火曜日
火曜日
自転車漕ぐ父の背中に
しがみついて
保育園の坂道を
下りていく
赤チンに染まった
膝小僧
乾いた涙のこびりついた
頬
短く切りすぎた髪
六歳の、わたし
笑わない先生がこわくて
ひとつ上の女の子の集団がこわくて
どこへ隠れても
ひとりぼっちが追いかけてきて
嫌だ嫌だと毎朝
泣いて、母を困らせた
やさしい陽射しも
涼しい風も
何もかも嫌いで
火曜日
自転車漕ぐ父の背中に
しがみついて
保育園の坂道を
下りていく
嫌なものが
吹き飛ばされていく
きれいにきれいに
裂かれて散っていく
父の
大きく広い背中に
守られながら
嫌なものたちに
べロりと舌を見せた