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第一話(序章)

過去に書いた稚拙な文章ですが、お許しください。

あと、連載ですが短いです。

序章


「やぁ皆さん。ご機嫌麗しゅうございます。」

僕こと変はくそ丁寧に朝の挨拶をした。 教卓の上で

「また変か。」「いつ見ても変だねぇ」

クラスの人々は半ば呆れながらいつもの光景を見て口々に言った。

そんなことを言われても変は頭を下げたままだ。もちろん彼にもクラスメートの感想は聞こえている。しかし、こんなことを言われるのは変にとっては日常的なのだ。

(ん?あ、あれは!?)変が姿勢を戻すと正面に魔法のアイテム(バナナの皮)が落ちていた。

(なんであんなレアアイテムが!?いや、今はそんなことを考えている場合じゃない)変は正面にあるバナナ目掛けて走り出した。そして、バナナの皮を踏みつけて足で綺麗な円を描きながら背中から着地した。

(決まった!)

そう考えた瞬間にクラスに笑いが起きた。

「おいおい、なんてベタな。」「でも笑えるよねー」

どうやら反応は上々らしい。流石はマジックアイテム(バナナの皮)だ。

そのまま起き上がると、ふと見た方向に机で窓の外を眺めている女生徒の姿があった。その顔には他のクラスメートにある「笑い」の表情はなく、「憂い」の表情しかそこにはなかった。しかし、女生徒は横顔だけなのにかなり顔の造形が整っているのが良く分かる。(彼女は何故笑わないのだろう)

そう思うと変は女生徒の元に行き、尋ねた。「何故、あなたは笑わないのですか?」すると窓を眺めていた女生徒は顔を動かさずに目だけをこちらに向けて言った。「話し掛けないで」

変は笑顔を浮かべたまま考えた。

(これはなかなか辛いなぁ。)

「では一つだけよろしいでしょうか?」

変は人差し指を立てる仕草をしながら質問をした。

「何故あなたの顔はそんなにもお綺麗なのですか?・・・じゃなかった、何故そんなにもつまらなさそうなのですか?」

女生徒は視線を下に伏せた。「それは・・・」

「それは?」なんとなしに聞き返してしまった。

「あなたには・・・関係ないわ」

女生徒はうつむきながら言った。

「・・・そうですか、では質問を変えましょう。あなたのお名前はなんでしょうか?」とりあえず空気が重くなりそうだったので話題を変えることにした。

(れん・・・小日向(こひなた (れん」女生徒もとい小日向 恋は英単語を言うかのように自分の名前をつぶやいた。

「恋さんですか、素敵なお名前ですね。」そう言うなり変は本日二回目の丁寧なお辞儀をしながら言った。

「女性に先に名乗らせるとは失礼いたしました。僕の名前は道楽 変と申します。以後お見知り置きを」

変は頭を上げると笑顔を浮かべた。

すると、恋は顔を変の方に向けると、儚さと美しさが合わさったような顔で何かを呟いた。

(ん?今なんと言ったのだろう?)

変が聞きそうとすると、

「授業を始めるぞ〜、早く席につけー」

どうやら一限目の授業の先生が入ってきたようだった。するといつの間にか変と小日向恋の周りには人集りが出来ていたようでゾロゾロと自分の席に戻っていった。変も一応自分の席に戻り、授業に使う教科書などを机の上に出して授業に参加しようと思った。しかし、変の頭を先ほどの小日向恋の言葉がよぎる。

(大切な人を失ったことはありますか? か。どういう意味なのだろう。)

結局、彼女の言葉が引っかかって授業に身がはいらなかった。


「小日向恋について知りたいだとぉ?お前もまた変なフラグに走ろうとするなぁ。」

昼休みの騒がしい食堂で、幼なじみであり悪友である佐久間(さくま 創司(そうじが顔をしかめて言った。

「変なフラグって・・・そんなんじゃないよ。」

変の口調は教室のとは違い、高校生らしいものになっていた。

「まぁお前のことだから、また人を楽しませる関係だろうから期待はしないが何故だと聞いておく。」

今お前に言われてしまったよと悪友を恨みがましいように変は言った。

「彼女には何かある気がしたんだよ。」

彼女に言われた言葉が頭の片隅で再現された。

「へぇ、何かあるか・・・お前の変わり物レーダーは意外と 正確だからなぁ。・・・よしわかった。調べといてやるよ。」創司は学食で比較的安価なかけうどんを食べながら頷いた。

ありがとう と言おうとした変の顔の前に人差し指が向けられた。

「但し、条件がある・・・」

変はいつになく真剣な悪友に驚きながらも

「じょ・・条件ってなんだよ?」

すると創司はためながらこう言い放った。「条件はな・・・おにぎりが欲しいんだな。」

「お前はどこぞの絵の上手い大将か!?」

ガタッとイスをならしながら変は突っ込んだ。

創司は自分の欲しかったツッコミが来たので満足に頷いた。

「まぁ今のは冗談だったが、奢って欲しいのは本当だ。」

変は制服のズボンの中にある財布を取り出そうとしたが、創司に止められた。

「今日のところはいいよ。いつかでな。それに、こんな安いうどん一杯を奢ってもらっても嬉しくねぇからな。もうちっと高いやつの時に頼むわ。」

変は少し納得がいかないような表情を浮かべたが、小さなため息を一つついた。

「・・・まぁいいよ。それで。ちゃんと調べろよ?」

創司はそう言われると口元に笑みを浮かべた。

「大丈夫だよ。それとも、俺の腕を信頼してないのか?」

変は少し視線を落としながら答えた。

「そうじゃないけどさ・・・」

そう、確かに創司の情報はかなり正確なのだ。学校で起きていることだったらその殆どを把握しているのではないかと思えるくらいだ。その情報はどこから仕入れているのかはかなりの付き合いである幼なじみの変でさえ、分からないのだった。なので、どうしても知りたいことができた場合は大抵創司に頼むことにしている。

「ん〜なんか煮え切らない態度だけど、まぁいいことにしよう。さて、そうとなったら早速働きますかぁ。」創司はそう言うなり自分の食器を返却口に返して、さっさと食堂を出て行ってしまった。

ふぅとまた溜め息を吐きながら変は壁に掛けられている時計を確認した。どうやら昼休みの時間はまだ半分近くあるようだ。

(とりあえずどこに行こうかな。今日はクラスには人が少ないからあまり芸をしても楽しませられないんだよな。)そう考えながら変は食堂のAセット(ご飯、味噌汁、ハンバーグ、魚のフライ、サラダで450円)を平らげて、先ほどの創司と同じように食器を返却口に返して食堂を後にした。

あてもなしに廊下をうろついていると、ふと窓の外が目に入って来た。もう少しで本格的な夏に入ろうかという季節ということだけあって空は雲が少なく太陽の光に満ちている快晴だ。青々とした樹木の葉は風に揺られて日光を散らせていて、夏の訪れを告げていた。こんな天気のせいか見ているこちらの気分も晴れやかになっていく気がする。そこでふと変は思いついた。

(そうだ、こんなに天気がいい日なんだから屋上に行ってみようかな。)この変や創司が通っているこの高校は昼休みには一応屋上を解放しているのだが殆どの生徒が知らないため、物好きな一部の生徒などが利用しているのが現状である。

変も天気が良いときにはよく行っていた。あそこは適度に人がいないので朝のネタ(マジックや大道芸など)の練習には最適なのだ。

今日はどんなネタをやろうかと鼻歌混じりに屋上への階段を上っていくと、何の変哲もない多分スチール製であろう扉が正面に見えた。変は特に意図もなくその普通の扉のドアノブに手をかけ、引いた。風が一挙にに吹き出してきた。

変はそれに反応して一瞬だけ目を閉じたが、すぐに目を開け数歩進んだ。

屋上は先ほど窓から見た青空があって、どこまでも蒼色が広がっていた。変は空から視線を戻してぐるっと周りを見た。フェンスで囲まれているこの屋上は広々としている青空とは対照的にまるで狭い鳥かごのように思えた。

(なんてね。)

変はすぐに思考を切り替えた。

(さてどんな練習をしようかな)

顎に手をあてて考えながら、何気なく目をキョロキョロと動かしてみる。

(ん?)

動いている視界に何か映ったのでそちらの方を向いてみると、そこにはフェンスに寄りながら後ろを向いているこの高校の生徒であろう後ろ姿があった。*

「なんで・・・君がいるの?」変は驚きを隠せず思わずいつもの丁寧な口調ではなく創司に話す時のようなタメ口になってしまった。

「・・・私がここにいたら、いけないの?」後ろを向いた人物は顔を横に向けて視線を変へ向けた。

横に顔を向ける際に彼女の栗毛色の髪がふわりと流れた。その髪は確かに色が存在しているのだが、太陽の光によって透き通っていてまるで水を多めに含んだ水彩絵の具のように頼りなかった。彼女、いや小日向恋の儚さはそんなところにも感じられるのかと考えてしまった。しかし、ここで会話を途切れさせてはいけないと変は彼女の持つ儚さへの探求をやめた。

「いや、別にいちゃだ・・・別にいても構わないのですが、君がここにいるとは思わず驚いてしまったのですよ。」変はいつもの口調に戻しながら顔には笑みを浮かべた。

「・・・・そう。」小日向恋は特に興味のないといったような調子で返した。

「ところで君はこんな所で何をしているのですか?」変はその味気ない反応にも怯まずに続けた。

「・・・・別に。あなたには関係ない。」変の質問はバッサリと横凪にされてしまった。心の中でうぐっと突き刺さる何かを感じながら次にかける言葉を探していると、「・・・ただ空が見たかっただけよ。」

彼女は後ろを向いたまま呟くように言った。「それは気が合いますね。僕も空を見にきたのですよ。」・・・本当は芸の練習をしに来たのだけど。とりあえず話を合わせることにした。

「・・・・そう。」 一言だけ言うと彼女はまたフェンスの方を向いてしまった。

(・・・!そうだ、せっかく芸の道具を持っているのだから練習も兼ねて芸を見てもらおう。)

「ところで小日向恋さん、ここで出会ったのも何かの縁ですから良かったら僕の大道芸を見ていってくれませんか?」変はまた顔に笑みを浮かべた。

小日向恋は後ろの変に顔を向けたまま黙っている。

「見てくれませんか?」それでもめげずに変は続けた。

彼女は少しだけ頷いた・・・気がした。

「では、早速始めますね。」とりあえず了解が取れたことにした。

「まずはここに三枚の何の仕掛けもないコインがあります。このコインを一枚ずつ右手に握っていきます。・・・小日向恋さん、今この右手には何枚のコインがありますか?」

「・・・三枚」

彼女は相変わらず呟くように答えた。

「いいえ、ハズレです。では実際に右手を開いてみましょう。」そう言って変はコインを握っている右手を開いた。



そこには三枚あるはずだったコインが一枚しかなかった。「さて、消えた残りのコインはどこに行ったのかと言うと・・・」変は小日向恋に近づいて彼女の肩を叩いた。そうして変がまた右手の平を開けるとそこにはコインが一枚ではなく元の三枚に戻っていた。実はコインには仕掛けがあり、三枚を一枚に重ねているのだ。それを握った手の中で重ねたのだった。小日向恋の肩を叩いて出てきたコインはそのコインをまた手の中で三枚に戻したのだ。

しかし彼女の表情は特に驚きも感嘆の色もなかった。

(まあ、まだジャブですからね)

変は彼女の反応に対して冷静に処理をした。

「さて次はこのトランプを使いましょう。では小日向恋さん、このトランプの一番上をめくって僕に見せないようにして覚えて下さい。」

変はトランプの束を小日向恋の前に差し出した。彼女はすっ とトランプの一番上を引いた。30秒ぐらいして彼女はその一枚を束に戻した。どうやら覚えたらしい。

「さて覚えて下さったみたいなので、このトランプを混ぜたいと思います。」

変は慣れた手つきでトランプをショットガンシャッフルした。一通り切り終わると変は再度彼女の前にトランプを差し出した。「これであなたの覚えたカードはどこにあるか分からなくなりましたね?では、このトランプの一番上をめくってみましょう。」

変はトランプの山札の一番上を表にした。そこにはハートの5のカードがあった。

「あなたの選んだカードはこれでしょうか?」変は笑みを浮かべながら言った。

「・・・・」小日向恋は無言のまま、ふるふると首を横に振って否定の意味を変に伝えた。

「なるほど違いましたか、ではこのカードを戻して・・・」

変は表にしたカードを再び裏にした。

「でも、こうするとどうでしょう?」変は不敵な笑みを浮かべながら、そう言うなりパチンと指を鳴らした。

そして再度一番上のカードを表側にした。すると、先程ハートの5だったトランプが今度はスペードのエースに変わっていた。

「あなたの選んだカードはこれですか?」変は笑いつつ言った。

「・・・・コク 」

小日向恋は特に驚きもなく頷いた。

(おかしいですねぇ、大抵の人なら驚いたりもう一度見たがるのだけど・・・)

「・・・面白くなかったですか?」変は顔こそ笑みを絶え間なく浮かべているが、彼女に何の表情の変化の兆しが見えないのは正直言ってかなりつらかった。心が今にも折れそうだった。「いや・・・そうじゃない・・・」少し彼女はうつむいたが、すぐに変の目を見て言った。

「では何故・・・黙っているのですか?その・・・悲しげな表情で。」

変は思い切って言ってみた。いつもならここまで観客に対しては踏み込まないはずなのに、何故だだか彼女に対しては何のためらいもなかったのだった。

「・・・・。」彼女は黙っている。

まるで沈黙をさらに黒い絵の具で塗りつぶすかのような沈黙だった。

(やっぱり聞かない方が良かったのだろうか?)変は少々出過ぎた真似をしてしまったと早くも反省していた。道化師は人を楽しませるものであって、人の心まで踏み入るものではないとだいぶ前から父に教わったはずだった。


キーンコーンカーンコーン(°□°;)(チャイムの音)


変が考えているうちにどうやら昼休みが終わってしまったようだった。

(次は確か・・・数学か・・・ヤバい!!今日は僕が当てられる日だ!急いで教室に戻らなくては!)

変は目の前にいる小日向恋を見た。彼女はまだうつむいていて何かを考えているようだった。

(彼女には悪いが・・・)

「では、昼休みが終わってしまったようなので失礼ですが先に教室に戻りますね。小日向恋さん、あなたも遅れないようにしてくださいね。」少々お節介だとは思ったが一応言っておくことにした。

変は後ろを向いて屋上から立ち去ろうとスチール製のドアに手をかけた。

「・・・何度も見たから。」

後ろから呟きとも取れる小さな声がした。

「えっ?」変は不意に言われたので、後ろを振り返ってしまった。「それは・・・どういう意味で、うわっ!」

すると声の主は変が後ろを向いた隙にスチール製のドアを開けて走り去ってしまった。

屋上には変一人がいた。

「なんだったんでしょうか、今のは・・・」突然のことに変は自分一人しかいないにも関わらず、口調が戻っていなかった。

「何度も見たことがある・・ってどういうことだろう?・・・って、考えている場合じゃない!授業に遅刻してしまう!」

変はまた考えようとしたが、昼休みが終わったということを思い出して屋上のドアを勢いよく開け教室への廊下の道を走った。走っていながらも彼女の言葉が気に掛かっていた。



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