将棋の奥は深いのですよ
あの、王様と司祭様の熱戦以降、子供達を中心に、皆様かなりショーギに熱中しています。
いえ…大人達もかなりハマってますね…
私、貴族の嗜みだと、随分前に大ブームが来てたのはお父様から聞かされてましたし、
お母様とうちの執事だったミゲールが、特にショーギが大好きだったので、
幼少の頃にはよくつきあわされて、結構やってましたよ。
ええ、一番強かったのですよ、私。
ただ…経験値不足?
たった三人分の戦略など、たかが知れておりましたね。
井戸や大海どころか、小さな水たまりに居たんですよね…私。
文字通り…まさに井の中の蛙でしたわ…
なんなら子供達の方が強かったりします。
私の補佐としてお仕事を手伝って頂いている御三方も、急にショーギに熱中されていて…
この方達…簡単に周りの影響を受ける傾向が強いのですが…
ショーギなんて、お年寄りの暇つぶしで御座いませんか?
…などと言ってらしたシャイナ様ですが、
今では完全に、ショーギに夢中のようです。
王様と司祭様の闘いは、周りの多くの者達の心に、激しく火をつけた様ですね。
実際…あのヒリヒリする緊迫した空気や、
ホントに戦争でもしてるのかってくらいの迫力は、
たかがお遊び…などと、とても言えないくらいかっこよかったですものね。
いつか王様と闘いたいって思うのも、まあ…判るんです。
ええ、判るんですよ、そのお気持ちは…
判るんですけどね…
なのでいい加減、もう寝ませんか?
もう間もなく…夜も明けると思いますよ…
私なんて水たまりの雑魚なのですが…
その雑魚にさえ勝てないようでは、
とても王様の領域には遠く及びませんよ?
いきなり強くなんてなれませんから、一旦…一旦落ち着きましょう。
仕事に影響が出ては、その王様に、あわすお顔も有りませんからね。
え?じゃああと一局だけ?
いや、だから…
あ、はい…そうですね…じゃ最後に…あと一局…
うーん、困った…この流れは暫く続きそうですね…
ですが…それぞれの本来の?或いは、内に秘めた人間性がよく見えて、
そこはとても面白いですね。
特にソフィア様は、実は相当の負けず嫌いだったなんて…
お顔に似合わず…実は激しい気性を隠されていたなんて…
人は見かけによりませんね。
そもそも…夜中だと頭が全く回らないんで、
きっと恐ろしい程の、低レベルな闘いになってますよね…
いっそ、ショーギ大会でもやって、
この方達のお相手を子供達に丸投げしよう…私の睡眠の為に…
そうだわ…そうしよう。
明日にでも、王女様や騎士長さんにご相談しよう…
うわ…お空が白い…
夜が明ける…
うーん…これは急がなければ。
寝不足はお肌の大敵なのに…
よし、ちょっとだけ寝よう…
…
……
「おや?…随分と眠そうですねエトラン嬢…」
ああ…おはようございます騎士長さん…
「あれ?ひょっとして…君も将棋にあてられた口かい?…」
ええ、いや、私の周りが…そうですね。
「ハッハッハ…そりゃ気の毒な…まあ…一過性の流行りだから、そのうち収まるだろうから…あともう暫くは辛抱だな…」
うーんやっぱり。そうですね…
「うちの団員も将棋、将棋って騒いでるよ。困ったもんだね」
そう云う騎士長さんは将棋されないのですか?
「子供の頃は毎日毎日よくやってたよ。ただ…やり過ぎて、もう飽きちゃったのかもな…」
へえ〜そうなんだ…じゃあ、お強いのですか?
「え?…流石にあの司祭よりはちょっと弱いけど…それなりには、ね」
ええ?じゃ、実はかなりお強いのでは?
「いやいや、あのマイケル…おっと、司祭と比べられたら困るよ、その程度…だよ」
王様とは戦ったのですか?
「ああ勿論さ。いっつも、ボコボコにされてたよな。あの人、調子に乗った相手には、ホントに容赦無く強いからね…」
へえ〜…調子に乗ってたんですか?
「あーっはっは、そうな、若気の至りだよ…何度も何度も王様に、この鼻っ柱をへし折られたもんさ…」
意外ですね。落ち着いた雰囲気の騎士長さんに、実はそんな一面が有ったなんて…
そうですね…やっぱりショーギ大会、面白いかも知れませんね。
思い切って、うちの王様にも相談しようかな。
もしかすると、豪華賞品とか…用意して下さるかも?
ちょっとくらい、楽しい事ももないと、毎日辛いですものね。
復興も順調で、ちょっと落ち着いてもきたし、アーラントの皆様にも、多少の娯楽が有ったって良いよね。




