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chap 6・ハッタリ

一週間で書き上げられたー!

良かったぁ……。とりあえず投稿です。

いまだ穴熊を決め込んでいる都都風くんに、設定を叩き込んでくれるベレ爺のお話です。



……てか設定の話ばかりしてる気が………



2016年1月10日追記。

なんとかこうとか、文章の拙い部分を修正。

またそのうち「修正後も拙いじゃねえか!」って修正するかもしれない……。

 どの学校にも、購買というものはあるだろう。

 日々使う文房具や参考書、あるいは生徒たちの胃袋を支えるパンを売っている場合もある。

 そういったごく普通の学校と同じように、この璃里浜にも購買は存在する。

 売っているものは、文具やノートなどの勉強用具を中心とした雑貨。

 それと、この魔術を扱う学校ならではの品物───ユニットもまた、品物として売られている。

 そしてまさに、都津風が飛び込んだこの「ベレ爺の店」と呼ばれている小屋が、その雑貨とユニットの販売を請け負う店──正式には「グランバレー工房」という名前の購買だった。

「一口にユニットといっても、色々あるんですね……」

 目の前にいる老人から出された紅茶をありがたく頂きつつ、都津風は正直な感想を漏らした。彼の回りには、細やかな意匠が施された剣やら槍やら──恐らくユニットの中でもかなり高級な逸品であろう物が並べられている。

 女子によって出入り口を封鎖されてしまっている今、この店のなかで大人しくしているより他はない。ベレ爺も勧めてきたことだし、と、都津風はこの退屈な時間を店の探索で潰すことにした。



 グランバレー工房──通称、ベレ爺の店では、世界中の企業で開発されたユニットが集められ、その一部が店頭に飾られている。その量は明らかに外から見た小屋には収まりきらないほどの物のはずなのだが……しかし、この小屋そのものにかけられた空間を湾曲させる魔術によってその敷地面積を拡張させることでその収容を実現させていた。

 展示されているユニットだけでも100は下らないはずだ。これで一部というのだから、全体としてはどれ程のユニットが保管されているのか計り知れない。ただ、恐らく全国の購買の中ではもっともユニットを所有しているであろうことは、容易く想像できた。

「もっともスタンダードなものとしては……やはり剣かの。次が槍、錫杖……といったところじゃろうか」

「……へぇ。でも、なんでわざわざ形を変えるんだ? 全て剣型のユニットでもいいのに」

 性質上、ユニットには型がない。それはあらゆるユニットが独自の型を持ち、一つとして同じ型が存在しないからだ。同じ属性の魔術を扱うユニットでも、必ずその形や特質は異なるように作られている。

 故にユニットは、簡易的で即席の、大量生産可能なタイプを除けば、その全てが世界で唯一のユニットであると言っても過言ではない。

 逆に言えば、職人がいちいち手間暇かけて手作りしているということになる。つまり生産効率は非常に悪い。

 そのため、都津風は同型にすれば大量生産できるのになあ、程度のことを思っていったのだ。

 ──が。

 当然のことを言ったつもりだった都津風に、ベレ爺は呆れかえった目線をよこしていた。

「お前さん……何にも知らんのじゃな……」

「え?」

「第二世代、という言葉は知っておるじゃろうな?」

 「第二世代」とは、前述した「簡易的で即席」なタイプのユニットの総称。

 そして、1914年に第一次世界大戦が勃発したとき、「魔術を武器、兵器として運用する」目的のために急きょ大量に生産された、全く型の同じユニットを指す。それらの第二世代は、作った国や年代によっては異なる型もあるものの──そのほとんどが「BR-Ex305」というイギリス製のユニットであったことは、教科書にも載っている。

「ええと……それくらいなら……」

「ならば、第一世代、第三世代についてもしっておるな?」

「………………」

 それが、全く知らない。

 知っていることと言えば、第一世代、第三世代ともに一つ一つが職人の手で作られるものであり、生産効率は年々上昇しているものの──第二世代とは比べ物にならないほど低いことくらいだ。……と、いうかそもそも、都津風には第一世代と第三世代の違いがよくわからない。

「ふむぅ? おぬしの使う超能力(サイコ・ロジック)もまた、魔術の一種なんじゃろ? であればこれしきの常識問題、知っていて当然なんじゃが……」

 ギクリ、として都津風は目の前の老人を見た。

 席についたままの都津風には目もくれずに店の商品──おもにユニットを整理している老人は、年齢の割に、目に力強い光を宿しており、それは彼が未だ現役であることを何よりもよく語っている。

 しかしその表情からして、都津風が危惧したような、つまり「超能力(サイコ・ロジック)が魔術ではない」ことを疑うような様子は微塵にも見られない。

 カマをかけられたのかと思った都津風は、その事にほっと胸を撫で下ろした。

 安心ついでに再び紅茶に手を伸ばす。

 殺伐とした状況が一転し、のどかなひとときを堪能出来た都津風からは、今までのため息とはまるで違うほっとしたため息が出ていた。

 が。


「……まぁ、超能力が魔術の一種なんたぁ最初っから嘘っぱちだとは思っちゃいたがなぁ」

「ぶふぅぅぅぅッ!?」

 吹いた。安心は一陣の突風に乗ってどこか遠くへと旅立ち、のどかなティータイムは一瞬の後にバラエティー番組のワンシーンへと変貌した。紅茶の上品さなど微塵も感じさせない。

「な……ななな何をおっしゃってやがるので……!?」

 今しがた吹き出した紅茶をだらだらと垂らしたままの口からは、明らかに動揺を隠しきれていない言葉が漏れる。

 今の会話からして、そしてこの店主の態度からして、まず超能力の件はバレていないだろう、と踏んでいた都津風にとって完全な不意打ちだった。動揺を隠そうにもガクガク手が震えてしまう。

 確かに都津風の発言は、あまりに魔術に疎い者の発言であった。しかし、だからといって超能力が魔術でないことをどう看破したと言うのか。論理が飛んでしまっている。

 なぜバレたのかと冷や汗を流す都津風を、鋭いとさえ表現できそうな目線でベレット・グランバレーは見つめた。

「若いの」

「な、なんですか?」

「……ハッタリには気を付けるんじゃぞぉ」

「…………はぁぁぁぁぁぁ!?」

 そこまで話すと、老人は目を白黒させて混乱する若人を見つめ、ニヤリ、とイタズラ好きの子供のような笑みを浮かべたのだった。



 〇〇



 そのころ。ガサリ、という音を立てて、一人の少女が呟いた。

「遅いわね……」

 少女が貧乏ゆすりをするたび、彼女が座る枝の先からひらりひらりと葉が舞い落ちる。

 樹の上に座る少女は、春の穏やかな陽気をまとった木漏れ日に包まれて、小さくあくびをした。

「……遅い遅い遅いぃぃぃ……!」

 そして小さく不満げな声を出す。

 手持ちぶさたにその細い足をさらに揺らすと、今度は先程よりも多くの葉が風に乗って流れていった。

 その葉が行く先には──赤い屋根の、特徴的な小屋。

 その外側を囲むように、百人ほどの少女が各々のユニットを展開して待ち構えている。

 二年生を中心として、主に普段から単位の危機に貧するような弱小チームと、男子の入学に反対するメンバーにより構成された魔術士の集団だ。

 三年生の姿があまり見えないのは──恐らく、様子見ということだろうか。

 中等部も含め六学年中、最高学年である彼女たちのことだ、高みの見物を決め込んでいるのだろう。

 一年生は──論外か。つい今日、高校に入学した彼女たちをこの決闘(クォーラル)に巻き込むのは危険すぎる。いかに中学で魔術の鍛練を積んでいたとしても、この高校での決闘(クォーラル)は、中学のそれがお遊戯に見えてしまうほど格が違いすぎる。

 であれば──やはり、主要な敵手(ライバル)は同学年の二年生だけ、と考えていいだろう──少女は退屈を紛らせるように状況を確認した。

 再び、小屋に集まった魔術士の集団を見つめる。

 少女もまた、その集団と同じ人物を待ち構えていた。



 念動術士(サイコ・ロジシャン)、都都風ユーキ。

 彼は今、総勢102人に及ぶ魔術士(ロジシャン)を敵手として迎え撃たなければならなくなっていた。


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