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chap 7・ 魔法(物理)とユニット

ども!

今回は……4000字超えてます。長いかもです。


2016年1月10日追記。

1話からずっと続けてきた修正ですが、前書きがもう既にアレだったんで前書きから修正しているっていう。

「──ハッタリって」

「言葉どおり。ハッタリじゃよ?」

 あっけらかんと答える老人に、都津風は開いた口がふさがらない。

 一体、どうことなのか。つまり、これは──

「……一杯食わされた……?」

「そういうことになるの」

 開いた口が、さらに指2本分ほど広がった気がした。

 なるほど、やはりあの会話だけで超能力が魔術ではないことを悟るのは無理だっというわけか。しかし、こうも見事にハッタリに乗せられてしまったとなると──

「つまり、超能力が魔術であったというあの頓珍漢(とんちんかん)なニュースは、やはりデマだったわけか……。面白いことを聞かせてもらったの」

「……いや、誤解デスヨー。超能力ハ魔術ノ一種ナンデスヨー」

 ……最悪だった。誤魔化すどころか、動揺のあまり明らかに棒読みになってしまっている。これでは全力で首を縦に振っているのと同じだ。(いさぎよ)い分、むしろそちらの方がマシだったと言えるかもしれない。

 とにもかくにも、これではどんな誤魔化しも意味はない。さっさとバレてしまったと諦めて、どうにか頼み込んで口をつぐんでいただくのが得策だろう。

 もしも仮に、「念動論理(サイコロジック)」が魔術ではない、ということを広められてしまっては、再びあのマスコミの群れに放り出されることになるだろう。都津風としては、それだけはゴメンである。

「え、と……そのですね」

「ああわかっとるよ。どうせ口外するなと言いたいんじゃろ?」

「いえ、他人にはバラして欲しくないと──え?」

「見たところ、面倒ごとが嫌いのようじゃからの、若いの。どうせこのでっち上げとて、この秘密がバレたときの厄介ごとを避けるために作り上げたものなんじゃろ?」

「……なんでわかるんですか……」

 こんな些細な挙動から、ここまで察することが出来るのだろうか。それとも、この老人特有の技なのか。それは測りかねるが、ただ。

 この老人に隠し事は通用しない。そんな風に都津風は思った。

「経験則じゃよ。仕草や、言動──そんな外見的な物事から内面的なものを見つめる。年寄りはだいたい持っとる技術じゃ」

 まぁ、ワシの場合はちょっと違う要素もあるんじゃがな──とも老人は小さく呟いたが、都都風には聞こえなかった。

「はぁ……」

 なんというか、どうにも掴み所の無い老人である。

「……で、その超能力を魔術と偽って使う……というのはべつに構わんのじゃが……先程の会話しかり、お前さん、ユニットを持っておらんのだな?」

「え? ええ……別にユニットとか無くても超能力使えるし……」

 すると、ベレ爺は再び呆れたような目線を都津風によこした。また、まっとうな魔術士なら言いそうもない不用意な発言をしてしまったらしい。

「お前さんなぁ……ワシはその超能力がどれ程の威力を持っておるのか知らんし、だからなんとも言えんのだが……しっかし、魔術士がユニットを持たないことなどあり得んじゃろ……。最初に発見された炎熱論理フレイロジック使い手(ロジシャン)が出せた最大出力くらいは知っておろうに」

「あ、そうか……」

 そう、過去の記録において、そして現在の研究からも、人間が生身で出せる最大の出力とされているのは、直径一メートルの火球。

 つまりそれ以上の威力は、人間単体では出すことができない。

 否、その記録でさえ、ある種の非凡(イレギュラー)性を含んでいるのだ。であれば、ごく普通の(・・・・・)魔術師ならもっと威力は劣るだろう。

 さらに言えば……魔術士とはその直径一メートルの火球の威力が出せればよい、と言うものではない。人間単体の限界が最終目標ではなく、魔術師はさらに先を目指さなければならない。

 ゆえに、魔術士がユニットを持たないことなどあり得ない。都津風がいくら超能力を魔術だと主張したとしても、ユニットを持たずに能力を使ったりすれば怪しまれるのは必至だった。

「…………」

 加えて、自分自身の超能力の威力を考えてみる。

 果たして自分は、直径一メートルの火球と同等、あるいはそれ以上の威力を持った能力を生身で放てるだろうか、と。


 答えは──是、だ。

 使えてしまう。魔気に頼る魔術士とは違い、都津風が使う超能力は「都津風の思念によって発動する」、つまり外部のエネルギーを使用しない異能の力だ。

 それは、「魔気をもっとも効率よく集めた時の、魔術の最大出力が理論上直径一メートルの火球である」という理論、枠組みから逸脱した力。

 ゆえに、超能力が魔術の制限に引っかかる道理は──無い。

 すなわち……もし都津風がなにも所持せずに全力で能力を使って、直径一メートルの火球の威力を凌駕する能力を放った場合、その能力を魔術の一種だと信じこんでいる人からすれば「都津風が単体で本来の人体の限界を超えた」ように見えてしまうということだ。そうなったら、今度は別の話題で騒がれてしまう。

「……となると、使えなかろうがなんだろうが、ユニットを持っていた方がいいってことか」

「そういうことじゃな。それに、あの包囲網から逃げるにはその──超能力とやらに頼らずにはおれんじゃろうし、もしその能力(ちから)を使うのであれば、持っておいて損はないじゃろう」

 使えない道具を買う。余りにも無意味な行為であるが、カモフラージュのためならば仕方ない。

「……そうだな。それじゃ、早速──」

 都津風は立ち上がると、店内に飾られているユニットを物色し始めた。



 〇〇


『トッキー君、いつまで穴熊を決め込んでるつもりなのかなぁ……』

 ベレ爺の店の近くに立つ電灯に据え付けられたスピーカー。そこからは、不満げな理事長の声が漏れていた。

「いい加減出てこーい!」

「そうよ、そうよ!私たちと決闘しなさいよー!」

 次いで、ベレ爺の店を取り囲む少女たちからも声が出る。

 都津風が中で優雅に紅茶をのみ、その後コメディアンのように吹き出した頃、彼女たちは非戦闘区域の外から、都津風が出てくるのを今か今かと待ち構えていた。

「先生、なんとかならないんですかぁー!?」

『うーん……非戦闘区域は学校の規則で設けられてるからねぇ〜。理事長権限でもちょっと……』

「そんなぁ……」

『でも、一つだけ良い手があるよー』

「「「「え!」」」」

 理事長の一言に、女子たちの間でざわめきが走る。

「な……なんですか、一体!」

『そ・れ・は・だ・ねぇ……』

 詰め寄るように、ウェリアの声が流れるスピーカーに質問を投げ掛ける。

 そんな女子たちに、ウェリアはもったいつけるようにして言った。

『魔法が使えないなら、物理的にあのドアを|破壊す≪あけ≫れば良いんじゃないかな〜?』

「……………………」

 訪れる沈黙。誰もが唖然とした様子でウェリアの台詞を口のなかで反芻していた。

 そして。

「………………そ、」

「「「「それだぁぁぁぁぁ!」」」」

 誰もが得心したように叫んでいた。

「よぉぉぉぉっし! 皆! ドアをこじ開けるよ!!」

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」


 都津風に新たな危機が迫っていた。



 〇〇



「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」

「──ひっ!?」

 外から聞こえた雄叫び──否、雌叫びとでも言うべきか。その凄まじい声の重なりは、ベレ爺の店の中にいる都都風にも聞こえていた。そして。

 ドスッ!バキィッ!

「う、ぬおぅ!? おいベレ爺さん、扉が蹴破られそうだぞ!?」

「……まー、あの理事長が絡んでる時点で、こうなるんじゃないかとは思っておったわ……」

「アグレッシブにも限度があるだろ、限度が!」

「それがないのが、この学校じゃ」

「もうやだこの学校!!!」

 ……喚いていても仕方がない。とにかく何か武器になるものでも持って退路を探さなければ、と漁っていた箱からユニットを探す。

「ううむ時間がないな……適当なユニットでも持っていけい。料金は後で請求するわい」

「お、おう……そのあとはどーすりゃいいんだ!?」

「実は地下に隠し通路がある。孫に案内させるから、とっととユニットを選んどくんじゃ」

「ありがとう!」

 言われるままに、店内を物色する。

 箱の底にあったユニットを握ってみたが、やはりというべきか──ユニットはうんともすんとも言わなかった。他も同じ。光ることもなければ、何か魔方陣が描かれることもない。

「……ま、当然だよな……」

 一人呟いて再び物色を始める。とりあえず、これらのユニット全てが都津風には何の力も与えてはくれないただの鉄塊ということが分かったので、今度は一番安そうなのを選ぶことにした。

 ──と。

 再び、メリッ、という音とともに扉が軋んだ。今度は先程よりも大きくしなり、外の光が隙間から室内をわずかに照らした。丈夫な木材でできた扉のはずなのに、この脚力は一体なんなのか。

 そうして都都風が呆けるようにドアを見つめていると、どうやら外の女子たちは店内を空いた隙間から見るつもりらしく、隙間から指を入れて目を覗かせようとしていた。

「やべ……ッ」

 隠れなければ。その一心で店の奥へと移動する。

 そして静かに、隠れるように奥の棚へと移った、その時。

 戦慄とともにあわてふためいて近くにあった袋につまずき。

 そして。見つけた。

「……ん?」

 そのつまづいた袋から出てきた、鉄板のような代物。

 無機質な光沢をたたえた、他のユニットとは明らかに異質な──しかし、その鉄板の中央にはユニットであることを示す(コア)を備えた、何か。

「……なんだこれ」

 どうやら棒状の金属が重なりあうことで板状になっているらしいユニットのようなそれを、何気なく持ち上げる。

 ──と。

「───ッ!?」

 チカッと、コアが光ったような気がした。

 思わず持ち上げかけていた手を離す。

 すると、板は何事もなかったかのような様子でカラリと床に落ちた。

「……な……なんなんだ……?」

 わからない。明らかにユニットには見えないのにユニットの(てい)を保ち、そして魔法を使えないはずの都津風に反応したように見えた。

「……まさかな」

 ―――ドアが壊れたで入り込んだ光に反射したのだろう。むしろそうとしか説明できない。都津風はその鉄板のようなユニットを元に戻して、別の獲物を探そうとした、が。

 再びドアが軋む音がして、ベレ爺の焦った声が響く。

「早くしないと蹴破られるぞぉ! 何をしておるんじゃ早く選べ」

「あ、はい!」

 他のユニットを悠長に見ている暇はなさそうだった。ユニットの体を保ち、かつ安そうで盾にも使えそうだと判断した都津風は、その鉄板のようなユニットを掴むんでベレ爺の呼ぶほうへと走った。


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