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閑話 期待と褒美

あ、そういえばこんなキャラいたね。

そう思ってもらえれば幸いです。

「ハハハ。これで上位種に進化したのは彼自身を除いて五人ッスね。しかも人間一人を除けば残りの四人は全部獣人。それも牛人族。彼ってこの世界に獣人族の時代でも作る気ですかね? やっぱ男ってどいつもこいつもおっぱいが好きなんすかね~」

 ここは世界のコントロールルーム。その世界の守護と管理を任されている神とその眷属しか出入りできない神域。

 だがしかし、そんな神域に漂う空気はおよそ神々しいとは言い難く、どちらかと言えば労働基準法に真っ向から喧嘩を売らん体制を強いるブラック企業とそんな空気に従う亡者のごときうめき声を漏らす社畜が纏う空気が漂っていた。

 そんな中底抜けに明るい声でケタケタ笑っているのは怠惰や無気力という言葉を体現したような女性だった。

 黒一色のジャージ上下に雑にまとめられた金髪。死んだ魚のような目が特徴的だ。それ以外は目鼻立ちが整っているし、地味なジャージ越しからでも起伏にとんだ体の曲線がうかがい知れる美人であるだけに世の男が見たら一言。「残念な美女」がこの女を表す印象だろう。

 そんなジャージ女が自分の胸をわしづかみにしながら言った言葉に近くにいた数名の天使(胸部の膨らみの乏しい方々)が忌々し気に舌打ち、今にも唾をペッと飛ばしかねない表情をしていた。とても天使には見えない。

 一方ほかの天使の方々(胸部の膨らみはそれなりか豊満)はというと、


「「「「「「「「「「…………………」」」」」」」」」」


 無言だった。無言で目の前に広がる無理難題を覆すべく行動している。

 ある者は水晶玉のようなものを光らせながら

 またある者は日本でおなじみのパソコンにしか見えない器具を駆使して

 またまたある者は頭に珍妙な道具を取り付けて仮眠用のベッドに横になり、眼を閉じている。

 それぞれの取っている行動はバラバラだが目指す目的は同じ。

 そんな奇妙な一体感の中

「アンタ。いい加減に仕事に戻りなさい」

 一喝する声が響いた。

 いや、一喝というにはあまりにも覇気がない。

 まるで髪の毛一本分のエネルギーすらも一つの仕事に込めてるせいで何か大事なものまで抜け落ちそうになりつつも「上司」という仕事のために振り絞ったかのごとき弱弱しさ。

 しかしそこに込められた怨念とも執念とれる迫力は声の大きさと関係なく周囲にいる天使たちの耳に届いた。

 そんな声を出したのはくすんだ青色の髪に瓶底のような分厚い眼鏡から除くのは、まるで何日も熟睡しておらずもはやどんな厚化粧を施そうが隠し切れないほどの濃いクマを眼の下に浮かべた女性だった。なお彼女は無言派であった。この中でも五指に入る豊満の持ち主である。

「いやいやシャチョー。これも立派な仕事ですぜ? 彼がまたダンジョンコアを破壊してくれたおかげで上位種へと進化した個体。つまりウチらの中継スポットが増えたってことですよ」

 ジャージ女が言うセリフを鬱陶しそうに聞く女神だがその言葉に間違いはない。


 獣人族(ビースト)であれば高位獣人族(ハイビースト)

 人間であればハイ・ヒューマンへと進化するということは異世界転移者近い性質。つまり神々が人の世界へと降り立つときに用いる『義神体』と融合している状態に近くなる。

 そうなれば世界中に蔓延る負のアルファメスを吸収し、正のアルファメスへと変換できる可能性が見込める。まさに百利あって一害無しとでも言うべきことだ。


「でも種族に偏りがあるのはいただけないッスね。理想を言えば全種族ともに同じくらいの上位種がいてくれるのがいいんですけどこの世界ってやたらと「人」の種が多くねッスか?」

「………」

 女神は答えない。その通りだから

 どれか一つの種族に偏っていてはその種が生きている地域しかアルファメスは変換されず全体的な効果ではマイナスだからだ。

 だが、

「確かに多いわね。でも必要なことよ」

 勘違いは正さなければならない。

「え? 必要ってこの種族の多さッスか?」

「ええ、そうよ。この世界にいる「人」の種族はいくつもある。そしてそのどの種族にも得手不得手があってそれぞれの特徴がある」

 噛んで含むように順序良く説明していく。

「例えば歴史的規模の火山噴火が起こって世界に存在するほとんどの森が消失してしまったとすれば森人族(エルフ)は壊滅的被害を受けるでしょうね。運が悪ければそのまま絶滅することもあり得るわ。でも洞窟暮らしを全く苦にせず火にも強い鉱洞人族(ドワーフ)や火山環境を全く苦にしない竜人族(たつびとぞく)は多少の混乱はあってもまず確実に生存可能よ」

 ジャージ女に聞かせるだけでなくこの場にいる全員に理解させるために

「世界規模の水害。大津波に地盤沈下が起こったとすれば陸生成物のほとんどが死に絶えるでしょうけど水生生物並みに暮らせる海人族(うみびとぞく)は問題なく生存可能」

「あれ? つまりそういうことッスよね?」

 ジャージ女の反応にようやくわかったかと少々あきれたようにため息をつきながらもまだ理解に至っていない天使たちのために言葉を紡ぐ。

「このようにあらゆる自然災害や環境の激変が起こったとしてもこの世界から「人」と呼べる種族が根絶されることはまずないわ」

 モニターの一つに表示されている世界。アールピーナ。

 他ならぬ女神自身も創生に携わり、世界の根底を理解しているがゆえに説明できること。

「彼がしてくれてることは小さいですけど確実に正のアルファメスは増え続けています。その道中で見込みのある人物にのみ進化させているため今では偏りがあるでしょうが世界を巡っているうちにそれも解消されるはずです」

 世界を表示しているモニターとはまた別のモニター。そのモニターに表示されているのは最近もっとも目覚ましい活躍を繰り広げている噂の()

 まだ一年と数ヶ月。たった二十ヶ月ほども活動していないにも関わらず人類から進化してハイ・ヒューマンはおろかその中でも希少な新人類。それすらも飛び越えて超人類へと進化している規格外。

「……期待していますからね」

 モニターにそっと触れて告げる女神の瞳には深い慈愛と淡い願望が込められていた。



 その後すぐに彼の功績を称え女神直々による贈り物(ギフト)が渡されるのだが、それはまた別のお話

今後登場予定のある種族をいくつか書きました。本編でどのように主人公と絡むのか、ぜひ楽しみにしていてください。

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