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第五十八話~医者~
昼休み、校内の購買部にパンを買いに行く北山と西園寺。
階段を降り切ると、廊下の突き当たりまで歩く途中。
北山
「西園寺って何になりたい?」
西園寺
「それは将来の夢ってことですか?」
北山
「そうそう」
西園寺
「そうですねー。正直あまりないんです」
北山
「もったいねぇな。頭良いのに、お前」
西園寺
「僕なんてそんな大したことないですよ。頭のいい人なんていくらでもいますし」
北山
「そんなこと言うなよ。俺に対する皮肉か?」
西園寺
「そんな意味じゃないですよ」
北山
「分かってるって。まあ、でもさ、わかんねぇよな、自分が何になるかって。なんて言うかさ、将来なりたいものになってもなんか違うと思ったり、変わったりすることだってよくある話じゃん」
西園寺
「たしかに。たまに聞きますね」
北山
「知ってるか? 阪大医学部で勉強して医師免許を取得した後、医者にならなかった奴がいるらしいんだよ」
突如、中瀬が二人の前に現れる。
北山を指さし、叫ぶ。
中瀬
「おいおい、そやつ信じられんな! 社会的な役割を果たさない犯罪的行為だ!」
北山
「まあその人、手塚治虫っつー人なんだけどな」