わし登場
「イルマリネンちゃぁん」
真昼間から赤ら顔、吐く息は酒臭い。
擦り切れたウグイス色のローブを引きずり、いかにもアホ面の老人がやってきた。
「来たな、ワイノモイネン。待っていたよ」
テレーズの表情がこわばり始めた。
「サンポ見に来ちゃったんだもんねぇ、もう出来たのかや」
「まだまだまだ。あんなもん1日で完成できるのなら、俺は鍛冶屋やめて神に転職してるね」
「まったまたぁ。半分神様のくせにぃ」
言いながら、テレーズの全身を嘗め回すように眺めながら、
「おうおう、立派な胸しとるのう。お姉ちゃん。名前教えて」
「断る」
「いいじゃぁん、どうしてぼくちゃんのこと、避けるのぉ」
テレーズはふて腐れてテーブルに頬杖をついた。
「うふん。かわいい、お・し・り」
ワイノモイネンがテレーズの臀部に指を当てようとしたその刹那、ワイノモイネンの顎に強烈な蹴りが決まった。
「ごぶっ」
ワイノモイネンは美しく弧を描いて床にぶっ倒れた。
肩を大きく揺らしながら激しく呼吸するテレーズは、満足そうに両手をはたいた。
「やりすぎだ、テレーズ」
イルマリネンは肝を冷やした。
「いくらおじさんが頼んでも、これだけは汚らわしすぎて許せない」
「ち、ちくしょう、ワシが有名な賢者で、精霊魔法の使い手で、大金持ちのワイノモイネンさまだと知っての狼藉かあっ」
折れた前歯が哀れさを誘う。
それでも、テレーズの気性の激しさも、勇敢な心も、けっして萎えることはなかった。
「ふん。ジイさん、あんたがどんだけエラそうにしたってね、あたしにゃ通じない。馬鹿なやつは相手にしないのが、あたしさね」
「してるって、充分にしてるってッ」
ヨウカハイネンは小声でつっこんだ。
ワイノモイネンはこれで大人しく引き下がるものではなかった。
それを知っているイルマリネンは、心配でしかたがない。
とにかくキモく、ずる賢く。それがあなたです。
というか書いていてキモッ