる経験もある程度反映されるので使いやすく、白銀のバトルアックスでは苦手な距離の対処が容易なのも魅力的だから使っている。
オレが長柄武器そのものに慣れればいずれは剣鉈を使う機会もなくなると思うんだがもともとオレがこの世界にやってきた時に持っていた武器の一つである「剣」。いずれ使わなくとしても何かに役立てたいなと思う。
次に盾籠手。これは鑑定結果にも出ているが盾と籠手は分離できる。もちろん攻撃を受けて時に簡単に外れないように留め具や金具があるけどそれらを外せば案外簡単に外せる。
盾は小型の丸盾。ラウンジシールドというのか? とにかくゲームでよく見るような盾を小さくしたような盾だ。
しかもよく見るとこの盾の縁は研がれていて思いっきり叩き付ければ切ることもできるようになっている。もしも剣鉈が使えない近距離戦を強いられてもこの盾である程度抗えるし、盾がダメになっても籠手の部分が残るから徒手空拳で戦うこともできる。
防具であるのと同時に武器でもある。これがこの盾籠手の評価だ。
武器の次は防具。まずはアダマンタイトの鎖帷子。黒色で一見ただの鉄と見分けがつかないんだが同じ大きさの鉄製の鎖帷子と比べるとこんなに違うのかと驚くほどに重い。ズッシリとした重量感は鉄を簡単に斬り裂いたバカでかいカマキリの魔物『ブレードマンティスの斬撃を容易く受け止められるほどの防御力を見せてくれたから気にしないでいる。重いけど
鎖帷子だから刺突には弱いがその分斬撃と打撃にはめっぽう強いので鎧と組み合わせることで高い防御力を実現させている。
こと実戦において防御力とは時に攻撃力よりも圧倒的に優先度が高い。ゲームであればいくら死のうともやり直せるから攻撃力に極振りすることもできた。だがこれは現実だ。
一度死んでしまえばやり直しなんてない。
だから一番優先すべきなのは死なないように防御力を上げること。それから自分を殺そうとしている奴を殺せるように攻撃力が必要になる。だからこの重さも必要なことだし、鍛えたおかげでそこまで気にはならない。
次に白銀の軽鎧。コレが鎖帷子と合わせた鎧だ。戦斧と同様にミスリルが含まれていて物理攻撃よりも魔法攻撃への耐性に優れているライトアーマー。重戦士が着るような鎧と比べると装甲が薄く、鎧に覆われている部分も少ないことが特徴だ。
もちろんこれだけでは防御力が心もとないが先ほどのアダマンタイトの鎖帷子と組み合わせることで重鎧にも負けないほどの防御力と軽鎧ゆえの軽さも持っている状態になれた。
特筆すべきはこの鎧に魔力を纏わせた時に破損があれば修復してくれること。幸いまだそこまでやばい魔物と戦ってはいないがそれでもこれから出会うかもしれないから備えておくに越したことはない。
次にアダマンタイトの兜。形状的にはバイクのフルフェイスヘルメットに近く、後頭部まで覆うタイプの兜。角でもあれば完全にヴァイキングにでもいそうなものだ。
しかしこの兜は白銀のバトルアックスで叩きつけてもビクともせず、キラープラントの攻撃を受けても全く痛みを感じなかった。
鎧と同様。これもどこまで通じるのかわからないがそれでも信頼できる頑丈さを持つ兜を選んだつもりだ。これで少なくとも不意打ちで死ぬことは防げるはずだ。
不意打ちさえ防げれば逃げることも戦うこともできる。選択肢ができれば少なとも自分で選ぶことができる。その上で死ぬのなら…
「それはそれで納得のしようもある…」
死にたくない。死にたくないから死なないためにできることは全部やる。自分が考えられることを全部やってやり尽くす。その上で死んでしまったのなら納得できる。
人事を尽くして神事を待つ。だったか? 確か自分の運命のすべてを決めることはできなくとも自分にできることをやり尽くせば少なくとも自分の運命の半分を決めることはできる。といったような言葉もあったはずだ
少なくともオレはこの兜を選ぶことで死なないための準備をしているつもりだ。
さて、話を戻して癒しの肌着。これは長そでのシャツだ。この上に鎖帷子や鎧を着ているんだがこのシャツのおかげで蒸れずに済んでいる。
この蒸れるというのは結構厄介で動いているうちにだんだん熱がこもって服の中がサウナのようになって汗が噴き出て、動きが鈍くなってしまう。
戦場においてこの鈍りは致命的だ。長期戦になって思わぬ一撃をもらうこともあり得る。
そんな事態を防げるんだからとてもありがたい装備だ。
それにいくら鎧と鎖帷子を身につけてるとはいえ、長そでで更に着こめると言うのもありがたい。鎧や鎖帷子と比べたら心もとないが更に防御力を高められるのも魅力的だ。
そして鋼糸のズボン。これは言ってしまえば鎖帷子のズボン版だ。ズボンを構築している糸の一本一本全てが鋼糸。つまりは鋼でできている。
当然それ相応に重いが一見すると普通のズボンにしか見えないほどに編み込まれているので斬撃と刺突に耐性がある。残念ながら言ってもズボンであって鎧ではないから打撃にはそれほど強くない。
だがそこは軽鎧が請け負ってくれているからかなりの防御力を発揮してくれる。軽鎧だけでは下半身の防御力がかなり心細かったこの装備のおかげでかなりカバーも出来ている。
これで少なくとも不意に足を落っことす心配はない。と思いたい
そんなズボンを止めているのは日本でもよく使っていたベルト。これは特に効果も何もない普通のベルト。日本でも何度も使っていたセールで安売りされていたベルトだ。
正直この重いズボンを止めておけるのか少々不安ではあった。だが何度かキラープラント討伐をしていてもずり落ちるようなこともなかったし、問題なく止めて置けているようだ。
次にサバイバルハードシューズ。これはシューズと鑑定結果に表示されているが実際にはブーツというべきもので脛まで覆うタイプの靴だ。工事現場でも使われるような安全靴のようにつま先に鉄板が仕込まれていて脚の指先を保護してくれているだけでなく踵にまで鉄板が仕込まれていて蹴りの威力を上げてくれているだけでなく、悪路でも足に負担が来ないようにしてくれている。らしい
らしいというあいまいな表現なのはオレの主な行動範囲がこの家の敷地内とその周辺だけでそこまで凸凹な道を歩いていないからだ。
今はまだ力を蓄えるべきところでこの森を探索してはいない。だがいずれは…
次に上質な下着。まぁこれもベルトと同様。日本で使っていたオレの下着だ。そういえばベルトはセールで安売りされているときに狩ったもんで下着の方は臨時収入が手に入った時に奮発したちょっといい奴だったか?
その違いが鑑定結果に出たのか?
最後に風のイヤリング。一見するとエメラルドが煌めく銀製のイヤリング。銀色に鈍く光る留め具を含めた土台に緑色の宝石が煌めいている。だがこの宝石はどうやらエメラルドではないらしい。オレは宝石に詳しくないから緑色の宝石と言われればエメラルドしか出てこない。
だがエメラルドなら鑑定結果にもそう表示されるはず。しかし実際に表示されたのは「風属性魔法と相性のいい宝石」だ。つまりはエメラルドではないのだろう。もしかしたらこの世界特有の宝石なのかもしれない。
「まぁ、綺麗なら何でもいいさ」
身もふたもないかもしれないが綺麗なら、美しければそれでいい。それもまたアクセサリーの本質のはずだ。
それに装備として考えても優秀だ。
聴覚強化。要するに音がよく聞こえるようにしてくれるので不意打ちを食らうことを防げるうえにこっちが不意打ちを仕掛けやすくなる。
そのくせいざ戦闘が開始すれば強化したがゆえにかえってデメリットになりそうなところを抑えてくれる。武器を振るう音に相手の動作恩に周囲の音などなど意識を集中させればいくらでも音が拾え、さらにそれがよく聞こえるのであれば耳に入ってくる音が多すぎてとても処理しきれない。絶対にパンクする。
そんなデメリットを抑えてくれるのがとてもありがたい。おまけに魔力の回復効果があるからこのも助かる。残念ながらこっちの効果はそこまですごいわけではない。装備前と装備後を比べると確かに魔力が回復して魔法をたくさん使えた。だがその回復するスピードが遅い。せいぜい一割魔力の総量が増えたと考えるのが妥当。
それでもオレにはありがたい装備だ。
以上。オレの装備の詳細とその感想。
次に魔法。こっちはこの一年でそれなりに成長できた
まずは才能があると言われていた土属性と火属性の魔法。こっちは勉強すればした分だけぐんぐんと成長できた。今では中級魔法が使え、もう少しで上級魔法にも手が届きそうだ。
遠距離攻撃が充実しただけでなく近距離戦でも有用な魔法もあり、あらかじめ強化魔法を付与してから不意打ちをかませばある程度の魔物は一撃で討ち取れるのでは? と思う。
次に水属性魔法。こっちは土属性や火属性と比べると成長が遅く、ホントにぎりぎり中級魔法が使えると言うだけだ。だがそのおかげで今ではオレの魔力だけで風呂釜にお湯をいっぱいに貯められるし、洗濯用の水なども用意できるようになった。
多分この魔法をそのまま日本でも使えるのであればもう水道代がほとんどかからないのではと思うと家計的助かる気持ちとこんな異世界にまで来てなんてスケールの小さなことを呆れる気持ちがせめぎ合って複雑な気持ちだ。
最後に無属性魔法。これはすべての魔法の基本であり理論上すべての人類が習得可能な魔法らしい。先生が言うには生き物はすべて魔力を持っているためその気になれば魔法を使うことができるらしいのだが本能的に魔力の扱い方がわかる魔物以外では人間のような知的生命体のほか一部の動物や植物しか使えないらしい。ちなみにその動植物は神獣や聖獣、そして神樹や聖樹と呼ばれ、祭り崇められているそうで各地にそれらを扱った民話や伝説が遺されているらしい。
話が反れたので魔法の話に戻ろう。無属性魔法はすべての魔法の基本と言うだけあって攻撃、防御、回復、強化、弱体化、支援などなど幅広いことができる。そしてその初級魔法に分類されている魔法は別名『生活魔法』と呼ばれ、その効果が掃除に洗濯に火おこしなどなど生活の役に立つものばかりで魔力や魔法技術を鍛えるにはうってつけだったから毎日発動させ続け、勉強を続けていたらここまで出来るようになった。
と、ここまで聞けば順調なように聞こえるだろう。だが実はそうでもない。
「残念ながら太一君は研究者には向いてないわね。勉強はできても新しい理論を構築したり道の発見をするのは無理だと思う」
と先生に言われた。
先生曰く、オレは努力もしてるし才能もある。だが根本的にそこまで魔法に向いていないらしい。どうしても接近戦や闘技に頼るところが多いから戦士としての才能の方が秀でているらしい。
それでも魔法の才能があることに変わりないからあくまで使い手として鍛えた方がいいらしい。
正直に言えば残念だ。せっかく異世界なのにその象徴ともいえる魔法に向いていないと言われるのはショックでもある。
でも納得できた。確かにこれまでのことを思い出してもオレは魔法主体で戦ったことがない。魔法はもちろん使うがそれでもあくまで選択肢の一つであって戦略の根幹を担っているわけではない。
オレの戦い方の根幹を担っているのはあくまで武器や体捌きに闘技。そう考えるとオレは根っからの戦士であって魔法使いではないのだろう。残念ではあるが仕方ない
最後にスキルや称号もそれ相応に変化した。スキルは斧術が上級になり、気配を消して動く訓練もしていたおかげで新しく気配隠遁のスキルも習得できた。
しかし一番の目玉はこれ
『詠唱破棄』・・・魔法の詠唱を短縮できるスキル。魔力制御が成熟し、魔法に対する理解が一定に達することで習得できるスキル。通常であれば詠唱することで魔法式を補強してより高い威力の魔法を行使できるがその詠唱を途中でやめても完全詠唱と変わらない威力で放てる。詠唱完全無視でもスキル習得前よりも制御威力共に強く放てる。
これだ。
これはオレが欲しかった「無詠唱」のスキルではない。だがそれに近いスキルだ。その証拠に
「灯火を授けたまえ『トーチ』」
指先にライターのような火が灯った。
今までは詠唱のすべてを言わないとできなかったのにたったこれだけの詠唱でできるようになった。
もちろんほかの魔法でも同じ
「我に力を貸し与えよ『ストーン』」
手のひらに小指サイズの小石ができた。
「我が前に出でよ『ウォーター』」
コップ一杯分の水が手のひらからあふれ出てきた。
このように詠唱を縮めても問題なく魔法が使えてる。これでネックだったタイムラグと詠唱による使用魔法の露呈は避けられるようになった。
それでもやはり魔法による遠距離戦ができる気はしない。
なぜなら
「目の前に理不尽の権化がいるからな」
「おホホホホホホ。まだまだいきますわよ♪」
先生の気の抜けるような言葉とは裏腹に放たれる魔法は理不尽。数の暴力の権化
火の矢が雨あられと降りしきり、鉄の槍が所狭しと地面から突き出てくる
風のハンマーが振り下ろされたと思えば雷の蛇が足にかみついて痺れさせてくる
光線が頬をかすめたと思いきや地面がぬかるんで転びそうになった。
こちらも何とか応戦しようとするも数の暴力の前にどうすることもできずにいる。
具体的に言えばこちらの魔法は同じ魔法かその上位互換の魔法で消し飛ばされ、オレの知らない魔法を問答無用で押し付けてくる。
こちらに迫ってくる魔法を武器で応戦していても一発一撃が重く、やがて対処ができなくなり詰んでいく。どんなに頑張ろうともどうにもならない現実を突きつけられていき、息苦しく、先が見えない。
なんて思っているうちに飲み込まれて終わった。
流石賢者だと思うがやはり悔しいし、自分ではあんな風に魔法は扱えないと思う。魔法の一つ一つに対する理解と戦略の年季。というのか? 多分先生のあの弾幕というか数の暴力というべき魔法の嵐はオレの対応や反応を見てから徐々に追い詰めるように戦略が練られていたと思う。
とにかく今のオレでは逆立ちしてもその真似すらおぼつかないことがわかる。
だから切り替えるしかない。
先生のように遠距離戦がダメなら近距離戦を鍛えてこの森を生き残れるようになる。
まずは生き残れるようにそうする。それから魔法を鍛えて、いずれは先生のようにとはいかずとも遠距離戦ができるようになりたい。
来年も書き直していくのでどうぞよろしくお願いします。




