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《Liberty of Life》  作者: 魚島大
1章 Welcome to the “Liberty” life!/「自由な」生活へようこそ!
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7話 Tough Boys/強き少年たち

最近題名が長くなったので、短くできるよう頑張りました(笑)

 またギルド内に戻ってきた。午前中と同じように受付にギルドカードとドロップアイテムを渡す。


「あら、また妖精の粉と妖薬草ですね、少々お待ちください」


 今回は妖精の粉が大量に手に入った。悪妖精は自分より強いモンスターが出てこない限りはぼくにただまとわりつくだけだったのだ。しかし、強いモンスターが出てくると蚊を散らすように逃げていってしまった。また、攻撃されないのは半分妖精であるぼくの種族が関係していることは間違いないらしい。これは大丈夫だろうと踏んで近づいたハヤトに【シューター】に似た紫色の魔力弾で攻撃していた。すなわち、ぼくが半妖精だから、襲われないというだけで、他の種族ならば普通に襲われるということだ。


「妖精の粉が50匙。よくこんなに集めましたね。1500コルバです。それと妖薬草が15本。750コルバになります」


 またも山積みにされた金貨がぼくの前に並ぶ。そしてギルドカードを見せると、前と同じように受付嬢は奥へ行ってカードをなにやら魔法陣に通し、討伐記録を確認している。


「確認が取れました。大蜘蛛(ビッグスパイダー)討伐ですね。2000コルバになります」


 続いて受注されますか?というギルドの受付嬢の言葉に傍らのハヤトが頷いた。


「集団討伐はあるか?」


 今まで黙っていたハヤトが掲示板の方向を目を細め、見つめながら言葉をこぼす。知らない単語が出てきたことにぼくは違和感を覚え、傍らに立つハヤトを見上げた。


「集団討伐というのは同種のモンスターを大量に討伐することだ。集団ってだけあって本来は多人数で行うこともできるんだけど、少人数のレベリングにもなる」


 ようは無茶をやるってことだ。そこまで急がなくてもいいのではないかとぼくは思い、その旨を口に出そうとする。しかし、ハヤトはそれを予期したかのように口を開き、ぼくの言葉をさえぎった。


「半妖精ってのはハズレの種族だから、レベルが低いと舐められる。でも、レベルがそれなりにあれば、PBを不当に挑まれたりはしなくなるさ。それにどうやら思っていた以上にLOLは複雑らしい。最近知ったことだが、最適なスキルと種族の組み合わせがあるって噂が掲示板で流れているんだ」


 ふーん。だからぼくにわざわざ付き合っているわけだ。もちろん友人としての立場も相応にあるだろうけど、その検証のサンプルについでにぼくを使う気なんだろう。ダシに使われるというのはあまりいい気分ではないけど、まあ親しい友人の言うことだし乗ってやる。


「いいよ。ハヤトのその考え、乗ってあげる」


「悪いな、モルモットみたいにして」


「お言葉ではございますが、お2人でやるにはあまりにも大変かと」


 黙ってぼくらの話を聞いていたような体制をとっていたNPCが、僕らの話が途切れた瞬間をみはからってそう言ってくる。丁寧な口調ではあるが、その表情にはありありと不満の色が見て取れた。ぼくはやっぱり人間臭いなぁ、と別方向に思考を飛ばしたが、ハヤトはそんなことはなく言葉を返す。


「俺はここの推奨レベルを大幅にオーバーしている。スヴェンも推奨レベルまで達してはいないが、種族から言ってもレベル以上に力があるはずだ」


「私からするならば希望的観測は足をすくわれるといいたいところですが、よろしいでしょう、依頼を受諾します」


 受付嬢は一瞬唖然としたあと、忠告の言葉と共に依頼書を受け取った。その間にもレベルアップの音声がぼくに伝わってきていたが、確認するだけにとどめた。どうせすぐにクエストに出発するのだから、そこで説明文を読みつつつかえばいい、僕はそう思っていたのだ。


「スヴェン、行くぞ」


「はいはい、わかってますよ」


 ぼくはわき目もふらずに一目散に入り口へ早足で歩いていくハヤトを追った。「移動速度が遅い」というのが分かっているだろうに全くこいつは。


「集団討伐は実入りがいいからな。人気のクエストでもある。だから、さっさと済ませたほうが新規に集団討伐依頼がでやすくなる。それをまた受ければいいってことだよ。……ただし独占しないように程ほどに、という条件がつくがな」


 まあそこはMMOの宿命というものだろう。独占ではなく、平等性が重視されるのだから。今度もワック草原でクエストをこなす。今回の集団討伐は『コボルドの30体討伐』である。コボルドの推奨レベルが8なのだが、今のぼくのレベルは7。少し足りないけれど、横にいる友人ハヤトがありがたくも手を貸してくれるという。……正確には、ハヤトに強引にレベリングさせられるという結果である。


 コボルドというのは小型犬が直立したような小柄な二足歩行の犬である。「ワック草原のいたるところにいる」というのがコボルドであるそうだ。一見かわいらしいのだが、その爪と牙はたやすく人間を引き裂いてしまうという恐ろしいモンスターで、その見た目から子どもの被害が多いのだそう。素早さもそれなりに備えているので、斧や大剣をもったパワー系の前衛とは少々相性が悪い、というのはこぼれ話。ぼくは後衛なうえに弾幕系魔法使いなので、近づけなければあまり問題ない──というのが、ハヤトの考えだ。


「さぁ、入り口にすでにいらっしゃるようだぞ」


 ハヤトの言葉に入り口をよくみると、フィールドの入り口10メートル程度先に、けむくじゃらの生き物が見えた。気づいていないときに攻撃を仕掛けると状況によっては即死させることができるというシステムがLOLにはある。逆もしかりで、ぼくたちが奇襲を受けたら即死させられる可能性もあるということだ。


 長距離の敵を狙うにはちょうどいい魔法がひとつ、レベルアップによって使えるようになっている。【シャープシューター】だ。【シューター】の変化形であり、1発しか魔弾が撃てなくなる代わりに、射程距離と攻撃力の大幅な向上を果たした、鋭撃魔弾(シャープシューター)といえるだろう。


 脳天に一撃。即死判定に成功。経験値ををいただく。


 結果だけいえば、30匹の討伐に成功した。中には接近を許し、その爪の一撃で大ダメージ、瀕死、スタン状態となりハヤトが泡を食って助けに来る。【シューター】の撃ちすぎでMP切れになってただの置物になる。などなどアクシデントもあったが、レベルは2桁にまで成長した。ワックタウンのボスモンスター以外の安全マージンは取れたらしい。ハヤトの言うことが完全に正しいならばの話だが。まぁ、ぼくにはほとんど深刻な嘘をついたことがないので、大丈夫だろう。ハヤト自身もクラン《ライディーン》があるので、あんまりぼくにばかり構っていられないというのが実情だろう。あんまり無茶ばかりしていると、メンバーにそっぽを向かれる、ということでぼくが帰還を促した。


 さて、今度は完全に1人になったわけだけど、今回学習した。自衛のための近接武器と、MPポーションが必要だ。


 





ここまでお読みいただきありがとうございました。感想など書いていただけると作者はとても喜びます。

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