後片付けとキャラバン
大熱狂のうちに終わったショーギ大会ですが、アーラントには相当な熱を生み出していて、あちこちから聞こえる会話の大半は、今だにショーギの話ばかりですね。
特に、私の目の前の三人と来たら、
ずっと魘されているままの…
まるで一種の、熱病か中毒…?
何か、おかしな病気にでも掛かった、ある意味、重病患者…の様です。
でも、それほど影響を与えたと考えれば、大成功だし、新ためて、開催して良かったって思えますよね。
ただ正直、唯一の問題点が…ちょっと、鬱陶しいなと思う事の連続…くらいです…
やれ、あの時歩兵さえ居れば勝ってた…とか、
左の将軍を取られたのが辛くて泣きそうだった…とか、まだ言ってるの?って感じで、
まあ問題点って、仕事中の、この御三方に対してだけの…ですが。
もうしばらく、私には我慢の日々が続くのでしょうね、頑張りますます。
そして…
全ての観客を魅了した決勝戦で、うちの王様を取り囲んで居た人達って、
実は王様が手配した、大規模なキャラバンの関係者でした。
複数の国からそれぞれ、うちの王様の呼びかけに応え、ここアーラントに向け遠路遥々、長い道のりをやって来たそうです。
全てはシャダ商会か、もしくはその直接の子会社の様な、
どこもかなり大きな組織の方々で、
食材や日用品は勿論ですが、お酒や菓子、娯楽品までもが、ショーギ大会が行われていた広場に、片付けと並行して、準々と、
そしてところ狭しと並んでいきます。
そもそも、復興様中のここで、キャラバンが来たって買い物なんて…そう思ったのは、私だけでは有りません。
誰もが?…一体何故?そう思った事でしょうが…
『おいおい、すっかり忘れてるようだが…これを見越して、俺は金貨を撒いたんだぜ?』
ハッ!!…そうでした。
わざわざ金貨なんて、なんならちょっと悪趣味なのでは?…って、ちょっと思ってた自分でしたが、
いえ…きっと、ここに居る殆どの誰もが、そう考えるでしょ?
ですが、そんな私を見ながら、王様が笑って仰るのですが、
『良いか?…老若男女、健常者も怪我人も、誰だって共通して楽しめるモノって、ショーギじゃ無いからな?
そもそもそれが、苦手な奴だって大勢居るし、出来ない奴も居るんだよ、
でもどうだ、買い物だったっら、誰だってイケるだろ?』
ああ!なる程…
『それにな、同盟となればあの金貨や、それを両替して出来る、うちんとこの貨幣制度に切り替える、その前準備って感じで、
アーラントに広くうちの貨幣を見せておいて、多くに周知させる目的も有るのだ、まあ偽金対策って感じ?…』
見たことも無い貨幣だと、確かに本物と偽物の区別は為難いですが、
今実際に、それを手に取り、その手で実際に使えば、本人の記憶には、深く刻まれますね…特にこの状況ですしね…きっと生涯、忘れ無いでしょうね。
やっぱり凄い…きっとこれも王様が考えたんでしょうね。
どこの軍部の高官さんが口を揃えて仰る…
帝国の王は深謀遠慮、例え著名な賢者でさえも、そう簡単には知恵比べに勝てやしない相手である…と。
更には先のショーギ…司祭様は決して弱くなんか無い。実際に戦った方々は特に、その実力を充分に理解してた筈だ…
その司祭様が、成すすべもなく敗れたのだ。
しかも、攻め込めば逆に狩られるとか、
盤面全てが、王様の手のひらの上だった…
そんなの聞いた事も無い、まさかの事態ですよね…
まあ…あれも見た後で尚、王様と知恵比べしようなんて、余程のおバカさんか、途轍もない勘違いだと、そう思われるのもまあ…当然でしょうね。
だから?軍部の高官さんって、うちの王様の意見は、多少強引だろうが、検討さえせずにかなりすんなりと受け入れちゃいますよね。
ホントに凄いなあ…ちょっと無駄に呆れるくらい…
おっとそうそう、キャラバンです。キャラバンですよ。
早速、開いた店先には、既に多くの人だかりが出来てます。
いか焼き、たこ焼き、串焼き、お好み焼き、これらは焼き屋台の四天王とか、巷で呼ばれるそうですが、
そこら中に、香ばしい良い匂いが広がって居ますよ。
集まった人達はみんな、町民さんも軍人さんも満面の笑顔です。
そして屋台の売り子さんの威勢の良い掛け声も相まって、どの商品も、どんどんと売れていますね。
見ていると、お腹が鳴ります…この匂いも卑怯な程に、購買欲をかき立てるのが、身を持って理解出来ますね。
なる程…屋台って凄く良い商売の形態であると…
聞けば最初期のシャダ商会は屋台、これ一本で商売の世界を瞬く間に駆け上がったって、割と有名だそうです。
良くこんな事思いつきましたねって話ですが、
極秘だそうですが…これも、実はうちの王様が始めたんだって、そんな話だそうです…やっぱり呆れますよね。
なので?うちの王様って、一部では商売人の神様って、そう言われる事も有るそうですよね。
まあ…そもそも、キャラバンの荷馬車を引くのは大きな魔蜘蛛か、グリフォンなんですね…
それがシャダ商会の荷馬車の最大の目印で有り、
ある意味、うちの王様が深く関与してる、何よりの証拠で、
そして圧倒的な商隊の防衛戦力で有り、
多少腕に覚えの有る盗賊でさえ、
シャダの荷馬車だけは、見て見ぬふりをせざるを得ないって、これもまあ、割と有名な話ですね。
襲っては見たものの、あっさりと敗北し、気が付けば糸で身体をグルグルと巻かれ、しかもその場に放置されるのだとか…
その糸は簡単には切れず、無様な姿を延々と晒し続けた挙句、
最後は他の盗賊や魔獣には良いエサ…って事だそうです。ああ怖い。
シャダ商会には、その長だけでなく、かつて王様が助けた奴隷や捕虜みたいな方々が多く、
今回のキャラバンは、驚いた事に、そもそも利益は二の次なのだそうです。
この規模、内容で、そんな事は、通常はあり得ない事、夢物語だと、断言出来ます。
全てが王様の、かつて命を救われた恩義に報いるため、
ただただ、それだけの目的でここまでやって来たのだそうです…
素敵な話ですが、うちの王様って存在が、やはりかなり特殊で、かなり圧倒的なんだって…
そりゃ神様だって、そう皆から崇められるのも判るな…
ただまあ…大口でたこ焼きを頬張ってる、
あの姿さえ見なければ…ね。




