第九十八話 時は流れ…
あの酒盛り、いや一応葬式から一ヶ月が過ぎた。
そしてオレは…
カンッ! カンッ! カンッ! カンッ! カンッ! カンッ! カンッ! カンッ! カンッ!
鍛冶、してます。
「…できた」
『鉄の剣』・・・一般級装備品。鉄から打ち出された剣。(高品質)
これが鑑定結果。
普通の剣。武骨で何の飾りもなく美術品としては何の価値もない。だが仕上げまでの工程を丁寧に慎重にこなしていたために切っ先は鋭く、刀身は厚く折れにくい。実戦で使用されることだけに重きを置いた機能美にあふれた一品。
特に特殊効果も何もなくただ技術向上のために打ち出したありふれた剣。それがこれだ。打ち終わった剣をさっそく
「フム。これが…」
オレの鍛冶の様子をただ黙って後ろから見ていた師匠に見せる。
ドワーフだ。背が小さくひげが豊かなあのドワーフだ。
師匠はドワーフの中でも指折りの鍛冶師でいかにもザ・職人といった雰囲気そのままの人。鍛冶に関して一切の妥協がなく、たとえ相手が一応はこの街の救世主的立ち位置にいるオレでも下手な仕事をやれば容赦なく殴る人物だ。
確かに怖い人だがそれは下手な仕事をするやつが悪いのであって別に理由もなく誰かを殴るようなことは絶対にしない。それにオレとしても変に遠慮されて肝心の技術が十分に伝承されないことは本意ではないので師匠のようなタイプの人の方がありがたい。
まぁ、別に殴られたいわけではないので一刻も早く技術習得に全力を尽くしているんだがな。
ついでに言うと鍛冶以外の事には関心がないのか基本的に物静かで酒を飲んでいるときはかなりやかましいドワーフの中では珍しく物静かで時々説教してくるような人だ。
あの葬式にも参加していたが弟子入りするまで特に何かつながりがあったわけでもないがあの戦いで得られたドラゴンの素材がきっかけで弟子入りしたんだ。
この人。ドラゴンの素材を見るなり狂喜乱舞してたからね。これで最高の武器を作って見せると意気込んでいる師匠にオレが弟子入りを志願したのがきっかけだ。
ほかの鍛冶師がドラゴンの素材にしり込みしている中。師匠だけが最高の素材に色めき立ち、これまで以上の仕事をして見せると豪語するその姿に武器づくりに文字通り命を懸けているのが伝わったからな。
そんな師匠に弟子入りを志願したオレだが最初はすげなく断られた。
「アンタは戦士じゃろ? 武器づくりは儂等鍛冶師に任せて戦仕事に専念しなさい」
こんな言葉で断られたんだ。
だがオレもそんな言葉一つであきらめるためにわざわざこの街まで来たんじゃない。鍛冶未亡人と作り上げた火剣・レンゴを提示し、オリハルコン(握り拳大の大きさ)を出してコイツで最高の斧を作りたい。(レオルドとクリムゾンを引き抜きながら)コイツ等を超える最強の斧を作りたいと懇願した。
本音を言えば別にレオルドやクリムゾンを超えた武器が作れるなんて思っていない。オレはすでに最強の武器を二つも手に入れている。ではなぜ鍛冶を学びたいのか?
それはダンジョンへ行くたびに大量に手に入る大量の鉱石の活用法が欲しいからだ。もちろん今のままでも活用はできる。具体的に言えばレオルドが食うことでオリハルコンクラスの鉱石は消費できる。だがそれだけだ。ミスリル以下の鉱石は全然消費されていないし、そもそもこの一か月間ドワーフの職人たちが作る武具たちを見てきた。確かに技術はすごい。今のオレでは全く歯が立たないような凄腕の職人たちが大勢いた。しかしそんな職人たちもミスリルを扱わせると
『ミスリルソード』・・・希少級装備品。希少金属であるミスリルを主原料に使われた剣。魔力に対して親和性があり魔法を斬り裂くことが可能。(魔力の浸透にムラあり、低品質)
こんな武器だった。あ、これ創ったの師匠じゃないよ? 師匠とはまた別のドワーフ職人の作品。本人曰く、「いつも打つ鉄と同じ要領で打ってみたが素材が違うせいか変に違和感を感じる品に仕上がった。初めての素材にしてはそこそこの出来じゃが店には並べられんわい」とのこと。
確かに鑑定結果にも魔力の浸透にムラありと表示されているし低品質とも書いてある。決して品質が良いと言えるレベルのものではないだろう。
ファンタジー定番の鍛冶の達人種族ドワーフの職人をもってしてもミスリルの扱いは完璧ではない。いや、彼がミスリルの扱いに慣れれば変わるかもしれないがドワーフの職人の中でも腕っこきの師匠が認める職人でこの結果であればミスリルを扱える職人は下手すれば片手の指に収まるくらいの数しかこの世にいないことになる。
であればオレも鍛冶を習得して少しでも数の増加につながればと考えている。一応出来上がった武器の使い道については当てがあるからな
さて、ここまでレベルアップの恩恵でここまでの思考展開にかかった時間は数コンマという刹那の時間だったがそろそろ沙汰が下るころだろう…
どうなんだ…?
「先代からは『若者を褒めるな』と言われていたんじゃ。安易に若者を褒めるとその者は天狗になり、修行に身が入らなくなってやがては至れる領域にも至れなくなると言われたんじゃ。
儂もこの考えには賛成じゃ。儂自身も若いころ先代に褒められた経験など皆無であったし、当時はなにくそと何を差し置いても修行に邁進しておったから今の儂がある」
だと言うのに、ヤレヤレじゃわいと続ける師匠。これはもしや…
「天才とは、お主のような奴を言うのかもしれんな。タイチよ」
褒められた。
文句なし。掛け値なしの称賛だ。
ヤバい。これは年甲斐もなく頬が緩んでしまうな…。
「まずお主の扱う『火』じゃな。儂等鍛冶師にとって火とは命そのもの。何人たりとも触れさせぬ神聖なものじゃ。
それでいうとお主の火は規格外としか言いようがない。あれほどの猛火でありながらお主に合わせて火自らが寄り添うように燃え上がらせるその様は儂等鍛冶師が最も尊ぶ稀有な才能と言わざるを得ん
じゃが何よりも特筆すべきは貴様の技術習得に速さじゃ。儂等ドワーフでもここまでの剣を安定して生産できるようになるまでにはそれなりの修練が必要なんじゃがそれをお主はたった一ヶ月でものにしよった。まるで鉱石。いや、鉄や銅そのものがお主に引き寄せられるように舞い込んで来よる。これが才能ではなく一体なんじゃというのじゃ」
全くうらやましい限りじゃわいと続ける師匠。
師匠が言ってるのはまず間違いなくオレには特別な火があり、鉄や銅といった鉱石の類に好かれる才能がある。
一つ訂正するとすればこれらは才能ではなくそれぞれ火属性と土属性の深淵を覗いたことによる恩恵の一つだということ。
オレはそれで火属性魔術と土属性魔術を習得したし、それによって髪の色や肌の色に変化があった。ステータスも激変したし称号の増えて人間から超人類へと進化もしている。
そしてそのおかげでオレは火の微妙な加減が可能でその場において適切な火を維持することができ、また今打っている鉱石がどんな武具に向いているかもわかる。ので、オレは鉱石がなりたがっている武具へと導くように槌を振るい、そのために必要な最適な火を維持する。
それで自分に打てる最高の武具を精製できた。まぁ、鍛冶のことで頭一杯になる中で鉱石の声を聴き、その願いをしっかりとイメージしてどんな武具に仕上げるかをしっかり固めつつ、火の調整にも神経を使うので情報が処理しきれず頭が焼き切れそうになってしまうんだがな。
今では一応慣れてきてはいるがやるたびに消耗が激しいのでやるときは覚悟を決めて最上の作品を作らなければいけない。そうでないと報われない。
「まだまだこれで満足しません。もっともっと腕をつけたいです」
オレの一言に師匠はどこか嬉しそうに笑いつつ自分の仕事に戻った。ポツンと一人取り残されるオレ。息を吸うと鼻から鉄の焼ける匂いが伝わってくる。
さて、もう一本打っとくか…
なんて思っている間に日が暮れてリナが迎えに来てくれた。
「アンタね…」
おっとこれはあきれられてるぞっと
「いや、ホントにゴメンな。打ってるうちにだんだんやめられなくなっていってさ…」
いやホント、一本打つたびに反省点と改善点が見つかるから追及するのがやめられなくて時間を忘れてしまうんだ。
「違うでしょ? アンタ、あの子たちを避けたいんでしょ?」
リナの一言にドキリとしたが、答えは…
「……それもないとは言わない」
まぁ、ある。と言わざるを得ない。
実は街を周辺に潜伏していた盗賊の討伐とドラゴン退治のおかげで街の人々からのオレへの印象は悪くない。まぁ、やっかむ連中もいるにはいるが基本的にみんなフレンドリーに接してくれる程度には友好的だ。
だがそれは裏を返せばオレには単独でドラゴンを複数体を討ち取れる戦力があることをみんな知っているということになる。
ではやっかむ連中はその事実を真剣に受け止めている現実主義な連中なのではないかという意見が出るだろう。だが事実は違う。だってオレは…
「お、お帰りなさい。旦那様」
「お、おおう。帰ったのか。ニイチャン」
エルフとドワーフにそれぞれ嫁がいるんだから
この事実があるからやっかむ連中はただそれに僻んでいる。そういう風に認識されている。
い、いやね? 別にハーレムしてるわけじゃないんだよ?
別に手を出してもいない。オレをこの世界へと送り込んだ女神さまに誓ってもいい。オレは断じて不貞を働いてはいない。
ではなぜ嫁が増えたのか?
答えはまぁ、政治的理由がほとんどだ。
冷静に考えてもらえれば分かると思うんだけどドラゴン。それも劣等竜でも幼生竜でもない本物の上位竜を討ち取れる人物と深い縁を結んでおきたい。と考える奴がいてどこがおかしんだ?
街を統括する長として決して放置することはできない。これはすごくよくわかることだし、仮に敵対しようものならアークドラゴンをも凌駕する戦力がなければまず不可能。であればオレと敵対するのではなく友好を結びたい。そう考えたエルフとドワーフはそれぞれの種族から娘を一人ずつ選び、オレと結婚させた。
一応オレが既婚者であることは知られていた。ので勝手に事を進めてオレの反感を買うことを嫌った戦士長をはじめ、この街の運営にかかわる幹部全員がそろっている中に呼び出され、説明を受けて、オレが受け入れた。
つまり、このエルフとドワーフは嫁というより監視というのが正しいところだ。
オレが鍛冶を学び、先生は復興の手伝いの傍らエルフたちと協力して薬学の研究と回復薬の改善と向上に尽力して、リナがダンジョンの調査を行うためには変に身構えられ、それぞれの作業が滞るくらいならこっちの方が都合がいい。
なんとも利己的で自己中心的な考え方だ。人の気持ちをまるで考えていないこの考えに我ながら反吐が出る。
日本人としての常識や良心はこれは色仕掛けであり美人局である上にあれほど愛すると決めたリナに対する裏切りではないかと攻め立てている。
これには全く反論ができない。そしてする気もない。少し、ほんの少しでもドワーフやエルフのようなファンタジー定番の種族と婚姻を結べることに喜びを感じていたのも事実なのだから
だがリナはそんなオレを許してくれた。
「そりゃ、一人の女としては面白くないわよ? でもアタシの場合もそんな意味合いがなかったわけでもないし、相手の子次第じゃないかしら?」
なんてあっけらかんと言われた。
まぁ、本人は望んでいた結婚とはいえ一族的にはそんな思惑もありはした。これは確かにそうだ。でも今はお互いに愛して愛される夫婦になれたとオレは思っているし、いずれリナとの間に三人は子供が欲しいと思ってもいる。
だからきっとリナもそう思ってくれているし、だからこそ嫁が増えたことに対して非難の一つもするんじゃなかろうかと思っていた。が、帰ってきた反応があまりにもアッサリだったので肩透かしを食らった気分だったがその日から夫婦の営みが激しくなったことから考えればやっぱり思うとこがあるんだろう。
まぁ、オレとしても望むところなので誠心誠意。全身全霊でリナを愛し抜く所存だ。
「い、いやね? それはアタシもその気で頑張ったけど流石にそこまで意気込まれても困るというか…その……ゴニョゴニョ」
なんてリナがつぶやいていた気がするがきっと気のせいだろう。うん。
こっぱずかしい考えを走らせながらエルフ嫁とドワーフ嫁に当り障りのない世間話をしていた。
さて、次の日。
オレは自分で鍛えた武器をストレージに仕舞い。シルバーにキャリーを引かせて街を出る。
「またあの修羅場に行くの?」
リナに聞かれたのでオレはうなずきながらシルバーの手綱を手繰る振りをする。
まぁ、実際はキャリーがひとりでに動けるのにわざわざシルバーを呼ぶ辺りは無駄でしかないが荷馬車がひとりでに動く姿は相当不気味らしく、魔物に手ひどくやられた町の人々には無駄に悪感情を刺激されるようなのでシルバーを呼んだ。
手綱をつけたのもそれを手繰るのもオレの意思と直接つながっているシルバーには無駄でしかないがこれも街の住民のためにやっている。
「あ、あのですね? 確かに私達は旦那様方の監視を任されているのは事実ですし、そのために目的地へ同行するのは全くおかしい話ではないのですが…」
「こ、こういうことはアタイ達じゃなくて戦士たちを連れてってほしんだけどね?」
ちなみにエルフ嫁とドワーフ嫁も一緒だ。まぁ正確に言えばエルフ監視員とドワーフ監視員だがそれはどうでもいい。どうせ町の住民たちは嫁と思ってるんだし、この二人もそう思われていた方が都合がいいのだから
連れていく理由だが監視されていて余計な不安を街の住民に与えたくないから連れて行くと言うのが理由の一つ。
もう一つは…
「オレの持っている戦力がどれほどのものなのかしっかり見ていた方がいいだろ? 監視員としても、一住民としても」
オレ自身の力はドラゴンの一件である程度は知られている。
だがそれだけだ。オレの実力の底を見たわけでもないしキーパー達モンスターの戦力も全く分かっていない。
別に無駄に教える必要もないんだがオレの目的は鍛冶技術習得のために鍛え上げた武具たちの使い道のため
せっかく鍛えた武具なのにストレージに死蔵するのはあまりにももったいない。ので、使い手に心当たりがあるあの森へと行かねばならない。
だからやってきた。カウリア族の集落周辺に
もちろんオレが鍛えた武具の使い手候補にカウリア族の戦士たちはいる。だが今回の第一候補は別だ。
「よう。仕上がりはどんなもんだ?」
『…………』
オレの最古参のモンスター。キーパーが指示した方にいたのは
『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『オォオオオオオオオオオオオオオオオォオオオオオオオオオオオオオオオォオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!!!!!!!!!』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』
雄叫びを上げながら殴り合い続けるゴーレムの集団がいた。
まるで河原で殴り合う一昔前の不良青春漫画にでも登場しそうなシチュエーション。お互いに一歩も譲らず一発頬を殴られれば一発頬を殴り返すような殴り合いが延々と続けられている。
ちなみにストーンゴーレムからこの戦闘スタイルのようでそこまでに至るまでは体の柔軟性を生かす戦術を取ってるやつもいるがこの中では上位種であるストーンゴーレムやロックゴーレムはもっぱらこのスタイルのようだ。
身体が大きく岩石でできているからかすさまじい迫力だが
「何でどいつもこいつも素手なんだよ…」
ストーンゴーレムとロックゴーレムはわかる。コイツ等は単純に体が大きすぎるので普通の人間サイズの武器は使いづらいんだ。だからわかる。
でもそこまで人間と大して違わないサイズ感のマッドゴーレム以下の下位種族まで素手でいるのはわからない。なんでだ?
「せっかく本人たちに合うサイズの武器を大量生産したのに……」
まぁ、試作品というか。コイツのための実験用に過ぎないんだが…
「待たせたな。キーパー」
『罅割れた剛力巨人の大剣』・・・秘宝級装備品。数多の戦場を駆け抜け、数えきれないほどの敵を討ち取ってきた巨人用の大剣。力自慢に振り回され続け、多くの堅牢な敵に打ち据えた結果。刀身にひびが入ってしまった。早急に修理が必要。
キーパーに渡していた大剣。ここの管理を任せてた後もこの土地やカウリア族を狙う魔物を退治していてくれたんだろう。
無理をさせ過ぎた結果。ひびが入り、いつ壊れてもおかしくない状態になってしまっている。であればオレの鍛冶スキルで直せばいい。そう思うやつもいるかもしれないが、それは無理だ。
だって今のオレの鍛冶スキルは中級。この段階では普通の道具一式と素材を使って希少級の装備品が作れれば奇跡だとビックリ仰天されるレベルだ。
特殊級は絶対に無理。ましてや秘宝級なんて夢のまた夢。悔しいがこれが現状だ。
であれば前提条件を変えればいい。
普通の道具一式と素材を使って希少級がビックリ仰天されるレベルであれば普通ではない道具一式と貴重な素材を使うことで無理やり限界突破すればいい。
たかが一ヶ月しか修行していないオレが言うのもおこがましいと思うが鍛冶職人として納得のいかない話ではある。
己の腕ではない道具や素材の力におんぶにだっこで強い武具を作るという所業には納得いかないし、悔しい思いというものはある。
だが現状。キーパーの武器が壊れ、戦力が下がると危険が増すのは嫁の故郷の人々だ。一族の娘の結婚相手であるオレにもここが買える場所なんだなんて言ってくれるみんなが危険にさらされるくらいならいくらでも鍛冶の自分を黙らせよう。いつか、納得できる腕前になったら会心の出来を誇る武器を創り、贈ることを胸に誓いつつ
『大地と猛火の鍛冶道具<一式>』・・・特殊級アイテム。一人前の鍛冶師であれば誰しもが持てるだろう最低限の鍛冶道具一式をオリハルコンとアダマンタイトとミスリルによって再現されたアイテム。精密にして高出力の土属性魔術と火属性魔術に耐えられるだけでなくそれぞれの道具がその役割を十二分に果たし、通常以上の武具作成が可能になる。
師匠が使わせてくれた道具をオレなりに分析し、魔術ありきでそれぞれの鉱石を素材に再現した道具。最初はどこか歪だったが諦めずに修正と度重なる魔術行使の結果ここまでの出来になった。
ここにさらに
「アルファメスを注入…ッ!」
こうすることで
『大地と猛火の鍛冶道具<一式・改>』・・・伝説級アイテム。一人前の鍛冶師であれば誰しもが持てるだろう最低限の鍛冶道具一式をオリハルコンとアダマンタイトとミスリルによって再現されたアイテムにアルファメスを注入して生まれたアイテム。精密にして高出力の土属性魔術と火属性魔術に耐えられるだけでなくそれぞれの道具が使われる素材や武具の記憶を読み取り、最適な形状へと導く。通常以上の武具作成が可能になる。
完成。
「うん。文句なしの出来だ」
え? もうこの方法でキーパーの武器を治せばいいだろうって?
ところがどっこい。これもそこまで万能ではないようで出来なかった。
そもそもオレがアルファメスを分け与えられる対象はリナやグランツをはじめダンジョンコアを砕かせた人やモンスター。そしてオレ自身が愛用するか制作した武具や道具が対象のようでこのどれにも当てはまらないキーパーの武器はたとえ触れていてもアルファメスを与えられないようでウンともスンとも言わなかった。
ちなみにレオルドやクリムゾンにもアルファメスは与えられるが今オレが持ってるアルファメスを半分与えても変化する兆しはなかった。
「そもそも幻想級という最上位吸である我らですからな。ちょっとやそっとでは変化せぬでしょうよ」
とレオルド。
まぁ、今のままで十分以上に強いから別に問題はない。
さて、ではさっそく仕事に取り掛かる。
今回の仕事はキーパー愛用の武器の修理。だがせっかくやるからには今のオレにできる最高の仕事をしたい。それにせっかく修理しても秘宝級ではカウリア族の戦士たちの装備にすら負けている。
キーパーの実力を考えればそれでも強いとは思うがここはひとつ…
用意した材料は
『罅割れた剛力巨人の大剣』・・・今回の主役。コイツがなくっちゃ話が始まらない。改めて見てもよくここまで酷使できたと感心させられるレベルの亀裂が入っている。試しのオレが全身で振り抜こうものならそのまま砕けるのではと疑ってしまうほどだ。
『フルメイルドラゴンの牙』・・・思えばキーパーに与えた盾もフルメイルドラゴンが素材になっていた。職人としての勘がこれを選べと囁いたんだがこれも何かの縁なのかはわからない。強くなったいまでは簡単に倒せる相手だがオレもオレで奴には思い入れがあるようで選んだ。
『アークタートルドラゴンの生き血』・・・ドワーフやエルフの街を襲っていたドラゴンの素材の一つ。九割以上は街の職人たちに渡してあるとはいえ残りはオレが持っていた。貴重なものではあるがこれでキーパーの武器が強くなるのであれば惜しくはない。
『隕鉄』・・・この森で見つけた鉱石の一つ。かつてここに隕石でも落ちてきたんだとは思うがこの世界で「宇宙」の概念があるのかとかが非常に気になるが思考のドツボにハマる予感しかしないので考えないようにしている。タングステンにも引けを取らない硬さと魔力とも気力とも違う不思議な力を感じるので使ってみることにした。
『アダマンタイト』・・・言わずと知れた物理耐性トップクラスの金属。とにかく硬く、物理攻撃で破壊するのは非常に難しい。これを素材に作られた武具は異常なほどの硬さが特徴なのでキーパーの武器にピッタリだと思う。
『タングステン』・・・地球にも存在する最強金属。熱による加工は至難の業だがオレなら魔術を使えば割と簡単にできる。アダマンタイトや隕鉄との三枚看板でキーパーの武器に頑強さをおもたらしてもらおう。
『ミスリル』・・・魔力伝導効率に優れた金属。キーパーは肉体強化系以外にほとんど魔力を使わないがそれでもこれがあるのとないのとでは出来が大違い。入れておいて損はない。
以上が今回使う材料と使うことを決めた理由などをまとめたものだ。決して鑑定結果ではない。
「さて、覚悟を決めるか…ッ!」
今のオレに作れる最高の武器を作る覚悟を
『守護巨竜の粉砕巨剣』・・・伝説級装備品。数多の戦場を駆け抜け、数えきれないほどの敵を討ち取ってきた巨人用の大剣剛力巨人の大剣が壊れかけるほどに酷使された上に超貴重な素材を多用して鍛え上げられた巨大な剣。装備者の肉体強化魔法の効果を倍加させ、武器に魔力を込めることでドラゴンブレスを放つことができる。竜系統と敵対した場合その魔物のステータスに若干のマイナス補正をかける。
完成…ッ!
武骨な何の飾りもない巨大な剣。ただこれだけ見れば見るものすべてに威圧感を与えるだけのバカでかいオブジェクトに過ぎないだろう。
しかし日の光を受ければその刀身は七色に瞬き、浮き出た刃紋が妖しく輝く様は戦士たちの心をつかんで離さない色気を出している。
「さ、受け取りな」
オレが差し出した剣を恭しく、まるで王様から叙勲を受ける騎士のような仕草で受け取ったキーパーはプルプルピクピクと痙攣するように震えていると思えば
『オォオオオオオオオオオオオオオオォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!!!!!!!!!』
いまだ殴り合いを続けていたゴーレムたちの咆哮をかき消すほどの雄叫びを上げたと思えばドスッドスッと足音響かせ森へと突撃していった。多分新しい武器の塩梅を確かめに行ったのだろう。
「せめて新しい盾の完成まで待てよな…」
もう作っちまうか…?
いや、でもあんな凄い剣を作っちまってるからさすがに疲れた。今無理しても大した出来にはならないと思うし、盾はまた今度だな。
「あ、そう言えばアイツ等は?」
素で忘れてた。エルフ監視員とドワーフ監視員は?
「「………………」」
仲良く気絶してた。
すみません。仕事のことでトラブルが起こり、投稿が遅れました。
本来であれば明日投稿する方がいいかもしれませんがせっかくのチャンスなので今投稿しました。




