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《Liberty of Life》  作者: 魚島大
1章 Welcome to the “Liberty” life!/「自由な」生活へようこそ!
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1話 Viva Friend!/持つべきものは友人

「なあ、LOLやらね?」


 学校も終わって春休みに入ろうとしていた日のこと。肌寒いなかで帰り支度をしていたぼくは横に座る友人にそう声を掛けられた。ワックスでまとめた髪に整った顔立ち、キラキラした瞳というスポーツマンと爽やかさが同化したわが友人がそうのたまった。


「ねえ尊人。君はいつも急に何の脈絡もなく──」


「はいはいいいから。ヨシもVRギアはもってるんだろ?」


 この友人、林尊人はイケメンでありながら重度のゲーマーであり、幼いころからぼくはそれに付き合わされてきたものだ。小学校からの腐れ縁である。もしかしたら腐るどころか一週回って発酵しているかもしれない。ぼくは藤原義孝だから、名前からとってヨシ、自分で言うのもなんだが、安直である。


「君が買わせたんじゃないか、まったく」


 ぼくと違って彼はとても押しが強い。その彼の押しの強さにはぼくも色々と助けられているけれど。ほとんどはぼくを巻き込んでゲームをするという方向にそれを発揮してくるのが尊人という友人だ。


「少しまえに俺も買ったLOL! 第二陣が発売しているんだぜ! これは買うしかないだろう!」


「それは(俺も買ったんだからお前も)買うしかないだろうってことでしょ?」


「そうだよ。わかってんじゃねえか」


 VR──ヴァーチャル・リアリティ。仮想現実を作成、そこで様々な実験や検証を行うために最初は開発されたものだった。しかし、仮想現実が構築される技術が世間に浸透し、ホログラムなども一般化され始めると一部の人々しか使わない存在であったVRとその起動装置、「ギア」。そして仮想現実を構築した「プログラムソフト」。新しく企業などの手によって再構成され、やがてそれは世界のゲーマーの夢であった完全体験型ゲームへと発展していった──というのが一般的な認識である。僕自身の認識もこれとほとんど変わらない。


 実際に発売されたその中でも、人気が出たのはRPGとかファンタジーと呼ばれるジャンルだった。いままでは体験できなかった夢の世界が実際に体験できる、ということの影響は大きく、有名企業からたくさんのゲームが発売されたのである。


 その中のひとつが《Liberty Of Life》。通称LOLだった。このゲームは内政、生産、商売、冒険、勇者などに代表されるファンタジー要素を詰め込んだ圧倒的な自由度を誇るVRMMORPGらしい。昨日の夜から熱くLOLを語る尊人のホログラム電話に付き合わされてぼくは寝不足だ。


 実際彼がこういうことになった場合はぼくがLOLを買うまでうるさく毎晩電話し続ける腹積もりだろう。昔からそれがやり口なのだから。


 はっきりいって、ぼくの家にはそれなりにお金がある。母親が株で一山当ててからはその証券取引でもってあっという間に一財産築いてしまったのだ。そのときの父親の顔を例えるなら、皮肉なことに「FXで有り金全部溶かした顔」になるんだけれど。それはさておいて、ぼくのお小遣いで購入するのは昼食を少し質素にするだけでいいのだから、もうそうするしかないと半分流され、半分諦めの気持ちでぼくは尊人と共に学校を出て、電車に乗り繁華街のゲームショップまで向かった。


 風は冷たいのに空は真っ青でどこにも雲が見当たらない。まるで尊人の頭の中もとい考え方のようだ。あ、彼の場合は心は温かいね。


 電車の中でも尊人がLOLの薀蓄を話してくる。もちろんその中にはネタバレになるような情報は入っていない。何度もいうように彼は強引なところがあるのだが、ゲームを楽しんでくれるように全力で取り組む姿勢がわりと他の人にも評価が高い。彼の親はその情熱を勉強に向けてほしいと頭を抱えていたのがぼくとしては噴出しそうなほどおもしろかった。閑話休題。


 学校から4駅のところで降りると駅前すぐに巨大な電気店(この言い方古すぎるね)が見えてくる。VR系の技術が発展しそれを応用したホログラム技術などが登場してくると、このように駅前に巨大なマルチメディアと呼ばれるものが出現してくる。道行く人もホログラムなどを利用しながら行きかっているから、未来都市サマサマという気持ちが芽生えてくる。技術の進歩というのは恐ろしいものだ。


「何考え込んでるんだ?どうせ技術の進歩は凄いとか考えていたんだろ?」


 なぜわかった。


「わからいでか。早く行くぞ!」


 一階の入り口をすぐ入ったところに、大々的にコーナーアップされていた。LOLはよほどの人気らしい。


 ぼくがそっちに気を取られていたうちに尊人は店員に駆け寄りぼくのほうを指差しながら何事か注文していた。何で知ってるんだと思ったけれど、よくよく考えたら尊人に勧められてVRギアを買ったからどのギアを持っているか彼は知っているはずだった。あれよあれよと購入が進み、お金も尊人が払っていた。


「設定してやるからあとで俺の家来いよ」という遠まわしな金払えとのお言葉と共にそこで別れた。僕自身はプリンターのインクを買いたかったので、そのままエレベーターを使って上に上がった。


 はあ、せっかくだから楽しみたいとは思うんだけれどね。まあいいや。


 


お読みいただきありがとうございました。よければ、感想なども書いていただけると作者が喜びます。

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