弾き語り少女
次の日
俺は放課後またあの空き教室へと向かっていた。
もちろん彼女に会うためだ。
ただなんとなくもう一度会いたいと思ったから。
「教室の前まで来たが…何の音もしないな。」
歌声どころか物音一つしない。
「とりあえず開けてみるか。」
ガラッ
「…」
ドアを開けた先には彼女はいなかった。
「いないのか。」
残念に思いながら開けたドアを閉めた。
「隼人?なにしてるの?」
突如自分の名前を呼ばれた。
振り返るとそこには…
「あ、憐。」
憐がいた。
「あ、いや、ちょっと用事が。」
「ふぅーん。空き教室に用事なんて…まぁ、いいや。
帰ろ?」
「あ、おう。」
彼女がいないのならここにいても意味はない。
俺は憐と帰ることにした。
「でさっ、こないだ言って海の件なんだけどさ…」
憐は話し始めた。
「今月の27日空いてる?他のみんなちょうど空いてるって、あとあんた次第で予定が決まるんだけど。」
「あ、ああ多分空いてると思うが…」
「そう、なら決まりねっ!」
憐は満面の笑みを浮かべた。
そんなに楽しみなのか。俺はやはり海よりプールがいいのだが、まぁいいか。
27日の予定を詳しく話しながら俺たちは帰った。
7月下旬
あれから何度かあの空き教室に足を運んだが彼女を見ることはなかった。
あれは、幻だったのかと疑いだしている今日この頃だ。
「えぇー、皆さん学生はこれから長期休業に入ります休みだからといってハメを外しすぎないよう節度ある行動を…」
長く退屈な校長先生の話しを聞き流しながら俺はふと、彼女のことを考えていた。
…この体育館のどこかには居るよな。
確か同じ学年だった気がするが…。
我が校は上履きと女子の制服に学年カラーがワンポイント入っている為一目で学年の判断をする事が出来る有り難い仕様になっている。
あの時チラリと見えた色は緑、俺たちの学年カラーだ。
我ながら気持ち悪いぐらいの目敏さだとは思う。
が、見えたものは仕方ない。
しかし、辺りを見回すが彼女らしき姿はない。
「欠席か…」
「えぇー、これで終業式を終わります。三年生から教室に戻ってください。」
色々考えているうちに退屈な終業式は終わった。
とりあえずまたあの空き教室に行こうと決め俺は教室へ戻って行った。
「…きりーつ…礼っ。」
「お前ら受験生なんだからやんちゃしすぎんなよ。んじゃ、なぁ。」
そう一言いって担任は出て行った。
HRも終わり皆が意気揚々と帰路についていった。
「はーやーとー!」
この声は憐だ。
「どうだった?オール1かっ?」
「流石にそこまでバカではない。お前は相変わらずオール5だろ。」
「ふふふ。当たり凄いでしょ?」
「はいはい。すごい。すごい。」
開口一番成績の話とは…自慢ですか。
幼い頃からそうだった。
頭がよく、運動もできる。性格もよく周りから持て囃されていた憐とは違い俺は…
「まぁ、それよりさっ帰ろ!そうそうこないだ駅前にね美味しいケーキ屋ができたんだって。行こう!」
「あ、あぁすまん。少し用事があってだな。先帰ってくれ。てか、ケーキ屋さんは女友達と行けよ。」
そうだ、俺はこれから行かねばならぬのだ。
義務と言うほどのものではないが決めたことだしな。
「んー、用事?すぐ終わるならまってる。」
そんなにケーキ屋行きたいのか。
「いいって、まぁまぁ時間かかるだろうし。今度行こうぜ。」
「はいはい。私は聞き分けのいい子だから聞き入れてしんぜよう。」
「上から目線だな。上から憐だな。」
「なにその言い方。一昔前話題になった曲名のようね。」
と、くだらない会話をしていると。
「憐!かーえーろっ」
憐に話し掛けてきた生徒がいた。
中河美奈子良く連むメンバーの一人だ。
「美奈子。うん、不良生徒隼人くんは先生に呼びだしされてるみたいだからほっといて先帰ろうか。」
「なになに?隼人くんお呼びだしされてるの?」
「なわけあるか。俺は真面目な模範生徒だからな。先生からの相談を受けに行くんだよ。不良生徒憐さんをどうにかしてくださいってな。」
「失礼ね。オール5の憐さんは誰よりも真面目生徒よ。」
「よく言うよ。授業中ほとんど寝てるくせに。」
「人のこと言えないでしょ。」
まぁ、多少船をこぐことはあるかもしれんが。憐程ではないと言ってやりたい。
しかし、こいつ授業中寝てるくせに成績が良いとは恨めしい。てか、寝てるのにオール5なんて取れるのだろうか?そんなに甘いのかこの学校はっ。
絶望した!寝ていてもテストの点が良いだけで5を与えるこの学校に絶望した!
「さぁ帰った帰った。」
「なによ。追い出さなくても良いじゃない。いいわ美奈子とラブラブして帰るから。じゃあね、不良生徒Aくん」
「じゃあな、不良生徒Bさん。」
全くモブキャラのように呼びやがって。俺は主人公ポジションでも可笑しくない人材だ。
そんなことを思いながら二人を見送り俺は教室を出た。
「さて、行ってみるか。」
そして俺はあの空き教室へと向かった。
~♪~♪~♪
「!?」
特に期待もせずにあの空き教室へ向かったが、予想とは裏腹に教室からはギターと歌声が聞こえてきた。
「…今日はいるのか。」
いざ居るとなるとどうすれば良いのか悩む。
こないだのようにいきなりドアをあけるのもはばかられる。が、このまま帰るのもなんだか釈然としない。
ここまで来たわけだ開けない訳にはいかいとは思う。
一呼吸し俺はドアに手を掛けた。
ガラッ
そこにはこないだと同じような光景が広がっていた。
そして彼女と目があった。
「あ、あの」
さて、なんて言おうか。こんにちはか?いや、ここは素敵な歌声ですね、なんて誉めるべきか。
「こないだの…。今日もこの教室使うのですね。すいません今片付けますね。」
彼女は片付けを始めた。これでは庫内だと同じ展開だ。違う俺は彼女と………。
…そうだ、なぜ俺はまた彼女に会いたいと思ったのだろうか。仲良くなりたいからか?好きになったからか?いや、違う…いや、違わない。
「ち、違う!この教室を使いたくて来たんじゃない。君の…君の歌声に惹かれて。つい。来てしまったんだ。」
またしても我ながら気持ち悪いと思った。
漫画の中のイケメンが言えば格好がついたかもしれない。が、俺がこんなことを言ったところで引かれるだけだ。
しかし言ってしまったものはしかたない。
過去には戻れないのだから。
前に進しかない。
「…って、急にこんなこと言われてもだよな。ごめんな。」
とりあえず謝ろう。
そして彼女は口を開いた。
「…あ、ありがとう。ございます。」
少しうつむいて彼女は一言言った。
その姿は少し怯えてるようにも見えた。
そりゃあそうか。だよな。
「さっき歌ってたのって




