プロローグ
ラノベが好きすぎてとうとう投稿することにしました。ダメな部分が多いと思いますが、ぜひぜひ読んでください。
出来れば至らない点などもご指導いただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
『健康診断』・・・病院などで行われ、自分の身体に異常がないかチェックするためのもの。
多くの人が持っている知識や印象はこんなものだろう。
健康とは、何の病気にもケガにも侵されておらずすこぶる快調な身体を差す。少なくともこのオレ、『松田太一』もその例にもれず健康とはそういうものだと認識している。
しかし実際には多くの人々が自分でも知らないうちに大きなケガや重い病気にかかってしまう。
科学医療技術が発展している21世紀の先進国日本でもどうにもできない病気やケガは現実に存在していていつ我が身に降りかかってくるかわからない。
だからこそ日々の健康維持はとても重要なことであり、健康診断は自分の現状を知るために欠かせないものであるはずだ。
しかし、日本人の大半は自分に限ってそんなこと起こるわけがない。と、何の根拠もない自信や思い込みでただただ面倒なことと思っている。
オレもその例に漏れず、地本の運送業の就職が決まった時は諸手を挙げて喜んだが勤め先の会社の規則で働く前に健康診断を受けて自身が健康体であることの証明書を発行してもらわなければいけないと説明されたときは上司から苦笑いされるほどに顔に出るほど面倒だと思っている。
しかし高校を出て社会の荒波に揉まれること5年。ようやく見つかった正社員の就職先の指示とあらば嫌々でも行くと言うもの
だからホントに面倒だと思いながらも実家近くの大通りに面している総合病院に足を運んでいる。最後に病院に来たのはいつだったっけ? とぼんやり病院に来た記憶を探しながら受け付けを済ませて健康診断を受ける。
くたびれたおっさん医師による問診から始まり
身長測定、体重測定、血圧測定、血液検査、視力検査、聴力検査、心拍数測定、肺活量検査、尿検査、鼻の粘膜採取etc.
途中からこんな検査受けたことあったっけ? と思うような奇妙な検査もあったがとにかくたくさんの検査と採取を受けた。
途中、ここは総合病院だからだろうけどなぜか歯医者でやるような虫歯の有無の検査まで受けたのは謎だった。普通の健康診断ってここまで調べたっけ?
昔、学校で受けた健康診断はもっと簡単だった気がするんだけど…?
なんて疑問に思いながらも医者に言われるままに二階に行ったり四階に行ったりとあっちこっち行っていた。
気が付けば時計の長針がゆっくりと二回転したころでようやくすべての検査が終わった。
結果が出るまで受付カウンター近くのソファーに腰掛ける、慣れないことをしたせいか思った以上に疲れた。まるで休日に子供を公園に連れてきてベンチでだらけるお父さんのように足を伸ばし全身の力を抜く。
思わずあくびまで出てくるが気にしない。ホントに体のあっちこっちを調べられた。内視鏡ていうのか? 口に何やらホースみたいなものまで入れられたときは反射的に吐きそうになったよ…
あれだけ調べられたのは生まれて初めてのことだ。母さんが言うにはオレは母さんのおなかの中にいた時から普通より大きい子供だったらしい帝王切開で産まれたらしいんだがその後は特に問題もなくすぐに退院できたらしい。
それから23年間、成長痛や筋肉痛に悩まされることはあっても特に病気にかかったこともなくここまで来た。だから大丈夫だと思うんだが…
ソファーに座ってからそろそろ一時間がたつがまだ自分の名前は呼ばれない。自分以外に客がいるようには見えないのにずいぶん時間がかかるなぁ、まさか何か異常があったのでは。時間がたつにつれて自分の中に不安な気持ちが大きくなっていく。
まさか自分に限ってそんなはずはないと思いたいがそれでも不安な気持ちが滲み出てくるのは否定できない。
その不安を紛らわせるためにも用意された雑誌があるので読みながら時間をつぶす。普段であれば手にも取らないような情報雑誌。今話題の収納術だの有名人も実践しているダイエット法だのいろんな情報が乗ってはいるが元々母子家庭ゆえにあまり裕福ではないから家にものがそんなにないから収納術なんて必要ないし、芸能人にも興味がないから誰がどんなダイエット法を実践していようがどうでもいいとしか思えない。
別に雑誌を手に取るとダイエット法の実践者とはまた違う芸能人、確かアイドルグループだったか? に恋人がいただの熱愛発覚だのが面白おかしく書き連ねていたゴシップ記事だった。
オレはすぐに雑誌を元に戻す。興味がないと言うかこういうゴシップ記事は嫌いな方だ。人の事を面白おかしく書きなぐってその影響に知らんぷり化あざ笑うようなことする出版社には軽蔑すら抱く。どこの誰にどんな思い人があろうがその人の自由だろう。もしかしたら相手は一般人かもしれないのにその人すらも巻き込むような記事はホントに無責任でロクでもないと思う。
そこそこ時間が潰せたと思うがそれでもまだ受付から名前を呼ばれない事にも苛立とつつまた別に雑誌を取る。
今度手に取った雑誌はまた違った情報誌だ。オレも好きな歌手の新作の歌の情報が載っている。芸能人には興味がないが歌や音楽は好きで年末には紅白歌合戦をよく視るオレからすれば結構興味があるので熟読する。
載っている情報はこの曲を作るきっかけと一番大事にしているテーマについてなどが載っている。今回の曲は歌い手自らが作詞していつも作詞を担当している方が編集することでいつもの歌「らしさ」を出しつつ歌手がどうしても伝えたいテーマを押し出した曲になっているらしい。
「これは家に帰ったらネットで探すか?」
この記事によるとネットで一部先行公開されているらしいので楽しみができた。先ほどまでの不安な気持ちがより大きくなってくる楽しみで上書きされていくのを感じつつ苦痛に感じていた時間を楽しみ始めたころ
「松田さん~、松田太一さん~」
来たッ! とついさっきまでなら喜んでいただろう。だが今ではもう少し時間があってもと思ってしまう。
だがこれで楽しみに一歩近づいたと思うと気持ちの切り替えもできたのでオレはたれ目が特徴的な看護婦さんに呼ばれた返事をしつつ腰を上げて目の前の扉へと歩を進めた。
やっとかと呆れと安心の気持ちは雑誌に載っていた歌詞の一部で上書きされつつある。あの歌手さんはいつもオレ好みの曲を出してくれるのできっと新曲の方もオレ好みに違いない。
一体今回はどんな素晴らしい曲を聞かせてくれるのか。胸を躍らせる応援歌なのかそれとも苦しい時に聞いて心奮い立たせるような曲なのかワクワクと胸を躍らせつつ診察室の扉を開ける。
すると
そこには
そこには、真っ白な空間が広がっていた。