伝統と新風
元アーラント国王で、現在は新しいお名前、ゼインさん…
そのゼインさんから、アーラントの特産品や名物などの聞き取り中です。
「本来であれば武器…っと、そう言いたいところでは有ります。しかし…」
そう、アーラントには元々、大きな鉄の鉱山があって、良質な鉄が取れた事により武器の製造が盛んでしたが、
その肝心の鉱山が枯れてしまったと。
それでも当初は、輸入などで製造業を維持していたものの、財政悪化により鉄の質が大幅に下がり、
かつては最高の品質と謳われたそれら製品は、いつしか粗悪品の代名詞にまで落ちぶれた。
その技術だけは、その確かな腕を持った職人はまだ多く国内に居るはずだと…
その職人達に、出来ればもう一度最高の剣を打たせてやりたい、
きっと…いや、必ず、良い武器が出来ると思うのですが…っと、ゼインさんが仰るのですが…
『うーーん、そりゃ、全部あんたの希望であって…特産品の話では無いだろ?』
最初…うちの王様は冷めたお返事でした。
ですが、しばらく考え込み…ちょっと間があってから、
『まあ取り敢えずだ、あんたの知る有名な職人をリストアップしておいてよ、一回会ってはみるわ…』っと。
その後、この辺りは比較的温暖であることや、同盟国内でも比較的生産量が少なく、対してそれなりに需要があるもの…
などが、色々と話し合われました。
結果どうやら、柑橘系の果物、お茶、コーヒーなどが、名産の最終候補となりました。
既に農作実験では、複数の果物も試されていますので、来年あたりには方向性も定まるのでは無いかと思います。
集落には数時間程滞在し、おおよその打ち合わせは終了しました。
ゼインさんと子供達に見送られ、集落を後にします。
集落をでて、少し進んだ先で、急に王様が指笛を鳴らしました。
たちまち、どこからか数人の兵士が駆け寄ってきます。
特殊な偽装マントを装着した彼らこそ、
我が帝国が誇る最強の精鋭部隊の方々なのです。
『このリストの武器職人な、コイツらに接触して、その腕がどの程度のもんか、まだ心の火は消えてねえのか?その辺をきっちり見定めてくれ…』
そう言って王様はゼインさんから受け取ったリストをそっと手渡します。
「御意」
『これは全く急がんからな、たまには温泉にでも浸かって、多少のんびりしてから帰ってこい、これも追加で命令だ!』
…そう言って笑っています。
「御意!」そのお返事とともに、あっと言う間に消えてしまいましたね。
そこにはただ、風が吹いてて…一切何も無かった…まさにそんな感じです。
さっすが、灰色の亡霊…既に気配も音も有りませんね。
まあ私…気配なんか一切探れませんが…
『じゃあ、次は城に寄ってくかな…』
再び繭に入り、お城の見える丘の上に出ます。
何故わざわざ離れた場所に…っと、いつも疑問でしたが、
王様の能力を知られないためだったり、私達が繭からでるところを襲われない為だそうです。
で?急に何故か王様が独り言を?
『おつかれさん…』っと、近くに有った草むらに声を掛けてますけど?
ビックリですよ?その草むら、なんとお返事しましたよ?
…なんとビックリ、灰色の亡霊の方でした。草むらに擬態してたんだ…
どうやらこの部隊は王様の護衛が主な任務だそうで…
アーラントにて、各所に展開していた部隊でしたが、この王様の来訪と共に、急遽全員が終結したそうです。彼らの唯一の上官が、王様ですから…
何をおいても、まずは王様の安全確保とその警護が最優先なんですって。
その辺は常に徹底されてるそうです。
大臣様とも声を掛け合い、ゆっくりとお城に向けて歩き出しました。
常に先回りしてるのかな?
彼らがここにいる場合、既に必ず、敵は排除されているそうで…
つまり、ここらはすっかり安全なのだと。
外はとってもよいお天気で、ちょっぴりお散歩気分です。
ただ歩いているだけですが、気持ちがよいですね。
ただ、この平和な空気の裏側では、アーデ将軍らが、それこそ命がけで頑張って下さってる訳で…
そう考えると、平和って尊いですよね…




